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ゆに☆すた ~University☆Star~ えぴそーど4

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 よそ行きの準備を終わらせて部屋の時計を見上げたら、もうそろそろ約束の時間だった。
 夕方と言ってもいい時間なのに、部屋の窓から見る限りまだ太陽は絶賛仕事中とばかりに照り付けてる。
 正直、太陽はもうちょっと仕事サボってもいいと思う。

 最近の暑さを思い出してウンザリしながら、こなたのおじさんが来るのを待ってた。
 電話で聞いたらこなたは一緒に来ないらしい。遊びに行くんだし、もうちょっと勉強しておくよなんて言っていたけど。
 本当かしらね、なんて思いが頭をよぎる。
 勉強を持ちかけたのだって、こなたが本当に勉強しているかどうかを確認するつもりだった。
 ――ある意味ヤな友達なのかも。私って。

 一応、準備したバックの中にはいつものように九割は終わっている宿題を入れておいた。
 ついでに数教科分の問題集と参考書も入れたけど、これは多分私の勉強用になりそうな気がしてる。
 念のため、と思って持っていく荷物の再チェックをしていたら、家の前に車が止まる音がした。
 窓から下を見たら、こなたの家の車が止まって、おじさんが窓から顔を出して挨拶してきた。
 手を上げて合図してから、私は階下に降りていった。

「おじさん、わざわざありがとうございます」
「いや、丁度仕事中の気分転換のつもりだったからね」

 おじさんの車の後部座席に準備していた荷物を置いて、私は助手席へと乗り込む。
 友達のおじさんが隣にいると、何となく落ち着かなくなるのは私だけじゃないと思う。

「それにしても、荷物が多いね。風呂敷なんて今時珍しい」
「ああ、それには浴衣が入ってるんです。ゆたかちゃんにあげようかなって」
「すまないね、本来なら俺が気付かなきゃいけなかったんだが……」
「お古になっちゃってすみませんけど」
「いや、季節物だしな。ゆたかちゃんももきっと喜ぶよ、ありがとう」

 おじさんは私達の夏休みと同じくして書斎に篭りっきりだったとこなたから聞いている。
 多分、今やっている小説の〆切りが間近なんだろう。
 横を見るとおじさんが運転しながら微笑んでいるのがわかった。

「そうだ、かがみちゃんは進学だよね」
「はい」
「こなたもさ、急に進学したいなんて言ってきたんだよ」

 ――知ってる、夏休みが始まる寸前にこなたから直接聞いた事だし。膝枕してあげながら。

「親にしてみれば、子供がどんどん一人で歩こうとしているのは寂しいんだが、逆にそれが嬉しくもあるんだ。すまんな、変な事言って」
「いえ……」
「昔からな、あの子は目標ってものがなかったんだよ」

 静かにおじさんが話し始めた。そう言われると、進路希望の時もこなたは特に何も言ってなかったことを思い出す。
 むしろふざけた解答しか書いていなくて、先生に放課後やたら真剣に説教されていたし。

「俺の影響なんだろうが、アニメやらゲームにハマっててな。家事一般は嫌いじゃないみたいなんだが。
 『将来何になりたい』って聞いても、昔っから『よくわからない』ばかりで。そうだ、かがみちゃんは将来の夢とかあるのかい?」
「……まだ、わかりません。一応、第一志望は法学部っていうのは決めてますけど」
「うん、今はそれでいいんだよ。進学すればまた四年、考える時間ができるんだからね。俺と違って君達はまだまだこれからなんだから」

 周りの知ってる人の事を考えてみる。みゆき、つかさ、それぞれやりたい事があって進路を決めている。
 将来、私は一体将来何がしたくて、何になりたいんだろうか。
 正直に言えば、検事や弁護士といわれる存在が、どんな仕事でどんなことをしているか具体的なイメージがあるわけでもなし。



