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Fruit

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だれでも歓迎! 編集
誰の心にも木の実がなっています。
赤い赤い、とても綺麗な木の実です。
その実を突つきに小鳥が飛んでくる事があります。
鳥に突つかれ木の実が弾けること………それを人は「恋」と呼ぶのです。

あなたも、赤い実を突つく小鳥を探しませんか?


 これは、ある本の文章を抜き出したものです。その作家が手紙を書く、そんな、ただそれだけのお話。


---Fruit---


 私は、新人の編集者です。その傍らに作家稼業をやらせてもらってます。
編集者で作家というのは、この業界では花気違いの大工みたいなものだ、と言われたことがあります。
何がいけないのでしょうか。
さて、私が作家になろうと思ったのは、二人の女の子の影響です。今、二人は何をしているのでしょうか。
夢は、叶ったでしょうか。まだ、夢の途中でしょうか。

 二人とは高校時代に出会いました。その二人ともう一人の友達の御蔭で私の高校生活は充実したものになりました。
中学時代、私には殆ど友達と呼べるような人はいませんでした。三人との出会いは私を大きく変えてくれたと思います。

 今日久々に暇が出来たので、三人の内、一番仲の良かった人に手紙を書こうと思い立ちました。
世の中にはメールという便利なものもあります。
しかし、作家や編集者という仕事に就いていると、直筆というものの重要性に気付かされます。
私の担当させてもらっている作家さんは、まず、直筆で下書きをしてからパソコンに向かいます。
ひどく時間が掛かりますが、愛が篭っている気がしてどうしても急かすことは出来ません。
結局、私が頭を下げることになる訳ですが。

 閑話休題。
私はペンを握り、かれこれ半日は便箋に向かっています。
しかし、友人にいきなり手紙を書くとき、どう書いていいか分からず、一文字として進んでいません。
失敗した便箋がメモ用紙として積み上げられています。
今日、何度目になるかわからない休息を取ることにします。
私が担当させてもらっている作家さんが、ネタ集めと称してご友人と遊びに行った御蔭で出来た休日。
出来れば今日一日で書いてしまいたかったのですが。
気分転換にラジオを点けてみます。大学時代に買ったラジカセ。少し型は古くなって仕舞いましたが、私のお気に入りの一つです。
テスト前にはテレビの代わりによく働いて呉れました。
最近は大抵CDを聴くのにしか使ってあげてませんでしたが、たまにはラジオとして使ってあげなければ可哀相です。

---ブン……ジジジ………

起動音の後に砂嵐の音。使っていなかったのでチューニングがあっていないようです。
少し調節するとすぐにスピーカーから鮮明な音が聞こえるようになりました。


「おっはラッキー☆ と、いうことで久々に始まりましたらっきー☆ちゃんねる! メインパーソナリティは勿論私、小神あきらで~すっ!」
「同じくアシスタントの白石みのるです。いや~、ホント久しぶりですね、あきら様。あきら様もすっかり大人っぽく---。
どうしました、あきら様?」
「あきらは永遠の14歳なの! 大人っぽくなんか---」
「綺麗になった、と言えばよろしいですか?」
「……はいはい、勝手に言ってなさい。
さて、前にやってた頃を思い出してもらうために懐メロリクエストを募集してみました~。パチパチ~っと。
はい、じゃあ、白石読んで。」
「はい! では、一通目のお便り。RN.眼鏡っ娘激LOVEさんからのお便りです。」
「ありがと~。」
「リクエストはスキマスイッチでボクノート。
大学受験のときに勉強とアニメとゲームの合間にらっきー☆ちゃんねるとこの曲をずっと聴いていました、だそうです。
有り難いですね。」
「て言うか、勉強しなさいよ。ま、いいけど。じゃあ、お聴き下さい。スキマスイッチのボクノート。」

よく知りませんが、昔やっていた番組の復刻版みたいです。しかし、流れてくる音楽には聴き覚えがあります。
確か高校に入る前後に流行った曲の筈です。アニメの主題歌になっていたような気がします。
RNもどこかで聞いたような気がしますが………


耳を澄ますと微かに聞こえる雨の音
思いを綴ろうとここに座って言葉探している
考えて書いてつまずいて消したら元通り
12時間経って並べたもんは紙クズだった
君に伝えたくて 巧くはいかなくて
募り積もる感情は膨れてゆくだけ
吐き出すこともできずに

 聴くとは無しに聴いていた曲。その歌詞。なんだか今の私を表しているみたいです。

今僕の中にある言葉のカケラ
喉の奥、鋭く尖って突き刺さる
キレイじゃなくたって 少しずつだっていいんだ
この痛みをただ形にするんだ

 そのフレーズに私はハッとしました。
感情を素直に表すために直筆を選んだ筈だったのに、いつの間にか綺麗な文章を書こうとしていたのでは無いでしょうか。
いえ、きっとそうです。
高校・大学時代には気持ちを表すだけでも、文章が整っていっていました。
しかし、今はどうでしょう。文章ありきになってしまっています。
編集の仕事のときにはそれでも良いのです。そういう仕事ですから。
しかし、作家の仕事のときは、手紙を書くときはそれではいけないのでしょう。
いつの間にか曲は終わり、DJたちが惚気話や痴話喧嘩を繰り広げています。
私はラジオを切り、便箋に向かいました。不思議と書ける気がします。
もしかしたら、ラジオが力が呉れたのかも、なんて。


 これから書く手紙は多分ラブレターになるんだと思います。伝えられる筈のなかった思いを篭めた、ラブレター。
今更意味の無いことかも知れません。あの頃、自分で出した答えに逆らう行動なのですから。
今なら伝えられる気がするのです。
多分、あの人は理想の人と付き合っているでしょう。
そんなところに私なんかが手紙を、ラブレターを出したら迷惑だとは分かっています。
しかし、友達さえほとんどいなかった私に、恋というものを気付かせて呉れたあの人にあの頃の気持ちだけは知っておいて欲しいのです。
私の大事な小鳥さんには。
同窓会で話す笑い話のような気軽さで、私は書き始めます。

『前略、岩崎みなみ様
桜の花も散り始め、緑が映える今日この頃。いかがお過ごしでしょうか。』

 そんな文句で始まった手紙は、便箋二枚に渡り、最後はこう締められました。

『私は、貴女のことが大好きです。それはずっと変わりません。
ではこのあたりで、貴女の健康と活躍を祈りつつ、ペンを置かせていただきます。
草々

小早川ゆたか』



お話はここで終わります。
この少女が手紙を出したのかは、私には分かりません。
貴方はどう思いますか?












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