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あの日出逢った星空に(前)(2)

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 つかさはずっと凝視していた時計から目を放すと、自分の部屋を出た。
 そして自室のすぐ隣のかがみの部屋の前に立つ。
 ノックをしようと手を伸ばしたが、すぐに引っ込めてしまった。
 スー……、と胸に手を当てて深呼吸をする。
 手をぎゅっと握りしめ、決意を固めると、もう一度ドアへと手を伸ばした。


 ――コンコン


「お姉ちゃん、いい……?」
 少しだけ声が震える。
「――あ、いいわよー」
 扉の向こうから声が聞こえた。
 つかさはドアノブに手を掛け、扉を少しだけ開かせ、中を覗き込む。
「どうしたの、つかさ?」
 かがみはベッドの上から身を起こしながら、つかさに聞く。手にはさっきまで読んでいたらしい本が握られていた。

「あ、あのね……」
「?」
 つかさはなかなか、部屋の中に入ろうとしない。ドアの隙間から覗き込みながら、目線を泳がせる。
「お、お姉ちゃん、そのっ――」
 グッと右手に持った紙袋を握りしめると、かがみの部屋の中へと足を踏み入れる。
「えっと……」
 かがみはキョトンとしながらつかさのことを見ている。
 そんな彼女に向かって、つかさは手に持ったものを差し出した。

「お……、お誕生日、おめでとう……」




       ♪




 かがみは最初、何が起こったのかわからないような顔をしていた。
 でも部屋の時計を確認すると、
「ああ……」
 と、納得したように呟いた。
 時刻は0:00を少し過ぎた頃。日付が変わって、七月七日にちょうどなったところだ。
「……ありがとう、つかさ」
 かがみはつかさに近づき紙袋を受け取ると、笑顔を浮かべてそう言った。
「それにしても、またどうしたのよ。わざわざ日付が変わった直後になんてさ」
「え、あ、えっとね……」
 つかさはわたわたとしながら顔を赤くする。

「その、ちょっと……、一番最初に、おめでとうって……言いたくて……」
 最後の方は尻すぼみになって、はっきりと言えなかった。なんだか柄にも無い事をしてしまった気がして、すごく恥ずかしかった。
 でもそう言うと、かがみは嬉しそうに微笑んでくれた。
「それじゃあ私も……」
 こっち来て座りなさいよ、と言いながらかがみは机の横にかかっていた紙袋を手に取る。そして同じように、ベッドに座ったつかさに差し出した。
「つかさも、誕生日おめでとう」
「……ありがとう」
 つかさはそれを受け取ると、大切そうに胸の中に抱えこむ。なんだか心の中が暖かいような感覚がした。

「ねえ、中見てもいい?」
 かがみはイスに座りながらつかさに聞く。
「うん、いいよ」
 かがみは袋の中からラッピングされた細長い箱を手に取る。そして丁寧に包装をはがしていく。
「あ……」
 出てきた箱を開けて中身を見ると、かがみはそう声を上げた。
「……ペンダント?」
「うん」

 かがみはそれを手にとってまじまじと見つめる。
 星の形をかたどったペンダント。
 どれにしようかと迷いながら、最終的に決めたものだった。
「ホントにありがとう、つかさ」
 ペンダントを大事そうに手に持ちながら、かがみは目を細めた。
 どうやら気に入って貰えたみたいだった。
「つかさも開けてみてよ」
 箱の中に大切そうにしまいながら、かがみが言う。それを聞いて、つかさは持っていた紙袋の中を覗き込む。
 中に入っていたのは四角い箱だった。手にとって見ると、両手なら包み込めそうなほどの小さいものだ。
 リボンがかけられて、丁寧にラッピングされている。

