『心変わり』というのは、案外とつぜん訪れるものなのかもしれない。
特に、雨降りの日がつづいて、気持ちが晴れないようなときには。
わたし――柊つかさは、ある日とつぜん、みんなの態度の変化に悩まされることになったの。
それは、七月に入ったばかりで、そろそろ梅雨も明けようかという日のことだった。
特に、雨降りの日がつづいて、気持ちが晴れないようなときには。
わたし――柊つかさは、ある日とつぜん、みんなの態度の変化に悩まされることになったの。
それは、七月に入ったばかりで、そろそろ梅雨も明けようかという日のことだった。
「こなちゃん。帰ろ?」
放課後、わたしはいつもみたいに帰り支度をすませると、まだ机の上にノートや鉛筆を散らけているこなちゃんに声をかけた。いつもなら帰り支度が早いこなちゃんなのに、その日は珍しく遅かったの。
わたしたちは毎日、かがみお姉ちゃんを加えた三人で登下校をしている。待たせたりするとお姉ちゃんはうるさいから、わたしはこなちゃんに早く支度をして欲しかった。
でも……。
「あー、ごめん。つかさー。今日はみゆきさんと一緒に買い物に行く約束をしてるから、かがみと二人だけで帰ってくれないかなー?」
少し意地悪っぽい笑みを浮かべて、こなちゃんはそう言ったの。
「えっ? う、うん。わかった。お姉ちゃんにも言っとく。…でも、珍しいね。こなちゃんがみゆきさんと二人で買い物なんて」
「いやー、ちょっとねー」
正直に言うと、ちょっとびっくり。
まだ自分の席に座っているみゆきさんに視線を送ると、にっこりと笑顔が返ってきた。
わたしは、きょとんとしてしまう。
結局、こなちゃんとみゆきさんは、そのあと二人で教室を出ていったの。
放課後、わたしはいつもみたいに帰り支度をすませると、まだ机の上にノートや鉛筆を散らけているこなちゃんに声をかけた。いつもなら帰り支度が早いこなちゃんなのに、その日は珍しく遅かったの。
わたしたちは毎日、かがみお姉ちゃんを加えた三人で登下校をしている。待たせたりするとお姉ちゃんはうるさいから、わたしはこなちゃんに早く支度をして欲しかった。
でも……。
「あー、ごめん。つかさー。今日はみゆきさんと一緒に買い物に行く約束をしてるから、かがみと二人だけで帰ってくれないかなー?」
少し意地悪っぽい笑みを浮かべて、こなちゃんはそう言ったの。
「えっ? う、うん。わかった。お姉ちゃんにも言っとく。…でも、珍しいね。こなちゃんがみゆきさんと二人で買い物なんて」
「いやー、ちょっとねー」
正直に言うと、ちょっとびっくり。
まだ自分の席に座っているみゆきさんに視線を送ると、にっこりと笑顔が返ってきた。
わたしは、きょとんとしてしまう。
結局、こなちゃんとみゆきさんは、そのあと二人で教室を出ていったの。
わたしはそれから少しのあいだ、教室に残って、お姉ちゃんが来るのを待ってた。
お姉ちゃんはすぐに教室にやって来た。それで、わたしから事情を聞くと、
「へえー。珍しいこともあるもんね。こなたとみゆきが二人で買い物ねー」
と、あっさりした反応。うん、そんなに気にすることじゃないよね。
でも、そのあとで少し首を傾げて、
「……ふーん。奇遇ね」
って、呟いたの。
「……えっ? お姉ちゃん、どうかした?」
わたしがそう訊ねると、
「ううん。なんでもないわ」
って首を振って、ごまかすようにして笑った。
その日は、だから久し振りに、姉妹二人で仲良く下校したの。
だけどそれが、今から考えると、わたしたちを悩ませることになる事件の始まりだったの……。
お姉ちゃんはすぐに教室にやって来た。それで、わたしから事情を聞くと、
「へえー。珍しいこともあるもんね。こなたとみゆきが二人で買い物ねー」
と、あっさりした反応。うん、そんなに気にすることじゃないよね。
でも、そのあとで少し首を傾げて、
「……ふーん。奇遇ね」
って、呟いたの。
「……えっ? お姉ちゃん、どうかした?」
わたしがそう訊ねると、
「ううん。なんでもないわ」
って首を振って、ごまかすようにして笑った。
その日は、だから久し振りに、姉妹二人で仲良く下校したの。
だけどそれが、今から考えると、わたしたちを悩ませることになる事件の始まりだったの……。
その次の日。
「こなちゃん。帰ろう?」
わたしが声をかけると、またしても、こなちゃんは首を振った。
「ごっめーん、つかさー。今日もわたし、みゆきさんと一緒に帰る約束をしてるんだよねー。悪いケド、かがみと二人で帰ってくんないかなー?」
昨日と同じように少し意地悪な笑みを浮かべて、こなちゃんはそう言ったの。
ええっ、またぁ?
