――開けた視界。ちょっとした幸せに、目を閉じる。
『開いた視線の先に』
――目を開けたはずなのに、何も見えなかった。
違った。
正確には、目の前で視界いっぱいに遮っているものが何なのかわからなかったのだ。
ちゃんと見ようと目を凝らそうとして、視界が霞んでいるのに気が付いた。
少し身体が重い、と思いながらその目をこすろうとしたら、手が動かせないことにも気が付いた。
正確には、目の前で視界いっぱいに遮っているものが何なのかわからなかったのだ。
ちゃんと見ようと目を凝らそうとして、視界が霞んでいるのに気が付いた。
少し身体が重い、と思いながらその目をこすろうとしたら、手が動かせないことにも気が付いた。
――?
寝起きでぼんやりした頭のままで、つかさはゆっくりと考え始める。
手が動かせないのは……目の前のものと密着しているからだ。
身体が重いのは……その前にあるものから伸びたなにかが、自分の上に乗っかっているからのようだ。
そしてずっと、目の前のものから甘いようないい匂いがしているのは――、……それが姉の身体であるからのようだった。
ああ……、とつかさは思い出した。
身体が重いのは……その前にあるものから伸びたなにかが、自分の上に乗っかっているからのようだ。
そしてずっと、目の前のものから甘いようないい匂いがしているのは――、……それが姉の身体であるからのようだった。
ああ……、とつかさは思い出した。
ここはかがみの、姉のベッドの上。
状況は――彼女の右手で抱き寄せられて、胸の中に顔をうずめている格好。
そして、起きたらこうなっていた経緯は――昨日、夏休み定番のテレビでやっていた心霊特集を見てしまったからだった。
状況は――彼女の右手で抱き寄せられて、胸の中に顔をうずめている格好。
そして、起きたらこうなっていた経緯は――昨日、夏休み定番のテレビでやっていた心霊特集を見てしまったからだった。
見たくなかったなら、見なければよかったのに……なんて言われるかもしれないけれど、そのときは家族が皆そろっていたときで、
しかもみんな結構楽しみにしていたみたいだったし、もちろん今ここにいる姉もそうで、抜けるに抜けられなくて、それに抜けるのはなんかイヤだったし、
どうしようかと思っていたらすでに始まってしまって、テレビに映った心霊写真の、あの、いわゆる写ってる……ってところを思い切り見ちゃって、そうなったらここで部屋に戻っても一人っきりになって余計に怖くなっちゃうし、
だけどそうは言っても、もうこれ以上は見ていられな――お、お姉ちゃんなんかあそこに写ってぇえっ……!
しかもみんな結構楽しみにしていたみたいだったし、もちろん今ここにいる姉もそうで、抜けるに抜けられなくて、それに抜けるのはなんかイヤだったし、
どうしようかと思っていたらすでに始まってしまって、テレビに映った心霊写真の、あの、いわゆる写ってる……ってところを思い切り見ちゃって、そうなったらここで部屋に戻っても一人っきりになって余計に怖くなっちゃうし、
だけどそうは言っても、もうこれ以上は見ていられな――お、お姉ちゃんなんかあそこに写ってぇえっ……!
