「よく見つけたわね、こんなつながり」
私の突っ込みに、ぺったんこな胸を張って得意げな顔をするこなた。
いや、確かにすごいけどさ、いばっていいことなの、それ?
いや、確かにすごいけどさ、いばっていいことなの、それ?
だけどいつまでもこの話題を引きずっていては、話が進まないと思い直す。
「まあ、この話はここまで。
とりあえず、衣装を選びましょう」
とりあえず、衣装を選びましょう」
「照れるかがみんに萌え」
「ほっとけ」
ほくそ笑むこなたを気にしないことにして、衣装を見せてもらう。
ふうん、けっこう種類あるんだ。
箱の中には、有名どころからマニア向けまでのいろいろな種類のアニメや特撮の衣装が入っていた。
ふうん、けっこう種類あるんだ。
箱の中には、有名どころからマニア向けまでのいろいろな種類のアニメや特撮の衣装が入っていた。
「みんなイベントで使った奴なんで、衣装が決まったらサイズ測らせてもらうよ。
あとで手直ししとくから」
あとで手直ししとくから」
ひよりさんとパトリシアさんがメジャーを手にニッコリほほえむ。
ああ、このために来てもらってたんだ。
女の子のサイズを男の人が測るわけにはいかないしね。
ああ、このために来てもらってたんだ。
女の子のサイズを男の人が測るわけにはいかないしね。
やがてみんなは思い思いの衣装を手にとって、ああでもない、こうでもないと騒ぎ出す。
こういう空気、好きだなあ。
こういう空気、好きだなあ。
私もいろいろ手にとり、どんなのがいいかと考えはじめる。
いろんな作品があるけど、やるならやっぱフルメタかな。
ボン太くんもいいけれど、それだと入り口で客寄せするしかなくなるわね。
かなめや恭子だと『ただの女子高生』だし、ここはテッサにしよっかな、などと考えていると背中をつつかれた。
いろんな作品があるけど、やるならやっぱフルメタかな。
ボン太くんもいいけれど、それだと入り口で客寄せするしかなくなるわね。
かなめや恭子だと『ただの女子高生』だし、ここはテッサにしよっかな、などと考えていると背中をつつかれた。
「なに?」
振り返ると、こなたが変わった衣装を私に当てている。
どうやら、これを私に着せたいらしい。
どうやら、これを私に着せたいらしい。
「かがみにはこれが似合うと思うんだけどなあ」
そう言って見せてくれたのは、やたらとリボンのついたメイド服。
これとおそろいだと言って、マントとセットになった黒いセーラー服も見せてくれた。
これとおそろいだと言って、マントとセットになった黒いセーラー服も見せてくれた。
てか、これって……
「ヴィルヘルミナとシャナかい!」
思わず突っ込みを入れてしまう。
「おおう!
やっぱり、かがみならわかってくれると思ったよ」
やっぱり、かがみならわかってくれると思ったよ」
だけど私は、おそろいにしたところでいっしょにコスプレはできない、これは学内イベントなんだからとさらに突っ込む。
それにバイトはどうする、バイト先が忙しいとか言ってなかったかと言うと、こなたはほくそ笑む。
それにバイトはどうする、バイト先が忙しいとか言ってなかったかと言うと、こなたはほくそ笑む。
「むふふふふ、最近はいろいろと自由が利くようになってね、学園祭の期間に店内改装することにしたんだよ。
だからその間私は休みが取れるってわけ」
だからその間私は休みが取れるってわけ」
それって公私混同じゃないのか?
それにそんなことしたら、店長さんだけじゃなく、みんなに迷惑がかかるんじゃない?
いくら信頼されていろいろ任されてるからって、それに甘えちゃダメじゃないのよ!
それにそんなことしたら、店長さんだけじゃなく、みんなに迷惑がかかるんじゃない?
いくら信頼されていろいろ任されてるからって、それに甘えちゃダメじゃないのよ!