 車が速度を落としたので、ふと前に目を向ける。目の前の信号は赤になっていた。
 エンジン特有の低い音が規則的に耳に入ってくる。

 おじさんの話が途切れたから、周りがこんなに気になることに気づいた。
 前に見える歩行者用信号機が点滅を始める。
 信号が青になり、また次の信号で車が止まる。

 ――何か話さなきゃいけないのかな。
 車内の空気が何だかピリピリして、居心地が悪い。

「これはあの子の親として、本当に勝手な事を言ってるんだが」

 こなたの家へ続く道、最後の信号機が青になって、車がゆっくりと動き出す。
 そのタイミングと同時に、おじさんはまた静かに話し出した。

「できればこなたの事を気にかけてやって欲しい。かがみちゃんも受験で大変なのはわかっているけど、同じ学校の仲間として、支えてやってくれないか」
「それは……もちろん、そのつもりです」

 こなたが真っ先に私に進学の事を話してくれた。
 多分、こなたは私の事を信頼してくれてるんだと思う。
 ――その信頼に、私は答えなければいけない……ううん、むしろ答えたい。

「ありがとう、これからもこなたをよろしく頼むよ」
「はいっ!」

 力強く首を縦に振る。おじさんも緊張していたのかも知れない。
 さっきまでと違って笑顔でハンドルを握っている。こなたの家が見えてきて、車が速度を落としていく。
 そうだ、と思った。
 前から心の奥にしまっていたもやもや、何か知ってるかも……そんな期待もあって、思い切って聞いてみた。

「えっと……差し出がましい質問なんですけど、何で進学を決めたかこなたから聞いてますか?」
「はっきりとは聞いてないが……第一志望が国文科って言ってたからなぁ。俺の背中を追いかけて来てくれてるんだったら嬉しいかもな」
「そうですか……」

 ――こなた、おじさんにも話してないんだ。
 おじさんの言っている事も可能性がない訳じゃない。でも、もしそれが正解だったら……あの時こなたは教えてくれたと思う。
 だから、こなたが何か決意した理由はほかにあるはず……。
 そんなことを考えていたら、キッと音がしてこなたの家についたことがわかった。

「さあ、着いたよ」
「ありがとうございました」

 こなたの家に着いて私が荷物を降ろしたら、おじさんは車を置いてくるから、と言い置いて行ってしまった。
 ドアのチャイムを押すと、インターフォンの返事は無くて、代わりに中から誰かが来る音がした。

「いらっしゃい、かがみ」
「やほ、こなた。お邪魔するわね」
「どぞどぞ。ねぇねぇちょっと来て~」

 私を迎えたこなたの顔はニンマリとして、何を考えているのかわからない。
 そのまま手を引かれて、奥の部屋へと通された。

「じゃーん、どうデスカー。萌えない? ねぇ萌えない?」
「か、かがみ先輩。いらっしゃいませです……」

 部屋ではゆたかちゃんが浴衣を着ていた。萌えるも何も、かわいいなぁという感想しか持てない。
 浴衣は赤を基調とした元気なデザイン、って前にこなたが着てた気がする。

「ゆたかちゃん、よく似合ってるわよ。……ってこれアンタの浴衣じゃないの?」
「うん、そだよ。でもせっかくだからゆーちゃんに着せてみた。かわいいでしょー」
「で、アンタはどうするの」
「んー持ってる浴衣が似たような感じのしかないから、今回はやめとこーかなって」

 こなたが浴衣を着ないなら、私も遠慮しておこうかなぁ……そんな考えが頭に浮かんだ。
 ゆたかちゃん一人が浴衣というのも、かわいらしさが増える気がして別に悪い気もしない。

「なんですと! お父さんは悲しいぞ……」
「わ、おとーさん、いきなり出て来ないでよ」
「この浴衣はなぁ、お母さんが好きで良く似合ってたやつなんだぞ。それにお祭りの時に和服を着ないなんて勿体ないじゃないかっ!」
「なんでさー」

 桐の衣装箱をあけながら力説しているおじさんに、こなたが突っ込みを入れる。
 とりあえずお祭りじゃなく花火大会だと突っ込みたかったが、喉元で飲み込んだ。

「だって、萌えないじゃないかぁっ!」

 自信満々に宣言するおじさんの顔は、なんだか恍惚としている。さっきまでのギャップが激しすぎて、どっちが演技なんですか、おじさんなんて思ってしまう。
 どちらにしろ……車で感じた真面目で、父性愛に富んだイメージが、がらがら音を立てて崩れて行ったのは間違いないのだけど。


