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「転」な間奏

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 あの日から、みなみにとって学校は針のムシロと化していた。
 ゆたかに絶縁されてから、同じく同級生のひよりとも付き合いは疎遠になっていった。
ゆたかつながりだった3年のこなたや柊姉妹とは顔を合わせる事すらなくなっていた。
 唯一、もともと近所付合いのあったみゆきとは細々と交流があったが、それだけだった。
 周囲の空気も悪い。ゆたかとみなみが断絶したのも、みなみがゆたかに“何かした”か
ららしい、という噂が飛び交っていた。
 事実、早まった事をしてしまったのはみなみの方だったから、反論もできない。もっと
も、みなみはそもそもこうした噂に反論ができるような、器用な人物ではなかったのだが。
 正直、この状況が後1週間も続いていたら、みなみは高校を辞めていたかもしれない。
あるいは、急性神経性胃炎で入院か。それほどダメージが大きかった。


「うぃーす!」
 その日の放課後。
 みなみが神経をすり減らしながらその日の日程を終え、逃げだそうとするようにいそい
そ帰り支度を進めていると、妙ににぎやかな人物が1-Dの教室に現れた。
「えーと、岩崎みなみっているー?」
 自分の名前を呼ばれて、みなみはビクッとした。
 あの日から、学校で自分の名前を呼ばれる事は、みなみにとって無意識の恐怖だった。
「岩崎さんなら、あそこに」
 男子生徒の1人が、汚れ物に触るかのような態度で、みなみを指した。
「おー」
 しかし、その人物はその様子を意にも介さなかったかのように、何が楽しいのか妙にニ
コニコ笑いながら、教室にずかずかと入り込んできた。
「うーっす。あたし3年の日下部って言うんだけど、ちょっと話いいかな?」
 なれなれしい態度で、みなみに話しかけてくる。
 周囲が、物珍しそうに、目の前の3年の先輩をちらちらと見る。しかし、相手が最上級
生ということもあって、表立って敵意を向けるものもいない。
「はぁ……はい……」
 みなみは、帰り支度をする手を止め、おずおずとした態度をとりながらも、目の前の先
輩を見る。
「いやぁ、話って言っても大したことじゃないんだけど」
 言いながら、その先輩は、みなみの前の席の椅子を引き出し、大股を開いて前後逆向き
に腰掛ける。
「1年で運動抜群にできるけど、特に部活にも入ってない子がいるって聞いたから、所謂
勧誘ってヤツ?」
 日下部と名乗る先輩は、何が楽しいのかニコニコ笑いながら、みなみを見上げる。
「勧誘?」
「そ、陸上部なんだけど」
 あたりが微妙にざわめくが、日下部という先輩はその様子などまったく気にしていない
かのように、ヘラヘラと笑っている。
 みなみは視線を俯かせて、少し考える。
「あー、でも部活に入ってないのは、やっぱり何か事情があるのかな?」
 日下部という先輩は、苦笑気味の表情になって、聞いてくる。
 みなみが高校に入って部活に入らなかったのは、ゆたかとすごす時間が欲しいからとい
う理由もあったが、人付き合いが下手で、積極的に特定の集団に参加するつもりがなかっ
たからだ。
「えっと……入っても良いんですけど……ひとつ条件が……いいですか?」
「ん、条件? なにかなー?」
 みなみには、自分がどうしてそんなことをしてしまったのか、よく解らなかった。
 ただ、気付くとその先輩の右手を、自分の両手で握って、顔を見つめていた。
「あの、先輩、私と友達になってくれませんか?」
 一瞬、時間が止まる。
 ────何を言ってるんだろう、自分は。
 みなみ自身も、言ってしまってから、気まずさにおろおろと取り乱しかけた。
「んぁ?」
 しかし、言われた当の先輩は、一瞬、気の抜けたような表情をしたかと思うと、すぐに
もとの、満面の笑顔に戻った。
「それぐらいお安い御用だぜ」
 そう言って、自分からみなみの手を握り返してくる。
「あたしは日下部みさお。よろしくなっ」
 爛漫そうに言うみさお。
 みなみは自分では気付いていなかったが、少し嬉しそうに微笑んでしまっていた。

