――-……かたん。
――-……かたたん。
――-……かたたん。
――-……かたん。
車輪とレール。
走る車両と揺れ動く機体が、ともすれば心地いいとも思えるリズムを作り出す。
流れる景色は日陰側。
後ろから差し込む日差しが、機内と座る二人の背中を暖かく包み込んでいる。
走る車両と揺れ動く機体が、ともすれば心地いいとも思えるリズムを作り出す。
流れる景色は日陰側。
後ろから差し込む日差しが、機内と座る二人の背中を暖かく包み込んでいる。
「……ふぁ」
思いがけずにあくびが出そうになって、かがみは慌てて口元を押さえ込んだ。
お昼を程よく過ぎた、いつもよりも早い帰り道の電車の中。
今日は年度末試験の最終日で、それが終わってようやく肩の力が抜けたせいか、昨日もあまり寝ていなかったせいか。それとも、この冬の終わりの、あたたかな木漏れ日のせいか。
ゆらゆら揺れる列車の振動と、ぽかぽか照らす太陽に、程よい眠気を感じずにはいられなかった。
背中側の、窓の向こうからは、ちょうどよい温度の日差しが降り注いでいる。
列車が走って、外で何かが横切るたびに、床の上へとその影が映る。
オレンジと黄色の中間みたいな暖色が、絶え間なく走る小さな空間を彩っていた。
冬の終わる一歩手前。
寒さが去りゆく間際の、春の端っこ。
こんな絶好のお昼寝日和に、眠くならない人なんてきっとそうはいないに違いない。
だから今、この隣に座っている人間も……――。
お昼を程よく過ぎた、いつもよりも早い帰り道の電車の中。
今日は年度末試験の最終日で、それが終わってようやく肩の力が抜けたせいか、昨日もあまり寝ていなかったせいか。それとも、この冬の終わりの、あたたかな木漏れ日のせいか。
ゆらゆら揺れる列車の振動と、ぽかぽか照らす太陽に、程よい眠気を感じずにはいられなかった。
背中側の、窓の向こうからは、ちょうどよい温度の日差しが降り注いでいる。
列車が走って、外で何かが横切るたびに、床の上へとその影が映る。
オレンジと黄色の中間みたいな暖色が、絶え間なく走る小さな空間を彩っていた。
冬の終わる一歩手前。
寒さが去りゆく間際の、春の端っこ。
こんな絶好のお昼寝日和に、眠くならない人なんてきっとそうはいないに違いない。
だから今、この隣に座っている人間も……――。
「……はぁ」
今度はわずかなため息が、かがみの口からこぼれ落ちた。
呆れたような嘆息だったけれど、その顔には笑みが浮かんでいる。
顔を動かし、左横を見つめた先には、双子の妹のつかさの姿があった。
かがみと同じように座席に腰掛け、車両から伝わる振動を身体に受けて、こくりこくりと、聞こえる音と同じリズムを刻んでいる。
さっきのかがみのように、暖かい陽気に当てられ眠そうにあくびを漏らしていたのは随分と前のことだ。
ふらふらと揺れている、うつむかせた顔のその両の目は、開かれることなくぴったりと閉じられていた。
やっぱりというかなんというか。どうやら完全に眠ってしまっているようだ。
そんな妹の姿を、かがみは数秒間じっと見つめて、仕方ないわねというふうに苦笑を浮かべた。
寝てしまうのも、無理はない。
昨日も彼女は、夜遅くまで勉強していたのだ。いつもだったらかがみより何時間も早く寝るのに、昨夜は試験だからと少し長く起きていた自分と同じくらいの時間に眠りについていた。
そしてようやく試験も終わって、そこにきてこの陽気だ。
もとから眠気に弱く、電車の揺れにも弱くて。夜更かしするのだって苦手なのに。
こんなにもお昼寝のための好条件が揃っていたら、寝てしまわないほうが心配になってしまうだろう。
そう思いながら、振り子のように前後している頭を目で追っていると、曲がり角にでも差し掛かったのか列車がわずかに強く揺れて、つかさの身体がカクンッと前に振れた。
その衝撃で少し気がついたのか、「……んぅ」と小さく声を喉からもらす。
起きてしまうかと思ったけれど、つかさは一瞬ぴくりと瞼を震わせただけで、目を覚ますことなくもう一度静かに寝息を立てはじめていた。
かがみは隣でその姿をそっと眺め続けて、ただなんとも形容しがたい、幸せそうな笑みを顔に浮かべていた。
やがて電車が次の駅へと近づいて、ゆっくりと速度を緩めていく。
