「きゃっ……そう君……ダメっ、速すぎるよ……」
「くっ、ダメだ。かなた。止められない」
「あんっ、振動が……強すぎて……ダメっ、壊れちゃう」
「くそっ、かなた。もう、俺……」
「あ、だ、だめっ……あ、あぁっ……」
「くっ、ダメだ。かなた。止められない」
「あんっ、振動が……強すぎて……ダメっ、壊れちゃう」
「くそっ、かなた。もう、俺……」
「あ、だ、だめっ……あ、あぁっ……」
「……もう、そう君。はやすぎるよ」
「ごめん、かなた。俺もこんな事になるとは」
「最初に言い出したのはそう君だったじゃない。ううっ、こんなにびしょびしょに……そう君。これ、どう責任とってくれるの?」
「こ、これは、その、勢いがついて止められなくなってしまったというか、その……」
「もう、そう君のバカ!! もう知らない!!」
「ごめん、かなた。俺もこんな事になるとは」
「最初に言い出したのはそう君だったじゃない。ううっ、こんなにびしょびしょに……そう君。これ、どう責任とってくれるの?」
「こ、これは、その、勢いがついて止められなくなってしまったというか、その……」
「もう、そう君のバカ!! もう知らない!!」
若草に覆われた土手を、びしょ濡れのセーラー服の少女が登ってくる。
長い髪から水を滴らせ、いつもはおとなしい垂れ目を吊り上げさせて。
その後ろを自転車を引き上げながら追いかける学生服の青年。
こちらも学生服はぐっしょり濡れており、いつもはボサボサの髪も額に張り付いている。
「もう、そう君が悪いんだよ。自転車二人乗りで坂を下ろうなんて言い出すから」
「だ、だって予想外にブレーキが効かなかったからさ。しかし、どうしたんだろう。予想外に重かったのか……」
プチ……と小さく聞こえた音は、少女のこめかみの血管が切れる音か、はたまた堪忍袋か。
女性に振ってはいけない話題の一つに触れていることに、おろかにも青年は気づいていない。
「う~ん。もう少し軽ければ止まれたはずなんだけれどな。しかし、予想外に重いとなると、かなた、お前体重……」
青年はそこでやっと自分の過ちに気づく。
学校で物静かな少女として知られ、ひそかにファンも多いこの少女。
果たしてこの少女がこんな表情をする事を何人の人が知っているだろうか。
「あ……いや、かなたさん。これは……その……」
「そう君……今日という今日は……許しませんからね!!」
「ちょ、ちょっと待て、かなた。や、やめ……」
のどかな初夏の昼下がり。
能登半島の小さな港町に、小さな悲鳴が響き渡る。
今日も世はすべてこともなし。
長い髪から水を滴らせ、いつもはおとなしい垂れ目を吊り上げさせて。
その後ろを自転車を引き上げながら追いかける学生服の青年。
こちらも学生服はぐっしょり濡れており、いつもはボサボサの髪も額に張り付いている。
「もう、そう君が悪いんだよ。自転車二人乗りで坂を下ろうなんて言い出すから」
「だ、だって予想外にブレーキが効かなかったからさ。しかし、どうしたんだろう。予想外に重かったのか……」
プチ……と小さく聞こえた音は、少女のこめかみの血管が切れる音か、はたまた堪忍袋か。
女性に振ってはいけない話題の一つに触れていることに、おろかにも青年は気づいていない。
「う~ん。もう少し軽ければ止まれたはずなんだけれどな。しかし、予想外に重いとなると、かなた、お前体重……」
青年はそこでやっと自分の過ちに気づく。
学校で物静かな少女として知られ、ひそかにファンも多いこの少女。
果たしてこの少女がこんな表情をする事を何人の人が知っているだろうか。
「あ……いや、かなたさん。これは……その……」
「そう君……今日という今日は……許しませんからね!!」
「ちょ、ちょっと待て、かなた。や、やめ……」
のどかな初夏の昼下がり。
能登半島の小さな港町に、小さな悲鳴が響き渡る。
今日も世はすべてこともなし。
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- ⇩あ、良い事言った。
ナイスコメ( ^ ^ )/□
作者GJ -- ユウ (2010-04-14 21:50:47) - 読者は『先』を知っていて、登場人物は『先』を知らない。
だからこそ『彼らの今』に感動する訳で……
果てしなくGJ!! -- 名無しさん (2007-10-15 10:38:30)