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柊かがみの隠し事

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だれでも歓迎! 編集
いつまでも続くと信じていた。……いや、信じたかった。
しかし、それはかなわぬ願い。それはわかっていたはずだ。でも……この関係を、壊したくはない。
関係を壊す原因が、例え自分だったとしても。


    『柊かがみの隠し事』


「っは――」
昼の休み時間、女子トイレにて。私……柊かがみは自分を慰めていた。
こんな所で何をやっているんだろう、という羞恥と、早く楽になりたい、という劣情が私の快感を無駄に押し上げていく。
「見つかったら、まずいじゃないの……っ」
ニ重の意味を込めて、自分に向かって呟いた。……一つは言わずもがな。そして、もう一つは……

         ***   ***

時間は遡り、休み時間に入る直前。
「起立、礼」
いつもの号令と共に、授業が終わる。さて、今日もまたあいつらのクラスに行くとするか、と席を立ち、弁当箱を持って隣のクラスに。
「おっす」
「おー、かがみー。早く座りたまへー」
私を目ざとく見つけたのは泉こなた。私の妹のつかさとの縁から始まった何とも言えない友達……というか、腐れ縁だ。
「って、やけに汗かいてるわね?何?体育でもあったの?」
「うん、ちょうど昼休み前に―……もう、私へとへとだよ……」
私の言葉に答えてくれたのは妹のつかさ。私が言うのもなんだが、最愛の妹だ。
「泉さんもつかささんも、がんばっていましたから。他の皆さんもお疲れのご様子で」
と、優しい物言いの彼女は高良みゆき。……才色兼備という言葉を地で行くようなお嬢様だ。
「あうー、暑くて死にそうだよー……かがみ分を補給させてー」
と、いきなりこなたが抱きついてきた。……ええい、暑い苦しいうっとおしい!
「こーらー!暑いからひっつくな!それに何がかがみ分だ!」
「えー?かがみ分が不足すると主に『ツンデレに対する禁断症状』とか『素直じゃない子渇望病』とかが発症しちゃうんだよ」
「何をわけのわからん事を……」
ジト目でこなたを睨もうとした瞬間。女の子の汗の臭いが私の鼻に入ってきた。

その瞬間、私の『体の一部』が疼き出してしまった。

「……っ」
「どうしたの、かがみ?」
「お姉ちゃん?」
急に顔をしかめる私に気付いたのか、こなたとつかさが私の顔をのぞき込んで来た。
「……大丈夫、『いつものやつ』だから。こなた、悪いけどトイレ行ってくるわ」
「あっ……」
私の言葉に納得し、『こなちゃん、ちょっとお姉ちゃんから離れてあげてね』とつかさがこなたを私から引き離した。
「つかさ、かがみはどうしたの?」
「……ごめん。言えないよ」
そんな会話を聞きながら、私は教室を出た。……体の前方を隠すように、前屈みになって。

         ***   ***

そして、時間は現在に至る。……やれやれ、自分の体にも困ったものだ。
「女には慣れてる筈なんだけどな……」
まあしかし、慣れてるとは言っても身内のみ。やはり、赤の他人には反応してしまうのだろう。
私は、『自分の男根を扱きながら』そんな事を考えていた。……そう、男根。

私は、性別を偽って生活をしている。……本来の性は男性なのだ。

二卵性双生児は、胚が元々二つあってそこから成長する。……だから、男女の双子がいても不思議ではない。
柊家はどうも女が生まれやすいようで、私が生まれた時はお父さんは手放しに喜んでいたが、しかし同時に複雑でもあったそうだ。
何しろ、柊家待望の長男があまりにも母親に似すぎているのだ。……それこそ、こなたとそのお母さんのように。
さらにうちの両親は何を考えたのか、女に間違われるくらいなら、と私を女として育ててしまったのだ。
……まあ、どこかの家庭のように『男の印』を潰してまで女に育てるなんて蛮行をしなかったのは幸いだが。
そして、私は悩んだ。男なのに女として育てられて普通に障害無く成長するわけがない。色々と壁にも当たったりした。
今ではもう吹っ切れた、というか達観したというか。……慣れとは恐ろしいものだ。
「……っ、っくぅ、うあっ……」
噛み潰した声を漏らしながら、ひたすら欲望を吐き出させるために扱きつづける。別に、この行為自体は嫌いではない。
しかし、その『欲望を吐き出す』対象に問題がありまくるわけだ。
「こ、こな、た、ぁ……」
あろう事か、友人の一人。いつもベタベタとくっ付いて来るこなたに、だ。
あまりにも無防備な姿に、何度襲い掛かってしまいそうになった事か。完全に私を女だと思っている(それは仕方ないが)らしく、容赦が無い。
「ふ、っ……ふぅっ……う、あ……っ!こな、こなたぁ……っ!」
ようやく、私の男根は己の欲望を吐き出して力を弱めた。……安堵のため息と共に、それをしまって服装を整える。
「……馬っ鹿じゃないの、私」
自慰の後に襲ってくる強烈な罪悪感に、思わずため息をつきながらひとりごちた。……一人になっても体に染み付いた女言葉が抜けない。
時折素の自分が言葉として出てしまう事があったが、そういう性格だと納得して貰えたのが幸いだ。……精液という名の欲望をふき取ったトイレットペーパーを流し、トイレを後にした。

