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末っ子 ―変な姉と母―

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 夕食が過ぎて夜のくつろぎタイム。
 居間では今、私とつかさがいる。
 言っておくけど今のはシャレではないわよ?
 姉さんたちは自室に、お母さんたちはもう静かに寝ている。
 そして、つかさはテレビを見て楽しそうに笑っている。

 この場所には現在私とつかさしかいない。
 これほど絶好なチャンスなどあまり無い。
 そして、つかさに話しかける。
「つかさ」
「なぁに?お姉ちゃん」
 笑顔で反応してくれるつかさが眩しい。

「映画見ない?」
「映画?どんな映画?」
ホラー映画
「えっ……えっと、どうしよ…」
 ホラー映画と聞いて戸惑うつかさ。可愛い。可愛すぎる。
「見るわよね?」
「うん……お姉ちゃんとならいいかな…」

 あらかじめつかさに内緒で借りておいた映画のビデオ。
 そして、私の誘いなら絶対に断れないつかさ。
 そこを突いて私は話を持ち出した。
 しかし、その瞬間。
「私も見る見るー!」
「じゃあ、私も見させて貰おうかな」
「あら、じゃあお母さんも」
 姉二人とお母さんがやってきた。
 せっかく二人で楽しもうと思ってた矢先なのに、なんで来るのよ……。
 どこから聞きつけたのよ。盗聴器?監視カメラ?
 しかも、お母さんに至ってはおやすみの挨拶をした後なのに。

 でも、お母さんとお姉さんたちがやってきて、表情がとても明るくなっている。
 こんな、安心した姿も可愛い。

 いつのまにか、というかすでに映画が始まっていた。
 セットしたの誰よ……いのり姉さん?まつり姉さん?それともお母さん?
 早い。早すぎる。
「しっかし、かがみも物好きよねぇ。ホラー映画を借りるなんて」
「そりゃまぁ、好きだし……。姉さんはどうなのよ?」
「私はぁ……ま、嫌いかな」
「ならなんで見るのよ?」
「克服のためかなー。なんて」
 ダウト。いくらなんでも嘘くさすぎる。
 しかし、こんな姉に構ってる暇なんてない。
 映画、じゃなくてつかさに集中しないと。

 私たちがいると言っても緊張は隠せない様子のつかさ。
 その証拠に顔が若干震えている。その姿も可愛い。

 しばらく何もつかさが驚くようなシーンはあまりなかった。が、
 それがやってきた時、
「きゃあぁぁぁぁ!」
 私を含む4人はつかさの周囲に移動する。
 そこでつかさは助けを求めるようにお母さんに抱きついた。
 相手がお母さんでも………ちょっぴり悔しかった。
 でも、可愛い悲鳴が聞けたからよしとする。だが、それだけでも満足には至らなかった。
 少し矛盾してると我ながら思った。
 お母さんの顔を覗いて見ると、なんか笑みを浮かべたまま止まって動かない。その姿に私は言葉に出来ない恐怖を感じる。

 しかし、次につかさが抱きついたのはいのり姉さんだった。
 つかさの叫び声が聞けるのはいいとしても、悔しい。
 いのり姉さんの体がおかしくなってる。このまま倒れてもおかしくないほど変な姿勢になっていた。
 そしてその次も私ではなくまつり姉さん。
 相手がまつり姉さんだととても悔しい気持ちが沸いてくる。
 その気持ちは、お母さんが1として、いのり姉さんが5、そしてまつり姉さんだと25ぐらいになる。
 それほど悔しかった。
 まつり姉さんは、私の目の前だと言うのにつかさを思いっきり抱きしめてやがる。帰って欲しい。

 ――――――――!!
 はっ……………。失いかけた意識を取り戻す。
 私はすぐに、状況を判断出来た。
 私にかかるつかさの息。私は大きく深呼吸する。
 私に飛びついたつかさの一粒の涙。それを乾かぬうちに指ですくって舌の先でとる。
 私の髪にちょっとだけ絡みついた、つかさの髪。絡みついた髪は大切にしようと思う。
 やっと、やっと、ようやくつかさが私に抱きついてくれた。
 自分でも分かるほど息が荒かった。それに、心臓がバクバク言ってる。
 その、つかさの肌の感触はとても気持ち良くて、危うく昇天しかけるところだった。
 危ない危ない……昇天してしまったら姉さんたちにつかさを取られるから……。
 その感覚が、つかさが私から離れても残っていて、今でもほんのり心地良い。
 一回だけでも十分。だと思う……けどやっぱり満足できない。
 これ以上来たらどうにかなっちゃいそうだ。でも、どうにかなっちゃった方がよかった。
 だけど、これを私より先に体験した姉たちに悔しさを募らせる。
 お母さんは例外。逆らえないから。

 しかし、つかさは酷いことにその後一度も私のところには来てくれなかった。
 お母さん、姉さんたちにべったりくっついてた。2回、3回も飛びついてきてはくれなかった。
 そして今はベッドの中。つかさのことが頭に浮かぶ。

 そうだ…そうよ、今日はホラー映画を見た日。
 来る。きっと来る。きっと来る。
 そしてドアが開く音。
 やっぱ来た。心の中で私は飛び跳ねているだろう。宇宙まで行くほど。
 あの時は映画、じゃなくてつかさばっかりに集中してて、その後のことはあまり考えてはいなかったが、
 ホラー映画を見た日は100%と言っていいほど私のとこに来る。
「お姉ちゃん……」
「どうしたの?」
 部屋が暗いまま優しく話しかける。
「一緒に……寝ていい?」
 予想してたこと。もう、思い残すことはなかった。
「もちろんよ」
「…ありがと、お姉ちゃん」
 暗いままだからつかさの顔がよく見えない。
 でも、きっと笑顔なんだろう。
 電気点けとけばよかった。

 つかさはそのまま私のベッドに潜り込んでくる。
 それと同時に入ってくるつかさのいい匂い。
 そして可愛らしい髪が私の肌にも触れる。
 こんな近くに居れば表情もよく分かる。とても安心しきっている顔だった。
 猛獣がいても、この世の物とは思えない程の物があっても、崩すことは出来ない。そんな顔だった。

「ひゃっ!お……おねえちゃん、ちょ、ちょっとくすぐったい……」
「あっ、ごめんね」
 いつのまにかつかさに抱きついていたようだ。
 このままつかさが眠れなくて、寝顔が見れなかったら私が悲しいのでやめてあげる。

 さっき、つかさが私に1回だけしか飛びついてくれなかったが、それももうどうでもよかった。
 今が良ければ全てよし。今日は可愛いつかさの寝顔をたっぷりと見なければ。



おしまい














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コメント:
  • 愛されてるなあ、つかさ -- 名無しさん (2009-03-11 18:26:54)
  • あまあまデスナ
    あまいあまいぞ -- 名無しさん (2008-02-18 04:05:57)

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