 かがみが笑顔で見つめるなか、つかさは慎重に中身を取り出した。
 出てきたのはやっぱり小さな箱で、どこかで見たことがあるような形状をしていた。
 例えばドラマとか、通販とか。
 手の上に乗せてふたを開けると、ようやく彼女のプレゼントが目に入ってきた。
「…………指輪…………」
 藍色の台座に収まっていたのは、綺麗に光る指輪だった。部屋の照明に反射して輝いている。
「え、あ……、こ、これって……」
 あまりにも予想外のものでつかさは混乱した。目を丸くしながらかがみの顔を見ると、
「ね、嵌めてみてよ」
 そう言って、笑みを浮かべていた。

「う、うん……」
 そっと指でつまんでみる。それはなんだかとても輝いていて眩しく感じた。
 そして指に嵌めようとして、
「……ど、どこに……?」
 と、かがみに聞いた。
 指輪なんてこのかた一度もしたことなんてなかったから、どうすればいいのかわからなかった。

 その言葉にかがみは苦笑を浮かべながら答える。
「んー、まあどこでもいいんじゃない?」
 とりあえずつけて見なさいよ、とかがみは言う。
 その言葉につかさはどうしようかと考えると、
「………」
 左手の薬指に嵌めてみた。
 それにかがみは何かを言おうとして口を開いたが、でも何も言わずに小さく苦笑しただけだった。

「……どう? きつくない? サイズがわかんないから私ので買っちゃたんだけど……」
 指輪をはめた左手を、裏返したり天井にかざしてみたりと、いろいろな角度から見てみる。
 初めてつけてみたけれど、まるで少しだけ大人になったような気分がした。
「大丈夫、ぴったりだよ」
「…………ぴったり? ……その指に?」
「うん」
「………」
 薬指にはまったそれは、本当に綺麗だった。銀色に輝きながら、キラリと光を反射している。

「……でも、これ。高くなかった?」
 ふと思う。指輪の相場なんて知らないけれど、とてつもなく高いものだったらどうしようなんて考えが浮かんだ。
「え、……ああ、別に大したものじゃないから、そんなに気にしなくても大丈夫よ」
「ホントに?」
「残念ながら」
 ヤスモノでごめんね、とかがみは言う。
 だけど、

「……本当に、貰ってもいいの?」
 それでもなんだか気が引けてしまった。たとえ高いものでなかったとしても、こんなにいいものを自分が貰ってしまっていいのだろうか。
「何言ってんのよ。私はつかさに喜んで欲しいから、それを選んできたんだけど?」
「あ……。……そっか、……そうだよね」
 そう言われて、つかさは右手で指輪を嵌めた手を握りしめる。
「ありがとう、お姉ちゃん。……すごく嬉しい……」
「ん……」
 つかさの言葉に、かがみは少しだけはにかんだ。

「大切にするね」
「大事にしすぎて、使わないっていうのは無しだからね」
 そうかがみが言って、つかさは大丈夫だよ、と答えた。
「ねえ、お姉ちゃん。ケーキ焼いてあるんだけど食べない?」
 指輪を箱の中に戻しながら、かがみに提案する。

「え? ってあんたいつの間に作ったのよ……」
 そう言いながら、かがみは考え込む。
 きっと彼女の事だから、体重のことを気にしているのだろう。
 もう習慣になってしまった葛藤だけど、
「ま、まあ今日は特別だし、貰おっかな……」
 簡単に折れてしまうのも、やっぱり彼女らしかった。

「じゃあ、今すぐ準備してくるね」
 つかさはベッドから立ち上がってそう言う。
 ケーキと一緒に、紅茶も用意しようと思いながら、部屋を出ようとすると、
「あ、私も手伝うわよ」
 そう言ってかがみも後に続いた。
 一緒に階段を下りて行きながら、たったそれだけの事なのに、――すごく、嬉しかった。




       ♪




 丁寧に、心を込めて焼き上げて。
 赤くて、綺麗な苺をはさんで、積み上げて。
 塗り上げるのは、甘い、白い、ふわふわのクリーム。
 最後に乗せた、真っ赤ないちごが、つやりと光って輝いた。

「また器用なもの作ったわね……」
 二人分しかないケーキを二つに切る。さすがにホールサイズでは多すぎたから、半分でちょうど二人前のものを作ったのだ。
 二人分のケーキと、二人分のカップを持って、部屋へと戻る。
 彼女が一口頬張って、「……ケーキ屋開けるわ……」と呟いた。