「……ぁぅ」
思いっきりあの姿を思い出してしまって、つかさは目の前の姉の胸に顔を押し付けた。
ちょっと暑いな……と思いつつも、目を半開きにしたまま目の前の温もりを堪能する。
部屋の中は、暗くないみたいだった。
あの夜独特の、薄い闇が下りている感じではなく、朝方のうっすら青い色が部屋の中を染めていた。
多分……6時くらい? ……どうだろう、あんまりというかこんな時間に目が覚めることなんて全然無いから、いまいちよくわからない。
時計を確認したくても、身動き取れないし……。
そんなふうに考えながら、段々と思考がループし始めてきた。
まだ寝たりないみたいで、まぶたが少しずつ下がっていく。
このままもう一度寝よう……と思って、その睡魔に身を任せようとして、
ちょっと暑いな……と思いつつも、目を半開きにしたまま目の前の温もりを堪能する。
部屋の中は、暗くないみたいだった。
あの夜独特の、薄い闇が下りている感じではなく、朝方のうっすら青い色が部屋の中を染めていた。
多分……6時くらい? ……どうだろう、あんまりというかこんな時間に目が覚めることなんて全然無いから、いまいちよくわからない。
時計を確認したくても、身動き取れないし……。
そんなふうに考えながら、段々と思考がループし始めてきた。
まだ寝たりないみたいで、まぶたが少しずつ下がっていく。
このままもう一度寝よう……と思って、その睡魔に身を任せようとして、
「……ぁー……」
眠気とは違う、身体を襲う別の感覚があることに気が付いた。
それは、まるで身体の奥底からやってくるような感覚で。
子どもの頃、もちろん覚えていないくらい小さいころだけど、この感覚に負けてしまったことがあったけれど。
眠くたって、それは容赦なく襲い掛かってくる。
怖くて一人で廊下を歩きたくないときにだって、狙いすましたかのように身体へとやってきて。
でもそれは生理反応で、絶対に処理しなければイケナイし、いろいろと大変なことになってしまうわけで。
生きている人間。いや、ほとんどの生物が襲われる衝動。
誰もこれを避けられない。
自分もまた、その例外ではけしてない。
それは、まるで身体の奥底からやってくるような感覚で。
子どもの頃、もちろん覚えていないくらい小さいころだけど、この感覚に負けてしまったことがあったけれど。
眠くたって、それは容赦なく襲い掛かってくる。
怖くて一人で廊下を歩きたくないときにだって、狙いすましたかのように身体へとやってきて。
でもそれは生理反応で、絶対に処理しなければイケナイし、いろいろと大変なことになってしまうわけで。
生きている人間。いや、ほとんどの生物が襲われる衝動。
誰もこれを避けられない。
自分もまた、その例外ではけしてない。
「……ん……」
だいぶ、そこまで来ていた。
つかさは姉のことを起こさないように慎重に起き上がり、ベッドから下りて、物音を立てないよう気をつけながら、静かに部屋を出て――、足早にトイレへと向かった。
♪
「はふいー…………」
あ、いけない。
いくら自分の家だからって、そんな顔してるんじゃないわよ……って、お姉ちゃんにまた怒られてしまう。
それにちょっと……はしたないかな……?
そう思いながら、つかさはレバーを下ろした。
ぐわしゃぁぁっ――、と水の流れる音がした。
いくら自分の家だからって、そんな顔してるんじゃないわよ……って、お姉ちゃんにまた怒られてしまう。
それにちょっと……はしたないかな……?
そう思いながら、つかさはレバーを下ろした。
ぐわしゃぁぁっ――、と水の流れる音がした。
ようやくほっとしたらまた眠気が戻ってきた。
大きな欠伸をしながら(これも前に姉に怒られたけど)つかさはさっきまで寝ていた、かがみの部屋まで帰ってきた。
音を立てないよう、静かにドアを閉める。
一瞬、自分の部屋に戻ったほうがいいんじゃないかと思ったけど、やめておいた。
迷惑かもしれないけど……、でもやっぱり……。
少しでも姉のそばに居たいというのは、わがままだろうか。
――わがままだって、いいよ。
