kairakunoza @ ウィキ

陰笑う、太陽の下

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「はぁ……」

ある休日の昼下がり。
ここはオタクの聖地「秋葉腹」 
私がいるのはゲームとかマンガとかをたくさん売っている通称「ゲマズ」
そして私は小学生……

何で小学生がこんなところにいるかって? 私だって、何もなければ
こんな所にはあんまり来たくないよ……
でも、お姉ちゃんがここでバイトしてて、たまにその帰りにいっぱいマンガとか
雑誌とか買ってきて、私たちの家計を圧迫しちゃうの。ただでさえ貧乏なのに……
で、今日はそういうことのないように、見張りとして私はここにいるの。
一応さっきまでしっかりとレジで働いてたんだけど、今はちょっと前に来た、
長くて青色の髪をした女の子と話し込んでるの。私よりも少し大きいから、
小学校6年生くらいかな。そんな子がこんなところにいるなんて…… あ、私も
人の事言えないか…… でもあの子、お姉ちゃんと同じくらいオタクの知識あるよ……
お姉ちゃんと何回か会ってるみたいだし。
今はこんな子もオタクになっちゃうのか……と少しため息をついて、
ふと、その小さい子の近くに、高校生くらいの、紫のショートで、頭にリボンをつけた
女の人がいることに気がついた。

その女の人は、お姉ちゃんと女の子との会話についていけず、少し困ったような
顔をしてるように見えた。なんだろう、お姉ちゃんや女の子とはちょっと違う気が
するなぁ、と思ってみていると、その女の人と目が合って……ってあれっ?
こっちに近づいてくる?

「あれっ? 珍しいね~、こんな所にちっちゃい子がいるよ~」
「ええ、その子、私の妹なの」
「へぇー。宮河さん、妹がいたんだー」
女の人の疑問(?)に、お姉ちゃんが答えて、女の子が意外そうな声を出して
驚いた。

「へぇ~、そうなんですか。あ、私は柊つかさ。あなたの名前は?」
と、その女の人――柊つかささん――は、笑顔で私に問いかけた。

「え、あっ、……宮河、ひかげ、です」
私は、その笑顔に一瞬見とれて、答えるのが少し遅くなってしまった。

「私は泉こなた。つかさと同じ高校3年生だよ」
と、つかささんの後ろから、さっきに女の子が私に話しかけてきた。
……って高校生!? しかもつかささんと年が同じ!? わ、私、とんでもない
勘違いを…… い、言わないほうがいいかな……

「ねえ、ひかげちゃん」
「え、あ、はい! なんですか?」
突然つかささんに声をかけられて、私はちょっとびっくりしてしまった。

「一緒にお話しない? 私、こなちゃんたちの話について行けなくて……」
「い、いいですけど……」
少し悲しい顔になって私にお願いをしたつかささんは、私が「いい」と
言った瞬間に、一気に顔を明るくした。

「本当? よかった~。じゃあ、少し向こうに行こっか」
と言ってつかささんが移動したので、私も一緒にそっちへ移動した。
後ろを見てみると、お姉ちゃんと、私が小学生だと思っていたこなたさんが
また二人で話し始めてた。飽きないなー、二人とも……

「ひかげちゃんって、何年生?」
「あ、えっと、…小学校4年生です」
「そうなんだ。ここにはよく来るの?」
「ううん。今日はたまたま……」
そういって私は、今日ここに来た理由を話した。

「……ということなの」
「へ、へぇー……」
あ、つかささん、ちょっと引いてる。

「ど、どれくらい大変なの?」
「う~んとね、ご飯はいつも白いご飯だけ。お肉とかは良くて週に1回くらいしか
食べられないし、きついときは塩粥だけの時が何日も……」
「ど、どんだけ~……」
あ~、つかささん、さらに引いちゃってるよ。まあ、それが普通の反応だよね……
それに今の私、目が死んでるだろうから……

「ほ、ホントに大変なんだね……」
「うん…… どれもこれも、お姉ちゃんの無駄遣いのせいだよ~!」
そう叫んで、私はお姉ちゃんの方を向いた。お姉ちゃんは相変わらずこなたさんと
マニアックな話をし続けている。