         ***   ***

放課後、こなたとの(半ば強引な)付き合いでゲーマーズに寄る事に。
「いやー、ありがとねかがみん。私の買い物に付き合ってくれて」
「……あんたのポイントのためじゃないわよ」
ホクホク顔でポイントカードを眺めるこなたと、呆れ半分でそんなこなたを見る私。あははー、とつかさが後ろで苦笑いしている。
「これであの景品に一歩近づいたヨ、うふ、うふふふふふ……」
不気味だ。……そんなに嬉しいのか、他人のポイント横取って?
「本当に、あんたの執念には頭が上がらないわ……。というか再三言ってるけどその闘志を勉学にも回せよ」
「えー?どうせ高校の勉強なんて社会に出ても使う事ないじゃん」
「そういう奴が日本をダメにしていくのよ……」
相変わらずのダメ発言に思わずため息をついてしまった。つかさも『どんだけぇ……』と呟く。
「あ、そうだ」
と、突然こなたが手を叩く。
「お礼ってわけじゃないけど、うちでお茶でも飲まない?珍しくお菓子作ってみたんだよね。だからその毒……味見をかがみに頼もうかなって」
「ちょっと待て!今『毒見』って言いかけただろ!?」
いきなり聞こえた不穏当な言葉に全力で突っ込むが、『あはっ』と笑って返されてしまった。
……心配ではあるが、家事の得意なこなたの事だ。変な凡ミスもせずに悪くてもまあまあな味にはなっているだろう。
そう思い、『まずかったら酷いわよ』と承諾してしまった。……これが負の連鎖の始まりとも知らずに。

