辞書 | 品詞 | 解説 | 例文 | 漢字 |
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日本国語大辞典 | 助詞 |
[1] 〘係助〙 (現在では「わ」と発音する) [一] 文中の連用語を受け、述語との結びつきを強める。→語誌(1)。 ① 体言・体言に準ずる語句およびこれらに助詞の付いたもの、副詞などを受ける。→語誌(2)。 (イ) 叙述の題目を提示する。→語誌(3)。 |
※万葉(8C後)二〇・四四二五「防人に行く波(ハ)誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思(も)ひもせず」 | |
(ロ) 連用語を対比的に提示する。 |
※古事記(712)上・歌謡「青山に 鵼(ぬえ)波(ハ)鳴きぬ さ野つ鳥 雉(きぎし)波(ハ)響む 庭つ鳥 鶏(かけ)波(ハ)鳴く」 ※古今(905‐914)春上・一「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける〈紀貫之〉」 |
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(ハ) 対比すべき事柄を言外におくことにより強める。 | ※万葉(8C後)五・八二一「青柳梅との花を折りかざし飲みての後波(ハ)散りぬともよし」 | |||
(ニ) 「Aが…する(である)一方、BはBで…する(である)」の形で、Aの行為・状態に対して、Bが独自に類似した行為を行なう(類似した状態である)ことを表わす。 | 「この件は警察も捜査に着手したが、検察は検察で独自に動きはじめていた」「ここは冬は冷え込むし、夏は夏でとても暑い」 | |||
② 複合動詞の中間に入り、あるいは活用語の連用形・副詞などを受けて強調し、打消または逆接の表現に続く。→語誌(4)。 |
※万葉(8C後)九・一八〇七「髪だにも 掻き者(は)梳(けづ)らず」 ※史記抄(1477)一八「見つけはすれども、捕はえせぬそ」 |
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③ 「ずは」の形で用いられた上代の特別用法。→ずは①。 | ||||
④ 「…は(には・ことは)…が」の形で同じ形容詞・形容動詞・動詞をうけて、その観点・次元については…であるということが認められるが、その意義を減少させるような要素もある、ということを示す。「…は…が」の形では、形容動詞は初めのは語幹、後のは終止形を用いる。 | 「このあたりは静かは静かだが駅からは遠い」「この時計は動くには動くが正確でない」 | |||
⑤ 形容詞および打消の助動詞「ず」の連用形を受け、仮定条件を表わす。→語誌(5)。 | ※万葉(8C後)一八・四〇三九「音のみに聞きて目に見ぬ布勢の浦を見ず波(ハ)上(のぼ)らじ年は経ぬとも」 | |||
[二] 連体修飾の文節を受け、対比的に被修飾語との関係を強める。 | ※方丈記(1212)「一条よりは南、九条より北」 | |||
[2] 〘終助〙 ① 文末にあって感動を表わす。上代には単独のものはほとんどなく、「はや」「はも」の形をとる。→語誌(6)。 |
※古事記(712)中・歌謡「さねさし 相摸の小野に 燃ゆる火の 火中に立ちて 問ひし君波(ハ)も」 ※源氏(1001‐14頃)紅梅「はかばかしき御後見なくては、いかがとて、北のかた、そひてさぶらひ給は」 |
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② 中世以後、会話文に専用される傾向が生じ、話手自身に対して念を押すような気持での詠嘆を表わす。→語誌(6)。近世には「わ」と表記されることが多くなり、現代では主として女性が用いる。→わ〔終助詞〕。 | ※史記抄(1477)四「すはよいはとて追たそ」 | |||