たとえそうだとしても……後ろめたいわけじゃない。
姉なら絶対許してくれるとか、そういうことではないけれど。
ただ、今のこの気持ちを、大事にしたかった。
大きな欠伸をしながら(これも前に姉に怒られたけど)つかさはさっきまで寝ていた、かがみの部屋まで帰ってきた。
音を立てないよう、静かにドアを閉める。
一瞬、自分の部屋に戻ったほうがいいんじゃないかと思ったけど、やめておいた。
迷惑かもしれないけど……、でもやっぱり……。
少しでも姉のそばに居たいというのは、わがままだろうか。
――わがままだって、いいよ。
たとえそうだとしても……後ろめたいわけじゃない。
姉なら絶対許してくれるとか、そういうことではないけれど。
ただ、今のこの気持ちを、大事にしたかった。
安心して甘えられるという、この幸せを。
目の前のベッドの上では、かがみがさっきと変わらずに寝息を立てていた。
ベッドの上のさっきまで自分がいたスペースを半分空けて、長い髪を無造作にシーツの上へと広げている。
なんでか判らないけど、笑みが浮かんできた。
自分の顔がなんだかにやけているのを感じながら、ベッドの脇にしゃがみこむ。
彼女と同じ顔の位置から、じっと覗き込みながら、ふと思った。
ベッドの上のさっきまで自分がいたスペースを半分空けて、長い髪を無造作にシーツの上へと広げている。
なんでか判らないけど、笑みが浮かんできた。
自分の顔がなんだかにやけているのを感じながら、ベッドの脇にしゃがみこむ。
彼女と同じ顔の位置から、じっと覗き込みながら、ふと思った。
――そういえば、お姉ちゃんが寝てるところって、あんまり見たことが無いかも。
昔から、昨日の夜みたいに同じ部屋で寝ることは多かったけれど、こんなふうにじっくりと姉の寝顔を見たことは無かったと思う。
夜中に寝ている姉のベッドに忍び込んだときだって、暗かったし早く中に潜りこみたかったから、寝顔を見る余裕なんて無かったし。
一緒に寝た時だって自分が先に寝てしまったり、なのに先に目を覚ましているのも姉の方だったりで、こんなに見る機会は多いはずなのに、姉の寝顔を見た記憶が全然無い。
というよりむしろ、自分が見られてることのほうが多いんじゃないだろうか。
夜中に寝ている姉のベッドに忍び込んだときだって、暗かったし早く中に潜りこみたかったから、寝顔を見る余裕なんて無かったし。
一緒に寝た時だって自分が先に寝てしまったり、なのに先に目を覚ましているのも姉の方だったりで、こんなに見る機会は多いはずなのに、姉の寝顔を見た記憶が全然無い。
というよりむしろ、自分が見られてることのほうが多いんじゃないだろうか。
先に寝てしまってたり、起きるのが後だったり、夜遅くまで勉強していて机の上で寝てしまったときも、いつの間にか肩掛けがしてあったり。
いろんなところで見られているような気がする。
この前だってそうだ。
朝、目を覚ましたら姉と目が合って。
「やーっと起きたわね」と呆れながら、でもなんだか嬉しそうに笑っていて、すごく恥ずかしかった記憶がある。
多分あれは、ずっと自分の寝顔を見ていたんだと思う。
いろんなところで見られているような気がする。
この前だってそうだ。
朝、目を覚ましたら姉と目が合って。
「やーっと起きたわね」と呆れながら、でもなんだか嬉しそうに笑っていて、すごく恥ずかしかった記憶がある。
多分あれは、ずっと自分の寝顔を見ていたんだと思う。
……なんだか、すごく不公平な気がする。
自分はねぼすけとか、どこでも寝れるんじゃないの? ってよく言われるくらいだし、睡魔にはとことん弱い。
姉みたいに朝すぐに起きれないし、目覚ましを止めたのに気が付かないことだって多い。
……確かに全部自分が悪いのだけど、なんかイヤだ。
姉みたいに朝すぐに起きれないし、目覚ましを止めたのに気が付かないことだって多い。
……確かに全部自分が悪いのだけど、なんかイヤだ。
寝顔を見られるのは恥ずかしいけど、別に特別嫌だってわけじゃない。