――こなたの作ったお菓子は、それほど悪い味ではなかった。

「わぁ。こなちゃん、初めてにしては上出来だよ」
こなたの家に着き、お茶請けとして出されたお菓子……こなたの作ったお菓子はシンプルなバタークッキー。やはりと言うか、味は悪くない。それ所かつかさに褒められる位だ。
「ありがと、つかさ。つかさが褒めてくれるんなら私も安心だよ。……で、かがみ?」
「……はいはい、おいしいわよ。文句あるの?」
どうやら私にも褒めてもらいたかったらしく、期待の眼差しを向けてくるので仕方なく本心を口にしてやった。
「……えへぇ」
「何よ、その笑い……」
「もーぉう、かがみんはツンデレなんだからぁー」
こなたは某幼稚園児の声真似を使い、私に擦り寄ってきた。
「マジで似てるからやめぃ!」
その額にチョップをしてその場を切り抜ける。……さすがにこの場で私の『男の部分』がうずいたら大変な事になるじゃないか……
「あは、あはははは……」
「むー、かがみんのいけずー……いいもん、私いじけちゃうもん」
そう言いながらパソコンデスクに座り、おもむろにPCの電源を入れた。……いや待てコラ?あんたはすねるとPCに向かう癖でもあるのか?
「こら、客人置いて自分だけパソコンか?」
「いや、ちょっと更新見とかないといけない場所があったの思い出してね。お構いなくー」
「本当にフリーダムだな、あんたって奴は……」
「こなちゃん、それは使い方が違う気がするよ……?」
私とつかさの突っ込みにもめげず、こなたはブラウザを操作してあるサイトを表示する。
「……むう、新作ネタがもう来てるか」
『東方夜伽話』というページを見て、こなたは唸っていた。……なんとなく内容が気になってしまい、こなたの後ろからディスプレイを覗き込んでしまった。
「こなた、このホムペって何?」
「あー、この前かがみにやらせた同人のシューティングがあるじゃん?あれの二次創作を投稿する所だよ」
そう言われ、ああと納得した。……確かに、同人のSTGをやらされた事があった。名前は『東方何とか』だっけか。
でもあの時はやった後のこなたの『自称萌え談義』……やれパチュリーというキャラの外見が私になんとなく似てるだとか自分も向こうに行ってみたいとかの話の方が覚えているが。
「まあ、と言ってもここは成年向け……所謂エロパロの投稿所なんだけどネ」
「はぁ!?」
何でそんな物が……と固まってしまった。だって同人作品よ?ただの同人ソフトにエロパロなんて……
「東方シリーズは人気が高いんだよ?最近じゃあ『ニコ厨』って呼ばれる人達がこの作品の動画を見てにわかファンを演じるくらいだからね」
ここでこなたはため息をつき、『前にも言ったと思うけどさ、昔からのファンとしては結構複雑な心境なんだよね……』と暗い表情で呟く。
「そ、そうなんだ……」
「よくわかんないけど、がんばって……」
って、かがみ達に愚痴を言っても仕方ないよね、と無理に明るい表情を作るこなた。……その顔に、胸の奥が少し痛んだ。
その後にこなたの視線はディスプレイに戻り、投稿所をじっと見ていた。
「……あ、あの人がようやく新作投下した」
ふと漏らした言葉が私の耳に入り、ついその言葉について聞いてしまう。
「あの人って?」
「うん、たまにニッチ過ぎる作品を投下してる人。大抵が女装少年物なんだよね」
「え?ちょっと待ってよ。その、東方シリーズって男はいないんじゃ……」
「一応いる事はいるヨ。でも、この人の作品の場合は『もし女キャラが実は男だったら』っていう設定なんだ」
こなたの何気ない一言。……しかし、私にとっては心に針を刺される気分だった。
「へぇ……それって面白いの?」
「うん、割と。お尻の穴を虐められたりとか結構ハードな事もやってるし、そうかと思えば普通にやっちゃってるし」
「や、やってる……」
隠しているのかわからない発言に、つかさの顔が赤くなってしまった。
「新作は……ほう、サナレイか。こりゃまた無難な」
ニヤニヤと笑うこなたと一緒につい読んでしまった。……内容は、二人の巫女のうち片方が実は男で、その人が突然もう一人の巫女の所に無理矢理行く事になってしまう。
当然、男である事を隠さなければならない為に色々と苦悩するが……突然バレてしまった。それの口封じのために女の方の巫女を襲い……という話だ。
「うわ……」
顔が熱い。さすがに健全な少年(一応男だから)には少々刺激が強すぎる。……いかん、『男の部分』がうずき始めた。
つかさも話の内容が気になったのか、こちらに来てじっとディスプレイを見て……?
「って、ちょっとつかさ!?お茶こぼしてるお茶こぼしてる!」
ティーカップを持ったままこちらに来たらしく、傾けられたカップが手に握られていた。その中身は……私の服にかかってしまっている。
……最悪だ。まあ、白けたせいでうずきが治まったのは助かったが。
「ご、ごめんねお姉ちゃん!」
「あーあ、シミにならなきゃいいんだけど……」
普段着とかなら何とかなるだろうけど、今着ているのは制服だ。さすがにまずい。……そして、さらに最悪の事態が降りかかる。
「かがみ、どうせならうちで洗っちゃえば?乾燥機付だからすぐ乾くし」
「え、だ、大丈夫だって!後で洗っても落ちるでしょ?」
「そ、そうだよ。別に今洗う事もないだろうし……」
こなたの言葉に私達は慌てて断る。が、こなたも引かずに『いいっていいって。女同士なんだから恥ずかしがる事ないじゃん』と迫ってくる。
……今ほど私が性別を偽っている事を後悔した瞬間はない。ああ、善意が痛い。善意が痛いよ……

         ***   ***

――結局、折れてしまった。

こなたの家の脱衣所にて、私は服を脱いでいた。……幸い、被害に遭ったのはスカートのみ。後は、まあ平気だった。
「上だけのほうが良かったかもしれない……」
スカートを洗濯機の中に入れ、ついでにこなたに頼まれた洗濯物を入れておく……と。
「あ、これ……」
二等辺三角形の小さな布。……我ながらこういう所だけは目ざとい。
それはやめろ、という冷静な部分の突っ込みを無視して、小さな布……おそらく、こなたのショーツに鼻を近づけた。