ヘタしたらクビになっちゃうじゃないのと、こなたを問い詰める。
「だあいじょうぶ、元々この時期に改装することになってたんだよ。
だから具体的な日程をつめるときに、学園祭に合わせてもらえるように頼んだんだ。
あ、そうそう、言っとくけど店長には事情を話してあるよ。
だから、このスケジュールもOKしてくれたんだし」
だから具体的な日程をつめるときに、学園祭に合わせてもらえるように頼んだんだ。
あ、そうそう、言っとくけど店長には事情を話してあるよ。
だから、このスケジュールもOKしてくれたんだし」
手のひらをヒラヒラさせながら答えるこなた。
少し離れた場所でパトリシアさんがうなづく。
少し離れた場所でパトリシアさんがうなづく。
どうやらいろいろと根回し済みらしい。
「こなたさんにはアドバイザーという名目で、手伝ってもらうことになっているから。
大丈夫、おそろいの衣装、着てみたら?」
大丈夫、おそろいの衣装、着てみたら?」
矢野先輩の言葉に「やるな、先輩」と思いつつ、ふと気になったことを聞いてみる。
「ねえ、こなた。
ひょっとして、うちのサークルがコスプレ喫茶をやることになったのも……」
ひょっとして、うちのサークルがコスプレ喫茶をやることになったのも……」
こなたはイタズラに成功した子供のような笑顔を浮かべ、私の質問に答えた。
「ご名答!
ぜぇんぶ、私がお願いしたことなんだよね、これ」
ぜぇんぶ、私がお願いしたことなんだよね、これ」
「なんですとおっ!」
立ち上がって大声を出す私にみんなの注目が集まる。
でも、そんなの関係ねぇ!
でも、そんなの関係ねぇ!
「あんたって人は、私に合うためだけにどれだけの人を巻き込めば気が済むのよ!」
大声を出す私の背中越しにサークル仲間の声が聞こえてくる。
「柊さん、いつもと違うね」
「なんだか、いつもより生き生きしてる感じ。
こっちが『本当の柊さん』なんじゃないかな?」
こっちが『本当の柊さん』なんじゃないかな?」
「ツンデレだ、ツンデレだ」
「泉……こなたさんだっけ、あの人と顔を会わせてから変だよね」
「じゃ、やっぱり、あのふたりって……」
ヒソヒソ話に、ひよりさんやパトリシアさんも加わっている。
「そうなんすよ。
あのふたり、高校時代から仲がいいんすよ」
あのふたり、高校時代から仲がいいんすよ」
「かがみとこなたは大親友ですからね!」
顔を赤くして仁王立ちの私の肩を、矢野先輩が軽くたたく。
振り返ると、ニコニコ顔の先輩が言う。
振り返ると、ニコニコ顔の先輩が言う。
「確かに提案したのはこなたさんだよ。
けどさ、別に柊さんとこなたさんのためじゃないんだよね。
元々やってみたかったんだよね、コスプレ喫茶って。
たけど『衣装の用意できないし、ノウハウもないし、ムリだなあ』って思ってたんだ。
実際、衣装着せて接客させてるだけだと意味がないんだよね。
コスプレしているキャラのイメージに合わない接客をしちゃったら、いけないし。
ま、高校や中学だったらOKなんだろうけど、大学の学園祭だからね。
もうちょっと凝ったものにしたいじゃない。
そんなとこへ、兄さんの知り合いを通してこなたさんから連絡をもらったんで、引き受けたんだ。
だから、そんなに責めないであげてよ、こなたさんを」
けどさ、別に柊さんとこなたさんのためじゃないんだよね。
元々やってみたかったんだよね、コスプレ喫茶って。
たけど『衣装の用意できないし、ノウハウもないし、ムリだなあ』って思ってたんだ。
実際、衣装着せて接客させてるだけだと意味がないんだよね。
コスプレしているキャラのイメージに合わない接客をしちゃったら、いけないし。
ま、高校や中学だったらOKなんだろうけど、大学の学園祭だからね。
もうちょっと凝ったものにしたいじゃない。
そんなとこへ、兄さんの知り合いを通してこなたさんから連絡をもらったんで、引き受けたんだ。
だから、そんなに責めないであげてよ、こなたさんを」
先輩の笑顔を見ているうちに、体の力がぬけて座り込む。
先輩の言葉がどこまで真実かはわからない。
でも、少なくとも『私に罪悪感を抱かせないための発言』であることくらいは、理解できた。
ならば、ここで意地をはって『やめる』と言い出す方が、かえって迷惑……だろうね。
でも、少なくとも『私に罪悪感を抱かせないための発言』であることくらいは、理解できた。
ならば、ここで意地をはって『やめる』と言い出す方が、かえって迷惑……だろうね。
大きくため息をついた後、今の私にできるとびっきりの笑顔で先輩に答えた。
「ありがとうございます!」
そのあとしばらく、何かと騒ぎながら衣装を選ぶこととなった。
で、けっきょく私は、こなたとおそろいのコスプレをすることになったのよね。
こなたがシャナで、私がヴィルヘルミナということで。
こなたはおろか、みんなにイメージどおりといわれて、少々複雑な気分。
で、けっきょく私は、こなたとおそろいのコスプレをすることになったのよね。
こなたがシャナで、私がヴィルヘルミナということで。
こなたはおろか、みんなにイメージどおりといわれて、少々複雑な気分。
私ってあんなイメージなのか?