だけど。……だけどなんだか、私が知らないところで私のことを見てるがイヤだ。
……自分でもよくわかんないけど、すごく……置いてかれてるような気がする。
だけど。……だけどなんだか、私が知らないところで私のことを見てるがイヤだ。
……自分でもよくわかんないけど、すごく……置いてかれてるような気がする。
私の知らないところで、私を知ってるお姉ちゃんがいる。
確かに私がそこに居るのに、私はお姉ちゃんのことが判らない。
確かに私がそこに居るのに、私はお姉ちゃんのことが判らない。
――ただ、もったいないって思ってるだけなのかなぁ…………。
さっきと変わらずに、スースーと息を吐いてるかがみを見て、つかさは小さくため息をついた。
気持ち良さそうっていうのは、こういう顔なのかもしれない。
穏やかな……って言ったら変な表現だろうか。いつものキリリとしたような、少し鋭い印象があんまりしない。
無防備ともいえるくらい、なんだか隙だらけな感じだ。
穏やかな……って言ったら変な表現だろうか。いつものキリリとしたような、少し鋭い印象があんまりしない。
無防備ともいえるくらい、なんだか隙だらけな感じだ。
――いいよ。今日は私がいっぱいお姉ちゃんの寝顔を見ちゃうんだから。
いつもいつも見られてることのしかえしだ。
彼女の知らないところで、自分だけが知っている姉のことを見つけられれば、そうすればきっと彼女とおんなじになる。
それがまだなんだかよくわからないけれど、だけどそれで対等だ。
もし途中で目を覚ましたら、あの時とは逆に私が微笑んであげる。
おはよう――って。
彼女の知らないところで、自分だけが知っている姉のことを見つけられれば、そうすればきっと彼女とおんなじになる。
それがまだなんだかよくわからないけれど、だけどそれで対等だ。
もし途中で目を覚ましたら、あの時とは逆に私が微笑んであげる。
おはよう――って。
そんなふうに思いながら、つかさはかがみの寝顔の観察を始めた――。
♪
『確かに、つかさのほっぺって、柔らかいのよねー』
ぷにぷに。
ぷにぷに。
ぷにぷに。
指で押すたび弾き返される感触。
ぷにぷにふにふに。
柔らかいというか、張りがあるというか、なんだかどうにもクセになりそうな感触だ。
前に自分のほっぺたの話題になったことがあって、そのとき姉はあんな事を言っていたけれど、いつそんなことを確かめたっていうのだろうか。
ぷにぷにふにふに。
柔らかいというか、張りがあるというか、なんだかどうにもクセになりそうな感触だ。
前に自分のほっぺたの話題になったことがあって、そのとき姉はあんな事を言っていたけれど、いつそんなことを確かめたっていうのだろうか。
――お姉ちゃんのだって、柔らかいよ……?
つっつく度にかがみの表情が変なふうになって、つかさはおかしくなって笑みを浮かべた。
『うーん……。この張り、このもち肌、このきめ細やかさ。そろそろ手入れとか考えたほうがいいんじゃないの?』
触りすぎてしまったのだろうか。手から逃げるように、かがみが顔を枕にこすりつけた。
起きるかな……と思ったけど、どうやらまだその様子は無いみたいで、また静かに寝息を立て始めていた。
かがみの手がもぞりと動いて、シーツを軽く握りしめる。
真っ白い肌だ。
半そでのパジャマから覗いた腕は、ちゃんと日焼け止めを塗っているからか、白い肌そのままだった。
なんだか傷でも付かないだろうかと思いつつ、恐る恐る手を伸ばす。
すべすべしてる。そうでありながら、もちもち……?
さっきのほっぺといい、白い腕といい、むしろ姉の肌のほうが自分のよりも綺麗な気がする。
起きるかな……と思ったけど、どうやらまだその様子は無いみたいで、また静かに寝息を立て始めていた。
かがみの手がもぞりと動いて、シーツを軽く握りしめる。
真っ白い肌だ。
半そでのパジャマから覗いた腕は、ちゃんと日焼け止めを塗っているからか、白い肌そのままだった。
なんだか傷でも付かないだろうかと思いつつ、恐る恐る手を伸ばす。
すべすべしてる。そうでありながら、もちもち……?
