前略オフクロ様。
今日も私、泉こなたは学友達とともに楽しく健やかな学生生活を送っております。
ですが――
あまりの寒さに今にもそちらへ逝ってしまいそうです……
今日も私、泉こなたは学友達とともに楽しく健やかな学生生活を送っております。
ですが――
あまりの寒さに今にもそちらへ逝ってしまいそうです……
「こなたーっ! 校門の前で力尽きるなーっ!」
学校の敷地まであと数歩のところで崩れ落ちるように倒れたこなたを、かがみが必死で起こそうとする。
雪が降っている。吹雪いているわけではない。ただひたすら空から地面へ、淡々と降り続けている。
当たり前だが寒い。外に出るだけで肌が痛いほど寒い。この冬一番の冷え込みだ。
「か、かがみぃ……もう私のことは放っておいて、あなた達だけでも……」
「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ。ほらっ」
ダンゴ虫のようにうずくまろうとするこなたの腕を引っ張り、かがみは校門へ歩き出す。少し離れたところではつかさとみゆきが待っている。
「みゆきさぁ~ん、この寒さならバナナで釘打てる~……?」
「さあ、それはどうでしょう……」
「誰かバナナぷり~ず……」
寒さのあまりこなたがおかしくなってきた。かがみはほとんど引きずるようにしてこなたを連れ、昇降口まで歩いていく。周りを歩いている他の生徒達も、一様に寒そうだ。
「さびぃ~……もうダメだぁ~……」
ガチガチと震えるこなた。かがみにもその気持ちは分かる。口の中では歯と歯が小刻みな音を立てていた。
「みゆきさん、眠るときはせめてその胸の中で……」
「え、ええっ!?」
昇降口に入ったところで、こなたはみゆきにもたれかかる。豊かな胸に顔をうずめるように。
「コラこなた! セクハラする元気あるなら歩けるでしょうが!!」
「あ~、生き返る~」
みゆきが戸惑っているのをいいことに、心地よい感触にひたっているこなた。かがみがそれを無理矢理引きはがす。
「教室行けば暖房入っているんだから、そこまで頑張れ」
「うわああん! 殺生なー!」
至高のぬくもりを奪われたこなたは、未練がましい叫びを上げる。かがみはうんざりしてため息をついた。
「確かに寒いけど、実際死ぬほどじゃないでしょ。北海道とかもっと凄いわよ」
「そんなことないもん。本州でも毎年ホームレスの人が何人か凍死したりしてるもん」
「そういう真面目に社会的な問題はいいから」
「でもこなちゃんの気持ちも分かるなー。今日寒くってなかなかお布団から出られなかったし」
「いつものことでしょそれは」
「あぅ……」
顔を赤くして俯くつかさ。身を切るような寒さの今日も、かがみの突っ込みの切れ味は相変わらずだった。
「しかしまあ、本当に寒いわね。そういえばゆたかちゃん大丈夫? 体弱いし、風邪引いたりしてない?」
「うむ。その点のケアはばっちりだよ」
学校の敷地まであと数歩のところで崩れ落ちるように倒れたこなたを、かがみが必死で起こそうとする。
雪が降っている。吹雪いているわけではない。ただひたすら空から地面へ、淡々と降り続けている。
当たり前だが寒い。外に出るだけで肌が痛いほど寒い。この冬一番の冷え込みだ。
「か、かがみぃ……もう私のことは放っておいて、あなた達だけでも……」
「馬鹿なこと言ってんじゃないわよ。ほらっ」
ダンゴ虫のようにうずくまろうとするこなたの腕を引っ張り、かがみは校門へ歩き出す。少し離れたところではつかさとみゆきが待っている。
「みゆきさぁ~ん、この寒さならバナナで釘打てる~……?」
「さあ、それはどうでしょう……」
「誰かバナナぷり~ず……」
寒さのあまりこなたがおかしくなってきた。かがみはほとんど引きずるようにしてこなたを連れ、昇降口まで歩いていく。周りを歩いている他の生徒達も、一様に寒そうだ。
「さびぃ~……もうダメだぁ~……」
ガチガチと震えるこなた。かがみにもその気持ちは分かる。口の中では歯と歯が小刻みな音を立てていた。
「みゆきさん、眠るときはせめてその胸の中で……」
「え、ええっ!?」
昇降口に入ったところで、こなたはみゆきにもたれかかる。豊かな胸に顔をうずめるように。
「コラこなた! セクハラする元気あるなら歩けるでしょうが!!」
「あ~、生き返る~」
みゆきが戸惑っているのをいいことに、心地よい感触にひたっているこなた。かがみがそれを無理矢理引きはがす。
「教室行けば暖房入っているんだから、そこまで頑張れ」
「うわああん! 殺生なー!」
至高のぬくもりを奪われたこなたは、未練がましい叫びを上げる。かがみはうんざりしてため息をついた。
