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冬支度

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街がいろんな色のネオンで敷き詰められるていくのと同時に、恋人達の最大イベントであるクリスマス
は一週間後へと迫っていた。

私は憂鬱だった。
ってどっかのアニメじゃないんだから、と溜め息を漏らす。
「どったの?かがみん」
隣りを歩くこなたが覗くように聞いてくる。
日課になりつつある寄り道をして、私達は帰路の最中だ。
「いや、なんでもない」
繋いでいたこなたの左手を少し握り返す。
ちょうど三か月前から私達の関係は大きく変わった。
友達から恋人へ、と。
付き合って当初は恥かしさもあって手を握ることにすらいちいち赤くなっていた私達―と言っても主に
私だけど―だったが、恥ずかしい気持ちはまだあるけど自然に握れるほど慣れていた。
慣れって怖いわね、なんて自嘲気味に笑ってみる。
「下界はすっかりクリスマスだねー」
街に彩られたイルミネーションを見渡しながらこなたは言う。
「下界って、アンタはどっかの天帝かなにかか」
「むふふ、かがみんも分かってきたねー」
「毒された、が正しいけどね」
ニヤニヤと笑ってくるこなたから視線を外し、辺りを見回す。
目がチカチカするほど輝く看板、ドでかいクリスマスツリー、UFOキャッチャーの中のぬいぐるみでさえ
クリスマス一色になっている。

クリスマス。
私の憂鬱の原因の根源はコレである。

事の発端は数日前、こなたの家に遊びに行った時の出来事である。
「かがみんや」
「んー」
いつも通りこなたのベッド上で積まれた漫画を読んでいた私に、ゲームを中断したらしいこなたが声を
掛けてきた。
「かがみんはクリスマス何か予定あんのー?」
「それは一応誘いなのか?」
予定も何も付き合っている恋人にそれを聞くのか、という意味を込めてこなたの方を向く。
「う~ん、まぁ…」
「何よ、アンタには珍しくはっきりしないわね」
「…いやね、実はクリスマスさー。バイト入っちゃったんだよ~」
「へー」
そういやクリスマスはスペシャルイベントがある!!とかなんとか言ってたわね。
特に気にすることもなく、読みかけの漫画へ視線を戻す。
「えぇ、反応薄っ!いったんもめんの横幅より薄いよ!!」
どんな例えよ。
確かに朝早くからアニメやってるけど…
「かがみは私とクリスマス過ごしたくないの?!」
いやいや、それは私の台詞でしょ。私は当日予定ないし。


仕方なく漫画を閉じてこなたを見据える。
「いや、だってアンタバイトなんでしょ?」
私だってクリスマスをこなたと一緒に過ごせればなぁ、なんて思っていた。
しかし、ここで『バイトと私、どっちが大事なのよ?!』なんてデフォを言える程素直な人間ではないこ
とは自分自身が一番分かっている。
「『バイトと私どっちが大事なのよ?!』とかいうシチュを期待してたのにぃ~」
ぶぅ~と口を尖らせてこなたが言う。
考えてる事が一緒なのは喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか…
「そう言ったら私を優先してくれるわけ?」
意地悪っぽく口角をあげて、ふざけて聞いてみる。
まぁバイトがあるって私に打ち明けた以上、バイトを休む事はほぼ不可能だと思うけど。
「うん」
たった二つの言葉の羅列のはずなのに、有無を言わせない程強い口調でこなたは答えた。
その予想外の返答に驚くやら、嬉しいやらの私は思いっきりこなたから目を逸してしまった。
急激に上がった体温を下げる為、顔に手を当ててみる。
ちくしょう、手もあっつい。
「かがみ」
コントローラーを置いたこなたが私に近付くのが気配で分かった。
「…かがみ」
顔を上げない私を促すようにこなたが名前を呼ぶ。
「な、なによ」
しぶしぶ上を向くといつもの猫口顔のこなたがいた。
こなたを見上げるなんてあんまりないかも、なんて考えていると…
「好きだよ、かがみ」
私の髪を避けて耳元で囁かれる。
耳から受けた刺激のはずなのに、胸の奥がきゅんと締め付けられた。
「…な、なっ…」
思わず両手で耳を隠す。
たたでさえ体温が上がっていた手よりも耳が熱い。
どさっ、と何かが倒れる音がしたと思った瞬間、視界が一変していた。
えっと、こなたの後ろに見えるのは天井よね。
押し倒された、と認識する前に唇に熱くて柔らかいものが押し付けられる。
「っ…ん」
ぺろっと唇を舐められると背中にゾクゾクした感覚が走る。
その感覚がもどかしくて、こなたの袖を握る。
それに気付いたこなたが私の手を握り、床に押し付けると同時にぬるっと舌を入れられた。
「…んんっ、…ぁ…」
こなたの熱い舌が私の弱い部分を的確に攻める。
こなたのなのか私のなのか分からない唾液をこくっと飲むと、こなたが唇を離した。
乱れた息遣いを感じる程近くにこなたの顔がある。
トロンとした目で見つめられるだけなのに鼓動が早まるのは私だけなのだろうか。



