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「かがみー、トランプしよー」
 柊家のかがみの部屋。遊びに来ていたこなたがそんなことを言い出した。
「珍しいわね。あんたがそういうアナログな遊びやりたがるなんて」
「私だって四六時中モニタと向き合ってるわけじゃないよ」
「そりゃ悪かった。でもそう言いながら、また何かのアニメの影響じゃないでしょうね」
「うん」
「当たりかよ!」
「昨日久しぶりにテレビアニメの方を見てさ。いやー何度見てもあのシーンは切ないねー。というわけで、往人さんトランプ」
「誰が往人さんだ」
 呆れながらも、とりあえずトランプで遊ぶことは了承するかがみだった。
「で、何するの?」
「んー、何にしよっか……」
「二人でやって面白いのっていうと……」
「スピードはどう?」
「あ、いいわね。勝負が早いからサクサク進むし」
「んじゃ決まりね」
 こなたがカーペットの上を軽く払って空間を作る。かがみがジョーカーを抜いたカードの束を赤と黒の二つに分ける。分けたカードをそれぞれよく切る。場札をお互い四枚ずつ出し、手札を持って準備完了だ。
「それじゃ始めようか」
「いつでもOKよ」
 程よい緊張感が二人を包む。
「「いっせーのっ」」
 掛け声と共にお互いが手札からカードを一枚ずつ場に出した。間を置かずに二人の手と目が凄い勢いで動き、次々にカードを出していく。
 スピードはその名の通り速度が求められる勝負だ。反射神経と動体視力ならこなたが上だが、状況分析と判断力ならかがみに分がある。互いに譲らぬ、白熱した攻防が繰り広げられた。
「~~……よしっ! 勝った!」
 紙一重で先に手札を空にしたのは、かがみだった。
「あちゃー、負けちゃったか」
「惜しかったわねー」
「よしっ、もう一勝負!」
「いいわよ」
 一勝負にかかる時間は、早ければ一分に満たない。繰り返し遊べるのもスピードの良いところだ。
「あ、ちょっと待って。せっかくだから何か賭けた方が面白くない?」
「賭けるって、何を? お金賭けたら犯罪だし……そもそも賭けるほど持ってないし」
「うーん…………そうだ」
 しばらく唸って考え込んでいたこなたは、何か思いついたらしくポンと手を打った。
「こうしよう」
 そう言うと、羽織っていた上着を脱いだ。
「……何それ?」
「脱衣ルールだよ。負けた方が服を一枚脱ぐ。これでいこう」
「なっ!? ……馬鹿かあんたは! そんなの出来るわけ――」
「さあ次の勝負を始めようか、かがみん」
「聞けよ人の話! 何でそんな質の悪い酔っぱらいの遊びみたいなルールを――」
「おっとかがみ。それは二十年以上の歴史を誇る脱衣麻雀に対する冒涜だよ」
「関係ねえだろ! 麻雀じゃなくてトランプだし!」
「いいじゃん、別に減るもんじゃなし。ほら、もう始めちゃうよ」
 まだ何か言おうとするかがみに構わず、こなたはカードを切って次の準備をする。
「ま、待ちなさいよこなた! 本気でそんなのやる気!?」
「当たり前だのクラッカー」
「古っ……じゃなくて――」
「脱ぐのが嫌ならかがみが勝てばいいじゃん。それとも、連戦になると私に勝つ自信が無いのかな~?」
「なっ……そんなことないわよ!」
「それじゃあ二戦目、始めようか」
「っ……わ、分かったわよ!」
 まんまとこなたの術中に嵌められたとは自覚せず、かがみは再び勝負の席についた。
「ふっふっふ……勝負が終わる頃にはこの部屋は新宿二丁目のサウナのような光景に――って、女だからそれは違うか」
「何をぶつぶつ呟いてんのよ……」
「いや何でも。ところで脱衣完了した後はもちろん一枚絵だけじゃなくてイベントもありだよね?」
「意味わかんねーよ!!」
「ま、いいか。いざとなったらこっちで強制的にイベント発動させてもらうし」
 こなたの眼光にただならぬ妖気を感じ、かがみの背中に冷たいものが走った。
(こ、この勝負……何としてでも勝たないと……!)
 勝ったら勝ったでこなたが裸になるわけだが、それはかがみ的にどうでもいい。どうでもいいはずだ。多分。
「「いっせーのっ」」
 かがみにとってまことに不本意なルールが採択されたスピード対決が、改めて火蓋を切られた。
 一戦目が本気でなかったというわけではないだろうが、具体的な目標を得たこなたは動きが違っている。
(くっ……はやいっ……!)
 負けたくない一心でかがみも気負うが、それがかえって焦りとミスを生む。
 結局、二戦目はこなたの圧勝だった。
「よっしゃー! 勝ったー!」
「ちょっとこなた! あんた動き良くなり過ぎ!」
「確かに。こう、カードを取るたびにキラリーンと閃きが頭に走ってたね。人の革新ってのはこれなのかも。今ならファンネルとか使えそうだよ」
「脱衣ゲームで覚醒するな!」
「さあかがみ。負けたんだから一枚脱いで」
「くっ……靴下でいいわね」
 かがみがそう言って靴下に手をかけた瞬間、こなたはものすご~く残念そうな顔をした。
「靴下を最後に取っておいて欲しかったのに……」
「いやもう、何て言うか……突っ込む気も失せるわ」
 とにかく靴下を脱いだかがみ。三戦目に臨む。
 持ち前の高性能にNT補正まで加わったこなたは、フル改造νもかくやといった機動力を発揮していた。だが、かがみも負けまいとする執念でそれに追いすがる。
 勝負はこなたの優位をかがみが追う形になりながら、それでも互いに一進一退の様相を見せていた。