 特別な日の、特別な人のためのバースデイケーキ。
 口の中に広がる、甘い香り。
 目の前の、おいしいと言ってくれる人の笑顔。
 彼女ではないけれど、少しだけ食べすぎが心配になった。

「――ごちそうさま、っと」
 空になったお皿の上に、かがみがフォークを置いた。
 紅茶のカップを傾けて、ほっと一息つく。
 つかさも同じように最後の一切れを口にした。
「あー……、やっぱりつかさのケーキはおいしいわね……」
 カップを置きながらかがみが言う。

「言ってくれればいつでも、いくらだって作ってあげるよ」
「……あんたは私を太らせたいのか?」
 かがみがうらめしそうに呟いて、二人で共に笑い合った。
「にしても……、……私たちも、もうこんな年になっちゃたのよね……」
 部屋にかかっているカレンダーを見上げながら、かがみがぽつりと呟いた。
「……そうだね」
「今までお姉ちゃんたちのことを見てきたけど、本当に私たちがあんなふうになったなんてね」
「うん……」

 姉たちとは少ししか年の差は無いのだけれど、あの時のあの人たちは、ずっと大人のように見えていた。
 でもいざ自分がなってみても、そんなに変わっていないように思える。
 あの時の姉たちみたいに、自分はしっかりとした人間になれているんだろうか。
「来年はどうなってるのかしら」
「え?」
「高校も卒業しちゃって、ほとんど社会人になってさ。……なんかあんまり想像できないなー」
 グイッと両手で伸びをしながら、そのままかがみはベッドに寄りかかる。

「……お姉ちゃんは法学部?」
「ん? まあほとんどそれで決定かな……。今のところ一番興味ある分野だし。入れそうなぶんだけ勉強もしてきたしね……」
「そっか」
「つかさは? やっぱり調理師?」
 かがみはいったん身体を起こすと、机の向かい側のつかさに視線を送る。
「うん……。お料理するのは好きだし、得意だし。ずっとお料理に関わる仕事が出来るなら、それが良いかなって……」
「そうね……。パティシエなんかも向いてるんじゃないの? こんなケーキが作れるくらいだし」
「うーん……、考えとくね」
 もしそうなったらお菓子食べ放題よね、とかがみは呟く。想像でもしたのか、顔がすでににやけていた。

「でもさ……」
「ん?」
「そしたらもう――、……同じ学校じゃなくなっちゃうんだよね」
「………」
 今までずっと――幼稚園の頃からずっと同じ場所に通っていた。
 家を出るのはいつも一緒で、向かう先も同じ所で。
 たとえ教室が違っていたとしても、一つの建物の中に、一つの敷地の中で一緒だった。
 でも、いつもそんなふうだった日常も、終わってしまう。
 卒業して、進学して、それぞれの道を歩き出したなら、もう交わる事はなくなってしまう。

「しょうがないでしょ」
 その声に顔を上げると、かがみはじっとつかさの瞳を見つめていた。
「お互いやりたい事が見つかっててさ、それが出来るだけの技術も持ってて……。……それって、いいことなんだから」
「………」
「つかさもちゃんと調理師目指そうって思ってるんでしょ?」
「……うん」
「なら、仕方ないじゃない」
「……そう、だね」
 ――そうなんだ。
 どうしようも出来ない事。
 明らかにいいと思える未来があって。
 それに向かって、自分たちはしっかりと進めている。
 どこにもおかしいと思えるところなんて無い。
 ――だけど。

「………」
 机の上に視線を落とす。
 空になったお皿と、ティーカップ。
 口の中にまだ甘い香りが残っていた。
「今日はもう遅いし……、……寝よっか?」
 言ってかがみが立ち上がる。
 食べ終わった食器を乗せたお盆を手に持って、ドアに向かって歩き出す。
「――?」
 かがみは足を止め、振り返る。
 パジャマの裾を、つかさが小さく握っていた。