さっきのほっぺといい、白い腕といい、むしろ姉の肌のほうが自分のよりも綺麗な気がする。
んっ……、と小さくうめきながら、かがみがくすぐったそうに身をよじった。
『やっぱり私も髪の毛短くしよっかなぁ……』
『えっ、なんで? 今のままでも十分いいと思うけど……。むしろ、その方が……』
『ほら。髪の毛長いと、洗うのとか手入れが大変でしょ? つかさとおんなじくらいにしたら、それも楽になりそうだしね。つかさのは、……こんなにさらさらだしさ』
『えっ、なんで? 今のままでも十分いいと思うけど……。むしろ、その方が……』
『ほら。髪の毛長いと、洗うのとか手入れが大変でしょ? つかさとおんなじくらいにしたら、それも楽になりそうだしね。つかさのは、……こんなにさらさらだしさ』
動いた拍子に、彼女の肩にかかっていた髪の毛がふわりと波打った。まるで水のようにさらさらとすべって、身体の上を広がっていく。
長い髪。
自分とは違う、背中を覆うまで伸ばされた綺麗な髪の毛。
実は結構……うらやましかったりもする。
自分は子どもの頃からこの長さで、姉の髪の毛も気がついたときにはもうこの長さで。
隣りにいる姉の髪の毛が、揺れているのが好きだった気がする。
ふわふわ。
ゆらゆら。
跳ねる髪の毛を目で追って。どこにいるのかすぐに判って。
さらさらと流れて、きらきらとヒカっている。
長い髪。
自分とは違う、背中を覆うまで伸ばされた綺麗な髪の毛。
実は結構……うらやましかったりもする。
自分は子どもの頃からこの長さで、姉の髪の毛も気がついたときにはもうこの長さで。
隣りにいる姉の髪の毛が、揺れているのが好きだった気がする。
ふわふわ。
ゆらゆら。
跳ねる髪の毛を目で追って。どこにいるのかすぐに判って。
さらさらと流れて、きらきらとヒカっている。
――やっぱりお姉ちゃんは……。そのままが一番、……好きだよ。
顔にかかった髪の毛を、そっとずらしてあげる。
かがみの瞳は閉じられていた。
もちろん、それは寝ているから当たり前で。
だけどあんまり、見たことが無い顔。
いつもとちょっと、違う表情。
かがみの瞳は閉じられていた。
もちろん、それは寝ているから当たり前で。
だけどあんまり、見たことが無い顔。
いつもとちょっと、違う表情。
今までどれくらい、彼女の顔を見続けてきただろうか。
顔を合わさなかった日が有ったかどうかなんて、少しも思い出せない。
いつもいつも、見つめていた。
追いかけていた。
姉の姿を、その顔を。
そして、そうやって自分が姉を見つめているのと同じように、彼女もまた、――私を見ていてくれた。
顔を合わさなかった日が有ったかどうかなんて、少しも思い出せない。
いつもいつも、見つめていた。
追いかけていた。
姉の姿を、その顔を。
そして、そうやって自分が姉を見つめているのと同じように、彼女もまた、――私を見ていてくれた。
「んぅー……」
と、かがみがむにゃむにゃと口を動かした。
なにか夢でも見ているのだろうか。ぁーとか、ぅーとか言いながら眉をぴくぴくとさせていた。
なにか夢でも見ているのだろうか。ぁーとか、ぅーとか言いながら眉をぴくぴくとさせていた。
「ふふっ……」
思わず口から声が漏れた。
見ている私と、見られているお姉ちゃん――。
少し、普段と立場が逆転でもしたような感覚がした。
彼女もいつもこんな感じだったのだろうか。
なんだろう?
優しくなれるとでもいうような、あったかい気持ち。
すやすやと寝ている彼女の頭をなでなでしたくなったり、ただこのまま、ずっとそばにいてあげたい……なんて思ってしまう。
彼女もいつもこんな感じだったのだろうか。
なんだろう?
優しくなれるとでもいうような、あったかい気持ち。
すやすやと寝ている彼女の頭をなでなでしたくなったり、ただこのまま、ずっとそばにいてあげたい……なんて思ってしまう。
つん、とつかさはもう一度かがみの頬をつっついた。
つんつん、つんつん、と何度もその白いほっぺたに指を押し付ける。
つんつん、つんつん、と何度もその白いほっぺたに指を押し付ける。
「お姉ちゃーん……。もう朝だよー。いつまで寝てるのー?」
つつ……とほっぺをなぞってみる。そのままスベスベの肌を撫でてみたり、おでこの広さを確かめてみたり、あごの下をこしょこしょとしてみたり、やりたい放題やってみる。
だけどそれだけしても、かがみは目を覚まそうとしなかった。
だけどそれだけしても、かがみは目を覚まそうとしなかった。
「本当にお姉ちゃんは、ねぼすけさんなんだから」
なんて、普段は言えないようなことを言ってみたりする。
といってもまだ、起きるような時間ではないのだけれど。
でも――どうせだったら起きてくれないかな、と思った。
見てるのもいいよ?