「確かに寒いけど、実際死ぬほどじゃないでしょ。北海道とかもっと凄いわよ」
「そんなことないもん。本州でも毎年ホームレスの人が何人か凍死したりしてるもん」
「そういう真面目に社会的な問題はいいから」
「でもこなちゃんの気持ちも分かるなー。今日寒くってなかなかお布団から出られなかったし」
「いつものことでしょそれは」
「あぅ……」
顔を赤くして俯くつかさ。身を切るような寒さの今日も、かがみの突っ込みの切れ味は相変わらずだった。
「しかしまあ、本当に寒いわね。そういえばゆたかちゃん大丈夫? 体弱いし、風邪引いたりしてない?」
「うむ。その点のケアはばっちりだよ」
「田村さん、おはよー」
「おはよう……」
雪の降る中、ゆたかとみなみが傘を差しての登校中。学校近くでひよりの姿を見かけ、声をかけた。
「おは――」
振り向いたひよりは挨拶を返そうとして、目の前の物体にあんぐり口を開けた。
「小早川さん……その格好は……?」
学校指定のコートに、マフラー・手袋・帽子。それだけ聞けば普通のようだが、問題はそのシルエットだ。中に何枚着込んでいるのか、肥えたハムスターのようにモコモコと丸い。転がりそうなほど丸い。
「な、何かね、今日は凄く寒いからっておじさんとお姉ちゃんが……」
「はぁ……」
(心配なのは分かるけど、父子揃って何て極端な……)
泉家の父そうじろうは娘を溺愛しているが、その血は確実にこなたへ受け継がれているようだ。
「でも小早川さん。着込みすぎると下で汗かいて、かえって良くないかもしれないよ。教室は暖房効いてるし」
「そうかな?」
「とりあえず学校ついたら少し減らした方がいいんじゃない。そのままだと動きにくいでしょ?」
「うーん……」
ゆたかは悩ましげに眉をハの字にしている。そうじろうやこなたの厚意を無下にするようで、気が引けるのだろうか。
「泉先輩も一日中その格好でいろとは言ってなかったでしょ? 暑く感じたら脱がないと。ねえ岩崎さん」
同意を得ようとみなみに話を振る。が、
「え……う、うん。そうかも……」
どうにも歯切れの悪い返答。その後、小声でボソリと、
「……出来るだけ、寒くない方がいいと思うけど……」
心配そうな目でゆたかを見ながら呟いた。
(あなたも過保護ですかい!)
ひよりは心の中で突っ込みを入れる。気持ちは分かるが、過ぎたるはボンバザルが如しだ。
「まあともかく、暑かったら着てるもの減らしなよ。かえって風邪引くことになるから」
「うん。分かった。ありがとう田村さん」
にっこり微笑んでお礼を言うゆたか。その横に立つみなみの目線が、ひよりに向けて心なしか刺々しい。
(き、気のせいだよね……気のせいだよね!? だって私間違ってないでしょ!? 岩崎さんが小早川さん大事にするのは分かるけどー!)
もちろん、みなみはこんなことで怒るほど心が狭くはないので、ひよりの気のせいなのだが。
(ああ~そんな汚らわしいものを見るような目で見ないでぇ~っ!)
ひよりんMフィルター増殖中。
M=妄想であって他の意味ではない。……と思う。
「おはよう……」
雪の降る中、ゆたかとみなみが傘を差しての登校中。学校近くでひよりの姿を見かけ、声をかけた。
「おは――」
振り向いたひよりは挨拶を返そうとして、目の前の物体にあんぐり口を開けた。
「小早川さん……その格好は……?」
学校指定のコートに、マフラー・手袋・帽子。それだけ聞けば普通のようだが、問題はそのシルエットだ。中に何枚着込んでいるのか、肥えたハムスターのようにモコモコと丸い。転がりそうなほど丸い。
「な、何かね、今日は凄く寒いからっておじさんとお姉ちゃんが……」
「はぁ……」
(心配なのは分かるけど、父子揃って何て極端な……)
泉家の父そうじろうは娘を溺愛しているが、その血は確実にこなたへ受け継がれているようだ。
「でも小早川さん。着込みすぎると下で汗かいて、かえって良くないかもしれないよ。教室は暖房効いてるし」
「そうかな?」
「とりあえず学校ついたら少し減らした方がいいんじゃない。そのままだと動きにくいでしょ?」
「うーん……」
ゆたかは悩ましげに眉をハの字にしている。そうじろうやこなたの厚意を無下にするようで、気が引けるのだろうか。
「泉先輩も一日中その格好でいろとは言ってなかったでしょ? 暑く感じたら脱がないと。ねえ岩崎さん」
同意を得ようとみなみに話を振る。が、
「え……う、うん。そうかも……」
どうにも歯切れの悪い返答。その後、小声でボソリと、
「……出来るだけ、寒くない方がいいと思うけど……」
心配そうな目でゆたかを見ながら呟いた。
(あなたも過保護ですかい!)