「今日、…………一緒に寝てもいい?」




       ♪




 部屋の中が暗闇に包まれて、窓からの光が白く室内を照らし出した。
 仰向けになった視線の先に、蛍光灯が光っていた名残が見えた。
 ゴソリと衣擦れの音を立てながら、かがみがつかさの隣に同じように横になる。
 枕を並べて、一つのベッドを二人で使う。女の子二人でもさすがに少し狭く感じるけれど、それはそれであったかくて心地いいと思った。

「あんた、もう夏だっていうのわかってるわよね……」
「え? あはは……」
 まあ、ちょっと蒸し暑くもあったけれど……。
 それでもやっぱりあったかいと思う。
 当たり前だけれど、このベッドには姉の匂いがして、なんだかとても安心できるから。
 そしてすぐ触れられる場所に本人もいて、つい顔がにやけてしまう。
 ……しまうけれど。

「………」
 左側のかがみのほうに身体を向ける。
 長く伸ばした髪を枕の上に広げながら、彼女は天井を見上げていた。
「……何?」
 視線に気付いて、かがみは横目でつかさを見返す。
「ううん……。なんでもないよ」
 けれど――胸がきしんだ。

 はぁ……、とかがみはため息を吐くと、つかさのほうへと身体を向ける。
 お互い向かい合って、視線が交わる。
「そういえばさ」
「……?」
「子どものころも、こんなふうに同じ布団で寝てたわよね」
「え? あ……そういえば、そうだね」
 小さいころはまだ別々の部屋ではなくて、布団を敷いて一緒に寝ていた。
「しかも“わざわざ”、ね……」
「え?」

「ちゃんと二つ布団が用意されてるっていうのにさ……。寝かしつけられた後、毎晩毎晩私のほうに潜り込んできたのは誰だったかしら?」
「あー……」
 つかさは視線を泳がせる。
 確かにその通りだった。
 親に言われて自分の布団の中に入っても、電気が消された後、すぐに姉のほうへと移動していたのだ。
 それはもう習慣になっていて、親も特になにも言いはしなかった。

「別々の部屋になってからも、しばらく私の部屋に通ってたしさ。ようやくそれがなくなったと思っても、朝起きたら時々隣で寝てるし……」
「あ、う……」
「それは今も続いてるしねえ」
 そう言ってかがみは意地悪く笑う。
 でもどうしたって眠れない日があるのだからしょうがない。
 ホラー映画やテレビの怖い話を見た日とか、怖い夢を見てしまったときとか。
 そんな時はついかがみのベッドに潜り込んでしまう。
 やっぱり彼女の隣が一番安心できるから。

「まあ、別にいいんだけどさー……」
 かがみは小さく嘆息しながら続ける。
「あんたもさ。もう子どもじゃないんだから、……そろそろやめなきゃ、ダメよ」
 かがみは呆れたような顔をして言う。
「……うん」
「頼ってくれるのは嬉しいけどさ……、そんなんじゃあんたのためにならないし……。高校を卒業したら、今よりもっと別々の行動を取るようになるしさ」
「………」
「もう、………ずっと一緒ってわけには、いかないんだから」
「…………うん」

 つかさも、もう高校を卒業する歳になってしまった。
 それは彼女も同じで、二人はもう……子どもじゃ無い。
 あのころみたいに今みたいに、彼女を頼り続けてはいけないんだ。
 だけど――。
「つかさ……?」
 かがみの胸の中へと、つかさは顔をうずめた。

「………」
 彼女の匂いが、暖かさが伝わってくる。
 体温も呼吸も、鼓動も全部胸の中に染みこんでいく。
 そんなこと、判っているんだ。
 甘えてちゃいけないなんて、知っているけど。
 でもそれでも……、……離れたくなんて、ない。

 そばに居させてほしい。
 これからも、頼らせてほしい。
 彼女と一緒に……いたかった。
「……つかさ」
 かがみの手が、つかさの肩に触れた。
 いつもならそっと頭を撫でてくれるその手は、つかさの身体をかがみから引き離した。