なんだか驚いてしまって、わたしは言葉を出せずにコクリと頷いただけだった。
みゆきさんを見ると、こちらも昨日みたいに、にっこりとした笑顔。
でも、心なしか、なんだかいつもと笑顔が違うような……。
「――では、かがみさんによろしく言っておいて下さいね」
みゆきさんに言われて、わたしは愛想笑いで返事をした。
二日つづけて一緒に帰っちゃうなんて、なんだか変だなぁ…って思いながら。
「こなちゃん。帰ろう?」
わたしが声をかけると、またしても、こなちゃんは首を振った。
「ごっめーん、つかさー。今日もわたし、みゆきさんと一緒に帰る約束をしてるんだよねー。悪いケド、かがみと二人で帰ってくんないかなー?」
昨日と同じように少し意地悪な笑みを浮かべて、こなちゃんはそう言ったの。
ええっ、またぁ?
なんだか驚いてしまって、わたしは言葉を出せずにコクリと頷いただけだった。
みゆきさんを見ると、こちらも昨日みたいに、にっこりとした笑顔。
でも、心なしか、なんだかいつもと笑顔が違うような……。
「――では、かがみさんによろしく言っておいて下さいね」
みゆきさんに言われて、わたしは愛想笑いで返事をした。
二日つづけて一緒に帰っちゃうなんて、なんだか変だなぁ…って思いながら。
教室で待っていると、すぐにお姉ちゃんがやって来た。
「あれー? こなたは?」
開口一番、そう訊いてくる。わたしはあいまいに笑って答える。
「えーとね、今日もみゆきさんと一緒に帰るって言ってたよ」
「……そう?」
お姉ちゃんは不思議そうに顔をしかめた。やっぱりそうだよね。二人とも、なんか変だよね?
教室を出て、肩を並べて廊下を歩く。お姉ちゃんは眉をひそめたまま。
「……なんかおかしいわね。みさおとあやのも、二人で帰るって言って、放課後になるとサッサと帰っちゃったのよ。――実は、昨日もそうだったの。偶然にしては、タイミング良すぎよね」
腕を組んで、お姉ちゃんは唸った。
うーん。でも、そんなに気にすることなのかなぁ……。
最初は戸惑ったけど、お姉ちゃんが真剣になってる姿を見ると、なんだか冷静になってしまう。
……わかんないや。
「あれー? こなたは?」
開口一番、そう訊いてくる。わたしはあいまいに笑って答える。
「えーとね、今日もみゆきさんと一緒に帰るって言ってたよ」
「……そう?」
お姉ちゃんは不思議そうに顔をしかめた。やっぱりそうだよね。二人とも、なんか変だよね?
教室を出て、肩を並べて廊下を歩く。お姉ちゃんは眉をひそめたまま。
「……なんかおかしいわね。みさおとあやのも、二人で帰るって言って、放課後になるとサッサと帰っちゃったのよ。――実は、昨日もそうだったの。偶然にしては、タイミング良すぎよね」
腕を組んで、お姉ちゃんは唸った。
うーん。でも、そんなに気にすることなのかなぁ……。
最初は戸惑ったけど、お姉ちゃんが真剣になってる姿を見ると、なんだか冷静になってしまう。
……わかんないや。
そのあと、下駄箱の前で、わたしたちは偶然ゆたかちゃんとみなみちゃんが立ち話をしてるところに行き会ったの。
思わぬ偶然が嬉しくて、手を振って笑って挨拶をする。
「あっ、つ、つかささんと、かがみさん……ええっと、い、いま帰りなんですか?」
なんだかひどく慌てながら、ゆたかちゃんが挨拶を返してくれた。
なんだろう。表情には出ないけど、みなみちゃんも少し慌ててるように見える。
お姉ちゃんが気さくに二人に話しかけた。
「どうしたの? 二人ともこんな場所で。これから帰るんだったら、一緒に帰らない?」
かがみお姉ちゃんは、二人にそう声をかけたの。
でも……。
「あっ、あのっ。今から、みなみちゃんと一緒に寄りたいところがあるので……ご、ごめんなさいっ」
顔を真っ赤にしながら、ゆたかちゃんは深々と頭を下げた。その姿はとてもほほえましかったけど、わたしの心には釈然としないものが残ったの。
だって、変だよね?
