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Beach confess

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 寄せては返す波の音が、規則的に耳朶に届く。
「お姉ちゃん」
 ビーチパラソルの影に敷いたビニールシートで寝そべっていた私の真上に、
リボンを結んだ、あどけない顔をした少女が顔を覗かせた。

 梅雨の合間のよく晴れた休日、私は、お父さんと、従姉妹のゆーちゃんとの3人で海水浴場に遊びにきていた。
 まだ夏休み前ということもあり、夏休み中はおそらく芋洗い状態となるであろうビーチは、
地元の小学生が目立つ程度で、閑散としている。
 ちなみに、お父さんは隣のシートで心地良さそうに寝息をたてている。
 流石に、浜辺で川の字になる勇気はなかったようだ。

「お姉ちゃん、ジュースだよ」
「ありがと」
 私は、半身を起こして、ゆーちゃんが買ってきてくれたオレンジジュースを貰う。
 ストローを差して中身を吸い込むと、とても冷たくて甘い味が口いっぱいにひろがる。

「こなたお姉ちゃん。あのね」
 ジュースを持ったまま、私の隣に座ったゆーちゃんが、ぴったりと肩を寄せてきた。
 ピンクの可愛らしい水着を着た少女の、露わになっている二の腕があたる。
 ひんやりして、くすぐったい。

「なに? ゆーちゃん」
「お姉ちゃんって、好きなひといるの? 」
「ぷはっ」
 いきなりの際どい質問に思わずむせてしまい、私は派手にせき込んだ。


「大丈夫? 」
 ゆーちゃんは心配げな表情で、白いハンカチを差し出してくる。

「う、うん。なんとか」
 受け取ったハンカチで唇を拭い、荒い息を何度かつくと気分は落ち着いてくる。それにしても――
「ゆーちゃん。いきなり何を言いだすのさ」
「ごめんなさい。でも気になっちゃって」
 彼女は少しだけしゅんと身体を縮めるけれど、同時に小さく舌を出している。
 ちょっとしたいたずらを企む小悪魔のようで、思わず抱きしめてしまいそうになるくらい可愛い。

「うーん。誰のフラグを立てたいか、というとね」
 私は額に浮かぶ汗を拭いながら、答えることにする。
「フラグ? 」
 ゆーちゃんはきょとんと首を傾げている。どうやら意味が良く分かっていないようだ。

「うん。ゲームで良く使うんだけれど、後で恋愛関係に発展することを示すもの…… かな」
「ふうん」
 相槌を打ったゆーちゃんの顔を見ながら、言葉を続ける。

「やっぱり、かがみんかな、つかさや、みゆきさんのフラグも立てたいなあ」
「そう」
 返す声が、少しだけ低くなったような気がした。

「それだけ? 」
「他に…… 誰かいたかな? 」
 私は、純粋すぎる瞳から目をそらせ、敢えて空とぼける。

「ううん。いいんだよ。こなたお姉ちゃん」
 ゆーちゃんの声と体が、細かく震える。
「柊先輩達も、高良先輩もとても魅力的だよね。だから当然だよね」
 小さな声を振り絞って、なんとか笑顔をみせようとしているけれど、傍から見ると泣きそうにしか見えない。


「ごめん。ゆーちゃん」
 目の前の少女が零した涙に焦った私は、慌てて謝った。
「こなた、お姉ちゃん…… 」
 ゆーちゃんは涙を止めて、私をじっと見つめてくる。
「本当はね。私が一番フラグを立てたいのは、目の前にいる女の子なんだ」
「え!? 」
「困らせたくって意地悪をしちゃったけれど、やっぱり私には、ゆーちゃんが一番なのだよ。
なにせ、萌え要素のかたまりだしね」
 私は瞼の端に涙をためている、小柄な少女の背中に手をまわしながら、片目を瞑ってみせた。

「こなたお姉ちゃんの…… 莫迦」
 告白を聞いたゆーちゃんが、小さな胸に飛び込んできて、周囲に構わず泣きじゃる。
「ごめんね。ゆーちゃん」
 私は、意地悪をしてしまったことに罪悪感を感じながら、胸の中でしゃくりあげている、
少女の背中をゆっくりとさすり続けた。

「もう、落ちついた? 」
「うん。ごめんね」
 声をかけると、意外とはっきりした反応が返ってくる。

「あのね。こなたお姉ちゃん。お願いがあるのだけど」
 鈴の鳴るような声で、私の耳元で囁く。
 お互いの距離は5センチしか離れていない。
「なに…… かな? 」
 大きい瞳を見据えながら、私は動悸を抑えながら囁き返す。

「キス…… してくれない? 」
 ゆーちゃんは言うと同時に、心持ち唇を上に向ける。
「うん。いいよ」
 私は頷いてから、肩の上に掌を載せて、ゆっくりと唇を塞いでいった。


(了)

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