幸福感と一緒に、罪悪感が三倍になってやってきました。

「……これが、こなたの匂い……」
何ともかぐわしい少女の香り。かすかに感じる女の匂いがさらに私を興奮……
「やめやめ!見つかったら何て言われるかわからないじゃないの!」
またもやうずき出した『男の部分』を叱り、名残惜しみながらこなたのショーツを洗濯機の中に入れた。
「……この愚か者め」
しかし、先ほどの行為によって完全に活性化してしまった男根はしばらく治まりそうにない。やはり、一回出さないとダメか……?
下着の膨らみと、その中にある物の事を考えてため息をついた。その瞬間、脱衣所の扉が開き……

「かがみー。ちょっときついけどこれ……」


……神様、あなたは私の事がそんなに嫌いなんですか?


脱衣所の扉を境にして、私とこなたが固まっている。……この構図、どこかで見たことが……
「か、かが……み?」
「何よ……」
ああ、そうだ。この構図、さっき見た作品のワンシーンだ。それも男だとバレた瞬間の。あれは脱衣所と浴室だけど、こっちは……

「……『何?男だったとバレた?逆に考えるんだ。『こなたを襲って黙らせよう』そう考えるんだ』」

「するかそんな事!っていうか自重しなさい、ジョー○ター卿!」
例の作中の幻聴を名前だけ変えて言い放ったこなたに盛大に突っ込みを入れた。……まったく、誤魔化したいんだかそうでないのか……
「えー?こ、こういう場合ってさ……私、襲われるよね?」
「……生憎、私にはまだ理性が残ってますから。むやみやたらに襲ったりしないわよ」
それに、冷静を装っているがこなたの声はかなり戸惑っている。……ネタ発言が軽く滑っていたのもそのせいだと思う。
廊下のほうから『どうしたんだ?』とおじさんの声がした。それにこなたは『なんでもないよー』と返す。
「……ま、と、とりあえず詳しく説明してくれるかナ?」
「あー、わかったわよ。部屋に戻ったらね……」

――私達の説明に対するこなたの反応は、『ふーん』だった。

「な、何よその反応……」
なんとも淡白な返事に、少量の安堵と多量の呆れが含まれた声を吐き出してしまった。
「だって、性別を偽って生活なんてゲームとかでよくあるシチュだし。オトボクとかスイレガとか」
「リアルにバーチャルの話を持ってくるな」
「むしろバーチャルでしかありえないよ?こんなリアル」
くう、まさかまともに返されるとは……。
「まあ、かがみが男の娘ってのもなんとなく納得できるし」
「するな。……いや、して欲しいけどどういう理由だ」
「だってかがみは性格からして男っぽいし。それにポニーテールにすると武士みたいに男前だし」
「武士は関係ないだろ、武士は」
ようやくカンの戻ったボケっぷりに呆れる一方で、『よかった、いつものこなただ』と安心してしまう私がいる。
「ねえ、こなちゃん……『男の娘』って、何?」
「かがみの事だよ」
また率直だなおい。つかさもつかさで『え、お姉ちゃんが男の娘?』と混乱している。
「ごめん、正確にはかがみみたいに『女の子として生活する男の子』の事だよ。……最近は『こんな可愛い子が女の子な訳ないだろ』っていう名文句もあるくらいだし」
「へぇ……お姉ちゃん以外にもそんな人っているんだ」
「大抵はフィクションだけどね。だってさっきの名文句のとおり、女の子より女の子してるんだよ?」
普通はそんな人いないって。とこちらをちらちら見ながらこなたが言う。……もしかしなくても喧嘩売ってるな?
「それに、前からなんとなく感づいてたよ?かがみは女の子じゃないかもって」
「……へ?」
「どういう事、こなちゃん?」
突然の爆弾発言に私達の目が点になってしまった。……感づいてた、だって?
「ほら、私ってよくお父さんにべたべたひっ付かれるじゃん。……だからね。なんて言うか、男の人の匂いを覚えてるんだ」
なるほど。確かに四六時中……というわけではなさそうだが、ベタベタくっつかれている訳だし、そういう事もありえる。
「それでね、かがみに抱き付いた時だけ嗅ぎ慣れた匂いがしてさ。……もしかして、かがみは女の子じゃないのかもって思ってたんだよ」
「だ、だったら何で私にいちいちくっついてくるの?……自分で言うのもなんだけどさ、気持ち悪くない?男が女の格好してるなんて」
ダメだ。この質問はダメだ。そう心で叫んでも、つい口に出してしまった。……男だとバレた瞬間から気になっていた事を。