「――もしかして、わたしたち、避けられてる?」
ゆたかちゃんたちが去ってしまってから、お姉ちゃんがポツンと呟いた。
わたしも、実は少しだけそう感じていた。
みんな、とつぜんよそよそしくなってしまった気がする。
思わぬ偶然が嬉しくて、手を振って笑って挨拶をする。
「あっ、つ、つかささんと、かがみさん……ええっと、い、いま帰りなんですか?」
なんだかひどく慌てながら、ゆたかちゃんが挨拶を返してくれた。
なんだろう。表情には出ないけど、みなみちゃんも少し慌ててるように見える。
お姉ちゃんが気さくに二人に話しかけた。
「どうしたの? 二人ともこんな場所で。これから帰るんだったら、一緒に帰らない?」
かがみお姉ちゃんは、二人にそう声をかけたの。
でも……。
「あっ、あのっ。今から、みなみちゃんと一緒に寄りたいところがあるので……ご、ごめんなさいっ」
顔を真っ赤にしながら、ゆたかちゃんは深々と頭を下げた。その姿はとてもほほえましかったけど、わたしの心には釈然としないものが残ったの。
だって、変だよね?
「――もしかして、わたしたち、避けられてる?」
ゆたかちゃんたちが去ってしまってから、お姉ちゃんがポツンと呟いた。
わたしも、実は少しだけそう感じていた。
みんな、とつぜんよそよそしくなってしまった気がする。
「これって、いじめなのかな?」
不安になって、訊いてみた。
「……わかんない。でも、みんな感じ悪いわね。仲間はずれにするくらいなら、正面から堂々と文句を言ってくればいいのに」
お姉ちゃんはそう言ったけれど、かすかに肩が震えていた。わたしの前だからって、強がってるのかな。わたしも、ちょっとだけ怖い。
わたしたち、仲間はずれにされちゃってるのかな……。
その日は二人とも、いつもよりも無口で、話も弾まないまま家まで帰ったの。
不安になって、訊いてみた。
「……わかんない。でも、みんな感じ悪いわね。仲間はずれにするくらいなら、正面から堂々と文句を言ってくればいいのに」
お姉ちゃんはそう言ったけれど、かすかに肩が震えていた。わたしの前だからって、強がってるのかな。わたしも、ちょっとだけ怖い。
わたしたち、仲間はずれにされちゃってるのかな……。
その日は二人とも、いつもよりも無口で、話も弾まないまま家まで帰ったの。
その次の日の朝。
こなちゃんはとうとう、登校のときにもわたしたちを避けた。
早朝に、こなちゃんから電話があって、
「ごめーん。用事があって、今日は一緒に登校できないや。悪いんだけどさー、かがみと二人で行ってくんないかなー?」
って言ってきたの。わたしは、目の前がまっくらになりそうだった。
ひどい。
今まであんなに仲が良かったのに、とつぜん、みんなで避け始めるなんて……。
涙目になってお姉ちゃんにそう話すと、くしゃくしゃと髪をなでてくれた。
はぁ…。学校に行くのが憂鬱だよ。
かがみお姉ちゃん。わたしだけは、なにがあっても裏切ったりしないからね。絶対だよ。
それでもその日、わたしたちはいつもみたいにお昼ご飯を一緒に食べたのだけど、あまり会話は弾まなかった。こなちゃんもみゆきさんも、わたしとお姉ちゃんに対して、どこか対応がぎこちなかった。
うぅ……。もう、一体なんなの?