こうやって見続けているのもいいけれど、でもなんか……イヤ、かな。
見られてるのも、見守ってくれてるのもいいんだけど、どうせだったら、目を合わせたい。
瞳を見つめたい。
そして――視界に映りたい。
といってもまだ、起きるような時間ではないのだけれど。
でも――どうせだったら起きてくれないかな、と思った。
見てるのもいいよ?
こうやって見続けているのもいいけれど、でもなんか……イヤ、かな。
見られてるのも、見守ってくれてるのもいいんだけど、どうせだったら、目を合わせたい。
瞳を見つめたい。
そして――視界に映りたい。
「……お姉ちゃん」
「んんぅ……」と呻きながら、かがみが顔をしかめた。蚊でも追い払うかのように、わずらわしそうに顔の前で右手を振った。
だけどやっぱり……起きないみたいだ。
動かしていたその手はパタリとシーツの上に投げ出して、また元の寝息を立て始めていた。
つかさはそっとため息をつくと、ふぁ……と小さくあくびを漏らした。
だけどやっぱり……起きないみたいだ。
動かしていたその手はパタリとシーツの上に投げ出して、また元の寝息を立て始めていた。
つかさはそっとため息をつくと、ふぁ……と小さくあくびを漏らした。
――もう一回寝よっかな。
これはもう、あきらめたほうがいいかもしれない。
それにいろいろと考えて頭を使ったら、また眠気がぶり返してきたし。
そう考えたら、余計に眠くなってきた。目の前のベッドがとても気持ちよさそうに見える。
姉の寝顔も十分堪能したし、どうせならまた姉のぬくもりを感じて寝てしまおう……と思って、つかさは身体を起こした。――のだけど。
それにいろいろと考えて頭を使ったら、また眠気がぶり返してきたし。
そう考えたら、余計に眠くなってきた。目の前のベッドがとても気持ちよさそうに見える。
姉の寝顔も十分堪能したし、どうせならまた姉のぬくもりを感じて寝てしまおう……と思って、つかさは身体を起こした。――のだけど。
「……ぅっ?」
「………。……………?」
「………。……………?」
つかさは首を傾げた。
見ると、ベッドの上で……姉が何かをしていたからだ。
していた、というかその右手がもぞもぞと動いていた。
もちろん、起きているわけではない。
寝ぼけてでもいるのか、ときおり「む……」とうなりながら、空になっているスペースの中、右手を伸ばしてシーツに触れていた。
ぺた、とベッドの上に手を置いては「ん……」と表情をしかめ、また別の(といっても狭い範囲なのだが)場所へと手を伸ばしていた。
ゆっくりとしたペースで、その行動をとるその姿は、まるで――、
見ると、ベッドの上で……姉が何かをしていたからだ。
していた、というかその右手がもぞもぞと動いていた。
もちろん、起きているわけではない。
寝ぼけてでもいるのか、ときおり「む……」とうなりながら、空になっているスペースの中、右手を伸ばしてシーツに触れていた。
ぺた、とベッドの上に手を置いては「ん……」と表情をしかめ、また別の(といっても狭い範囲なのだが)場所へと手を伸ばしていた。
ゆっくりとしたペースで、その行動をとるその姿は、まるで――、
――何かを探してる……?