「とゆーわけで、今日からウチの部に入ってくれることになった、岩崎みなみちゃん」
 みさおにつれられて、陸上部の部室で紹介される。
「あ、あの、よろしくお願いします」
 ほとんどが2、3年生で、1年生は、顔も見たことのないような部員が僅かにいるだけ
だった。多分クラスが離れているのだろう。
 1年生が少ないから、みさおは自分をわざわざ勧誘に来たのだろうか、みなみはそう考
える。
「へぇ、よく、日下部先輩に説得できましたね~」
 長髪の、2年の先輩が、感心半分、からかい半分といった風な表情で、みなみとみさお
の顔を交互に見やる。
「あー、なんかそれじゃあたしが馬鹿みたいじゃん」
「馬鹿みたいじゃなくって、実際に馬鹿だろ、中間の合計点言ってみろ!」
 すでにユニフォーム姿の、みなみと同じくらい背丈のある、ボーイッシュな3年の女子
が、ニヤニヤ笑いながらみさおに言う。
「あはーっ、そっかー!」
 みさおは怒るでもなく、顔を“>▽<”にして頭に手を載せるしぐさをした。
「それじゃぁ顔見せも終わったし各自練習開始ー」
 先ほどの長身の3年生が、パンパンと手を叩きながら、他の部員を動かさせる。
「あーと、クリーニング済みのユニフォームどこだっけか?」
 みさおが、長身の少女に訊ねる。
「奥のロッカーの上」
「サンキュー。じゃあみなみちん、こっちに来てー」
 みさおはみなみをつれて、部室の奥に移動する。
「散らかすなよー、元に戻しとけよー、サルー」
「サルは余計だー」
 ロッカー越しに、やり取りをするみさお。背伸びして、ロッカーの上に載せられていた、
大きな段ボール箱を下ろす。
「それじゃみなみちん」
「あ、先輩、その、……みなみちんって……」
 みなみは、おずおずとみさおに言う。
「あ、嫌だった? なんか別の呼び方にするか?」
 少し申し訳なさそうな苦笑になりながら、みさおは聞き返してくる。
「いえ……別に……」
「みなみちんもあたしのコト好きに呼んで良いからねー。みさきちでもみさおんでも」
そう言いながら、みさおは女子用のそれとしては大き目のそれを選び、ナフタレン臭の
するビニール袋に包まれたユニフォームを、みなみに手渡した。
「ロッカーは……ここ空いてるから適当に使っちゃえー」
 みさおは空のロッカーの扉を開けて、みなみに見せる。
 それから、みさおは自分の名前の札が入っているロッカーを開けて、その中に自分の荷
物を適当に突っ込んだ。
 自分も着替えるのか、自分の服の裾に手をかけかけて、はっと気がついたように、みな
みに視線を向ける。みなみはまだ、カバンをもう一方の手にぶら下げたまま、突っ立って
みなみを見ていた。
「んぁ? どうかした?」
 みさおが聞き返すと、みなみは驚いたようにびくっ、として、一瞬うろたえる。
「あ、いえ、別に、その……」
 みなみはゴクリと息を呑むようにすると、少し落ち着いたように表情を変化させた。
「先輩、ありがとうございます……」
「んー、なんかお礼を言うのはあたしの方のような気がするけど、まぁいっかー」
 びしっ、と、みさおはサムズアップで答えた。













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  • モニタの前
    ひより「くはーっ☆ ここで みさお×みなみルートに突入っスか~!」
    こなた「にゅふふ♪フツーは見逃すよねー。選択肢が、いかにもな鬱ルートだし~」 -- ゲーム脳 (2011-04-14 01:44:25)
  • 松本「どう評価したらいいんでしょうねぇ。なんというかアレですよ。ココリコの田中が番組でスベったときのような感じですよ」 -- 名無しさん (2009-12-18 10:00:30)
  • みさお可愛い
    …じゃなくて、ゆたかはどうなったゆたかは -- 名無しさん (2009-05-19 14:02:22)
  • 話は良いんですけど(・ω・`?)ってなりますね
    やっぱり相手はゆたかじゃないと・・・ -- 名無しさん (2008-11-02 01:21:58)
  • 嫌いじゃない -- 名無しさん (2007-10-28 08:24:49)
  • ・・・なんで。こんなの作ったんだろうね。
    哀しくて泣きそうになる。
    鬱作品?違う・・・悪意を感じた。
    読まなければ良かったと、本当にそう思う。 -- 名無しさん (2007-08-18 02:30:17)
  • 中途半端 -- 名無しさん (2007-08-04 02:55:05)

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