こなちゃんはとうとう、登校のときにもわたしたちを避けた。
早朝に、こなちゃんから電話があって、
「ごめーん。用事があって、今日は一緒に登校できないや。悪いんだけどさー、かがみと二人で行ってくんないかなー?」
って言ってきたの。わたしは、目の前がまっくらになりそうだった。
ひどい。
今まであんなに仲が良かったのに、とつぜん、みんなで避け始めるなんて……。
涙目になってお姉ちゃんにそう話すと、くしゃくしゃと髪をなでてくれた。
はぁ…。学校に行くのが憂鬱だよ。
かがみお姉ちゃん。わたしだけは、なにがあっても裏切ったりしないからね。絶対だよ。
それでもその日、わたしたちはいつもみたいにお昼ご飯を一緒に食べたのだけど、あまり会話は弾まなかった。こなちゃんもみゆきさんも、わたしとお姉ちゃんに対して、どこか対応がぎこちなかった。
うぅ……。もう、一体なんなの?
そして、その日の放課後。
こなちゃんたちは、やっぱりわたしたちを避けるようにして、そそくさと下校してしまった。
お姉ちゃんが言うには、みさおさんたちも、そうだったらしい。
もう、誰も信じる気になれないよ……。
「いつまでも、そんなの気にしてても、しょうがないわ。さ、帰ろ。つかさ」
こんなときでも、お姉ちゃんは落ち込んだりしなかった。
やっぱり、お姉ちゃんはすごいなぁ。
二人寄り添うようにして、廊下を歩いて階段を下りる。
そして、下駄箱を開けたときだった。
ひらりと、中からメモが舞い落ちたの。
こなちゃんたちは、やっぱりわたしたちを避けるようにして、そそくさと下校してしまった。
お姉ちゃんが言うには、みさおさんたちも、そうだったらしい。
もう、誰も信じる気になれないよ……。
「いつまでも、そんなの気にしてても、しょうがないわ。さ、帰ろ。つかさ」
こんなときでも、お姉ちゃんは落ち込んだりしなかった。
やっぱり、お姉ちゃんはすごいなぁ。
二人寄り添うようにして、廊下を歩いて階段を下りる。
そして、下駄箱を開けたときだった。
ひらりと、中からメモが舞い落ちたの。
『本日五時、みゆき邸にて待つ。かがみと二人で来られたし。――こなた』
メモには、そんな風に書いてあった。
こ、これって……。
「――つかさの下駄箱にも入ってたか」
振り向くと、いつの間にいたのか、お姉ちゃんがすぐ後ろに立っていた。
「は、果たし状、なのかな?」
恐る恐る、わたしは言った。
もしかして、わたしたちは喧嘩を売られているのかな。
行ったら、そこにはみんなが待ち受けていて、わたしたちはリンチを受けてしまったりして……。
そんなに、みんなを怒らせるようなこと、しちゃったのかな……。
それは一体、いつのどんな出来事だったんだろう?
こ、これって……。
「――つかさの下駄箱にも入ってたか」
振り向くと、いつの間にいたのか、お姉ちゃんがすぐ後ろに立っていた。
「は、果たし状、なのかな?」
恐る恐る、わたしは言った。
もしかして、わたしたちは喧嘩を売られているのかな。
行ったら、そこにはみんなが待ち受けていて、わたしたちはリンチを受けてしまったりして……。
そんなに、みんなを怒らせるようなこと、しちゃったのかな……。
それは一体、いつのどんな出来事だったんだろう?