「で、でも、働いてるのもお姉さんなんだよね?」
「まあ、そうだけど…… でも、私の事ももう少し考えてほしいよ……」
私が落ち込んだように言うと、つかささんは何故か私の方を見ながら、
何か考え事をしていた。

「ど、どうかしました?」
「あ、ううん。ただ、ひかげちゃんって、わたしのお姉ちゃんに似てるなぁ、
って思って」
「えっ、つかささんのお姉さん…ですか?」
「うん。お姉ちゃんもさっきのひかげちゃんみたいによく怒ったり
落ち込んだりするの」
「え、そ、そうなんだ……」
そ、そういうところが似てるっていわれても… あんまり嬉しくないなぁ。
と、そんな私の気持ちに気づいたのか、つかささんは慌ててフォローを入れた。

「そ、それに、しっかりしてるのもお姉ちゃんに似てるかも……」
「えっ……?」
な風にお金のことを考えてるなんて。
しっかりしてるなぁ、って私は思うよ」
「そ、そうかな……」
そのつかささんの言葉に、私はフォローとわかっていながら、少し照れてしまった。

「あ、そうやって照れるのも、お姉ちゃんと似てるなぁ」
「えっ、そうなの?」
「うん。いつもこなちゃんと話しててよく怒ったりするけど、褒めたり
からかったりすると、お姉ちゃん、そんな風に照れたりするんだ」
「へぇー…… って、どうしたんですか? つかささん」
私が納得すると、つかささんは何故か考え込んでいるような顔のなった。

「あ、うん。お姉ちゃんのそういう所を表現した言葉を、こなちゃんがいつも
言ってたんだけど…… なんだったっけ……? え~っと……ゲレンデ、だっけ?」
「えっ……?」

つかささん、何が言いたいんだろう……

「あ、違う違う! え~っと…… ツンドラ? ……これも違う気がするなぁ。
え~っと……」

う~ん、う~んと考え込むつかささん。本当に何を……
そういえば、私もそんな言葉、お姉ちゃんから聞いたことがあるような……
あっ。

「……クスッ」
「えっ、どうしたの? ひかげちゃん」
「あ、すいません…… あの、つかささんが言いたいことって、「ツンデレ」
……じゃないですか?」
「あ、うん! それそれ!」

私が答えると、つかささんはとても嬉しそうに声を上げた。
そして、その嬉しそうな顔を私に向けて。

「――ありがとう! ひかげちゃん!」

その瞬間、私はつかささんのその笑顔に見とれてしまった。
その眩しすぎる笑顔は、まるで――

「おーい、つかさー! そろそろ帰ろー!」
と、そこでお姉ちゃんとの会話を終えたのか、こなたさんが小走りでこちらに向かってくるのが見えた。


「あ、うん。じゃあね、ひかげちゃん!」
「あ、はい……」
別れの挨拶をしてこなたさんと一緒に店を出て行くつかささんに、私はちゃんとした挨拶をすることが出来なかった。

「ひかげちゃん、私達も帰るわよぅ」
「あ、待ってー!」
続いて店を出ようとしていたお姉ちゃんを、私は急いで追いかけた。

店の外に出てみると、春の陽気を支える太陽が電気街に降り注いでいた。
それを見て、ふと、今日起こった出来事を思い出してみた。すると、また
自然と笑みがこぼれてきた。

そういえば、こんな風に笑ったのって、結構久しぶりだなぁ。
最近お姉ちゃんの浪費癖に、ずっと怒ったり落ち込んだりしてばっかだったし。
その笑った時の、つかささんの困ったり笑ったり、クルクル変わる表情を
思い出して、思わずクスクスッと声を出して笑ってしまう私。

「どうしたの? ひかげちゃん」
「ううん! なんでもないよ!」
突然笑い出した私を見て不思議そうに質問したお姉ちゃんは、私がとびっきりの笑顔で返したことで、さらに不思議そうな顔をしていた。

その笑顔のままで、私はまた照りつける太陽を見上げた。そしてまた、つかささんの笑顔を思い出してみた。

「また、一緒におしゃべりしたいなぁ」
そんな事を思いながら、私はお姉ちゃんと駅までの道を、ずっとニコニコしながら歩いていった。








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  • つかさ、可愛いです! -- チャムチロ (2012-10-24 12:50:11)

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