ホームへと入り、徐々にスピードがなくなって、停止する瞬間。ガクッと、一番強い力が身体に加わる。
そしてその慣性の力に従って、――つかさの身体が、ふらっと傾いた。
「……ぁっ」
自分とは逆の方向に、妹の頭が落ちていく。
まだお昼過ぎで、席はがらがらだったから、その方向には誰もいなかったけれど。だからこそ、そこには鉄製の――。
「っ――-……。ったく……」
ドア付近の、手すりの部分につかさの頭が触れる直前に、伸ばしたかがみの手がその肩を抱え込んだ。
両手に力を込めて支えつつ、危ないところだったとかがみは胸を撫で下ろす。
大怪我なんかにはならないけれど、もしあのまま倒れこんでいたら、たんこぶぐらいは頭にこさえることになっていただろう。
それに、それだけじゃなく――-……。
「まーだ寝てるし」
傾いた体を引っぱり上げて、真っ直ぐに座り直させたのに、つかさはいまだにその瞼をしっかりとつぶっていた。
すーすーと何事も無かったように寝息をたてている妹の姿に、かがみはやっぱり苦笑を浮かべる。
もし今ので頭をぶつけていたら、きっとつかさは目を覚ましてしまったに違いない。
それで「痛いよ……」と泣き顔になるのも可愛いかもしれないけれど、それでもやっぱり、今はゆっくりと寝かせておいてあげたかった。
今日の試験はどうやら頑張ったようだし。
最寄の駅に着くまでの、ほんの少しの間だけれども。
「今日は特別よ」
いつもなら、他の人の迷惑になるかもしれないし寝言とか言って恥ずかしい思いをしかねないから、無駄だと判ってても一応起こす努力はするけれど、今日は車内も空いている。
それになんだか、日差しがすごく心地いいから――-……。
そう思いつつかがみは、やれやれと笑みを浮かべた。
ぷしゅっと、空気の抜ける音が響いて、電車の扉が閉ざされる。
また次の駅へと向かって列車が動き出して、つかさの身体にも力が加わる。
かがみはそのままつかさの肩に軽く手を置いたまま、再度向こうへと倒れこまないように注意を払う。
案の定、力の抜け切ったつかさの身体は慣性通りに動きだした。
さっきは進む方向だったから、今度は……。
「……っと」
肩を支える手のひらに、つかさの体重が伝わってくる。
自分もまた、電車の動きで力を受けていたから、倒れないようにと踏ん張った。
しばらくそのまま彼女の身体を支え続けていると、ようやく電車がスピードに乗り始め身体が安定してくる。
かがみはほっと一息つくと、つかさの身体をもとの位置に戻そうと手に力を込めて、
「………」
今一度、腕の中で寝息を立てている妹の姿を見つめた。
だいぶ密着した距離にいるつかさは、ずいぶんと気持ち良さそうに眠っていた。
規則正しく息を吐き、身体が上下に揺れている。
ふっくらとしたすべすべな頬が、ちょっと触り心地が良さそうだ。
華奢な体は力がいっさい入っていなくて、その全ての重みを手のひらに感じることができた。
昔から変わらない、短く整えた髪の毛が、振動に合わせてふわりと揺れる。
背後から照らしている、あたたかな太陽のぬくもりを吸った甘いような、脳に直接届くような香りが漂ってきて、思わずドキリとしてしまう。
なんだか急に、いま自分が腕の中に抱えているのものが、やっぱり生きた人間なんだなと。ぬくもりを持った、自分と同じ存在なんだと。支える指先には服越しの肌と筋肉の感触がして、人形みたいに小さなその体にはしっかりと血が通っていて――-……。
「………」
かがみは顔を上げると、そっと辺りをうかがった。
さっきの駅で、車内の人影がさらに減っていて、ほどよい人数になっている。
特に誰も、こちらは見ていない。
「ホントに今日は……、特別だからね」
小さな小さな声でかがみはそう呟くと、つかさの身体をもとには戻さずに、そのまま自分の身体へと、その体重を寄り添わせた。
まあるい頭が、自分の肩に乗るようにと、その身体を手で支える。
わずかばかり座る位置を近づけ、肩をより触れ合わせて、その距離を縮める。
少し、抱きかかえるような感じにもなったけれど、あくまで自然なふうにはなったかなと思う。
耳と頬につかさの髪の毛が触れていて、ちょっとくすぐったいような気がした。
そのままかがみは、特に何かするわけでもなく、妹と電車の揺れに身体を預けて、目の前の流れゆく景色を静かに眺め続けた。