お姉ちゃんは、わなわなと拳を握り締める。
「いいわ。やってやろうじゃない。喧嘩上等よ。こなたもみゆきも、みんなまとめて殴り飛ばしてやるわ」
お姉ちゃんがやる気だ。……わたしも、微力ながら応援するよ。
それにしても、まさか、こなちゃんたちと喧嘩することになるなんて。
人生って、なにがあるのかわからないよ。
「いいわ。やってやろうじゃない。喧嘩上等よ。こなたもみゆきも、みんなまとめて殴り飛ばしてやるわ」
お姉ちゃんがやる気だ。……わたしも、微力ながら応援するよ。
それにしても、まさか、こなちゃんたちと喧嘩することになるなんて。
人生って、なにがあるのかわからないよ。
気合を入れるためのハチマキを額に巻いて、わたしとお姉ちゃんは五時ぴったりにみゆきさんの広い屋敷を訪れた。
握った手の中がじんわりと汗ばむ。
あぁ、緊張する。ケガしたりしたらどうしよう。
意を決したように、お姉ちゃんが玄関のチャイムを押す。すぐに来客用のインターフォンが音を立てた。
「はーい。どちらさまですか?」
この声は聞いたことがある。確かみゆきさんのお母さんだ。
「あの、わたしたち、みゆきさんに呼び出されて来たんですけど」
強い口調でお姉ちゃんが答えた。
「あ、はいはい。みゆきから聞いているわよ。あがって?」
そう言われて、わたしたちは門をくぐり、玄関に侵入して、廊下を歩いた。
こなちゃんたちは、どこだろう?
たぶん、みゆきさんの部屋にいるんだと思う。
わたしたちは少し歩いて、そのドアの前に立った。
「つかさ、準備はいい?」
お姉ちゃんに訊かれて、わたしは深く頷いた。
柊つかさ、戦闘準備は万端です。……ちょっと怖いけど。
「……いくわよ!」
そして、お姉ちゃんは勢いよく部屋のドアを開けた。
握った手の中がじんわりと汗ばむ。
あぁ、緊張する。ケガしたりしたらどうしよう。
意を決したように、お姉ちゃんが玄関のチャイムを押す。すぐに来客用のインターフォンが音を立てた。
「はーい。どちらさまですか?」
この声は聞いたことがある。確かみゆきさんのお母さんだ。
「あの、わたしたち、みゆきさんに呼び出されて来たんですけど」
強い口調でお姉ちゃんが答えた。
「あ、はいはい。みゆきから聞いているわよ。あがって?」
そう言われて、わたしたちは門をくぐり、玄関に侵入して、廊下を歩いた。
こなちゃんたちは、どこだろう?
たぶん、みゆきさんの部屋にいるんだと思う。
わたしたちは少し歩いて、そのドアの前に立った。
「つかさ、準備はいい?」
お姉ちゃんに訊かれて、わたしは深く頷いた。
柊つかさ、戦闘準備は万端です。……ちょっと怖いけど。
「……いくわよ!」
そして、お姉ちゃんは勢いよく部屋のドアを開けた。
パァン。パパン、パン!
ひっ!
ドアを開けると、わたしたちを出迎えたのは、そんな感じの破裂音だった。
びっくりして、わたしは思わず目を閉じる。
け、拳銃っ?
そんなぁ。武器まで用意してるなんて反則だよ。
頭を抱えて、わたしはうずくまってしまう。
…………?
でも、それきり音は止んでしまったの。
不思議に思って、そろそろと瞼を開けると――。
ひっ!
ドアを開けると、わたしたちを出迎えたのは、そんな感じの破裂音だった。
びっくりして、わたしは思わず目を閉じる。
け、拳銃っ?
そんなぁ。武器まで用意してるなんて反則だよ。
頭を抱えて、わたしはうずくまってしまう。
…………?
でも、それきり音は止んでしまったの。
不思議に思って、そろそろと瞼を開けると――。
壁全体にいたるまで、きれいに飾り付けられた、みゆきさんの部屋が目に飛び込んできた。
そして、部屋の中には着飾ったみんながいた。
こなちゃん、みゆきさん、みさおさん、あやのさん、ゆたかちゃん、みなみさん……。
手に手に持っているのは、小さな三角型のクラッカー。さっき鳴ったのは、これだったんだ。
隣りを見ると、お姉ちゃんも、すごくびっくりしていた。
「あ、あんたたち! 一体なんなのよ、これ?」
そう言って、どうしたらいいかわからない様子で、オロオロとしている。
わたしにも、なにがなんだか、さっぱり。
「あっれー? まだ気づかないかなー?」
こなちゃんが、やっぱり意地悪い笑みを浮かべて、からかうように言った。
そして、こなちゃんはわたしをビシッと指差して、
「つかさ、さて問題です。今日は一体なんの日でしょう?」
えっ? ええっ?