「一撃で何もかも一切合切決着する。眼前の萌えを放置して何がオタクか!? 何が秋葉原か!?」

「まだだ! まだ終わらんよ!」

「俺達の萌えは――それは職業ではない。生き方だろうかがみ。ならば譲れぬときもある!」

「これもひとのサガか……」

「お前に足りないものは、それは! 情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ! そして何よりも―――― 速 さ が 足 り な い ! ! 」

「いちいちうるさいわよ、こなた……」
 勝負の節目節目でかがみには半分以上元ネタの分からない台詞を叫ぶこなた。騒がしいことこの上なかった。

 数回の勝負を経て、こなたが残すのはブラとショーツとズボンと靴下の計四着。
 一方かがみはブラとショーツとズボンの残り三着。あと一敗すれば下着姿にされる。
「むふふ……かがみって意外に着やせするタイプだよね」
「じろじろ見るな! オヤジかおのれは!」
 にやにや笑っているこなたとは対称的に、かがみは羞恥で顔を真っ赤にしている。
(これ以上負けたらマジでシャレにならん……いっそ――)
「今さら棄権とか無しだからね。受けた勝負はしっかり最後までやってもらうよ」
 心を読んだかのようにこなたが釘を刺す。かがみは内心ギクリとしながらも、深呼吸を一つして、腹をくくった。
「棄権なんてしないわよ。最後までやってやるわ」
「はッ……ははッ……ははははッ……了解。そうだ。それこそが最後のいちじくの葉だ。なんとも素晴らしい! 股ぐらがいきり立つ! かがみん!」
「また何かのアニメネタか……」
 終盤戦開始。

 で、結果。こなたが三着の余裕を残して勝ちましたとさ。下着と靴下だけでも恥じることなく、堂々と胡座などかいている。
「さあ、かがみ。最後の一枚脱いで貰おうか」
「うぅ……ねえ、本当に脱がなきゃいけないの?」
 かがみは両手で胸を隠しながら、すがるような目をこなたに向ける。
「ルールの通りだよ。私だって下着になってるんだし」
「うう……」
 悔しさと恥ずかしさが綯い交ぜになっているかがみを、こなたは無慈悲に見据えている。
 旅館で一緒にお風呂に入ったこともある仲だが、こういう状況で肌を晒すのとは事情が違う。
「早くしないとつかさが帰ってくるよ」
「わ、分かってるわよ。……言っておくけど、こんな馬鹿な遊びのこと、つかさには絶対言わないでよ」
「はいはい」
「ちゃんと返事しろ! つかさがこんなこと知ったら――」
「お姉ちゃん呼んだー?」
「「あ……」」
「え……」
 唐突にドアを開けてつかさ参上。二人とも勝負に夢中で気付いていなかったが、数分前にもう帰ってきていた。
 ほぼ裸のかがみと下着姿のこなたが部屋で向かい合っているのを目撃したつかさは、ドアを開けた姿勢のまま数秒硬直していた。
 そしてその姿勢を保持したまま、肩関節だけが動いてドアをパタンと閉めた。
「ちょっ、ちょっと待ってつかさ!」
 慌てふためき、かがみがその後を追う。
「ごごごごごごごめんなさいごめんなさい! まさかお姉ちゃんとこなちゃんがこんなことしてたなんて思わなくて――」
 狼狽しきったつかさは、涙目になりながら頭を下げる。
「待てつかさ! あんたはひどく誤解をしている!」
「私、その、女の子同士っていうのはよく分からないけど、お姉ちゃん達がそれでいいなら受け入れるから――」
「話を聞けーっ!!」
「かがみ。説得する前に服着たら?」
 パンツ一丁のかがみにそう指摘するこなたは、ちゃっかりシャツとズボンを身に付けていた。
「お……お前が言うなーっっ!!」
 いっそぶん殴りたい衝動を必死で抑え込み、大声を上げるかがみだった。


「惜しかったなー……もうちょいだったのに」


おわり


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  • 今度こーいうゲーム作ろーかなー。 -- 名無しさん (2011-04-11 22:34:20)
  • ぽっぽぽぽぽぽ…ゴユックリー(┃∇┃ ) -- 名無しさん (2009-08-27 13:38:50)
  • wawawa忘れ物〜 -- 名無しさん (2009-08-26 23:48:47)


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