[語誌](1)(一)で連用語と述語の結びつきが非常に強められると、排他的な気持の含まれる場合も生じ、またその排すべき事柄を明示すれば(一)①(ロ) のような対比的用法ともなる。 (2)格助詞「を」を受けると、(一)(一)①の「は」は濁音化して「をば」となる。→ば〔係助詞〕。 (3)(一)(一)①には地名に関して、それを含むさらに広い地域を先に提示する特殊な用法もある。「肥前の国は唐津の住人多々良三平君が」〔吾輩は猫である〈夏目漱石〉五〕など。 (4)形容詞の連用形あるいは副詞を受けながら打消や逆接の表現とならず、(一)(一)②の「は」がきわめて軽く、間投助詞的になる場合もある。「天離(ざか)る鄙にも月は照れれども妹そ遠く波(ハ)別れ来にける」〔万葉‐三六九八〕など。 (5)(一)(一)⑤の「は」の受けている形容詞語尾「…く」、および打消「ず」を未然形とする説もある。いずれにせよ、この場合の「は」は清音に発音されたものであるが、近世には「ずば」「くば」の例が現われる。これらは、活用語の未然形に接続詞「ば」が付いた形からの類推であらわれたものと考えられる。「それ程名残り惜しくば、誓詞書かぬがよいわいの」〔浄瑠璃・心中天の網島‐中〕、「人足をたのまずばなるめへ」〔滑稽本・八笑人‐三下〕など。 (6)(二)の①と②の用法に根本的な違いはないが、もっぱら会話文に用いられる②に対して、古い用法の①は、和歌にも散文にも用いられ、係助詞の文末用法とみることができる。 |
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広辞苑 | 助詞 |
(現代語での発音はワ) ➊(係助詞)体言・副詞・形容詞や助詞などを受け、それに関して説明しようとする物事を取りあげて示す。取りあげるのは既に話題となるなど自明な内容で、その点に、事実の描写などで新たな話題を示す「が」との違いがあるとされる。格を表す語ではなく、主格・目的格・補格など種々の格の部分でも使われる。「は」を受けて結ぶ活用語は、余情を込めるなど特別な意味を表す場合を除いて、通常は終止形で結ぶ。→が。 ①他と区別して取り出していう意を表す。 |
古事記上「青山に 万葉集20「足ひきの山菅の根し長く―ありけり」。 源氏物語桐壺「はじめより我―と思ひ上がり給へる御方々」。 「僕が帰るから、君―いなさい」「辛く―あるが頑張る」 |
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②叙述の題目を提示する。 |
万葉集1「大宮人―船並めて朝川渡り」。 竹取物語「石つくりの皇子―心のしたくある人にて」。天草本平家物語「一の谷―、北は山、南は海」。 「象―鼻が長い」「酒―静かに飲むのがいい」「花―桜木」 |
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③連用修飾する語句に続き、前の語句の表す内容を強調する。 | 万葉集2「わぎもこに恋ひつつあらず―秋萩の咲きて散りぬる花にあらましを」 | |||
④不定称の語に付いて、どの一つであってもの意で、全部がそうであることを表す。 |
古今和歌集東歌「みちのくはいづく―あれど塩釜の浦漕ぐ舟の綱手かなしも」。 「何―無くとも、あなたさえいればいい」 |
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⑤仮定条件と解される文脈に用いる。「ば」と濁音化しても使われる(「ば」を未然形に接続する接続助詞とする説もある)。「ずは」は、江戸時代以後「ざあ」と転じて使われることもある。 |
万葉集18「見ず―のぼらじ」。 古今和歌集雑「恋ひしく―とぶらひ来ませ」。 勅規桃源抄「卿相にならずわかへるまいと 浄瑠璃、長町女腹切「逢たく―、半七ばかり明日おぢや」。 いろは文庫「もしそれともに、 歌舞伎、青砥稿花紅彩画「知らざあ言つて聞かせやせう」。 「相手に知られて―困る」「行かず―なるまい」→ば。 |
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➋(終助詞)文末にあって余情・詠嘆の意を表す。→わ。 |
万葉集20「今日よりは顧みなくて大君の醜の御楯と出で立つ我―」。 伊勢物語「いかがはせむ―」 |
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➌(格助詞)方向を表す「へ」の上代東国方言。 |
万葉集20「我が背なを筑紫―遣りてうつくしみ |
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大言海 | 天爾遠波 | 第二類ノ天爾波。物事ヲ各自ニ差別スル意ノ語。 |
古事記、上
三十八
「靑山ニ、ヌエ 萬葉集、一 一 長歌「國バラ 「人は去リ、我は止ル」見ルは善シ」取リテは見ム」斯クマデは無シ」如何はセム」 |
者 |
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