「ゆたかちゃんっ!」
「た、田村さん?」
「描いてみせるっス! ゆたかちゃんが望む、この2人の幸せなお話をっ!!」
田村家での1年生4人による勉強会での一幕から数ヶ月後。
「た、田村さん?」
「描いてみせるっス! ゆたかちゃんが望む、この2人の幸せなお話をっ!!」
田村家での1年生4人による勉強会での一幕から数ヶ月後。
「うむむむむむむ……」
田村ひよりは、所属しているアニメーション研究部の
部室の片隅にて思案顔をしながら唸っていた。
田村ひよりは、所属しているアニメーション研究部の
部室の片隅にて思案顔をしながら唸っていた。
「どーしたのひよりん? 随分真剣に悩んでるみたいだけど」
「あ、こーちゃん先輩こんちはっス…まぁいつもの通り作品のネタに悩んでまして」
「いやさ、それでもいつも以上に真剣な様子だから気になってさ」
「そんなに普段と様子が違ってたんスか…やっぱり、色々な意味で
強く気持ちが込められている作品だからなのかなぁ…今描いてるのが」
部長である八坂こうからかけられた言葉に、改めて今自分が描いている作品に
対する思い入れなどを含めた気持ちの強さをひしひしと感じるひより。
「あ、こーちゃん先輩こんちはっス…まぁいつもの通り作品のネタに悩んでまして」
「いやさ、それでもいつも以上に真剣な様子だから気になってさ」
「そんなに普段と様子が違ってたんスか…やっぱり、色々な意味で
強く気持ちが込められている作品だからなのかなぁ…今描いてるのが」
部長である八坂こうからかけられた言葉に、改めて今自分が描いている作品に
対する思い入れなどを含めた気持ちの強さをひしひしと感じるひより。
「よかったら話聞いてあげようか? まぁ、話したくないなら無理にとは言わないけど…」
「…お願い出来るっスか? 一人で考えていても正直煮詰まり気味の状態なもんで…」
こうの言葉に、渡りに船とばかりに飛び付くひより。
「…お願い出来るっスか? 一人で考えていても正直煮詰まり気味の状態なもんで…」
こうの言葉に、渡りに船とばかりに飛び付くひより。
「実は……」
数ヶ月前の同人誌即売会にて購入した『ラスボス』の同人誌の事。
それを含む出版したサークルの作品を読んでひよりが感じた、『重い』気持ちの事。
勉強会の一幕にて、ゆたかの言葉をきっかけとして自分が今描いている同人誌の事。
それら全てを包み隠さず、溜め込んでいたものを吐き出すようにひよりはこうに話した。
数ヶ月前の同人誌即売会にて購入した『ラスボス』の同人誌の事。
それを含む出版したサークルの作品を読んでひよりが感じた、『重い』気持ちの事。
勉強会の一幕にて、ゆたかの言葉をきっかけとして自分が今描いている同人誌の事。
それら全てを包み隠さず、溜め込んでいたものを吐き出すようにひよりはこうに話した。
「ふんふん…なるほどね」
場所は変わって、田村家のひよりの部屋。
ひよりの話を聞いた後、「その現物を見たい」というこうの希望でひよりは
こうと一緒に帰宅し…『ラスボス』の同人誌を出したサークルの作品一通りと
元ネタである4コママンガの単行本…それに加えひよりがあの勉強会後のイベントから
出している『ラスボス』と同一カップリングの同人誌2冊にこうは目を通していた。
場所は変わって、田村家のひよりの部屋。
ひよりの話を聞いた後、「その現物を見たい」というこうの希望でひよりは
こうと一緒に帰宅し…『ラスボス』の同人誌を出したサークルの作品一通りと
元ネタである4コママンガの単行本…それに加えひよりがあの勉強会後のイベントから
出している『ラスボス』と同一カップリングの同人誌2冊にこうは目を通していた。
「でさ、ひよりん」
「は、はいっ」
「次の本では、どういった話にするかは決まってるの?」
「え、ええ…2人が恋人として付き合ってる事を2人の友達全員に告白するって
いうのは決まってるんスけど、扱いの難しいキャラが2人いましてどうしたもんかと…」
ひよりが『扱いが難しい』と言っているキャラ。
それは、主人公と絡む回数が多い勝気で素直さには少々欠ける『ツンデレ』系のキャラと…
主人公の従妹の同級生で、口数は少ないが従妹を大切にしている『クーデレ』系のキャラの2人だった。
この2人は、それぞれ主人公とその従妹とのカップリングが『ほぼ公式』状態である事もあり
主人公と従妹が『付き合ってる』事を告白したからと言って簡単に認めて身を引くという
展開にしてしまっては物足りないだろうという事がひよりを大いに悩ませていた。
「は、はいっ」
「次の本では、どういった話にするかは決まってるの?」
「え、ええ…2人が恋人として付き合ってる事を2人の友達全員に告白するって
いうのは決まってるんスけど、扱いの難しいキャラが2人いましてどうしたもんかと…」
ひよりが『扱いが難しい』と言っているキャラ。
それは、主人公と絡む回数が多い勝気で素直さには少々欠ける『ツンデレ』系のキャラと…
主人公の従妹の同級生で、口数は少ないが従妹を大切にしている『クーデレ』系のキャラの2人だった。
この2人は、それぞれ主人公とその従妹とのカップリングが『ほぼ公式』状態である事もあり
主人公と従妹が『付き合ってる』事を告白したからと言って簡単に認めて身を引くという
展開にしてしまっては物足りないだろうという事がひよりを大いに悩ませていた。
「…あのさ、ひよりん」
「は、はひっ」
「『付き合ってる事を認める』=『自分は身を引く』とは限らないと思うね、あたしは」
「え、でもそうなると残るのは泥沼の修羅場しか…」
「いやいや、さっきの言葉をよーく考えればそれ以外の道も見出せるはずだよ」
「う~む……」
こうの言葉を聞いて、真剣な表情で思案するひより。
(認めても身は引かない…あ、あのサークルさんの作品でのあの2人は『奪い取る』事を
画策していたから2人の交際を『認めて』はいないって事になるっスね…となると、
認めた上でなおかつ身を引かないって展開というのは…あっ!! そういう事っスか…!!)