衣装を選び終わるとすぐに採寸がはじまった。
採寸はパトリシアさんとひよりさんが女子を、矢野先輩が男子を担当することに。
採寸はパトリシアさんとひよりさんが女子を、矢野先輩が男子を担当することに。
その後の順番待ちの結果、私はパトリシアさんに、こなたはひよりさんにやってもらった。
採寸されたデータは次々と田村さんの大学ノートに記録されていく。
なんでも、こういう作業の時は手書きがいいのだそうだ。
採寸されたデータは次々と田村さんの大学ノートに記録されていく。
なんでも、こういう作業の時は手書きがいいのだそうだ。
やがて作業もすべて終わって、みんなで食事。
食材の費用は田村さんにこなたとつかさ、そしてなんと、みゆきも出したのだそうだ。
食材の費用は田村さんにこなたとつかさ、そしてなんと、みゆきも出したのだそうだ。
遅くなると電話した時の、みゆきの言葉がよみがえる。
- いいことがあると、よろしいですね。 -
みゆき……知ってたのね、このこと!
帰ったらとっちめてやらなきゃ。
帰ったらとっちめてやらなきゃ。
「わぁ……」
出てきた料理を見て、みんなからため息が。
注文したらかなり高額そうなメニューが、ゾロゾロと出てきたのよね。
注文したらかなり高額そうなメニューが、ゾロゾロと出てきたのよね。
「うちのメニューから何品か作ってみたんで、食べて食べて」
笑顔で料理をすすめるこなた。
言われるがままに一口、また一口と。
言われるがままに一口、また一口と。
「おいしい!」
みんなから口々に高評価を得る、こなたの用意したメニュー。
その様子を見ているだけで、なんだか私までうれしくなってくる。
その様子を見ているだけで、なんだか私までうれしくなってくる。
「レシピも簡単だし、こんなメニューどうかな?
あ、見た目は高そうだけど、材料はスーパーで売ってるやつで十分だよ。
うちでもそんなに高い金額つけてないから。
まあ、下ごしらえにちょっと時間がかかるけどね」
あ、見た目は高そうだけど、材料はスーパーで売ってるやつで十分だよ。
うちでもそんなに高い金額つけてないから。
まあ、下ごしらえにちょっと時間がかかるけどね」
こなたの問いかけに、きれいに料理を食べ終えた先輩が答えた。
「いいと思いますよ。
じゃあ、あとでレシピ教えてもらます?
厨房担当に覚えてもらうんで。
できたら、レクチャーしていただけるとありがたいんですけど……」
じゃあ、あとでレシピ教えてもらます?
厨房担当に覚えてもらうんで。
できたら、レクチャーしていただけるとありがたいんですけど……」
矢野先輩の言葉に、こなたは少し考え込む。
レシピを教えることに抵抗はないんだと思う。
自分から言い出したわけだし、提供を。
レクチャーする時間が取れるかどうかを考えているんだろうな、きっと。
自分から言い出したわけだし、提供を。
レクチャーする時間が取れるかどうかを考えているんだろうな、きっと。
「ちょっと待っててもらえます?」
ふいに立ち上がって部屋から出て行く、こなた。
どうしたんだろうと思っていると、手帳を片手に戻ってきた。
ああ、スケジュール確認ね。
どうしたんだろうと思っていると、手帳を片手に戻ってきた。
ああ、スケジュール確認ね。
いろいろと任されるようになってから手帳でスケジュール確認しているとか言ってたな、そういえば。
こなたは手帳を手に矢野先輩に近寄って、なにやら話しこんでいる。
お互いが都合つけられる日を見ながら、スケジュール調整してるんだろうな。
お互いが都合つけられる日を見ながら、スケジュール調整してるんだろうな。
「じゃあ、この日とこの日で」
おそらくは日付の部分だと思われる場所を指差し、矢野先輩に言う。
先輩は大きく頭を下げて、答えた。
先輩は大きく頭を下げて、答えた。
「ありがとうございます。
じゃあ、当日集まるように指示しておきますんで」
じゃあ、当日集まるように指示しておきますんで」
話がまとまると、今度は私の方に近づいてくる。
やたらニコニコしているけど、この顔は何かたくらんでいる顔なのよねえ。
いったい、何を考えていることやら。
やたらニコニコしているけど、この顔は何かたくらんでいる顔なのよねえ。
いったい、何を考えていることやら。
そしたら手帳の日付を指差してこんなことを言ってきたのよ、あいつったら!