寝起きに鳴っている目覚ましを探しているような、そんな仕草をとりながら、かがみはベッドの上で必死に何かを探っているようなのだ。
つかさはもう一度、かがみの姿を観察しはじめた。
さっきよりもさらに顔をしかめながら、また右手でシーツを握りしめていた。
そうするたびに「んー……」と不満そうな声をあげるのが、なんだか可愛らしい。
それほど長い間ではなかったけれど、何回か彼女はそれを繰り返すと、あきらめたようで右手を胸の中に抱え込んでしまった。
どうやら目的のものは見つからなかったようだ。
その表情は拗ねたようにふくれていて、そしてどこか寂しそうに見えた。
つかさは一連のかがみの行動を見終わって、小さく笑みを浮かべた。
彼女はどんな夢を見ているのだろう。
なにをそんなに探していたのだろう。
少し気になった。
彼女は胸の前で小さく手を握りしめ、額の中心に眉をよせて、なんだかちょっと……悲しそうだ。
つかさはもう一度、かがみの姿を観察しはじめた。
さっきよりもさらに顔をしかめながら、また右手でシーツを握りしめていた。
そうするたびに「んー……」と不満そうな声をあげるのが、なんだか可愛らしい。
それほど長い間ではなかったけれど、何回か彼女はそれを繰り返すと、あきらめたようで右手を胸の中に抱え込んでしまった。
どうやら目的のものは見つからなかったようだ。
その表情は拗ねたようにふくれていて、そしてどこか寂しそうに見えた。
つかさは一連のかがみの行動を見終わって、小さく笑みを浮かべた。
彼女はどんな夢を見ているのだろう。
なにをそんなに探していたのだろう。
少し気になった。
彼女は胸の前で小さく手を握りしめ、額の中心に眉をよせて、なんだかちょっと……悲しそうだ。
――お姉ちゃんでも、こんな顔するんだね。
自分と違って、姉はいつもしっかりしていて、見ていてすごくかっこいいと思う。
だけど今は……言い方が変かもしれないけれど、どこにでもいるような女の子みたいな気がする。
頼れる、守ってくれるお姉ちゃんではなくて、同じ位置に、対等な場所にいる女の子。
それでいて、自分が本当に大好きな“柊かがみ”が、そこにいた。
まだ口を尖らせ、不満そうにしている姉に苦笑して、つかさは彼女の頭に、撫でようとそっと手を伸ばした。
だけど今は……言い方が変かもしれないけれど、どこにでもいるような女の子みたいな気がする。
頼れる、守ってくれるお姉ちゃんではなくて、同じ位置に、対等な場所にいる女の子。
それでいて、自分が本当に大好きな“柊かがみ”が、そこにいた。
まだ口を尖らせ、不満そうにしている姉に苦笑して、つかさは彼女の頭に、撫でようとそっと手を伸ばした。
『――にしても……、まさかあんたがあんなこと言うとはね』
『え? な、なにが?』
『寝言であーんなこと言っちゃって、まったく……』
『わ、私……、何か言ってたの? なんて……』
『ん? んー、どうかしらねー。いやいや、あれは……ふふっ……――』
『お姉ちゃん!!』
『え? な、なにが?』
『寝言であーんなこと言っちゃって、まったく……』
『わ、私……、何か言ってたの? なんて……』
『ん? んー、どうかしらねー。いやいや、あれは……ふふっ……――』
『お姉ちゃん!!』
「――・・・・・・かさ……」
ピタリと、伸ばしたつかさの、手が止まった。
大きく目を見開きながら、姉の顔をじっと見つめる。
大きく目を見開きながら、姉の顔をじっと見つめる。
もう一度――、かがみが小さく呟いた。
それは本当に、消え入るくらい小さな声だったのに、聞こえてきた耳には、やけにくっきりとその言葉が残っていた。
彼女の口から、――自分の名前を呼ばれた。
でも、ただ呼ばれただけじゃない。
その口から自分の名前が聞こえるたび、自分の名前を呼ぶたびに、彼女は……とても悲しそうな顔をするのだ。
まるで今にも、泣きだしそうになるくらい。
……もしかして、さっきから彼女が、ずっと探していたのは――。
彼女の口から、――自分の名前を呼ばれた。
でも、ただ呼ばれただけじゃない。
その口から自分の名前が聞こえるたび、自分の名前を呼ぶたびに、彼女は……とても悲しそうな顔をするのだ。
まるで今にも、泣きだしそうになるくらい。
……もしかして、さっきから彼女が、ずっと探していたのは――。
「…………つかさ……」
「………」
「………」
つかさは、ゆっくりとその顔に笑みを浮かべた。
名前を呼ばれた。
私のことを、呼ばれた。
閉じられたその視界に、自分がいないというわけではなかった。
映っている。
見ていてくれている。
たとえ見えていなくたって……それでも、私を見ていてくれた。
名前を呼ばれた。
私のことを、呼ばれた。
閉じられたその視界に、自分がいないというわけではなかった。
映っている。
見ていてくれている。
たとえ見えていなくたって……それでも、私を見ていてくれた。
つかさはもう一度、かがみに向かって手を伸ばした。
そしてその、寂しげに閉じられた手を、優しく握りしめた。
そしてその、寂しげに閉じられた手を、優しく握りしめた。
「お姉ちゃん……」
――ここに、いるよ?