 かがみはつかさを見つめながら、そっとため息をつく。
「別に……嫌いになったとかそういうわけじゃないのよ」
 真剣なまなざしで、かがみは瞳を覗き込んでくる。
「私は、あんたに……、私がいなくても、ちゃんと自分の力で進んでいけるようになって欲しいだけなの……」
「………」
「……私に頼らなくても、ちゃんと生きていけるようになってほしいから。だから……」
 わかってほしいと、彼女は言う。
 まっすぐな瞳が、つかさをじっと見つめていた。

「……お姉ちゃん……」

 きっと、彼女の……言うとおりなんだろう。
 わかってるよ。
 もう、終わりなんだって。
 いつまでもこんなふうじゃ、ただ迷惑をかけてしまうだけだなんて。
 でも、心はすごく痛くて。
 かがみは困ったような顔で、ずっとつかさのことを見つめていた。
 もう、やめにしなくちゃ。
 これからは、ちゃんと生きていけるようにならなくちゃ。
 自分の力だけで、進んでいけるようにならいといけないんだ。
 ずっと――一人で。


 ――ひとりで……?


「つかさ?」
 心配そうにいうかがみの顔が、ぼやけて見えた。
「………。あ……」
 透明な雫が、ひとつふたつと頬をすべり落ちていく。
 それは自分でも止めることができなくて、次から次へとこぼれていった。
 かがみが驚いた顔でつかさを見ていた。

 いけない。
 これじゃあ変わらない。
 変わらなくちゃいけない。
 そんなふうに彼女が望んでいるんだから。
「えっと、……その」
 ごしごしと目をこする。溢れ出す涙を拭って、かがみに微笑みかける。

「ありがとう……、お姉ちゃん」
「………」
「そんなに私のこと、気にしてくれて……」
 まだ不安そうなかがみに向かって、つかさは言葉を続ける。
「これからは、もう……頼ったりしないから……。お姉ちゃんがいなくても、ちゃんと出来るようになるから……」
 精一杯強がって、笑みを浮かべる。
 この想いが伝わらないように。
 大好きな人に、迷惑をかけないように。

「だから……、もう心配しなくても、大丈夫だよ……」
 涙はこぼさなかった。
 胸は、張り裂けそうだった。
「……そっか」
「うん」
 彼女はようやく、笑みを浮かべてくれた。
 つかさはぎゅっと、シーツを握りしめた。

「お姉ちゃん……」
「……?」
「今まで……、…………ゴメンね」
「………」
「……おやすみなさい」
 暗がりの中に見える、姉の顔を目に焼き付けながら、つかさはそっと瞳を閉じた。
 あの人のにおいが、少しだけした。



「……うん。おやすみ」






       ♪







「――でーきたっ!」
 ひとりの少女が元気良く、机の前で大きな声をあげた。
 そして隣の少女の顔を覗き込む。
「つかさは?」
 机に広げられているのは、七夕の短冊。
 そして鉛筆と消しゴムとサインペン。

「うんっ、ほら」
 言って、小柄なほうの少女が顔を上げる。
 満面の笑みを浮かべながら、活発そうなほうの少女に短冊を見せた。
 その紙の上に躍る字は、拙いながらも精一杯気持ちを込めて書かれていた。
「よしっ、じゃあかざりに行こっか」
 少女はふたり、立ち上がると部屋を飛び出した。
 手に持った短冊が揺れる。
 それには幼い字で、ただこう書かれていた。


 ――ずっといっしょにいられますように――


 ふたりは小さい手を懸命に動かして、笹の葉へと飾りつける。
 それはいつかの願い。
 遠い昔の二人。
 あまりにもちっぽけな――約束。
 揺れる短冊を、ふたりは嬉しそうに見上げた。


 笹の葉が、風に揺られて音を立てた。



















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  • できた!
    のところで、一瞬ひよりんが同人誌書いてるのかと・・・
    すいませんm(__)m -- オビ下チェックは基本 (2009-06-04 19:36:09)




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