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ぼけぼけお泊り会

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「つかさー。入るぞー」

 がらがら。
 お姉ちゃんが私の部屋に入ってくる。

「あ、お姉ちゃん」
「明日のお泊り会のことだけど、って、本読んでるの?」
「うん、四月にゆきちゃんからもらったの」
「へー。どんな話?」
「ええとね、まだ最後まで読んでないんだけど、頭がよくて何でも知ってる、なんかゆきちゃんに似た人と、
よくどじをして、天然な、やっぱりどことなくゆきちゃんに似た人の恋愛小説だよ」
「へー」
「あ、それはそうと、お泊り会の話って何?」
「あ、そうそう。寝るときの部屋割なんだけどさ、あれ、私の部屋に私とこなたで、つかさの部屋につかさと
みゆきが寝ることにしない? あ、いや、ほら、さすがに4人が同じ部屋に寝ると狭いし、で、でもなんかこなたと
みゆきを一緒の部屋にするとなんかこなたがセクハラとかしそうだし、ええと……」
「う、うん、わかったよ。そんなに力説しなくても……」
「そう、それじゃあお休み」
「お休みー」

 そっか、明日はお泊り会だし、もう寝たほうがいいかも。そう思って本に栞をはさんで本棚にもどした。
 ちなみに、この栞もこの本と一緒にゆきちゃんからもらったんだ。赤い薔薇の押し花で、すごく気に入ってるの。
 本棚に本を戻すと、電気を消して、ベットに潜った。




 翌朝、お泊り会の当日。
 駅前でこなちゃんと会った。

「おーっす」
「おはよう」
「おはよう」
「なんか、つかさは眠そうだよねぇ」
「そういうあんたは今日に限っては眠くなさそうね。いっつもはネトゲのやりすぎとかで眠そうなのに」
「ほんとだ。どうしたの、こなちゃん」
「いやぁ、今晩体力使うからねー。ねえ、かがみ」
「あ、あんた人前でなんてこと言うのよ!」

 お姉ちゃん真赤。でもどうして怒ってるんだろう。今の会話で怒るようなとこなかったような気がしたけど。
でもほんとにこなちゃんはいつもと違ってなんか眠くなさそう。どうしたんだろう。



 お昼、お姉ちゃんとこなちゃんとゆきちゃんと一緒にお弁当を食べていた。こなちゃんはチョココロネだけど。

「あ、今、ふと思ったんだけどさ、バレンタインのときにチョココロネをあげてもいいのかな?」
「めちゃくちゃ時期はずれな話題だな……。でもいいんじゃない? もらう人が喜べば」
「うんうん」
「そういえば、日本にはバレンタインに男が女にチョコを贈るような風習があるけど、
それの本バージョンってなかったっけ」
「サン・ジョルティの日ですね」
「あ、そうそう、それそれ」
「今はスペインの自治州であるカタルーニャ地方というところに、昔、ドラゴンがいました。
住人はドラゴンの怒りを納めるために、毎日一人ずついけにえを捧げていたんです。
そしてお姫様がいけにえになるときに、あらわれたのが騎士、サン・ジョルティだったわけで、
彼がドラゴンを倒し、お姫様を救い出したとされています。その時の竜の血からは見たこともない
赤いバラが咲いたそうです。それで、四月二十三日をサン・ジョルティの日として、愛する人に美と教養、
愛と知性のシンボルとして、一本の薔薇と一冊の本を贈るそうです。
もっとも、日本ではあまり定着していませんが」
「へえー。やっぱり物知りだね、みゆきさんは」
「いえいえ、そんな」
「……こなた」
「ん、何、かがみ」
「……あーん」
「えぇ! 何かがみ、いきなりデレモードになっちゃって、何か変なものでも食べた!?」
「なによ、いらないならいいわよ!」
「えぇぇ、そんな殺生な」

 ぱくっ。こなちゃんはそう言いながらお姉ちゃんが差し出したお弁当を食べた。二人とも、真っ赤です。

「弁当の中身を見る限り、今日はかがみがつくったんだよね。おいしいよ」
「ばっ! 質素で悪かったわね!」
「じゃ、お返しにあーん」
「チョココロネでかよ!」

 ぱくっ。そんなことを言いながらお姉ちゃんはこなちゃんのチョココロネを食べた。
 突然起こった異常事態に呆然としていると……

「つかささん……」
「え、何、ゆきちゃん」
「……あーん」

 顔を真っ赤にしてゆきちゃんが「あーん」をしてきた。私は、呆然としている頭を何とか再起動させて、
ちょっと迷ったけど、ゆきちゃんのお弁当をぱくっと食べた。

「ゆきちゃんのお弁当、美味しいね」
「そ、そうですか、ありがとうございます」

 それにしても、ゆきちゃんまでどうしたんだろう。友達同士で「あーん」ってやるの、はやってるのかな?
あっ、そういえば。

「ゆきちゃん、お返しにあーん」

 ぱくっ。「あーん」ってしてくれたらやっぱりお返ししなきゃだめだよね。

「幸せです……」
「うん、幸せだよね」

 ゆきちゃんが全身を真っ赤にして小声でささやくのを聞いて、私はそう答えた。
ゆきちゃんにもらった本に書いてあったけど、こんな風に友達と過ごすひと時が幸せなんだよね。
 ふと、クラスメイトの半分以上が私たちに注目しているのに気づいた。ほかの三人も気づいたみたいで、
この日のお昼は無言のまま食べるということになってしまった。