「わ、わかんないよっ、そんなの」
なんだか耳まで赤くしながら、わたしは首を振った。
今日? 今日、七月七日は……。
「あっ!」
隣りで、お姉ちゃんが雷に打たれたように体を硬直させた。
「な、なに? お姉ちゃん、どうかしたの? 今日は、なんの日だっけ?」
お姉ちゃんは、呆れたように肩をすくめる。
「……うかつだったわ。わたしとしたことが」
なんだかすべてを理解したみたい。わたしはまだ、事態がよく呑み込めていない。
お姉ちゃんはポンとわたしの肩に手を置くと、溜め息を吐きながら言った。
「――つかさ。今日は、わたしたちの誕生日よ」
そして、部屋の中には着飾ったみんながいた。
こなちゃん、みゆきさん、みさおさん、あやのさん、ゆたかちゃん、みなみさん……。
手に手に持っているのは、小さな三角型のクラッカー。さっき鳴ったのは、これだったんだ。
隣りを見ると、お姉ちゃんも、すごくびっくりしていた。
「あ、あんたたち! 一体なんなのよ、これ?」
そう言って、どうしたらいいかわからない様子で、オロオロとしている。
わたしにも、なにがなんだか、さっぱり。
「あっれー? まだ気づかないかなー?」
こなちゃんが、やっぱり意地悪い笑みを浮かべて、からかうように言った。
そして、こなちゃんはわたしをビシッと指差して、
「つかさ、さて問題です。今日は一体なんの日でしょう?」
えっ? ええっ?
「わ、わかんないよっ、そんなの」
なんだか耳まで赤くしながら、わたしは首を振った。
今日? 今日、七月七日は……。
「あっ!」
隣りで、お姉ちゃんが雷に打たれたように体を硬直させた。
「な、なに? お姉ちゃん、どうかしたの? 今日は、なんの日だっけ?」
お姉ちゃんは、呆れたように肩をすくめる。
「……うかつだったわ。わたしとしたことが」
なんだかすべてを理解したみたい。わたしはまだ、事態がよく呑み込めていない。
お姉ちゃんはポンとわたしの肩に手を置くと、溜め息を吐きながら言った。
「――つかさ。今日は、わたしたちの誕生日よ」
……。
……。
…………。
え、えええっ!?
思わず目が点になってしまった。
そうだ。今日、七月七日は、わたしたちが産まれた日だったっけ。
こなちゃんたちの不審な行動が気になってて、考える余裕もなかったよ。
「え? それじゃあ……」
わたしは、こなちゃんを見る。
「ひょっとして、これって、わたしたちの誕生会なの?」
「そうだヨ?」
にやにやと、こなちゃんは頷いた。
「つかさー、かがみー、それにしても、なんで二人してハチマキなんて締めてるのさ?」
「ばっ、ばかっ! これは、なんでもない!」
顔をまっかにしながら、お姉ちゃんがごまかした。
わたしも、慌ててハチマキを取る。
うわぁ。なんて恥ずかしい勘違いをしちゃってたんだろ。
「じゃあ、最近ずっとわたしたちを避けて帰ったりしてたのは……」
「プレゼントを買いに行ったり、この部屋の飾り付けをしてたからに決まってるじゃん。あ、みんなでケーキを焼いたりもしたケドさー」
「そ、そうだったの?」
「いやー最後は間に合わなくてさ。今朝も早起きして、みんなでここの飾り付けをしてたんダヨ?」
ああ。それで一緒に登校できなかったんだ。
なんだか、納得。
そして、すごく恥ずかしい。
それから、こなちゃんは後ろを振り返って、テーブルに乗っている大きなケーキを指差した。
「あれ、苦労してみんなで焼いたんだヨー? まぁ、ほとんど、あやのさんが作ってくれたんだケドね。さあさあ、バースデーキャンドルに火を点すから、二人ともテーブルの前に立ってよ。――みゆきさーん。電気消してー?」
はーい、という声とともに、みゆきさんが部屋を薄暗くした。
わたしたちは一緒に歩いて、二人でバースデーケーキの前に立つ。
キャンドルへ次々に火が点されていく。
みんなが、わたしたちを囲むように立って、ハッピーバースデーを歌い始めた。
歌が終わるころ、わたしたちは、暗がりに浮かぶ火を吹き消すんだ。
暗がりの中で、お姉ちゃんが、ぎゅっとわたしの手を握った。
目の前のキャンドルの火は、滲んでしまってよく見えない。
うぅ、みんな、本当にありがとう。疑っちゃってごめんね。
そして、歌が終わる。
上手に息を合わせ、わたしたちは二人、薄い闇の中に浮かんだ蝋燭の火を吹き消していく。
それに、みんなの揃った声が重なる。
「――ハッピーバースデー!」
……。
…………。
え、えええっ!?