ひよりは心の中で突っ込みを入れる。気持ちは分かるが、過ぎたるはボンバザルが如しだ。
「まあともかく、暑かったら着てるもの減らしなよ。かえって風邪引くことになるから」
「うん。分かった。ありがとう田村さん」
にっこり微笑んでお礼を言うゆたか。その横に立つみなみの目線が、ひよりに向けて心なしか刺々しい。
(き、気のせいだよね……気のせいだよね!? だって私間違ってないでしょ!? 岩崎さんが小早川さん大事にするのは分かるけどー!)
もちろん、みなみはこんなことで怒るほど心が狭くはないので、ひよりの気のせいなのだが。
(ああ~そんな汚らわしいものを見るような目で見ないでぇ~っ!)
ひよりんMフィルター増殖中。
M=妄想であって他の意味ではない。……と思う。
朝の三年C組教室。雪のため遅れている生徒が多いのか、人の数はまばらだ。
「おーっす柊。今日はさみーなぁ」
「おはよう柊ちゃん」
かがみの友人二人はちゃんといた。みさおの方はともかく、あやのがいる限りこの二人が遅刻というのは滅多にない。
「おはよ。こんだけ寒い日は久しぶりね」
「だよなぁ。今朝はもう布団から出るの億劫でしょうがなかったぜ」
「それはいつもじゃないのか」
数分前つかさにしたのと同じような突っ込みをするかがみ。どこに行っても役柄は変わらない。
「にしても教室の中まで寒いよなぁ……」
「まだ暖房つけたばっかりだからじゃないの?」
「そっか……うー、さびぃ。あやの、あっためてくれー」
身を縮こめていたみさおは、あやのに抱きつくように身をすり寄せる。
「あー、あったけー」
「もう。みさちゃんたらしょうがないわね」
あやのはそんなみさおを拒むことなく、苦笑しながらよしよしと頭など撫でている。姉妹というか母子みたいだ。かがみは何やら複雑な表情で、そんな二人を見ていた。
「ん? どうした柊? お前もあったまりたいのか?」
「違うわよ。ただね、どこにでも似たようなことするやつはいるもんだなーって」
「それはつまり……柊も今朝誰かにくっついてあったまってたってことだな!」
「違うわっ!」
「じゃあくっつかれたのか」
「それも違う。似たようなことしてたのがいたってだけよ」
「ふーん。それってB組のちびっ子か?」
「よく分かったわね」
「まーな」
ただの勘だろうが、みさおは少し自慢げに胸を張る。あやのにくっついたままでは様になっていないが。
「で、ちびっ子は誰にくっついてたんだ?」
「みゆきよ。大人しいのを良いことに、セクハラまがいのことするんだから、まったく……」
怒ったような口調のかがみ。その様子を見ていたみさおは一言、
「柊にくっついてきてほしかったのか?」
「なっ……!」
たちまちかがみの顔が真っ赤になる。
「そんなわけないでしょ! そんなことされてもうっとうしいだけよ! だいいち――」
マシンガンのような勢いで否定しまくるかがみ。みさおは冗談で言ったのだが、ここまで激しいリアクションだと図星だったのかと邪推してしまう。
「悪かったよ柊。そう怒んなって」
「お、怒ってなんかないわよ。ただあんたが馬鹿なこと言うから――」
「話は聞かせてもらったぞ! 人類は滅亡する!」
いきなりC組教室の戸を開けてこなた参上。
「うわっ!? な、何しに来たのよこなた」
「かがみが私にくっつかれたがっているという電波を受信して来ました!」
「誰もそんな電波発信してないから教室帰れ!」
「まあまあ遠慮せず」
「してないから遠慮なんか!」
隙あらば飛びかかろうとにじり寄るこなた。逃れようと身構えるかがみ。
「いざ尋常に――」
「こら泉ぃ!」
今まさにこなたが飛びかかろうとした瞬間、黒井先生の怒声が飛んだ。
「騒がしい思て見に来たら隣のクラスで何しとんねん。もうホームルーム始まるで」
「ああああああ~……」
猫の子のように襟首を掴まれ、こなたは教室の外へ引っ張られていった。
「やれやれ……間一髪か」
こなたの姿が廊下へ消え、かがみはホッと息をつく。あやのはそんなかがみの表情を見ながら、ふと尋ねる。
「柊ちゃん、ちょっと残念だった?」
「んなっ……峰岸まで何言い出すのよ!?」
「何となくそう見えたから」
「ば、馬鹿言わないでよホントに……」
小さな声でそう言い返すと、かがみはそっぽを向いて口をつぐむ。
窓の外では、相変わらずの雪模様の中、雲の切れ目から微かに暖かな日が差していた。