「んじゃ、この日とこの日、かがみのとこへ泊まるんでよろしく」
「んな!
なに勝手に決めてんのよ!」
なに勝手に決めてんのよ!」
「だあってえ、久しぶりに会ったんだもん。
もっと話そうよう。
きょうだけじゃ、まだまだ話したりないし。
それに、みゆきさんにもOKもらってあるよ、泊まりのこと。
だからいいでしょう、ねえ?」
もっと話そうよう。
きょうだけじゃ、まだまだ話したりないし。
それに、みゆきさんにもOKもらってあるよ、泊まりのこと。
だからいいでしょう、ねえ?」
抱きつこうとしながら話す、こなたの言葉に驚いた。
みゆき、あんたそこまで……
みゆき、あんたそこまで……
恥ずかしいから近寄るなと言いながら、こなたをかわし続ける。
さっきのことを思い出して赤くなりながらね。
でも、心の底から湧き出てくるうれしい気持ちには、勝てなかったのよね。
結局こなたに抱きつかれてしまったわよ。
さっきのことを思い出して赤くなりながらね。
でも、心の底から湧き出てくるうれしい気持ちには、勝てなかったのよね。
結局こなたに抱きつかれてしまったわよ。
とはいえ、頬ずりは勘弁して欲しい、頬ずりは。
抱きつかれるのは何とかガマンできるけど、そこまでやられるとかなり恥ずかしい。
たぶん、いい見世物になってるんだろうな。
まわりの静けさから、そう思う。
たぶん、いい見世物になってるんだろうな。
まわりの静けさから、そう思う。
ため息をついてしばらく好きにさせたあと、新たに気になったことを聞いてみる。
「それにしても、ほんとに手回しがいいわよね?
いつから計画してたのよ、このこと。
あんたにしちゃ、えらく計画的な気がするんだけど?」
いつから計画してたのよ、このこと。
あんたにしちゃ、えらく計画的な気がするんだけど?」
私の顔をじっと見つめたあとで、こなたは口を開いた。
「今年の春からだよ。
あんなことがあったんだもの。
ガマンできなくなっちゃったんだよね。
だから何が何でもかがみに会わなくっちゃ、って思ったんだ」
あんなことがあったんだもの。
ガマンできなくなっちゃったんだよね。
だから何が何でもかがみに会わなくっちゃ、って思ったんだ」
少しずつ真剣なものになっていくこなたのまなざしが、私を突き刺す。
その時、あの時にみゆきから言われたあの言葉を思い出す。
その時、あの時にみゆきから言われたあの言葉を思い出す。
- 泉さんも薄々気づいてらっしゃらるようですよ。かがみさんが泉さんを避けているってこと -
何か言わなくちゃと思ってるのに、言葉が出てこない。
後ろではまたヒソヒソ話が始まっていた。
後ろではまたヒソヒソ話が始まっていた。
「やっぱり柊さんと泉さん、アヤシくない?」
「どう考えても恋人同士の会話でしょう、あれ」
あのう、シャーペンで何か書いてる音がするんですけど。
ひょっとして今の状況、だれか書いてます?
振り返りたいけど、さすがにこのタイミングでこなたから目をそらすわけにはいかない。
ひょっとして今の状況、だれか書いてます?