……怖い。私という存在を否定される事が、想像しうる最悪の答えが返ってくる事が怖かった。

「まあ、ネ。最初は疑問に思ってたよ?でもさ……だんだん疑問に思わなくなってきたんだよね」

……『嫌々付き合っていた』とかの言葉が出ない事を必死に祈る。

「かがみといるようになってからなんか女の子したくなってきたし」

……それでも、これまでの状況を察するにある期待が浮かんでしまう。それは妄想にも等しい考え。

「さっきのハプニングでかがみが男だって確信した瞬間……なんとなくわかった気がするんだ」


――『こなた(私)は、私(かがみ)の事を好きになったんじゃないか?(なっちゃったんだって)』


「……え?」
今、とんでもなく都合のいい言葉が聞こえてきた気がする。
「だから、私はかがみの事を好きになっちゃったんだって……。今まで女を捨てたような生き方してたけどさ、かがみと会ってからはもっと女の子らしくしなきゃと思い始めてね。
 で、家事全般は出来るし、後は少女っぽい趣味の一つでも身につけようかなって。……それで、お菓子を作ったんだよ」
「な、何を基準にしてるんだ、何を……」
あのクッキーは私のために作ってくれたんだと知って、思わずどもってしまう。
「……つかさはお菓子作りうまいし、凄く可愛いし。せめてつかさに近づけたらって思ってた。だから、褒めてくれて嬉しかったよ」
「え、えへへ……」
慣れない感謝の言葉を言われ、つかさは顔を赤くしてうつむいてしまった。
「それとね、かがみが女の子とは違うのを疑問に思わなくなった時から、こう……お腹が変な感じなんだよね?かがみに抱きついて、かがみの匂いを嗅ぐ度に、こう……ムズムズ、とかそんな感じが」
下腹部をさすりながら『別にこの感覚が気持ち悪いとかそういうのはないんだけど……』とこなたが顔を赤くして呟く。
「無性に『もっと、もっとかがみが欲しい!』って思う時があってね……。我慢できない時もあって、一人で……」
この先は言葉になっていない。……先は予想できるが、よほど恥ずかしいのだろう。
「私だってそうよ。いつもこなたが抱きついて、その感触とか汗の匂いで私も我慢できなくなって……しちゃうのよ」
同じく、なんとも言えない告白をして私も顔を赤くした。……あー、こなたを直視できない。こなたも私を見れないようだ。
「……結局、似たもの同士だったんだね。お姉ちゃんもこなちゃんも」
「なっ……」
「あわわ……」
つかさの一言という予想外の不意打ちに、私とこなたは二人で動揺してしまった。……普段ならここでこなたも便乗するはずだが、よほど恥ずかしかったのだろう。
チラリとこなたの方を確認する。……赤面のまま俯いて指先を弄っていた。いつもとは違う『恋する乙女』なこなたに、私の心臓が高鳴った。
こういうのを『ギャップ萌え』と言うのだろうか。私の頭の中は『こなた可愛い』の一文で埋め尽くされてしまい、今にも抱きしめてしまいそうだ。

と、ここで誰かが咳払いをした。

とっさに我に返り、そちらの方に慌てて振り向けば、少し顔を赤くしたつかさが立っていた。
「お姉ちゃん、今日はこなちゃんの家に泊まっていけば?おじさんには私から説明するから」
「え、あ、うん……ごめん、つかさ。よろしく頼むわ」
「ご、ごめんね。なんかのけ者にしちゃって……」
あは、あは、あはははは……とこなたの乾いた笑いが部屋に響く。本当にごめんね、こんなダメな姉、というか兄で……