「おーっす柊。今日はさみーなぁ」
「おはよう柊ちゃん」
かがみの友人二人はちゃんといた。みさおの方はともかく、あやのがいる限りこの二人が遅刻というのは滅多にない。
「おはよ。こんだけ寒い日は久しぶりね」
「だよなぁ。今朝はもう布団から出るの億劫でしょうがなかったぜ」
「それはいつもじゃないのか」
数分前つかさにしたのと同じような突っ込みをするかがみ。どこに行っても役柄は変わらない。
「にしても教室の中まで寒いよなぁ……」
「まだ暖房つけたばっかりだからじゃないの?」
「そっか……うー、さびぃ。あやの、あっためてくれー」
身を縮こめていたみさおは、あやのに抱きつくように身をすり寄せる。
「あー、あったけー」
「もう。みさちゃんたらしょうがないわね」
あやのはそんなみさおを拒むことなく、苦笑しながらよしよしと頭など撫でている。姉妹というか母子みたいだ。かがみは何やら複雑な表情で、そんな二人を見ていた。
「ん? どうした柊? お前もあったまりたいのか?」
「違うわよ。ただね、どこにでも似たようなことするやつはいるもんだなーって」
「それはつまり……柊も今朝誰かにくっついてあったまってたってことだな!」
「違うわっ!」
「じゃあくっつかれたのか」
「それも違う。似たようなことしてたのがいたってだけよ」
「ふーん。それってB組のちびっ子か?」
「よく分かったわね」
「まーな」
ただの勘だろうが、みさおは少し自慢げに胸を張る。あやのにくっついたままでは様になっていないが。
「で、ちびっ子は誰にくっついてたんだ?」
「みゆきよ。大人しいのを良いことに、セクハラまがいのことするんだから、まったく……」
怒ったような口調のかがみ。その様子を見ていたみさおは一言、
「柊にくっついてきてほしかったのか?」
「なっ……!」
たちまちかがみの顔が真っ赤になる。
「そんなわけないでしょ! そんなことされてもうっとうしいだけよ! だいいち――」
マシンガンのような勢いで否定しまくるかがみ。みさおは冗談で言ったのだが、ここまで激しいリアクションだと図星だったのかと邪推してしまう。
「悪かったよ柊。そう怒んなって」
「お、怒ってなんかないわよ。ただあんたが馬鹿なこと言うから――」
「話は聞かせてもらったぞ! 人類は滅亡する!」
いきなりC組教室の戸を開けてこなた参上。
「うわっ!? な、何しに来たのよこなた」
「かがみが私にくっつかれたがっているという電波を受信して来ました!」
「誰もそんな電波発信してないから教室帰れ!」
「まあまあ遠慮せず」
「してないから遠慮なんか!」
隙あらば飛びかかろうとにじり寄るこなた。逃れようと身構えるかがみ。
「いざ尋常に――」
「こら泉ぃ!」
今まさにこなたが飛びかかろうとした瞬間、黒井先生の怒声が飛んだ。
「騒がしい思て見に来たら隣のクラスで何しとんねん。もうホームルーム始まるで」
「ああああああ~……」
猫の子のように襟首を掴まれ、こなたは教室の外へ引っ張られていった。
「やれやれ……間一髪か」
こなたの姿が廊下へ消え、かがみはホッと息をつく。あやのはそんなかがみの表情を見ながら、ふと尋ねる。
「柊ちゃん、ちょっと残念だった?」
「んなっ……峰岸まで何言い出すのよ!?」
「何となくそう見えたから」
「ば、馬鹿言わないでよホントに……」
小さな声でそう言い返すと、かがみはそっぽを向いて口をつぐむ。
窓の外では、相変わらずの雪模様の中、雲の切れ目から微かに暖かな日が差していた。
おわり
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- ↓同じく…… -- 15 (2009-01-12 00:37:08)
- うぅ・・・あやののキャラソンが聞きたいよぉ(;;) -- 名無しさん (2009-01-11 20:31:35)
- こなたは猫のよーに手足丸めた恰好でつまみ上げられたに違いない。 -- 名無しさん (2009-01-11 19:48:45)
- 冬の朝の光景・・・だねえ。モコモコゆたかちゃんが見てみたい。 -- 名無しさん (2009-01-11 19:08:15)
- ほのぼのしててすごく良いです。
個人的には、一年生ズのやりとりが特に。 -- 名無しさん (2009-01-11 17:12:38)