「……ん」
ふいに、すぐそばで声が聞こえた。
つかさの身体をあまり揺らさないようにと、その顔を覗き込む。
まだ目は開けていない。
でもその眉が、額の中央に寄せられ表情に影を落としていた。
なにかよくない夢でも見てるのだろうかと、そう思ったら、
「……ね……ちゃん……」
これだけ近くにいるからようやく聞き取れる言葉を、つかさが呟いた。
「お姉ちゃん……」
不安そうな顔でそう口を動かすつかさを、かがみもまた心配そうに見つめる。
「……、……て……」
「え?」
かすれていて、よく聞き取れなかった。
つかさの右手が、かがみのスカートをぎゅっと握りしめる。
「……そこに、……いて……」
「………」
今にも泣き出してしまいそうな顔で、つかさはそう言っていた。
ぎゅっと握りしめて、かすかに震える彼女の右手に、そっと自分の左手を重ねる。
「……バカね」
誰にも聞こえないよう。彼女だけに聞こえるように、かがみは呟く。
「バカね、つかさ」
そう言いながら、どこか嬉しそうな笑みで。
「ちゃんと……、ここにいるでしょ」
この言葉が、嘘ではないと教えるように。その不安が、ただの杞憂だとさとすように。優しげな瞳で見つめて、ささやきを口からもらす。
「大丈夫よ、つかさ」
その寝言が本当に些細なことだと言うように、くすぐったそうに笑顔を浮かべて、もう一度大丈夫と繰り返す。
それが伝わったのかどうか、本当のところはわからないけれど、でもつかさはゆっくりと表情を崩して、また気持ち良さそうな寝息を立て始めた。
そんな妹に、かがみは何度目かもわからないため息をもらすと、やっぱり何度目かもわからない苦笑を顔に浮かべた。
呆れたような嘆息だったけれど、その顔には笑みが浮かんでいる。
顔を動かし、左横を見つめた先には、双子の妹のつかさの姿があった。
かがみと同じように座席に腰掛け、車両から伝わる振動を身体に受けて、こくりこくりと、聞こえる音と同じリズムを刻んでいる。
さっきのかがみのように、暖かい陽気に当てられ眠そうにあくびを漏らしていたのは随分と前のことだ。
ふらふらと揺れている、うつむかせた顔のその両の目は、開かれることなくぴったりと閉じられていた。
やっぱりというかなんというか。どうやら完全に眠ってしまっているようだ。
そんな妹の姿を、かがみは数秒間じっと見つめて、仕方ないわねというふうに苦笑を浮かべた。
寝てしまうのも、無理はない。
昨日も彼女は、夜遅くまで勉強していたのだ。いつもだったらかがみより何時間も早く寝るのに、昨夜は試験だからと少し長く起きていた自分と同じくらいの時間に眠りについていた。
そしてようやく試験も終わって、そこにきてこの陽気だ。
もとから眠気に弱く、電車の揺れにも弱くて。夜更かしするのだって苦手なのに。
こんなにもお昼寝のための好条件が揃っていたら、寝てしまわないほうが心配になってしまうだろう。
そう思いながら、振り子のように前後している頭を目で追っていると、曲がり角にでも差し掛かったのか列車がわずかに強く揺れて、つかさの身体がカクンッと前に振れた。
その衝撃で少し気がついたのか、「……んぅ」と小さく声を喉からもらす。
起きてしまうかと思ったけれど、つかさは一瞬ぴくりと瞼を震わせただけで、目を覚ますことなくもう一度静かに寝息を立てはじめていた。
かがみは隣でその姿をそっと眺め続けて、ただなんとも形容しがたい、幸せそうな笑みを顔に浮かべていた。
やがて電車が次の駅へと近づいて、ゆっくりと速度を緩めていく。
ホームへと入り、徐々にスピードがなくなって、停止する瞬間。ガクッと、一番強い力が身体に加わる。
そしてその慣性の力に従って、――つかさの身体が、ふらっと傾いた。
「……ぁっ」
自分とは逆の方向に、妹の頭が落ちていく。
まだお昼過ぎで、席はがらがらだったから、その方向には誰もいなかったけれど。だからこそ、そこには鉄製の――。
「っ――-……。ったく……」
ドア付近の、手すりの部分につかさの頭が触れる直前に、伸ばしたかがみの手がその肩を抱え込んだ。
両手に力を込めて支えつつ、危ないところだったとかがみは胸を撫で下ろす。