「は、はひっ」
「『付き合ってる事を認める』=『自分は身を引く』とは限らないと思うね、あたしは」
「え、でもそうなると残るのは泥沼の修羅場しか…」
「いやいや、さっきの言葉をよーく考えればそれ以外の道も見出せるはずだよ」
「う~む……」
こうの言葉を聞いて、真剣な表情で思案するひより。
(認めても身は引かない…あ、あのサークルさんの作品でのあの2人は『奪い取る』事を
画策していたから2人の交際を『認めて』はいないって事になるっスね…となると、
認めた上でなおかつ身を引かないって展開というのは…あっ!! そういう事っスか…!!)
「こーちゃん先輩、どうもありがとうございましたっス!!
おかげでいいアイデアが浮かんで来ましたっス!!」
「お礼なんて別にいいよ、もう少ししたら新しい部誌に取り掛からないと
いけないからひよりんに同人で長い事悩まれ続けると部としても困るしさ…
じゃ、あたしはもう帰るね…新刊楽しみにしてるよ、ひよりん?」
「任せて下さいっス! 一気に済ませて部誌にも余裕持って取り掛かるっスよ!!」
おかげでいいアイデアが浮かんで来ましたっス!!」
「お礼なんて別にいいよ、もう少ししたら新しい部誌に取り掛からないと
いけないからひよりんに同人で長い事悩まれ続けると部としても困るしさ…
じゃ、あたしはもう帰るね…新刊楽しみにしてるよ、ひよりん?」
「任せて下さいっス! 一気に済ませて部誌にも余裕持って取り掛かるっスよ!!」
『いいわ、認めてあげる…でも覚悟しなさい、油断してたら奪っちゃうからね』
『先輩、認めてくれてありがとうございます…でも、お姉ちゃんは絶対渡しませんっ!』
~~~~~~~~~~~~~~~
『先輩にひどい事を言われたら、いつでも私に言って…私はずっと、味方だから』
『お? それって、宣戦布告と取っちゃっていいのかな?』
『そういう風に取って頂いて構いません、でも…出来ればそういう事にならないで欲しいです』
『先輩、認めてくれてありがとうございます…でも、お姉ちゃんは絶対渡しませんっ!』
~~~~~~~~~~~~~~~
『先輩にひどい事を言われたら、いつでも私に言って…私はずっと、味方だから』
『お? それって、宣戦布告と取っちゃっていいのかな?』
『そういう風に取って頂いて構いません、でも…出来ればそういう事にならないで欲しいです』
「ふぅ、ペン入れ終わった…しっかし、プロットからペン入れまでここまで短時間でやれたのは
自己新記録じゃないっスかねぇ…自画自賛だけど凄い勢いだったなぁ、本当に」
こうが帰宅してから数時間後。
こうの言葉から閃いたアイデアをベースにプロットを組み上げ、ラフを上げて
原稿の下書きに移り…ペン入れまで一気に終わらせた事に、ひより自身が驚愕していた。
自己新記録じゃないっスかねぇ…自画自賛だけど凄い勢いだったなぁ、本当に」
こうが帰宅してから数時間後。
こうの言葉から閃いたアイデアをベースにプロットを組み上げ、ラフを上げて
原稿の下書きに移り…ペン入れまで一気に終わらせた事に、ひより自身が驚愕していた。
「さすがに疲れたし、一息入れますか…」
そう呟いて床に横たわったひよりの目に、1冊の冊子が目に入る。
「あ、そういや次のイベントのスペース何処だったか確認してなかったし見ておくっスかね」
そう言いながら床にあった冊子…次に自分のサークルが参加する同人誌即売会の
パンフレットを手に取り自分のサークルのスペースの位置を確認するひより。
そう呟いて床に横たわったひよりの目に、1冊の冊子が目に入る。
「あ、そういや次のイベントのスペース何処だったか確認してなかったし見ておくっスかね」
そう言いながら床にあった冊子…次に自分のサークルが参加する同人誌即売会の
パンフレットを手に取り自分のサークルのスペースの位置を確認するひより。
「えーっと…あ、ここっスね…ん?」
自分のサークルのスペースの位置を確認したひよりの目に、ある物が飛び込んで来る。
「隣のサークルさんの名前、何か覚えがあるっスねぇ…」
自分のサークルのスペースに隣接するサークルの名前に引っかかりを感じ、思案するひより。
「あ…あああっ…!? ちょ!? おまっ!? マ、マジっスかぁぁぁっ!?」
『引っかかり』の正体を悟ったひよりが、驚愕の声を上げる。
自分のサークルのスペースの位置を確認したひよりの目に、ある物が飛び込んで来る。
「隣のサークルさんの名前、何か覚えがあるっスねぇ…」
自分のサークルのスペースに隣接するサークルの名前に引っかかりを感じ、思案するひより。
「あ…あああっ…!? ちょ!? おまっ!? マ、マジっスかぁぁぁっ!?」
『引っかかり』の正体を悟ったひよりが、驚愕の声を上げる。
次にひよりが参加する同人誌即売会にて、自分のサークルのスペースに隣接するサークル。
…それは、以前にひよりが購入した『ラスボス』の同人誌を出していたサークルだった。
…それは、以前にひよりが購入した『ラスボス』の同人誌を出していたサークルだった。