振り返りたいけど、さすがにこのタイミングでこなたから目をそらすわけにはいかない。
真剣に私のことを見つめるこなたの目を、私も見つめ返す。
そっか、私が逃げ続けている間、こなたは真剣に考えていてくれたんだね。
そう思うと、体の中から勇気がわいてくる。
こなたの行動に、真剣に答えるための勇気が。
そっか、私が逃げ続けている間、こなたは真剣に考えていてくれたんだね。
そう思うと、体の中から勇気がわいてくる。
こなたの行動に、真剣に答えるための勇気が。
深呼吸ひとつして、こなたに話しかける。
「ゴメン。
私、こなたから逃げてた。
一足先に社会に出たこなたが一所懸命に頑張ってるんだもの、私も頑張んなくっちゃって思ったんだ」
私、こなたから逃げてた。
一足先に社会に出たこなたが一所懸命に頑張ってるんだもの、私も頑張んなくっちゃって思ったんだ」
だんだんと顔が熱くなってくる。
しかも赤くなった顔を見られていると思えば思うほど、ますます顔がほてる。
しかも赤くなった顔を見られていると思えば思うほど、ますます顔がほてる。
「でも、頑張れば頑張るほど思っちゃうんだ、まだまだ努力が足りないって。
だから、こなたにはまだ会えない、そう思ってガマンしてたんだ、会いに行くのを」
だから、こなたにはまだ会えない、そう思ってガマンしてたんだ、会いに行くのを」
目頭が熱くなり、視界が歪みはじめた。
たぶん泣きそうな顔になっているんだろうな、こなたが心配そうな顔をしているもの。
たぶん泣きそうな顔になっているんだろうな、こなたが心配そうな顔をしているもの。
「そしたらだんだんと、こなたにどんな顔して会ったらいいのか、わかんなくなっちゃって。
それで、それで……」
それで、それで……」
頬を一筋、熱いものが流れていく。
とうとう言葉につまって、何も言えなくなってしまう。
せっかくわいた勇気も、これが限界。
とうとう言葉につまって、何も言えなくなってしまう。
せっかくわいた勇気も、これが限界。
どうしたら……と思っていると、こなたは抱きしめる力を強くして言ってくれた。
「別にそのまま会いに来てくれていいんだよ。
かがみに会える、かがみと話せる、それだけで十分なんだから」
かがみに会える、かがみと話せる、それだけで十分なんだから」
「こなた……」
私は何を意地を張っていたのだろう?
こなたに対し、なんで格好つけようと思ったんだろう?
こなたに対し、なんで格好つけようと思ったんだろう?
……私は馬鹿だ。
大学のA評価が何よ!
こなたを遠ざけて何がしたいのよ、私は!
大学のA評価が何よ!
こなたを遠ざけて何がしたいのよ、私は!
「ゴメンね」
心の底から素直に言葉が出てきた。
ぽんぽんと私の背中を叩く、こなた。
それは、「わかっているよ」との、無言の答。
それは、「わかっているよ」との、無言の答。
「こなたあぁぁぁっ!」
ついに私は大きく叫んで泣き出してしまう。
こなたは何も言わずに抱きしめてくれている。
こなたは何も言わずに抱きしめてくれている。
私が泣き終えたのを見たあと、こなたは言った。
「落ち着いた?
寂しがりのウサちゃんなのにムリするんだから、かがみんは」
寂しがりのウサちゃんなのにムリするんだから、かがみんは」
「莫迦……」
真っ赤になりつつ答えたあと、後ろを振り返る。
「ところで、そこで何をしているのかしらね?」
シャーペンを手に大学ノートになにやら書き込んでいるひよりさんの動きが止まる。
となりでノートを覗き込んでいるパトリシアさんもいっしょだ。
油の切れたぜんまい仕掛けのような動きで、ふたりは私を見る。
となりでノートを覗き込んでいるパトリシアさんもいっしょだ。
油の切れたぜんまい仕掛けのような動きで、ふたりは私を見る。
「あ……」
無言で近づくと手にしたノートを取り上げる。
何を書いたのかとその内容を見た瞬間、私の顔が火を噴いたように熱くなった。
何を書いたのかとその内容を見た瞬間、私の顔が火を噴いたように熱くなった。
そこに描かれていたのは、私とこなたの濃厚なラブシーン。
あのう、ひよりさん。
あなたまだ高校生ですよね?
こんなの描いていいと思ってます?
あなたまだ高校生ですよね?
こんなの描いていいと思ってます?
しかも私たちがモデルですって?