思わず目が点になってしまった。
そうだ。今日、七月七日は、わたしたちが産まれた日だったっけ。
こなちゃんたちの不審な行動が気になってて、考える余裕もなかったよ。
「え? それじゃあ……」
わたしは、こなちゃんを見る。
「ひょっとして、これって、わたしたちの誕生会なの?」
「そうだヨ?」
にやにやと、こなちゃんは頷いた。
「つかさー、かがみー、それにしても、なんで二人してハチマキなんて締めてるのさ?」
「ばっ、ばかっ! これは、なんでもない!」
顔をまっかにしながら、お姉ちゃんがごまかした。
わたしも、慌ててハチマキを取る。
うわぁ。なんて恥ずかしい勘違いをしちゃってたんだろ。
「じゃあ、最近ずっとわたしたちを避けて帰ったりしてたのは……」
「プレゼントを買いに行ったり、この部屋の飾り付けをしてたからに決まってるじゃん。あ、みんなでケーキを焼いたりもしたケドさー」
「そ、そうだったの?」
「いやー最後は間に合わなくてさ。今朝も早起きして、みんなでここの飾り付けをしてたんダヨ?」
ああ。それで一緒に登校できなかったんだ。
なんだか、納得。
そして、すごく恥ずかしい。
それから、こなちゃんは後ろを振り返って、テーブルに乗っている大きなケーキを指差した。
「あれ、苦労してみんなで焼いたんだヨー? まぁ、ほとんど、あやのさんが作ってくれたんだケドね。さあさあ、バースデーキャンドルに火を点すから、二人ともテーブルの前に立ってよ。――みゆきさーん。電気消してー?」
はーい、という声とともに、みゆきさんが部屋を薄暗くした。
わたしたちは一緒に歩いて、二人でバースデーケーキの前に立つ。
キャンドルへ次々に火が点されていく。
みんなが、わたしたちを囲むように立って、ハッピーバースデーを歌い始めた。
歌が終わるころ、わたしたちは、暗がりに浮かぶ火を吹き消すんだ。
暗がりの中で、お姉ちゃんが、ぎゅっとわたしの手を握った。
目の前のキャンドルの火は、滲んでしまってよく見えない。
うぅ、みんな、本当にありがとう。疑っちゃってごめんね。
そして、歌が終わる。
上手に息を合わせ、わたしたちは二人、薄い闇の中に浮かんだ蝋燭の火を吹き消していく。
それに、みんなの揃った声が重なる。
「――ハッピーバースデー!」
END
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- 作者様、呼び名の修正をお願いいたします! -- 名無しさん (2011-05-03 22:03:17)
- 無粋な事言って悪いけれど、高校生の女の子が自分の誕生日を忘れていると言う点がちょっと無理があるかな。
-- 名無しさん (2008-10-05 21:03:03) - 呼び方で大分減点です;;
内容は神だから別にいいですけど^^
でも、やっぱ、かがみはみさおとあやのを
苗字で呼ぶのがなんか合ってますね^^ -- taihoo (2008-10-05 14:40:48) - 王道だがそれで良いやww
てか興ざめは言いすぎかと -- 名無しさん (2008-10-02 07:37:06) - つかさかぁいいw -- 名無しさん (2008-10-02 00:22:03)
- 既に指摘されているけど、
みんなの呼び方が一部違うのが気になって興醒め。
お話はいいのにもったいない。 -- 名無しさん (2008-02-07 15:15:58) - 良い話GJです!
細かいことですが
つかさ視点なら「みゆきさん」ではなく「ゆきちゃん」
となるのかな -- 名無しさん (2007-11-27 10:58:16) - イイハナシダナー -- 名無しさん (2007-11-26 20:57:17)