「クリスマスさー、私んちに泊まりにこない?」
相変わらず至近距離にいるこなたから発せられた言葉。
「………は?」
やっと息が整ったと思ったが、頭の方はまだボーとしているらしい。泊まりに来ない、って言った?今

「うわー、傷付くなぁ。その反応」
私の上に馬乗り状態のこなたが万歳ポーズをする。
「いや、あの、こなたさん。」
「ん?」
「バイトは?」
「あるよ」
さっき言ったじゃん、と言う様な目で私を見る。
文脈というか、こなたの言ってること自体意味が分からない。
起承転結がないからなぁ、コイツは。
「クリスマスにバイトあるのに、お泊りしていいの?」
私自身が納得できるように質問を変えると「うん」とこなたが頷いた。
「バイトは夜からだし、イヴに泊まりに来れば問題なしっ!」
なるほど、別にクリスマス丸一日一緒に過ごさなくても迎える事は出来るってわけね。
「ちゃんと考えてるのね。あんたも」
「むっ、失礼な。いつも考えてるよ、かがみの事なら」
ボフッと爆発するみたいに赤くなる私の顔、引いてきた熱がフル総員で全身を駆け抜ける。
なにも全員反応することないのに、と自分の体にケチをつけたい。
「赤面かがみ萌え」
「…るっさい」
ニヤニヤと笑うこなたに小さく反抗する。
「んで、どうする?」
クリスマス、と言いながら私の髪を撫でる。
「いや、私は特に予定ないし・・・アンタがいいなら別にいいけど。」
「むふ~♪これだからツンデレは」
「誰がツンデレだ」
ふふ~ん♪と鼻歌を歌いながら私を抱きしめるこなた。
「ちょ、こなたっ」
「ん~?!」
「ん~、じゃないわよ!!ど、どきなさいよ!」
「付き合って結構たつのに相変わらず照れるかがみ萌え」
「だから、もうソレはいいって!!」
こなたと付き合ってから抱きしめられて、キスして、舌を入れる大人のキスもした。
結構な回数を重ねたと思うけど、まだ慣れない私。
というか、こなたに触れられる度、緊張とはちょっと違う感情が生まれる。
もどかしいというか、足らないというか・・・ってこれじゃ期待してるみたいじゃない!!!
ブンブンとオーバーなくらい頭を振るとこなたがニヤニヤしていった。
「あ、ちなみにその日お父さんいないからw」



「・・・・み・・・・・・・・かがみってば!!!」
横を歩いていたはずのこなたが少し怒っている顔で私の正面にいた。
「あ、ごめん。ボーっとしてた」
むぅ~とほっぺたをふくらますこなた。
そんなこなたを可愛いと思ってしまう私は相当重傷なのね。
そんなこなたが何かひらめいたのか、手をポンっと打った。
「あ、お泊まりの日夕飯どうしようか?」
お泊まりという単語にピクッと反応する。
数日前、こなたは「お泊まりの日は家に誰もいない」と言った。
付き合ってる二人がイブにお泊まり、そして密室で二人きり。これらの条件から導かれることは・・・

つまり、えっと・・・・そーゆー事、よね。
「こ、こなたに任せる・・・」
勝手にあがる体温を誤魔化す為、下を向いて答える。
「んじゃー、何か適当なものつくろっか。」
「う、うん。」
「・・・・かがみ、何かあった?」
「へ?」
「いや、なんかずーっと上の空だし、何か悩み事?」
本気で心配している顔で私を見上げるこなたに少し罪悪感が生まれる。
大丈夫、と言ってこなたから逃げる様に別れを告げる。





「考えすぎなのよ、私」
こなたが見えなくなったことを確認して一人つぶやく。
はぁ、と何回目か分からない溜め息をつく。
こなたに悪いことしたなぁ、心配かけちゃったし。
憂鬱というか私のこのモヤモヤした感情の整理がつかない。
こなたの事はとても好きだ、それは自信を持って言えることなのだけれども・・・
いざ、そーゆー・・・キ、キス以上の事になると尻込みしてしまう自分がいる。
こなたから直接誘われたことはないのだが、そーゆー雰囲気になることからそっと避けていたのは事実
だ。
こなたが気づいているのだろうか。気づいてるかも、意外に勘鋭いし・・・。
手を繋だり、抱きしめられたりするのはとても嬉しいし、こなたの愛情は痛いほど感じて、私自身キスだけじゃ物足りなさを感じてはいるのだけれども・・・それとこれとは違うっていうか。
「あーもうっ!!!」
どうすればいいのよ、なんて暗くなってきた灰色の空に叫んでみる。
これは幸せな悩み事なのかしら。
とりあえず、明日ちゃんとこなたに謝らなくちゃ。と家へと向かう。

クリスマスイブまで後一週間。

続く













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  • GJ -- 名無しさん (2022-11-12 23:47:23)

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