かがみはぎゅっと、その手を握り返してきた。
そしてゆっくりと……、嬉しそうに笑みを浮かべた。
そしてゆっくりと……、嬉しそうに笑みを浮かべた。
それはもう――。…………とても嬉しそうに。
♪
――夢の中でも、まどろんでいた。
そばにお姉ちゃんがいるのを感じながら、心地いい眠気に身をゆだねていた。
あたたかい手を。大好きな手を握りしめる。
私も、ちゃんと見てるよ?
お姉ちゃんの……夢……。
あたたかい手を。大好きな手を握りしめる。
私も、ちゃんと見てるよ?
お姉ちゃんの……夢……。
♪
「――ったく……。これじゃあ起きれないじゃないのよ……」
朝の日差しに目を覚まして、かがみは今の状況に気付いて苦笑をもらした。
「こんなにしっかり握りしめちゃって……」
自分のベッドの上。
向かい側には、双子の妹が気持ち良さそうに寝息を立てていた。
その胸の前で、自分の右手を硬く握りしめながら。
向かい側には、双子の妹が気持ち良さそうに寝息を立てていた。
その胸の前で、自分の右手を硬く握りしめながら。
「それに……、……なんて顔してるんだか」
つかさは、笑っていた。
いつも笑みを浮かべてることが多い彼女だけど、今の顔は……見てるこっちまで笑みが浮かびそうなくらい――幸せそうな顔をしていた。
いつも笑みを浮かべてることが多い彼女だけど、今の顔は……見てるこっちまで笑みが浮かびそうなくらい――幸せそうな顔をしていた。
「お姉……ちゃん……」
小さく、つかさの口から声が漏れる。
「………。……はいはい」
あの時も、似たような状況だった。
妹が言った言葉は、気恥ずかしかったけど……でも。
…………ちょっとだけ、嬉しかった。
妹が言った言葉は、気恥ずかしかったけど……でも。
…………ちょっとだけ、嬉しかった。
「ちゃんと私は……、ここにいるからね……」
小さくて、それでも必死なくらい強く握りしめてくる妹の手を、かがみはそっと握り返した。
先に目を開いたから、先にこの世界を知ったから。
だから私は、……こうして“姉”でいられる――。
だから私は、……こうして“姉”でいられる――。
fin.
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- なんでこう、この双子姉妹は萌えるのかなぁ -- 名無しさん (2012-06-03 15:52:55)
- きたあああああああああああ/////
萌えるわあああああ//
-- 名無しさん (2010-08-24 22:24:07) - カメラ持って来い!!カメラ!!! -- 名無しさん (2010-08-18 11:21:24)
- お互いに依存度が高いですね -- 名無しさん (2010-08-07 12:42:16)
- 御馳走様でしたwww -- 名無しさん (2009-09-01 02:43:54)
- ニヤニヤせずにはいられない! -- 名無しさん (2009-08-26 09:28:08)
- これは…良い!!
-- 名無しさん (2009-08-26 01:39:48) - 和みますなぁ -- 名無しさん (2009-08-26 00:30:40)