――――――――――――――――――
ゆに☆すた ~University☆Star~
えぴそーど4 夏の夜のメモリーズ
――――――――――――――――――


「んー、どこかおかしくないかな」
「こなたお姉ちゃん、すごく似合ってます」
「そうね、いい感じなんじゃない?」
「かがみんのだー♪ お古だー♪」
「……恥ずかしいから、あんまり連呼しないでくれるかしら」

 おじさんの猛烈な説得……か、どうかは何とも言えないけど、それに屈したのか折れたのか。
 私が持ってきた中学生の時のお古なら、とこなたが浴衣を着る気になった。妙に気に入ったらしい。
 確かに桐箱を見たら同系統色の浴衣ばかり仕舞われてたから、私の浴衣が珍しかったのかもしれない。

「それにしても、やっぱりこなたは和服が似合うわね」
「むー、それって多分、誉め言葉じゃないよね?」
「さぁ、どうかしらね」

 久々にこなたをやり込めた気がして、何かいい気分になってくる。

「あ、あの……かがみ先輩、それって私も、ですよね」
「あ゛」

 もうちょっとからかってやろうかと言葉を捜していると隣で悲しげな声がした。
 ――しまった、ゆたかちゃんもいたんだった。

「ひどいよね、こんな可憐な少女達の心をナイフでえぐるなんて」
「う……」
「よしよし、ゆーちゃん。いつか大きくなれるようにお姉ちゃんと頑張ろうね」
「うん」

 私の隣にいたゆたかちゃんを胸に埋めて抱きしめながら、こなたは私に向かってニタリと笑みを浮かべる。
 どうも私はゆたかちゃんのこなたへの好感度アップに一役買ってしまったらしい。
 いやむしろこれは私への仕返しが主で、従が好感度だと思う、絶対。

「ゆたかちゃんはお姉さんという例があるから前途有望よね、こなたと違って」
「ぐ、ピンポイントでダメージを与えてくるとは、かがみもやるようになったのぉ」
「アンタのおかげよ」

 我ながらいい返しをしたものだと思う。こなたからさっきまでの笑みが消えたから。

 結局それからしばらくして、私達四人は河川敷でレジャーシートを引いて座ってた。
 流石に地元の花火大会とは言っても、一時間位は前に場所取りをして待っていないと、落ち着いて座る場所もない。
 待ってる間に汗が襦袢に染み出してくるくらい暑い。
 ――室外型の超強力な町ごと冷やすエアコンとか開発されないかなぁ。

 どーんと今日始めての花火が上がる。空気が震えて、お腹の辺りにびりびりと来る感覚は嫌いじゃない。
 二発目の花火が炸裂して大輪の花を咲かせたとき、いきなり左手を握ってくる感触があった。
 何かな? と思ってこなたを見たら、上を見上げながら花火の上がるたびにつかむ力が強くなることに気づいた。

「どうしたの、こなた。アンタ花火の衝撃波って生理的にダメなクチ?」
「う、うん。なんだか胃に響いてイマイチ、ね……ゆーちゃんは?」
「私はだいじょーぶです。あ、そうだ。そゆときは、たーまやー! かーぎやー! って、叫ぶとイイみたいですよ?」
「なんだかそれ定番に聞くけど、何で玉屋と鍵屋なんだろーね、丸いから玉屋っていうのは判るけど」

 こなたが素朴な疑問を口にする。確かに何でなんだろうか、私にもわからない。
 私の隣にいるゆたかちゃんは言い出しっぺとして、頭をうんうんと捻っている。
 ――可愛いな、こんな妹も欲しいなぁ……。

 花火が連発で夜空を駆け上がっていくのが見えたとき、こなたの指が私の指に絡まってくる。
 ――もう、しょうがないわね。

 ゆたかちゃんが可愛くて、つい姉モードになってしまったのかもしれない。
 手を少し持ち上げて、指を開いて。手のひらが重なった時にぎゅっと握る。
 こなたと私の少し汗ばんで湿った手が、ぺたり、とひっついた。

「ああ、それはだな、江戸時代に……」
「みゆきさんに電話して聞いてみようよ」
「みゆきは海外でいままだ朝よ!」
「じゃあ帰ってきてから聞こう?」
「ってかあんたおじさんに失礼でしょ……」
「はは、いつもこんな扱いされてるんだけどね」