         ***   ***

つかさは一旦家に帰り、私の着替えとお風呂道具、それと明日の時間割通りに教科書の入った鞄を持ってきてくれた。……まさか、つかさにフォローされる日が来ようとは。
ずっと制服のままでいるのもアレだし、つかさには心から感謝している。……しかし、明日うちの家族に何と言えばいいのか……むしろ何と言われるか。
やってしまった事は仕方ない。非難だろうが赤飯だろうが堂々と受け止めてやるわよ!こうなったらもうやけくそだ。
……と、そんな感じで。どうやら今夜はこなたが作ったらしく、ちょっと豪華な夕食を食べさせてもらい、後はお風呂と就寝位しか大きなイベントは残っていない。
宿題がない事に安堵しつつ、こなたの部屋で座り込んでこれからの事を考えていた。
「……ごめんね、かがみ」
と、唐突にこなたの謝る声が。そちらを振り向くと、親に悪戯を叱られた子供のような顔をしたこなたが佇んでいた。
「何が?別に、あんたに謝られるような事はされた覚えがないんだけど……」
「今日のハプニングだよ。……アレ、実は私が仕掛けてたんだ」
ああ、あの『脱衣所でバッタリ出くわす』ってアレね。……いや、ちょっと待てぃ。
「あ、アレはあんたが仕掛けたの!?」
「うん。……とりあえず確信はあったんだけど、面と向かって『かがみんって、実は女装少年?』なんて聞きづらいからさ。本当はね。あの後に私が手が滑ったフリをしてかがみにお茶をかけるはずだったんだけど……」
しかし、つかさが私にかけてしまうという誤算が発生。でもそれは作戦に影響を及ぼさず、さらに自然に事を運べるようになったので内心喜んでいた、と。
「あの作品を見て思いついたんだ。ああいう確認の仕方が一番無難だったからさ」
「……確かに、言われてみれば不自然な所もあったような……」
あの時、下着は脱いでいない。それなのにこなたは『男だ』と言った。……こいつの思考回路だと、真っ先に『ふたなり』とかが出て来そうなものだが。
「えーっと、何か酷い事考えてない?」
「気のせいよ。……という事は、私はこなたの策にまんまと嵌められた、と」
「策とは酷いな。せめて『イベントフラグ立て』と言ってよね」
頬を膨らませてこなたがむくれる。……可愛い事は可愛いが、どうもついて行けん。
「……でも、私がかがみを好きなのは本当だよ」
「えっ」
ゆっくりとこなたが近づいてくる。自分の理性と格闘しているのだろうか、やけにギクシャクした足取りだ。
「こうやって、目の前にかがみがいるだけで抱き付きたくなっちゃう。体がかがみの事を欲しがっちゃうんだ……」
「こなた?」
「でも、ダメ。抱き付いたら私が壊れちゃう。もう、かがみの事しか考えられなくなっちゃう。……ここは自分の部屋だから。私を全部さらけ出せるから。ブレーキをかける必要が無いから」
……つまり、こちらに向かっているこなたが本能のこなたで、止まろうとしているこなたが今喋っている理性のこなた。
戦っている相手は本能の方か。……まあ当然だろう。私だって理性を相手にした事は無い。私は考える。止めるべきか、受け入れるべきか。制限時間はこなたが目の前に来るまで。

しかし、答えは決まっていた。

立ち上がってこなたの肩を掴み、『まだ、早いわよ』と答えた。その答えに、こなたの瞳が一瞬にして絶望に染まる。
「ああ違う!そういう意味じゃなくて!お風呂に入ってから、って事よ。……呼んでも来ない。なら確認しに来る。そこで理性のぶっ飛んじゃった私達のとんでもない現場に鉢合わせたら最悪でしょ」
だから、もう呼ばれないような状態になってから、ね。……私の言葉に、こなたの瞳に光が戻った。それを確認して最大のため息をつき、安堵する。
「お願いだからさ、そんな私の口から否定の言葉が出ただけで世界が破滅するみたいな顔をしないで。……私だって我慢の限界なんだから」
先程のこなたの顔を見て、本気で抱きしめてしまいそうになったのだ。そんな事をすれば、私だって箍が外れる。
「うん、そうだよね……ごめんね、かがみ」
「はっきり言わせて貰うけど……私はね、こなたの暗い顔だけは絶対に見たくないしそんな風にさせたくない。こなたにはずっと笑っていて欲しいんだから」
生意気な顔でもいい、こなたは笑顔が似合うから。
「……か、かがみがデレ期に入った……」
「黙んなさい!」
赤い顔で一歩引くこなたに、同じく赤い顔で怒鳴ってやる。……誰がツンデレよ。まったく……
「っていうか、こういう萌え要素って男がやるとダメじゃなかったの?」
「ツンデレは別だよ。実際に男でツンデレなキャラって一杯いるし。海原○山とかベ○ータとか」
「……もういい。突っ込む気力も失せたわ……」
呆れつつも安心してしまう。……こなたといると素の自分でいられるんだな。その事がようやくわかった気がした。




















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  • ベ○ータwww
    確かにツンデレか?ww -- 名無しさん (2008-09-14 22:11:31)

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