なんだか頭が痛くなってくる。
なんだか頭が痛くなってくる。
ひよりさんが同人誌を作っているのは知っている。
でも、その作品のモデルに自分がというのは考えもしなかった。
ページをめくるとさらにショッキングなことが。
描かれているのは私たちだけじゃなかったの。
でも、その作品のモデルに自分がというのは考えもしなかった。
ページをめくるとさらにショッキングなことが。
描かれているのは私たちだけじゃなかったの。
ゆたかちゃんと岩崎さんがモデルになっている絵まであったのよ。
どうやら私たちの絵もふくめ、だいぶ以前から描いていたらしい。
まいったわね。
まいったわね。
そんな混乱の極みの私の手から、ひょいとノートが奪われた。
手の出てきたほうを見ると、奪ったのはこなただった。
こなたはパラパラとページをめくってから、ひよりさんに一言。
手の出てきたほうを見ると、奪ったのはこなただった。
こなたはパラパラとページをめくってから、ひよりさんに一言。
「もしもしひよりんや。
次は私たちの話ですかい?」
次は私たちの話ですかい?」
戸惑いながら、そのつもりだとひよりさんは答える。
マジですか、それ!
マジですか、それ!
でも、こなたは特に気にした様子も見せずに言ったのよ。
「なら絶対にわからないようにしてね。
ね、かがみん。
それならいいよね」
ね、かがみん。
それならいいよね」
「わ、わかったわよ……
ひよりさんOKしたげる。
その代わり、絶対わからないようにしてね。
私たちがモデルだってこと!」
ひよりさんOKしたげる。
その代わり、絶対わからないようにしてね。
私たちがモデルだってこと!」
ひよりさんは大きな声でお礼を言いながら頭を下げた。
で、けっきょくこの話は、ここでおしまいになったのよ。
で、けっきょくこの話は、ここでおしまいになったのよ。
楽しかった時間もやがて終わり、みんなそろって駅へと向かう。
見上げれば日はとっぷり暮れていて、星が夜空にきらめいていた。
プラネタリウムみたいに多くは見えないけど、有名な星座は何とかわかるほどに。
見上げれば日はとっぷり暮れていて、星が夜空にきらめいていた。
プラネタリウムみたいに多くは見えないけど、有名な星座は何とかわかるほどに。
夏も遠く過ぎ去って、秋真っ盛りのこの季節。
そろそろ夏の装いでは寒く感じるようになってきた。
そろそろ夏の装いでは寒く感じるようになってきた。
空を見上げて、ぶるっと体を震わせる。
「なにか、羽織ってくればよかったかなあ」
そんな時、ふと空いているほうの手が握られる。
見ると、こなたが私の手を握っていた。
見ると、こなたが私の手を握っていた。
「こなた……」
「寒いよねえ、かがみ」
いきなりのことで、あっけに取られて言葉が出てこない。
そんな私を見て、こなたは猫を思わせる笑顔で私をからかう。
そんな私を見て、こなたは猫を思わせる笑顔で私をからかう。
「おんやあ?
かがみんや、私に惚れたんですかい?」
かがみんや、私に惚れたんですかい?」
「そ、そんなわけないでしょ!
なに言ってるのよ、あんたは!」
なに言ってるのよ、あんたは!」
ふいに立ち止まり、沈黙があたりを支配する。
だけど、それもほんの一瞬のことだった。
だけど、それもほんの一瞬のことだった。
「ぷ……」
どちらともなく吹きだしてしまう。
この懐かしい空気。
ああ、こんなことも忘れてたんだ。
自分の愚かさが情けない。
この懐かしい空気。
ああ、こんなことも忘れてたんだ。
自分の愚かさが情けない。
やがて、ひとしきり笑った後で、こなたが言い出す。
「一緒に暮らさない?」
いきなりなにを言い出すのかと見つめていると、こなたは言葉を続けた。
「かがみと会えないでいる時、ずっと思ってた。
『かがみにそばにいて欲しい』って。
でも、それって告白じゃん?
だから言わないでおこうって思ってた、今年の春までは。
でも、もうそれも限界!
かがみが階段から落ちたって聞いたとき、とってもショックだったんだよ。
かがみのいない世界なんて、思いもよらなかったから。
この気持ちが愛情か友情かと聞かれたら、たぶん友情。
でも、かなり愛情に近い友情だと思う。
友愛って言葉、それが一番近いんじゃないかな?
たぶん、本来の意味とは違うとは思うけど。
私はそれでいいと思ってる。
だから、ね?」
『かがみにそばにいて欲しい』って。
でも、それって告白じゃん?
だから言わないでおこうって思ってた、今年の春までは。
でも、もうそれも限界!