大怪我なんかにはならないけれど、もしあのまま倒れこんでいたら、たんこぶぐらいは頭にこさえることになっていただろう。
それに、それだけじゃなく――-……。
「まーだ寝てるし」
傾いた体を引っぱり上げて、真っ直ぐに座り直させたのに、つかさはいまだにその瞼をしっかりとつぶっていた。
すーすーと何事も無かったように寝息をたてている妹の姿に、かがみはやっぱり苦笑を浮かべる。
もし今ので頭をぶつけていたら、きっとつかさは目を覚ましてしまったに違いない。
それで「痛いよ……」と泣き顔になるのも可愛いかもしれないけれど、それでもやっぱり、今はゆっくりと寝かせておいてあげたかった。
今日の試験はどうやら頑張ったようだし。
最寄の駅に着くまでの、ほんの少しの間だけれども。
「今日は特別よ」
いつもなら、他の人の迷惑になるかもしれないし寝言とか言って恥ずかしい思いをしかねないから、無駄だと判ってても一応起こす努力はするけれど、今日は車内も空いている。
それになんだか、日差しがすごく心地いいから――-……。
そう思いつつかがみは、やれやれと笑みを浮かべた。
ぷしゅっと、空気の抜ける音が響いて、電車の扉が閉ざされる。
また次の駅へと向かって列車が動き出して、つかさの身体にも力が加わる。
かがみはそのままつかさの肩に軽く手を置いたまま、再度向こうへと倒れこまないように注意を払う。
案の定、力の抜け切ったつかさの身体は慣性通りに動きだした。
さっきは進む方向だったから、今度は……。
「……っと」
肩を支える手のひらに、つかさの体重が伝わってくる。
自分もまた、電車の動きで力を受けていたから、倒れないようにと踏ん張った。
しばらくそのまま彼女の身体を支え続けていると、ようやく電車がスピードに乗り始め身体が安定してくる。
かがみはほっと一息つくと、つかさの身体をもとの位置に戻そうと手に力を込めて、
「………」
今一度、腕の中で寝息を立てている妹の姿を見つめた。
だいぶ密着した距離にいるつかさは、ずいぶんと気持ち良さそうに眠っていた。
規則正しく息を吐き、身体が上下に揺れている。
ふっくらとしたすべすべな頬が、ちょっと触り心地が良さそうだ。
華奢な体は力がいっさい入っていなくて、その全ての重みを手のひらに感じることができた。
昔から変わらない、短く整えた髪の毛が、振動に合わせてふわりと揺れる。
背後から照らしている、あたたかな太陽のぬくもりを吸った甘いような、脳に直接届くような香りが漂ってきて、思わずドキリとしてしまう。
なんだか急に、いま自分が腕の中に抱えているのものが、やっぱり生きた人間なんだなと。ぬくもりを持った、自分と同じ存在なんだと。支える指先には服越しの肌と筋肉の感触がして、人形みたいに小さなその体にはしっかりと血が通っていて――-……。
「………」
かがみは顔を上げると、そっと辺りをうかがった。
さっきの駅で、車内の人影がさらに減っていて、ほどよい人数になっている。
特に誰も、こちらは見ていない。
「ホントに今日は……、特別だからね」
小さな小さな声でかがみはそう呟くと、つかさの身体をもとには戻さずに、そのまま自分の身体へと、その体重を寄り添わせた。
まあるい頭が、自分の肩に乗るようにと、その身体を手で支える。
わずかばかり座る位置を近づけ、肩をより触れ合わせて、その距離を縮める。
少し、抱きかかえるような感じにもなったけれど、あくまで自然なふうにはなったかなと思う。
耳と頬につかさの髪の毛が触れていて、ちょっとくすぐったいような気がした。
そのままかがみは、特に何かするわけでもなく、妹と電車の揺れに身体を預けて、目の前の流れゆく景色を静かに眺め続けた。
「……ん」
ふいに、すぐそばで声が聞こえた。
つかさの身体をあまり揺らさないようにと、その顔を覗き込む。
まだ目は開けていない。
でもその眉が、額の中央に寄せられ表情に影を落としていた。
なにかよくない夢でも見てるのだろうかと、そう思ったら、
「……ね……ちゃん……」
これだけ近くにいるからようやく聞き取れる言葉を、つかさが呟いた。
「お姉ちゃん……」
不安そうな顔でそう口を動かすつかさを、かがみもまた心配そうに見つめる。
「……、……て……」
「え?」
かすれていて、よく聞き取れなかった。
