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白い日~ほのぼの編~

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 夜。部屋でくつろいでいたかがみの携帯が鳴った。こなたからだ。
「はい、もしもし」
『もしもしかがみんかがみんや~♪』
「夜中に電話かけてきて歌うな。切るぞ」
『寂しいこと言うね。歌はリリンが生み出した文化の極みだよ』
「どうでもいいっつの」
『さてスネーク。君に新しい任務がある』
「もう突っ込むのもだるいから。普通に用件を言え」
『りょーかい。ところで卒業式からその後変わりない?』
「ないわよ。私もつかさも。あんたこそ、入学の準備とか色々大丈夫?」
『うぃ、ご心配なく。さて用件だけど、明日渡したい物あるから、かがみんち行ってもいい?』
「……」
 かがみはカレンダーを目をやる。明日は三月十四日。ホワイトデーだ。
「ん……まあ、いいけど」
「あ、ひょっとしてかがみがこっち来てくれるつもりだった?」
「ばっ……んなわけないでしょ! 用はそれだけ?」
『うん。あ、それとね。明日だけど、ハプニングに備えて半脱ぎにされてもいい服を着ておくこと』
「そんな服はこの世に存在しねぇ」
『以上。交信を終了する』
「はいはい」
『なおこの携帯は通話後自動的にFOMA905iになる』
「人の携帯を勝手に進化させるな! また何かのアニメネタか」


 そんなこんなで翌日。ホワイトデーの朝。
「……ん~」
 春浅い日の光をカーテン越しに感じて、かがみはぼんやりと目を覚ました。昨夜はどういうわけか寝付けず、少々寝不足気味だ。
「ふぅ……もうじき新生活なんだから、シャキッとしないと――」
 独り言をしながら、かがみは上半身を起こそうとする。
 むに
 と、何か柔らかいものを感じた。どこでというと、ほぼ全身で。
「へ……?」
 かがみは間の抜けた声を上げ、その感触の正体を確認した。
「んぅ……かがみぃ……zzz」
「ッッ!!?」
 こなただった。何故かかがみと一緒の布団で眠り、寝言を呟きながらよだれを垂らしていた。
「なっ、なななな……!?」
 混乱しているかがみの体に、こなたは木の幹につかまるコアラよろしく両手両足で抱きついている。
 かがみが離れようとしても、こなたの腕と足はガッチリしていて微動だにしない。
「……zzz」
「ちょ、ちょっとこなた! 起きろ! おい!」
「何を言ってるのさ、みゆきさん……あんなウサギが化け物だなんて……zzz」
「何の夢だよ!? 放せこら!」
「よーしみさきち、君に決めたー……zzz」
「決めんな! 起きろ! ってか起きてるんじゃないのか!」
「今だかがみ……聖なる手榴弾を……zzz」
「知るかっ! はーなーせー!」
 騒ぐかがみと寝言のこなた。両者の力は拮抗し、完全な膠着状態となった。
「こんのぉ~寝坊助が~……!」
 こうなったら力尽くだと、かがみは両腕に力を込めてこなたを剥がそうとする。
 しかしこなたは不動。本当に寝ているのか疑問に思うほど強固な抱きつきっぷりだ。
「ん~……zzz……んちゅ」
「!?」
 寝ぼけてのことだろうが、こなたはかがみの胸元に唇を押しつけてきた。
「なっ、ちょっ、こなた……!」
「おね~ちゃんおはよ~。今朝は何か騒がし――」
 目をこすりながらかがみの部屋にやって来たつかさは、一瞬の間を置き、パタリと部屋の戸を閉めて去っていった。
「ああああ! ちょっと待ってつかさあああ! 誤解! 絶対誤解してるから! ていうか助けてーっ!」
「かぁがみぃん……うへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ……zzz」
「お前もいい加減に起きろ!!」
 とうとうグーでこなたの頭を殴るかがみだった。


「ふわあぁ‥…おはよーかがみ」
 クレヨンしんちゃんみたいなたんこぶを頭に拵えながら、こなたはあくび混じりに朝の挨拶をする。
「おはよう。とりあえず着替えるから部屋を出ろ」
「ああ、お気になさらず。是非ともこのまま着替えて下さい」
「馬鹿なこと言ってないでとっとと出ろってば!」
「ぶー。かがみのケチんぼー」
「何がケチだ。そもそも何であんたこんな朝早くに来てるのよ。確かに時間は聞いてなかったけど」
「早く来すぎたんで朝参りしとこうと神社の方行ったら、掃除してるかがみのお母さんに会ってね。上がって待ってるよう言われたもんで。かがみんちはお父さんもお母さんもめがっさ早起きだね」
「そりゃまあ、自営業みたいなもんだし……って、上がって待ってろと言われて何で私のベッドに潜り込んでたんだ!?」
「いやほら、しばらく会ってなかったから、かがみ分の補給をしようかと」
「何だよかがみ分って!? わけわからんわ! ……あーもう、朝から疲れる……着替えるから早く出て」
「へーい……」
 渋々かがみの部屋を出て行くこなただった。
「……ドアの隙間から覗くな」
「ちっ」