かがみが階段から落ちたって聞いたとき、とってもショックだったんだよ。
かがみのいない世界なんて、思いもよらなかったから。
この気持ちが愛情か友情かと聞かれたら、たぶん友情。
でも、かなり愛情に近い友情だと思う。
友愛って言葉、それが一番近いんじゃないかな?
たぶん、本来の意味とは違うとは思うけど。
私はそれでいいと思ってる。
だから、ね?」
こなたの笑顔を見たら、突っ込みを入れる気にならなかった。
肩をすくめて「しょうがないわね」というのが精一杯。
肩をすくめて「しょうがないわね」というのが精一杯。
空を見上げて私は言う。
「きれいな星だよね。
この星空は無限のかなたまで続いている。
あんなに小さく見える星々も、ほんとうはとても大きなものなんだよね。
それに比べて私たちの小さいこと。
ちょっとしたことで、ウジウジ悩んじゃってさ」
この星空は無限のかなたまで続いている。
あんなに小さく見える星々も、ほんとうはとても大きなものなんだよね。
それに比べて私たちの小さいこと。
ちょっとしたことで、ウジウジ悩んじゃってさ」
涙をぬぐって、こなたを見る。
どんな返事が返ってくるのだろうと、不安げに私を見つめているこなたを。
どんな返事が返ってくるのだろうと、不安げに私を見つめているこなたを。
「どうあがいたってしょせん小さな私たち。
人の命を星に例えるなら、とっても小さな、見落としそうなほどに小さな星。
夜空の星とは違う小さな星々、それが私たちなんだよね。
だったら、小さなことでくよくよしたって、はじまらないじゃない?
だからこなた、一緒に暮らそうよ!
すぐに……とはいかないかもしれないけど、ロースクールを卒業するころには必ずね!」
人の命を星に例えるなら、とっても小さな、見落としそうなほどに小さな星。
夜空の星とは違う小さな星々、それが私たちなんだよね。
だったら、小さなことでくよくよしたって、はじまらないじゃない?
だからこなた、一緒に暮らそうよ!
すぐに……とはいかないかもしれないけど、ロースクールを卒業するころには必ずね!」
こなたの表情が、ぱあっと明るくなる。
「うん!」
目を潤ませるこなたと、ふたたび歩き出す。
見ると、みんなは少し先で、私たちが来るのを待っていた。
妙ににやついた笑顔で。
見ると、みんなは少し先で、私たちが来るのを待っていた。
妙ににやついた笑顔で。
仲がいいなとからかう男子に満面の笑顔で答える。
「うん!」
少し足を速めてみんなに合流した時、こなたが突然言い出す。
「そうだ!
お店の名前どうするの?
せっかくだからつけようよ、名前!
『タイニー・スターズ』なんてのはどう?
英語で『Tiny Stars』って書いて、間に『☆』を入れて『Tiny☆Stars』ってのは?」
お店の名前どうするの?
せっかくだからつけようよ、名前!
『タイニー・スターズ』なんてのはどう?
英語で『Tiny Stars』って書いて、間に『☆』を入れて『Tiny☆Stars』ってのは?」
「いきなりだな、おい。
でもいいんじゃない?
『Tiny☆Stars』って名前。
私たちのお店にピッタリだと思うわよ」
でもいいんじゃない?
『Tiny☆Stars』って名前。
私たちのお店にピッタリだと思うわよ」
私の言葉にみんながうなずく。
「いろいろ候補はあったんだけど、しっくりくるのがなくて悩んでたんだよ。
こなたさん。
『Tiny☆Stars』、使わせてもらいます」
こなたさん。
『Tiny☆Stars』、使わせてもらいます」
「ようっし。
それじゃ、頑張るぞうっ!」
それじゃ、頑張るぞうっ!」
こなたの言葉にみんながエールを返す。
これから頑張ろうね、こなた。
これから頑張ろうね、こなた。
ふたりで、一緒に……
【おわり】
コメントフォーム
- 凄く百合って作品だった -- 名無しさん (2009-05-21 11:28:38)
- タイニーってなに? -- 15 (2009-01-08 14:18:52)
- こなたの策士っていいね~…っていうかこなた、
ツテ多くない?
-- 名無しさん (2008-05-31 22:46:05) - 策士のこなたっていいなぁ…… -- 名無しさん (2008-01-15 18:28:56)
- すげぇ読みやすかった
そこらに転がってるラノベ作家のよりはるかに上手い -- 名無しさん (2008-01-07 14:08:37)