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暑中見舞い

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「あ、暑いよう……」
「たまに少し早く起きてきたかと思えば、まったくだらしないんだから…」

 夏休みも丁度残り半分になった今日。今の時間は午前十一時半を少し回った所。もうすぐ昼食の時間だ。
 そして今、私の目の前では、つかさが殆んど寝起き姿のままで、リビングのテーブルに突っ伏していた。

「だって、今朝は暑くてあんまり眠れなかったんだもん……」
「まあそれは一応理解できるけどね……もうちょっとシャンとしなさいよ。ここんとこ毎日そんなじゃない」
「えへへ……」

 世間は夏の高校野球と蝉の鳴き声で賑わい、あちこちの家々では、間も無く訪れるお盆の準備が進められている。
 ウチは人手が多い事もあって、もっと早くの内にその辺の準備は済ませていた。
 けどまあ、その代償とでも言うのか。
 意思薄弱なウチの妹は、何か一つ大きな事を「やり遂げて」しまうと、その後は大概こうなってしまう。
 況してや、今の時期は本人の言う通り、この酷暑がそれに拍車をかけていた。

(まだ宿題もたくさん残ってるんだろうに、今からこれじゃ先が思い遣られるわ……)

 はあ、と短く溜め息をつくと、私はリビングを後にして、玄関へと向かった。
 以前みゆきに聞いた話だと、お盆の前後は多くの企業が休みになる為、郵便物が極端に減少するらしい。
 そしてその分、郵便物そのものは普段よりも早く各家庭に届く事が多いそうだ。
 玄関を出て、すぐ傍らの郵便受けを開けると、案の定そこには、僅かばかりの郵便物があった。
 見てみるとそれは、暑中見舞いの葉書が二枚。一枚が私宛てで、もう一枚がつかさ宛て。
 差出人は……

「こなた?」

 二枚の葉書の左端には、見間違えるはずもない特徴的な字体で、確かに『泉こなた』と書かれていた。

 家同士の距離がそれ程近くはない事と、こなたが滅多に携帯電話を携帯していない事から、
 私達の普段のやりとりは、基本的に家の電話オンリーになっている。
 ついでに言えば、こなたはどちらかと言うとあまり筆マメではない(懸賞等に応募する時以外は)。
 だから、そんなこなたがわざわざ暑中見舞いを書いて送ってきた事に私は驚き、同時に少しの嬉しさを覚えた。

「どれどれ。アイツはどんな事書いてんのかしらね」

 リビングでつかさと一緒に見ても良かったんだけど、ちょっとばかり好奇心と嬉しさを抑え切れなかった私は、
 家の中に入って玄関の戸を閉めるなり、私宛ての暑中見舞いを裏返した。



前略。残暑見舞い申し上げます。
今年の夏はやたらと暑い日が続いてるけど、
アイスやかき氷とか冷たい物ばっかり食べすぎて、
下っ腹を抱えてうなったりしてないかとちょっと心配だヨ。
おやつをへらして、フツーの食事を大事にしようね。
夏休みが残り半分を切った今、体調管理は重要だよ?
かがみの元気な姿を、夏休み明けに見たいしネ。
かしこ。


「……何か微妙にちぐはぐな文章ね?」

 こなたが“前略”や“かしこ”と言った言葉を使ってる事自体もそうだけど、
 最初の一文だけが敬語だったり、変な倒置方があったりと、なんだか文章全体にひどく違和感があった。
 後、言いたい事は伝わってるんだけど、「余計なお世話よ」とか、「人の事言えるか」とか言いたくなる。

(でもまあ、一応私の心配とかもしてくれてるみたいだし、お礼はきちんとしとかないとね)

 そう考えると、私は靴を脱いで家に上がり、すぐそこにある黒電話に手をかけた。
 受話器を手に取り耳に当て、もう片方の手で、こなたの家の電話番号をダイヤルする。
 4回程呼び出し音が鳴った後、カチャッと言う音が受話器の向こうから聴こえた。


『もしもし、泉ですけどー』
「あ、こなた。おはよう」
『あー、かがみ。おはよー』
「今さっき、あんたからの暑中見舞いが届いたわよ」
『お、もう届いたんだ。よかったー。やっぱりみゆきさんの言ってた通り、この時期は早いねぇ』
「そうね。……でもねこなた。私、この暑中見舞いの文章に突っ込みたい所が山程あるんだけど」
『ありゃ、まだ気が付いてないか』
「は? 何によ」
『ちょっと斜め読みしてみたら解るよ』
「斜め読み?」
『うん』

 斜め読みったって、こんな葉書一枚分の文章……いや待て。もしかしてそう言う意味じゃなくて…………あ!!

「こっ、こんな手の混んだ事して何考えてんのよ!!」
『今日ウチ、お父さんもゆーちゃんもいないんダヨ』
「すすす、少しは自重しなさいよね!」
『駄目だぁぁぁ!! 自制など効かないぃぃぃ!! どうすりゃいいんだ、私はぁ!!』
「何のキャラよそれは……」
『それはナイショ。で、かがみ。来るの? 来ないの?』
「……行くに決まってるでしょ。馬鹿……」




「あら? つかさ、かがみは居ないの?」
「あ、お母さん。お姉ちゃんね、さっき、急にこなちゃん家に行くって出てっちゃった」
「あらあら、お昼ご飯どうするのかしら……」
「なんか、向こうでご馳走になるって言ってた」
「もう。しょうがないわね……」






※あとがきより抜粋

ちなみに今回のSSを正しく読むヒント。
“葉書は縦書き”













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コメント:
  • 文字の並びが揃わないので、解読に手こずったヨ~ -- 名無しさん (2011-04-16 10:52:11)
  • ゆーちゃんが家にいない理由を邪推してしまう俺は、少し暑さで疲れてるのかも知れん…。
    今年も暑中見舞いの季節だな…。 -- 名無しさん (2009-07-29 22:05:13)
  • かがみを抱きたい…か
    じゃあ、俺は遠慮なくつかさを -- 名無しさん (2009-02-27 23:45:41)
  • ホンマ手の込んだこと考えたな~。 -- 名有りさん (2009-02-27 22:49:52)
  • かがみを抱きたい -- 名無しさん (2008-07-14 22:30:34)
  • イマイチ分からない。答が欲しいです。 -- ?? (2008-05-05 11:10:04)
  • つかさ宛のは普通の内容だったのかな? -- 名無しさん (2007-08-14 02:13:37)
  • ありがとうやっとわかったよ -- 名無しさん (2007-08-13 23:05:52)
  • 「斜め読み」が解らなかった方は、左下から右上に読んでみましょう。 -- 名無しさん (2007-08-12 14:24:13)
  • 下から上に・・・
    内容把握。 -- かこせき (2007-08-12 03:10:38)

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