 学校が終わって、柊家。私たち四人はお姉ちゃんの部屋で今日出た宿題をしていた。

「ゆきちゃん、ここがよくわからないんだけど」
「ここですか? ここはですね……」

 四人集まって勉強するときはこなちゃんはお姉ちゃんに、私はゆきちゃんに聞くことが最近多い。
宿題が終わった後、みんなでゲームしたんだけど、このときもこの組み合わせだった。
なんか最近この組み合わせが多いなぁ。いやじゃないからいいけど。




 夕食は、私が作ることになっていた。

「手伝います」
「ありがとう、ゆきちゃん」

 ゆきちゃんが手伝ってくれることになった。ありがとう。
 ふと、また私とゆきちゃん、お姉ちゃんとこなちゃんの組み合わせになったなあと思った。
そのことをゆきちゃんに聞いてみることにした。

「そういえば、ここ最近、私とゆきちゃん、お姉ちゃんとこなちゃんの組み合わせが多いよね。なんでだろうねー」
「なんだか最近かがみさんと泉さんが自然に二人になることが多いんですよ。ですから、それの影響じゃないかと」
「ということは、私たちはあまりものってことかぁ」
「うふふ、でも私はつかささんと二人というのはとてもうれしいですよ」
「えへへ、ありがとう」

 うん、この組み合わせが多くなってるけど、誰も嫌がってるとかはないみたい。よかった。



「その人がね、おかしいなって思って、ポケットを探ったら、朝捨てたはずの血が付いたロザリオが
入ってたんだって」
「キャーーーーーーーーーーー!!」

 こなちゃんによると、「夏の夜は怪談だよ」ってことらしい。今晩のためにいろいろなところから怪談を
集めてきたらしいけど、怖すぎだよ……。あ、もしかして、朝言ってた「今晩体力使う」って、もしかして
これのためだったの? だったら別にそんなに気合い入れなくてもよかったのに。
 とても怖くて、ずっとゆきちゃんにしがみついてた。お姉ちゃんはずっとこなちゃんにしがみついてたみたい。
 自分でも自分の顔が青白くなってるのがわかった。それなのに、ゆきちゃんの顔は、部屋が薄暗いからよく
見えなかったけど、なんだか赤かった。ゆきちゃん怖くないのかな。ゆきちゃんすごいなぁ。




 夜。昨日お姉ちゃんと打ち合わせしたとおり、ゆきちゃんは私の部屋で、こなちゃんはお姉ちゃんの部屋で
寝ることになった。
 うー、でも、さっき怪談とか聞いてたから、寝れそうにない……。

「ねえ、ゆきちゃん。一人だとさっきの怪談思い出して寝れないから、一緒の布団で寝ていい?」
「え、ええ、かまいませんよ」

 私は許可を得て、ゆきちゃんの布団に入った。その後、ゆきちゃんと話をしながら、やっぱり怪談を
思い出しちゃったりして、あまり寝付けなかった。
 そんなときだった。声が聞こえた。この前も聞こえた、甲高い声が壁越しに聞こえた。

「ねえ、ゆきちゃん。この声なんだろうね」

 私は、内心不安になりながら言った。ゆきちゃんも怖いかもしれないから、声をなるべく普通にして言ったけど。

「え、え、ええと、ええと、お、お化けが何か言ってるんじゃないですか?」
「ひえあっ!!」

 反射的に、ゆきちゃんにしがみついた。こ、こわいよう。お化けこわいよう。

「ゆ、ゆきちゃん。こ、このまま、ね、寝てもいい?」
「え、ええ」

 もう震えを隠すこともできずに尋ねると、ゆきちゃんは許してくれた。




 朝起きると、四人ともとても眠そうだった。



















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  • ここまで来て こなかが、みゆき どちらの気持ちにも気づかないとは 極上の天然っぷりだ~☆
    つかさの ぼけぼけっぷりに 魅了されっぱなしです -- 名無しさん (2011-04-15 10:20:18)
  • ナイスお泊まりだなあ。つかさがひたすら天然ノンケなのがいい。 -- 名無しさん (2009-12-15 15:42:59)
  • 何度目かに読み返して初めて気付いたんだが、
    みゆきは、サンジョルディの日に、つかさに一本の薔薇と一冊の本を贈ったんだなw
    作者さんの芸の細かさに敬服。 -- 名無しさん (2008-01-02 18:58:22)

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