つかさの右手が、かがみのスカートをぎゅっと握りしめる。
「……そこに、……いて……」
「………」
今にも泣き出してしまいそうな顔で、つかさはそう言っていた。
ぎゅっと握りしめて、かすかに震える彼女の右手に、そっと自分の左手を重ねる。
「……バカね」
誰にも聞こえないよう。彼女だけに聞こえるように、かがみは呟く。
「バカね、つかさ」
そう言いながら、どこか嬉しそうな笑みで。
「ちゃんと……、ここにいるでしょ」
この言葉が、嘘ではないと教えるように。その不安が、ただの杞憂だとさとすように。優しげな瞳で見つめて、ささやきを口からもらす。
「大丈夫よ、つかさ」
その寝言が本当に些細なことだと言うように、くすぐったそうに笑顔を浮かべて、もう一度大丈夫と繰り返す。
それが伝わったのかどうか、本当のところはわからないけれど、でもつかさはゆっくりと表情を崩して、また気持ち良さそうな寝息を立て始めた。
そんな妹に、かがみは何度目かもわからないため息をもらすと、やっぱり何度目かもわからない苦笑を顔に浮かべた。
――-……かたん。
――-……かたたん。
――-……かたたん。
――-………かたん。
どこか、いま身体に感じている鼓動にも似た音が、車内の中に響いている。
ゆったりとしたテンポと、心に染み込むリズム。
春が近いことを感じさせる陽だまりが、暖かな温度を伝えてくる。
ゆったりとしたテンポと、心に染み込むリズム。
春が近いことを感じさせる陽だまりが、暖かな温度を伝えてくる。
「……ふぁ」
さっきどこかの誰かがしていたような大きなあくびが、思わずかがみの口からこぼれ落ちた。
ゆっくりと電車が動き出して、つかさの体重が伝わって来る。
「あーあ……。乗り過ごしちゃったじゃない」
本来なら降りるはずの駅のホームがゆっくりと遠ざかっていく。
見慣れた景色が終わり、学校とは反対側のほうへと向かって列車は進んでいく。
「まあでも……」
相変わらず熟睡している妹の顔を覗き込むと、その表情は安心したように緩みきっていた。そんなねぼすけな妹の姿に、かがみは小さく笑みを浮かべる。
「つかさが起きないと、終点までついちゃうわよ」
そうぼやいても、彼女は少しも起きる気配は無い。
ただ口をむにゃむにゃと動かして、小さく寝言を呟いていた。
「………」
その言葉にかがみはわずかに目を丸くすると、すぐに呆れたように、だけど嬉しそうに微笑んで、妹の肩に体重を預けた。
今日はやけに日差しがあたたかで。
眠ったらとても心地良さそうで。
それに、つかさが今呟いた言葉が、どうしても顔をにやけさせるから。
このまましばらく電車に揺られるのも悪くないなと、静かに瞳を閉じて、つかさの右手を握りしめた。
ゆっくりと電車が動き出して、つかさの体重が伝わって来る。
「あーあ……。乗り過ごしちゃったじゃない」
本来なら降りるはずの駅のホームがゆっくりと遠ざかっていく。
見慣れた景色が終わり、学校とは反対側のほうへと向かって列車は進んでいく。
「まあでも……」
相変わらず熟睡している妹の顔を覗き込むと、その表情は安心したように緩みきっていた。そんなねぼすけな妹の姿に、かがみは小さく笑みを浮かべる。
「つかさが起きないと、終点までついちゃうわよ」
そうぼやいても、彼女は少しも起きる気配は無い。
ただ口をむにゃむにゃと動かして、小さく寝言を呟いていた。
「………」
その言葉にかがみはわずかに目を丸くすると、すぐに呆れたように、だけど嬉しそうに微笑んで、妹の肩に体重を預けた。
今日はやけに日差しがあたたかで。
眠ったらとても心地良さそうで。
それに、つかさが今呟いた言葉が、どうしても顔をにやけさせるから。
このまましばらく電車に揺られるのも悪くないなと、静かに瞳を閉じて、つかさの右手を握りしめた。
――ずっとそばにいるよと、そう返事を込めて。
fin.
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- この電車乗りたかった... -- 名無しさん (2010-08-15 11:26:27)
- ほのぼのとした空気、一緒に眠る双子の姉妹……
これまでで最高のほのぼのです! -- 戸別響 (2008-03-05 11:10:06)