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IFから始まるStory 第1章 友情編

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だれでも歓迎! 編集
 桜の花もすっかり散ってしまい、今は毛虫の寝床を提供している葉桜と
気持ち良さそうに天空を泳ぐ鯉のぼりを見ていると
ゴールデンウィークが間近に迫っている事を嫌でも実感してしまう。

そして高校に入学して以来初めて、家に友達を招く事になったのも
ゴールデンウィークに入ってからで、
みゆきは遠いから無理でも、こなたは隣町だから
もっと早く呼べば良かったと思ってしまう。

「かがみ~、明日は鷹宮の駅前に集合で良いの?」
「うん。午前10時頃に駅前に来てくれれば迎えに行くから」
「明日が楽しみですね」
この前の騒動以来こなたとみゆきと私はかなり親しい仲となり
朝のHR前や昼休み、放課後といった学校に居る時間の殆んどを一緒に過ごしている。
こなたの第一印象は滅茶苦茶で何所かのネジが飛んだ奴かと思っていたが、
話すようになってからは、こなたに対する印象が大分変わった。

世間一般に言う『オタク』だけど、周りの空気を読む事を知っていて
からかう事をしても相手を本気で怒らすような真似はしない。
その絶妙な気遣いに、最近の私は心地良さを感じ始めているけど
本人の前では絶対に言えないセリフだわ。


その夜。
つかさに、明日こなた達が遊びに来る事を告げると『楽しみだね~』と、
予想外の返事が来た事で思わず面喰ってしまった。
いつもは人見知りする性格が原因で初対面の友達が家に来る事を嫌がるのだが、
今日は片鱗すら見せない。
「ずいぶん楽しそうね。どうしたのよ?」
「だって、お姉ちゃんが嬉しそうに友達の事を紹介するのって初めてだから、
どんな人なのか気になって」
『そんなに嬉しそうに紹介していたかな?』と思う反面、
『いつもは嬉しく無いと言いたいわけ?』と納得出来ない物言いだが
『つかさが喜んでくれれば何だって良いわ』と結論付けてしまう最近の私って
姉バカなのかしらと本気で悩む事が偶にある。



次の日の朝は、キャンパスに描いたような青空が視界一面に広がっていて
何処を見渡しても雲ひとつない見事な快晴。
つかさも寝坊する事無く一緒に鷹宮駅前でこなた達が来るのを待っていると、
改札の出口に見覚えのある一房のアホ毛が居るのに気がついた。

「こなたー、みゆきー」
私の呼ぶ声が聞こえたみたいで、普段着だと小学生にしか見えないこなたとは正反対に
OLと見間違えてしまうみゆきが仲良く私達に近寄って来るのを見て
親子みたいと思ってしまったのは此処だけの話。
「かがみ~、はよー」
「おはようございます。柊さん」
「おはよー」
挨拶を済ませたこなたとみゆきが、私の右隣をチラチラと見ていたのが不思議に思えたが、
つかさの紹介をしていないからだと気づいたのは若干の静寂の後だった。

「二人には言ってなかったわね。この子はつかさって言って、私の双子の妹なのよ」
「つかさです。よろしく」
「高良みゆきです。宜しくお願いします」
「私は泉こなた。かがみのピンチを救った救世主なのだよ」
先月の本屋で正拳突を見舞った事を話しているのか?
別にピンチでも何でも無かったのに勝手に現れて好き放題やっただけな気がするけど
でも悪気が有る訳じゃなさそうだから気にしない事にしている。
「すごいね~。お姉ちゃんのピンチを救ったなんて」
気にした方が良さそうかしら。
つかさが要らぬ誤解を招かない為にも、私の名誉の為にも。

駅前で軽い自己紹介を済ませた後、家に向かって歩いている途中
つかさは何やら真剣に考え事をしていたようだが
「え~と、泉さんと高良さんの事を何て呼んだ方が良いかな?」
蓋を開けてみれば気に掛けるのもバカバカしい内容だった。



「私の事はこなたで良いよ」
「私も呼び捨てで構いませんよ」
「でも初対面で呼び捨ては・・・そうだ!」
何かを閃いた時に見せる自信満々の顔で、つかさはこなた達を見ると
「こなちゃんと、ゆきちゃん。どうかな?」
満面の笑顔で二人にあだ名を付け、それを聞いた本人達は満更でもないみたいで、
しかも、つかさに応えるようにみゆきが私達の事を
「それでしたら私も、『かがみ』さん、『つかさ』さんと呼ばせて頂いても宜しいでしょうか?」
と言ってくれたのが何故か嬉しくて
「うん。良いよ、ゆきちゃん」
久しぶりにつかさのチャームポイントである笑顔を見ていると
この四人なら仲良くなれると確信した。

「あれ?」
駅前から暫く歩き、家の入口にある鳥居をくぐった所で
こなたが私達に何かを言いたそうな顔をしているのを見て
初めて我が家を訪れる友達が同じ態度を取る事が多いから大体の察しがついた。
「私達のお父さんは神社の神主なの。だから家も神社に併設されているから鳥居から入った方が近いのよ」
「神社の娘!という事は、かがみ達は巫女さん?」
「そ、そうだけど」
「ぬおー!」
家の前で急に叫び出したこなたの事を放っておけば良いのか、
又は救急車を呼んであげた方が良いのか、更には薬を用意した方が良いのかと
考えられる最善の方法を思い浮かべたが、結局は何も出来ずに見守っているだけだった。

「ごめんごめん。つい巫女さんに反応しちゃって」
今までそういう反応を示された事が無いので、
やはりこなたは私達とは何処か違うと再認識させられたが
「こなちゃんって面白いね~」
このつかさの一言が可笑しくて、こなたの奇行が些細な事に思えてしまった。



こなた達が帰った後、縁側で何かをするでも無く東の空に昇った月を眺めていたら
つかさが私の隣に腰を下してきた。

「今日は楽しかったね、お姉ちゃん」
「そうね」
「また、こなちゃん達と一緒に遊びたいね」
「出来るわよ。こなたとなら夏休みになれば毎日会えるし」
「そう・・・だね」
「つかさ?」

つかさを見てみると、眩い月明かりに照らされた
まるで絵画の様な一筋の涙が私の視線を釘付けにする。

「夏休みになれば・・・グス・・・いつも一緒に・・・グス・・・居られるよね」

無理やり話しを続けようとするつかさの肩に腕を廻し軽く抱き寄せると
意思を無くした人形のように私に体重を預けてきて
狂ったように泣き続けた。

それは堰止めていたダムが破堤するよりも荒々しくて
如何なるものを飲み込んでしまいそうな勢いがあり
つかさが溜め込んできた思いの重さを初めて実感した時だった。


これ以上、無理をしなくて良いのよ

泣きたければ泣いて良い

私がしっかりと受け止めるから


つかさの泣き声をBGMにしながら見る月は、やけに霞んでしまい
満月なのか三ヶ月なのかさえ分からない程だった












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  • やっぱり切ないですね! -- チャムチロ (2012-09-29 14:12:44)
  • 生まれるはずだった思い出が;; -- 名無しさん (2007-12-23 02:06:21)

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