 パジャマから普段着に着替えたかがみがキッチンに向かうと、こなたはつかさと一緒に食卓を囲んでいた。
「お姉ちゃんおはよう」
「おはよう……さっきは驚かせて悪かったわね」
「かがみ朝から大騒ぎだったからねー」
「原因は100%あんただろうが!」
 こなたのおかげで朝からテンションの高いかがみである。
「こなたちゃん。朝ご飯は?」
「あ。済ませて来たんでどうぞお構いなく」
 みきにそう答えてこなたはお茶だけいただく。かがみとつかさは朝食のパンをトースターに入れる。
「そういえばつかさ。今日は珍しく早起きね」
 こんがり焼き上がったトーストにマーガリンを塗りながらかがみ。つかさはまだ眠たそうに目をしばたかせながら、照れ笑いを浮かべる。
「もうすぐ大学生になるんだし、少しは生活習慣ちゃんとしなきゃと思って」
「感心ね。三日坊主でなければなお感心だわ」
「あぅ……」
 痛いところをつかれて、つかさは酸っぱい表情になる。しかし、そうしようと思って実際に早起き出来ているのだから、かなりの進歩と言えるだろう。
「「ごちそーさま」」
 かがみとつかさが揃って朝食を終えた。


「で、こなた。渡したい物って何なの?」
 食後のコーヒーを飲みながら、かがみはやや突っ慳貪な口調でそう尋ねた。今朝のことでまだ少し機嫌が悪い。聞かれたこなたは迷ったように小首を傾げた。
「んー……今ここで渡しちゃってもいいのかな?」
「それが何なのか分からないんだから、私に判断しようがないでしょ」
「それもそだね。じゃあ、はいこれ」
 そう言ってこなたが無造作に胸ポケットから取り出したのは、ダイヤの指輪だった。1カラットはある。
「んなっ……!?」
 かがみの頭の中が白くなる。呆けているその左の薬指に、こなたはそっと指輪をはめた。あつらえたようにぴったりだ。
「給料の三ヶ月分だよ」
「あ…………アホかあんたはっ!?」
 あまりに突っ込みどころが多すぎて、結局ありきたりな文言になってしまった。
「新婚旅行はサイパンでOK?」
「まだ返事してねえだろ! ……ってそうじゃなくて! 何なのよこれは!? どうせ本物じゃないでしょ!」
「うん、まあ。やっぱり学生の身じゃイミテーションがせいぜいで」
「心臓に悪い冗談はやめろ! ったく……」
 興奮で顔を赤くしながら、かがみは薬指にはめられた指輪を外す。胸がドキドキしているのはこなたが馬鹿なことをしたせいである。おそらくは。
「その指輪は本当にあげるけど?」
「いらないわよ。どうせフリマとかで買った安物でしょ」
「まあね。悪くないデザインだと思ったんだけど」
 偽物めいた派手派手しさが無く、シンプルで、それでいて細部をそれなりに凝っている意匠。確かに、イミテーションと割り切れば、悪くない品である。しかし、かがみが惜しむ気持ちを芽生えさせた時、その指輪はこなたの手に返っていた。
 では改めましてと、こなたは持ってきていた紙袋からホワイトのラッピングをした箱を二つ取り出した。
「はい、かがみ。つかさも」
「わー。わざわざありがとうこなちゃん」
「ん……ありがと。それじゃあ、ちょっと待ってて」
 かがみは一旦自室に戻ると、机の上に置いてあった包みを取って、すぐキッチンに戻ってきた。
「これ。私からもバレンタインのお返しね」
「おー、さんきゅ。感触からするとつかさ先生監修の手作りお菓子かな?」
「昨日はつかさ出かけてから、私一人で作ったクッキーよ」
「……こいつぁいい度胸試しだ」
「文句あるなら返せよ」
「いやいや。楽しみだよ色んな意味で」
「こなちゃん。私からもこれお返し。フルーツケーキ作ってみたんだ」
 つかさもラッピングした箱をこなたへ差し出した。
「おー! あんがと。こっちは良い意味で普通に楽しみ」
「引っかかる言い方だなオイ」
 こなたに向けて目を釣り上げるかがみだが、ふと疑問に思ったことがあり、つかさに尋ねる。
「つかさ、いつの間にそんなの作ったの? 帰ってから台所使ってなかったでしょ?」
「うん。向こうで自分の分まで済ませたから」
 つかさの説明は要領を得ない。重ねて尋ねようとした時、こなたが紙袋を持って立った。
「こなた。もう帰るの?」
「うん。そんじゃね。お邪魔しましたー」
 挨拶もそこそこに、こなたは慌ただしく去っていった。
 かがみは自室へ戻り、椅子に腰掛けると、小さくため息ついた。
「あいつ何くれたんだろ? まあ、多分お菓子とかだろうけど……」
 呟きながら、こなたのくれた箱のラッピングを解こうとする。
 とその時、何かが床に落ちた。小さく、白く輝いている。
「……指輪?」
 件のイミテーションだ。包装紙の隙間に挟んであったらしい。
「いらないって言ったのに……」
 呟きながら、かがみはその指輪を優しく握りしめていた。箱の中身を見てみると、案の定、ホワイトチョコを使ったロールケーキだった。どうやらこなたの手作りらしい。見た目の出来は、つかさほどではないが、かがみよりずっと上手い。
「まったく、らしくもなく凝った物作って……ん?」
 ロールケーキと一緒に、名刺大の白いカードが入っていた。表面には一言だけ、
『大学行ってもまた一緒に遊ぼうね』
 と書かれていた。
「……ホント、らしくないわね」
 口元を綻ばせながら、かがみはしばらくそのカードを眺める。頭の中では、たまにはこっちがからかってやろうと思い、こなたに送るメールの文面を考えていた。


おわり

















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  • こなた、なんてかわいらしい子WWW。 -- 名有りさん (2009-08-18 21:57:32)
  • こなたのいじらしさに萌えたWWW -- 名無しさん (2008-08-15 03:03:40)

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