アットウィキロゴ
kairakunoza @ ウィキ
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

kairakunoza @ ウィキ

虹色のキミ

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

僕が夏休みをのんびり一人で過ごしていた、ある日のこと。
ただ、緑色の扇風機は僕を涼しくさせようと頑張っていたとき、
のんびり相手の出来ない予期せぬ訪問者に、僕は苦笑してしまった。

「ねー白石ぃ。」
「なんでしょう?」
「あつい。」
「知ってます、もう25回目です。」
「そんなこと数えてたの?馬鹿じゃないの?!」

…あながち間違ってはいませんけど、
思いっきり馬鹿扱いされるのは何故か腹がたちますね。

「…そんなこと言うなら、扇風機、消しますよ?」
「ダメ、それだけはダメ!」

学校の補習の帰りになんとなく立ち寄ったの、
と我が白石家にやってきたあきら様は、
すぐさまエアコンのリモコンを探した。

「ちょっと、エアコンの、ぴっ、ってやるやつは?」
「ありませんよ?というか、エアコンは家にありませんよ?」
「あぁぁぁ?!」

青筋たてて怒られた。
そんな贅沢なものは、一人暮らしのこの家には存在しませんよ。

「あんた…よくそんなんで生きて行けるわね…」
「風通し良いですからね、案外快適ですよ?」

黄色のハンカチで顔を拭うあきら様を見て、
僕は提案した。

「あきら様、これに着替えたらどうですか?」
「なんで、あんたのなんかに…」
「そんな制服着てたら暑いですよ?」

かぁっ、とあきら様の頬が赤く染まる。
表情の変化を楽しんでいたら、殴られた。

「いでっ」
「い…いつまで見てるのよっ…この変態!」
「す、すいませんすいません!」

僕はあきら様が着替えない理由をやっと把握して、
慌てて風呂場に駆け込む。
…そういえばこの紫色の入浴剤、中身はまだあったかな、と振ってみる。
あまり音はしない。買いだめしてあったかな。

「いいよー」

着替え終わったらしく、あきら様の明るい声が聞こえる。

僕の渡したぶかぶかのオレンジのTシャツは、裾をゴムで留められていて、
学校のスカートはそのままだった。

「やっぱりあきらは何色でも似合うねっ」
「そですね」

フツーな返事ですいません。
あ、睨まれた。

大きめのTシャツの下から、申し訳なさそうに灰色のスカートが覗く。
靴下は真っ白い三つ折りソックス。
…そのスカート暑くないですか?

「あつい…」
「26回mへぶっ!」
「だから、数えるな!」
「すいません!」

はー、とひとつため息。
ぱたぱたと、オレンジ色のTシャツをめくり、それで風をおくっている。
…な、なんだよ、僕が頼んだんじゃないし。
あきら様はぱたぱた、ぱたぱたと、おへそのところまでめくりあげて風をおこしている。
危ない、いろんな意味で、危ない。

「なによ。」
「い、いや、なんにもっ!」
「そっ」

あれ?怒らなかった。
ぷい、と僕から顔を背けて、僕のベッドにダイビングするあきら様。
軽いからか、ぽすん、と僕がダイビングしたときよりも軽い音がする。

「はー♪涼しくなったー」

くるり、と仰向けになる。
彼女の目が、窓の外に向けられる。

「もう、空がこんな色、してる…」

空を見上げる。
藍色の空が僕たちをみていた。

「涼しい…」
「でしょう?」

あきら様は僕のベッドでころり、と寝返りをうつ。
じっと僕を見ている。
布団の上をぽんぽん、とたたく。
ここに来い、ということらしかった。

おとなしくそこに座る。
もう一度、ぽんぽん、と布団をたたく。
ここに寝ろ、ということらしかった。

あきら様に目線を合わせてねっころがる。
だめだ、目をあわせられない。

何故だ、
あきら様の顔が、ほんのり赤くなっていく。

「みないでよっ…」
「すいません、あきら様が可愛くって…」

つい、本音が出てしまう。
この顔を見られて欲しくなくって、
その小さな体を抱き寄せる。

同じ、風が吹き抜けて行く。

同じ時間を、感じている。

それがなんとなく嬉しくて。
ついついにんまりしてしまう。

いつも表情が違って、
どれが本当のあきら様かわからなくなる。
いつもにこにこしている貴方も、
不機嫌で僕に当たり散らかす貴方も、
全部が大好きなんだ、ということを
僕は今知った。

彼女は虹の色みたいに、
いろんな彼女がいる。

僕は今、言える。
虹色の彼女が、好きなんだということを。

「ねぇ、白石?」
「なんでしょう?」

彼女の頭をそっと撫でる。
頬をぷにっとして、その感触を楽しむ。
とろん、とした眼は、すぐに閉じてしまいそうだった。

「おやすみなさい…」
「おやすみなさい、あきら様…」

つん。

彼女の鼻が、僕の鼻に当たる。
目が合ってしまうのが、恥ずかしくて。
ちょっと距離が近づく。

そっと、唇が触れる。
このままでいたい。そう思った。
あきら様もそう思ったのか、動く気配はなかった。
唇を触れ合わせたまま、僕らは眠りについた。

それが、僕たちの、
初めてのキスだった。


















コメントフォーム

名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー