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第二回陵桜公会議 または♪Next Christmas I'll Give You My Heart……?
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終業式。
担任からのありがたくないプレゼントを受け取り、起立、礼で二学期ともさようなら。
二学期の終わりが冬休みの始まりで、旧い年の終わりにして新しい年の始まり。移り変わりという名の不安定さが空気をしてざわつかせ、心をして浮つかせるのも無理からぬ事だろうか。すぐに帰ろうとせず、教室で駄弁ったり、今年最後の挨拶を交わしたりしている生徒も多い。
放課後に返却するつもりなのだろう。こなたが聖書を机の上に出したまま帰し自宅をしているのを見て、みゆきは尋ねる。
「どこまで読み進められましたか?」
「ん~~、それがねえ」
こなたが白状するところによると、キリスト教徒のように振る舞えたのは糖武日洸線に乗り換えてから、倖手に着くまでのわずかな時間だけだったという。
「家じゃおとーさんとプレゼント交換して、そこに酔っ払ったゆい姉さんが乗り込んできて……すっかり日本的なクリスマスだったよ」
「あらあら」
「その電車の中でも、人形劇史上に残る三バカにそっくりな人たちを見かけて、なんか気になっちゃってね~」
「そうですか」
よく分からないが、まあ歴史的な存在なのだろうくらいの感じで認識したみゆきが微笑む。
「だから最初の『創世記』だけ。もちろん途中まで」
「『創世記』ですか……」
みゆきは不安げな表情になり、視線を迷走させる。
「夏目じゃないよ」
「それは漱石ですね」
ここでノリツッコミをかますとすると、沙英さんの事が大好きな夏目と絡めるのが常套だろうか、なんて考えていると、つかさがやって来て、
「ミルクセーキ飲みたいかも……」
『創世記』から別のものを連想したらしい。
「帰ったら作ろうかな。お姉ちゃんもどう?」
「へ?」
教室の出口では点目になったかがみが、すでに帰り支度を固めてやってきたところだった。
「お姉ちゃんもミルクセーキ、どう?」
「私は……遠慮する。ケーキを食べ過ぎて……」
そんな会話を展開する柊姉妹の横で、こなたがふと思い出したようにみゆきに聞く。
「禁断の果実ってのも出てきたけど、あれリンゴじゃないんだね?」
「え、ええ……。ジョン・ミルトンが、『失楽園』でリンゴの様なと表現して以降、そのようなイメージが広まったらしいですよ」
上の空のままみゆきが答え、さらに付け加える。
「白雪姫の毒リンゴも、その辺りから、来ているのかも、知れま、せん、ね……」
みゆきの様子が目に見えておかしいので、こなたは訝しげな表情になる。
「みゆきさん、どうしたの?」
「え、ええと……」
うろたえるみゆきは、ブルーハワイについて問われて以来だったかもしれない。現にみゆきは迷っていた。真実を晒してこなたの夢(?)を壊すべきか、真実を隠蔽してでも守るべきか。みゆきは前者を選んだ。
「たびたび夢を壊すようで申し訳ありませんが……」
意を決して口を開くみゆきに、こなたは場違いにもこう言う。
「みゆきさんは牛じゃなくてバクだね」
「食べはしませんよ……。泉さんが読まれたのは旧約聖書ですよね?」
「そうだけど……」
新約聖書であれば、「マタイの福音書」か「マルコの福音書」から始まるはずである。
「旧約聖書はユダヤ教の教典でもあり、といいますか、元々はユダヤ教のものです。さらに『創世記』など、一部はイスラム教でも教典の扱いを受けてます」
一方新約聖書は、実質的にキリスト教だけの教典という旨をみゆきは説明した。イエスはイスラム教でも預言者とされているが、キリスト教徒との対立と抗争があまりに長く激しいため、イスラム教徒からの崇拝は実質的に受けていないという。
こなたは点目になった。
「てことは……」
キリスト教徒らしくクリスマスを過ごすなら、旧約聖書より新約聖書を読むべきだった、ということにでもなろうか。
「いえ、でも、旧約聖書はキリスト教の教典でもありますし……」
日本人である以上、キリスト教徒以外の何かと間違われるような事はまずありえない。そうフォローしようとしたみゆきが口火を切るより早く、こなたがかがみににじり寄り、肘で小突きながら言う。
「この、この。本当にツンデレさんなんだから」
「はあ?」
6人家族にちょうどいい大きさのケーキがない事を愚痴っていたかがみは、道ならぬ恋仕様のこなたが、またセーラー服のリボンを外そうとするのに困惑する。こなたは今度は何を始めたのか?
「ちょっと、みゆき」
かがみはみゆきに、助けと説明を求めた。みゆきではなくこなたが、そのどちらでもなく質問を与えた。リボンを外そうとする手を止めないまま。
「旧約聖書をつかませて、どうしたかったのかな?」
「……」
激昂してもいいところなのに、かがみは絶句した。顔が紅潮したのはリボンがほどかれてしまったせいか、それとも……。こなたはというと、この会話が終るまで持たせるつもりだったリボンが、意外にあっさりほどけてしまったため手持ち無沙汰である。
そんな二人の利害は意外に一致して、
「結べ」
「あい」
自分で解いたリボンを自分で結ぶという空しい作業をしながら、こなたは説明する。
「新約聖書じゃないと、キリスト教徒のように振舞うとするのに挫折するよね」
こなたは、必ずしもそうというわけではないのですが……、と言おうとするみゆきを手で制して続ける。
「そこで私はリヴェンジを試みる、と」
「あんたにそれだけの勤勉さをあるのなら、まあ……」
「それを見て、クリスマスが近付いたら、かがみが言うんだ。『こなた、去年はごめんね。お詫びと言っちゃなんだけど、今年は私も付き合うわ』。手にした二冊の新約聖書。片方には赤いリボンが巻いてあって……」
こなたは、体感温度がやけに下がってきているのに気付いた。
「あれ~、あれ~?? 私そんなお寒い事言った?」
取って置きのギャグですべってしまったコメディアンのように、こなたが聞いた。
担任からのありがたくないプレゼントを受け取り、起立、礼で二学期ともさようなら。
二学期の終わりが冬休みの始まりで、旧い年の終わりにして新しい年の始まり。移り変わりという名の不安定さが空気をしてざわつかせ、心をして浮つかせるのも無理からぬ事だろうか。すぐに帰ろうとせず、教室で駄弁ったり、今年最後の挨拶を交わしたりしている生徒も多い。
放課後に返却するつもりなのだろう。こなたが聖書を机の上に出したまま帰し自宅をしているのを見て、みゆきは尋ねる。
「どこまで読み進められましたか?」
「ん~~、それがねえ」
こなたが白状するところによると、キリスト教徒のように振る舞えたのは糖武日洸線に乗り換えてから、倖手に着くまでのわずかな時間だけだったという。
「家じゃおとーさんとプレゼント交換して、そこに酔っ払ったゆい姉さんが乗り込んできて……すっかり日本的なクリスマスだったよ」
「あらあら」
「その電車の中でも、人形劇史上に残る三バカにそっくりな人たちを見かけて、なんか気になっちゃってね~」
「そうですか」
よく分からないが、まあ歴史的な存在なのだろうくらいの感じで認識したみゆきが微笑む。
「だから最初の『創世記』だけ。もちろん途中まで」
「『創世記』ですか……」
みゆきは不安げな表情になり、視線を迷走させる。
「夏目じゃないよ」
「それは漱石ですね」
ここでノリツッコミをかますとすると、沙英さんの事が大好きな夏目と絡めるのが常套だろうか、なんて考えていると、つかさがやって来て、
「ミルクセーキ飲みたいかも……」
『創世記』から別のものを連想したらしい。
「帰ったら作ろうかな。お姉ちゃんもどう?」
「へ?」
教室の出口では点目になったかがみが、すでに帰り支度を固めてやってきたところだった。
「お姉ちゃんもミルクセーキ、どう?」
「私は……遠慮する。ケーキを食べ過ぎて……」
そんな会話を展開する柊姉妹の横で、こなたがふと思い出したようにみゆきに聞く。
「禁断の果実ってのも出てきたけど、あれリンゴじゃないんだね?」
「え、ええ……。ジョン・ミルトンが、『失楽園』でリンゴの様なと表現して以降、そのようなイメージが広まったらしいですよ」
上の空のままみゆきが答え、さらに付け加える。
「白雪姫の毒リンゴも、その辺りから、来ているのかも、知れま、せん、ね……」
みゆきの様子が目に見えておかしいので、こなたは訝しげな表情になる。
「みゆきさん、どうしたの?」
「え、ええと……」
うろたえるみゆきは、ブルーハワイについて問われて以来だったかもしれない。現にみゆきは迷っていた。真実を晒してこなたの夢(?)を壊すべきか、真実を隠蔽してでも守るべきか。みゆきは前者を選んだ。
「たびたび夢を壊すようで申し訳ありませんが……」
意を決して口を開くみゆきに、こなたは場違いにもこう言う。
「みゆきさんは牛じゃなくてバクだね」
「食べはしませんよ……。泉さんが読まれたのは旧約聖書ですよね?」
「そうだけど……」
新約聖書であれば、「マタイの福音書」か「マルコの福音書」から始まるはずである。
「旧約聖書はユダヤ教の教典でもあり、といいますか、元々はユダヤ教のものです。さらに『創世記』など、一部はイスラム教でも教典の扱いを受けてます」
一方新約聖書は、実質的にキリスト教だけの教典という旨をみゆきは説明した。イエスはイスラム教でも預言者とされているが、キリスト教徒との対立と抗争があまりに長く激しいため、イスラム教徒からの崇拝は実質的に受けていないという。
こなたは点目になった。
「てことは……」
キリスト教徒らしくクリスマスを過ごすなら、旧約聖書より新約聖書を読むべきだった、ということにでもなろうか。
「いえ、でも、旧約聖書はキリスト教の教典でもありますし……」
日本人である以上、キリスト教徒以外の何かと間違われるような事はまずありえない。そうフォローしようとしたみゆきが口火を切るより早く、こなたがかがみににじり寄り、肘で小突きながら言う。
「この、この。本当にツンデレさんなんだから」
「はあ?」
6人家族にちょうどいい大きさのケーキがない事を愚痴っていたかがみは、道ならぬ恋仕様のこなたが、またセーラー服のリボンを外そうとするのに困惑する。こなたは今度は何を始めたのか?
「ちょっと、みゆき」
かがみはみゆきに、助けと説明を求めた。みゆきではなくこなたが、そのどちらでもなく質問を与えた。リボンを外そうとする手を止めないまま。
「旧約聖書をつかませて、どうしたかったのかな?」
「……」
激昂してもいいところなのに、かがみは絶句した。顔が紅潮したのはリボンがほどかれてしまったせいか、それとも……。こなたはというと、この会話が終るまで持たせるつもりだったリボンが、意外にあっさりほどけてしまったため手持ち無沙汰である。
そんな二人の利害は意外に一致して、
「結べ」
「あい」
自分で解いたリボンを自分で結ぶという空しい作業をしながら、こなたは説明する。
「新約聖書じゃないと、キリスト教徒のように振舞うとするのに挫折するよね」
こなたは、必ずしもそうというわけではないのですが……、と言おうとするみゆきを手で制して続ける。
「そこで私はリヴェンジを試みる、と」
「あんたにそれだけの勤勉さをあるのなら、まあ……」
「それを見て、クリスマスが近付いたら、かがみが言うんだ。『こなた、去年はごめんね。お詫びと言っちゃなんだけど、今年は私も付き合うわ』。手にした二冊の新約聖書。片方には赤いリボンが巻いてあって……」
こなたは、体感温度がやけに下がってきているのに気付いた。
「あれ~、あれ~?? 私そんなお寒い事言った?」
取って置きのギャグですべってしまったコメディアンのように、こなたが聞いた。
言った
みゆきとつかさはさすがに遠慮したが、彼女らの会話に聞き耳を立てていた、あるいは偶然耳にしてしまったギャラリーたちは、心の中で嵐の様にそう叫んだ。
「……故意ではないという可能性もありますが」
つまり、かがみが旧約聖書がもともとユダヤ教の教典であった事を知らなければ、故意にこなたに旧約を掴ませた事にはならない。読み物として比較した場合、旧約の方が面白いというのがもっぱら評判だから、文芸を愛するかがみなればこそ、旧約を選んだという可能性もあるというところまでみゆきは思い至っていた。
どうなのですか? という視線を受けて、しかしかがみは答えるのが面倒臭そうに頬を掻くと、こなたの机の上にあった聖書を手にとって、三人に表紙が見えるようにした。そこには単に『聖書』とだけあった。
「これは旧約? 新約?」
溜息をつき、それをみゆきに手渡した。みゆきは訳が分からないまま最初の方の開く。ページの上のほうに「創世記」とあった。旧約聖書の最初の書である。内容にも素早く目を通す。蛇がイヴに禁断の果実を食べるよう勧めている場面で、どうやら間違いなく旧約聖書の「創世記」のようである。
「じゃあ、最後の方を開いてみて」
言われるまま、みゆきは本の最後の方のページを開いた。
「こ、これは……!」
ページの上のほうには、『ヨハネの黙示録』とあった。最後の審判について予言した、新約聖書の最後の書である。
「どういうこと??」
訳が分からず、つかさがみゆきとかがみの顔を不安げに見遣る。
「キリスト教徒御用達の旧約聖書と新約聖書が、まとめて一冊になってるってだけよ。図書館にこれしかなくて」
かがみが聖書を探している時、こなたは漫画家の画集でもないかと美術書の一角をウロウロしていたので、そのへんの事情は知らなかったのである。……そしてかがみも、特に説明はしなかった。
「それで『聖書』ですか……」
「そういうことね。でも、まあ……」
自分の期待(?)が外れた事に肩を落とすこなたの方を見て、かがみが言う。
「あんたがそうしたいなら、付き合ってあげても……いい……わよ」
「へ?」
顔を上げたこなたは見た。かがみの顔が、点火直後のロケットエンジンの下の方から出ているもののように真っ赤なっているのを。一人体感温度が上昇するかがみは、乾燥した空気のせいでチクチクする額を拭いながら言う。
「受験勉強がちゃんと捗っていたらよ。あんたの分も含めて」
こう言っておく事で、表向きはこなたに受験勉強をさせるため、という大義名分が成り立つ。ギャラリーは誰一人信じてないが。
みゆきから聖書を返してもらい、さらに付け加える。
「来年の今頃っていったら、それどころじゃないんだから……」
誰にもされていない質問に答えながら、早足で教室を出て行ってしまう。自分名義で借りた聖書なので、自分で返却するつもりのようだ。
「あ、待って」
こなたが慌てて荷物をまとめて、かがみに続く。
どうやら二人は、早くも来年のクリスマス・プレゼントを手に入れたようである。
「これも、神様の思し召しでしょうか……」
取り残された人々の内、みゆきがそう呟いた。彼女なりに皮肉を込めたつもりだったのだが、あまり成功してないようだ。
「……」
一方取り残された人々の内、つかさはかがみの態度と言い分に100%納得したわけではなかった。
つかさが腑に落ちない点はただ一つ、こなたの代わりに聖書を借りてやると言った時の、あの底知れぬ何かだ。
もしかして今のこの状況こそ、かがみの描いたシナリオ通りの結末なのではないか?
残念ながらつかさ、考えるのは得意ではない。助けが必要である。だからつかさは、最も身近かつ適切な人に助けを求めた。
「ねえ、ゆきちゃん。帰りにうちでミルクセーキ飲んでいかない?」
「……故意ではないという可能性もありますが」
つまり、かがみが旧約聖書がもともとユダヤ教の教典であった事を知らなければ、故意にこなたに旧約を掴ませた事にはならない。読み物として比較した場合、旧約の方が面白いというのがもっぱら評判だから、文芸を愛するかがみなればこそ、旧約を選んだという可能性もあるというところまでみゆきは思い至っていた。
どうなのですか? という視線を受けて、しかしかがみは答えるのが面倒臭そうに頬を掻くと、こなたの机の上にあった聖書を手にとって、三人に表紙が見えるようにした。そこには単に『聖書』とだけあった。
「これは旧約? 新約?」
溜息をつき、それをみゆきに手渡した。みゆきは訳が分からないまま最初の方の開く。ページの上のほうに「創世記」とあった。旧約聖書の最初の書である。内容にも素早く目を通す。蛇がイヴに禁断の果実を食べるよう勧めている場面で、どうやら間違いなく旧約聖書の「創世記」のようである。
「じゃあ、最後の方を開いてみて」
言われるまま、みゆきは本の最後の方のページを開いた。
「こ、これは……!」
ページの上のほうには、『ヨハネの黙示録』とあった。最後の審判について予言した、新約聖書の最後の書である。
「どういうこと??」
訳が分からず、つかさがみゆきとかがみの顔を不安げに見遣る。
「キリスト教徒御用達の旧約聖書と新約聖書が、まとめて一冊になってるってだけよ。図書館にこれしかなくて」
かがみが聖書を探している時、こなたは漫画家の画集でもないかと美術書の一角をウロウロしていたので、そのへんの事情は知らなかったのである。……そしてかがみも、特に説明はしなかった。
「それで『聖書』ですか……」
「そういうことね。でも、まあ……」
自分の期待(?)が外れた事に肩を落とすこなたの方を見て、かがみが言う。
「あんたがそうしたいなら、付き合ってあげても……いい……わよ」
「へ?」
顔を上げたこなたは見た。かがみの顔が、点火直後のロケットエンジンの下の方から出ているもののように真っ赤なっているのを。一人体感温度が上昇するかがみは、乾燥した空気のせいでチクチクする額を拭いながら言う。
「受験勉強がちゃんと捗っていたらよ。あんたの分も含めて」
こう言っておく事で、表向きはこなたに受験勉強をさせるため、という大義名分が成り立つ。ギャラリーは誰一人信じてないが。
みゆきから聖書を返してもらい、さらに付け加える。
「来年の今頃っていったら、それどころじゃないんだから……」
誰にもされていない質問に答えながら、早足で教室を出て行ってしまう。自分名義で借りた聖書なので、自分で返却するつもりのようだ。
「あ、待って」
こなたが慌てて荷物をまとめて、かがみに続く。
どうやら二人は、早くも来年のクリスマス・プレゼントを手に入れたようである。
「これも、神様の思し召しでしょうか……」
取り残された人々の内、みゆきがそう呟いた。彼女なりに皮肉を込めたつもりだったのだが、あまり成功してないようだ。
「……」
一方取り残された人々の内、つかさはかがみの態度と言い分に100%納得したわけではなかった。
つかさが腑に落ちない点はただ一つ、こなたの代わりに聖書を借りてやると言った時の、あの底知れぬ何かだ。
もしかして今のこの状況こそ、かがみの描いたシナリオ通りの結末なのではないか?
残念ながらつかさ、考えるのは得意ではない。助けが必要である。だからつかさは、最も身近かつ適切な人に助けを求めた。
「ねえ、ゆきちゃん。帰りにうちでミルクセーキ飲んでいかない?」
まさかこうなるとはね……。
カウンターの中で、今年最後の図書館業務に追われる図書委員に、聖書返却の旨を告げた時、かがみはそう思わずにはいられなかった。
当初の目論見は、こなたの指摘した通りだった。旧約聖書の性質を知らない振りをしてそれをこなたに掴ませ、来年のクリスマスは新約聖書片手に、クリスマス・ミサにでも誘おうかなんて考えた。
図書館に新旧約が一体の、まさにキリスト教徒向けとしか言いようのない聖書しかなかったのには、深く失望した。その失望があまりに深くて、その時点で十分予想しえたこの結末に思い至らなかった。こなただからではないが、あの辞書にも匹敵するような旧約のパートを読破して、新約のパートまで進むわけないではないか。
それでも結局……結局……。
「かがみ、なにニヤけてんの?」
図書館を出たところで、こなたが訝って聞いてきた。
「ん~」
これを「結果オーライ」というありふれた言葉で言い表すべきではないと思った。だからかがみはこう答えたのだった。
「これも神様の思し召しかな、って思ってね」
カウンターの中で、今年最後の図書館業務に追われる図書委員に、聖書返却の旨を告げた時、かがみはそう思わずにはいられなかった。
当初の目論見は、こなたの指摘した通りだった。旧約聖書の性質を知らない振りをしてそれをこなたに掴ませ、来年のクリスマスは新約聖書片手に、クリスマス・ミサにでも誘おうかなんて考えた。
図書館に新旧約が一体の、まさにキリスト教徒向けとしか言いようのない聖書しかなかったのには、深く失望した。その失望があまりに深くて、その時点で十分予想しえたこの結末に思い至らなかった。こなただからではないが、あの辞書にも匹敵するような旧約のパートを読破して、新約のパートまで進むわけないではないか。
それでも結局……結局……。
「かがみ、なにニヤけてんの?」
図書館を出たところで、こなたが訝って聞いてきた。
「ん~」
これを「結果オーライ」というありふれた言葉で言い表すべきではないと思った。だからかがみはこう答えたのだった。
「これも神様の思し召しかな、って思ってね」
おわり