 こなたの隣にいるおじさんが頬を掻いていた。
 おじさんの座っている周りを見たら、一体何本目を飲んでるんだろうかと思うくらい、開いたビール缶がレジャーシートに転がっていた。



「こなたー。ちょっとココおいで」
「え。またおとーさん病気ですか」
「いいじゃん、減るもんじゃなし……いじめられるばっかりじゃ、お父さん干からびるだろー?」

 おじさんがこなたに向かって自分の膝元を指差す。
 私とこなたを繋いでいた手がこなたから切られると、なんだか心にうす雲がかかるような気分になった。
 ちょっと左手が寂しくなったけど……私が独占しててもしょうがないなって思って納得することにした。

「はいはい、よっこいしょ……っと、はぃ、おとーさん」
「ぎゅー」
「おとーさん、ヒゲがじゃりじゃりする……顔こすり付けないでー。お酒くさいー」
「ああ、そうか。すまんな」
「あんたのところはホント仲いいな……」
「おじさんとお姉ちゃん、いつもこんな感じです」

 ホントに仲がいいと思う。
 さすがに私とお父さんとじゃ、恥ずかしさが先に来てこんな事はできない。むしろ臭い。
 おじさんはすっぽりとこなたを抱え込み、首元に自分の頭を乗せていた。
 微笑ましい光景、邪魔しちゃ悪いなと花火が舞う空に視線を戻す。

「いやーっ!」

 突然のこなたの悲鳴……というよりむしろ掛け声みたいな声がした。
 驚いて親子の方を見たら、おじさんの『ぺたぺた』から逃げたらしいこなたが、私にぎゅっとしがみついてきた。
 首に回った手が湿っていて、なんだか妙に熱い気がしたのは気のせいだろうか。

「い、一体どうしたのよ」
「いきなりさ、おとーさんがさ、首元でハァハァ言って『かなたぁー』とか言い始めるんだもん。……思わず肘鉄、思いっきりいれちゃったョ」

 ――さすがにそれはヤバすぎだろう。
 思わずこなたをおじさんから見えないようにかばって、抱きしめた。
 背中に回した手を撫でるように動かしたら、さらに寄り添ってきて、こなたの吐息が耳元にかかる。
 顔をおじさんに向けなおしたら、こなたの一撃はとても強烈だったみたいで、おじさんは脇を手で抑えて悶絶していた。

「おじさん、さすがにそれはやりすぎだと思いますよ」
「かがみ先輩と同じです……」
「おとーさん、いくら私がおかーさんに似てるからって変な気起こさないでよ」

 危険物を見るように、私達はおじさんから距離を取る。
 こなたが私からすぐ離れた辺り、本気で嫌がってたというよりは反射的に手が出ちゃいました、って事みたいだけど。
 よくよく見るとおじさんの周りにはビール缶が六本くらい転がっていた。

「う、げほっ、げほっ。……ああ、すまない」
「すまないじゃないでしょー、娘を手篭めにしようなんてどんな親?」
「いやぁ、そこまでは……いや、まぁ。あまりにもかなたに似てたんでな、って俺頭冷やしてくるわ」

 おじさんはゆったりと起き上がって、ふらふらと河川敷を歩いていった。
 残されたのはレジャーシートの上の私達と、転がったビール缶。
 ――いったい何本飲むつもりだったんだ。
 ビニール袋にはまだ未開封と思われるビール缶が数本残っていた。



 おじさんが居なくなってまたしばらくたった。
 花火の光が空を埋め尽くし、そして消えていく。花が大きく開く前のちょっとした音がするたびに、左手にぎゅ、と力がこもるのがわかる。
 今、私の両手はゆたかちゃんとこなたにそれぞれしっかりと握られている……なんだか一気に妹が増えたみたい。

「おう、泉やないか、柊もおるんか。えーと後は小早川やったな?」
「はい、こ、小早川ゆたかです」

 いきなり話しかけられて後ろを見たら、黒井先生がいた。すでにほろ酔いのみたいで、ビール片手に笑ってる。
 こんな時に先生に会うなんて思ってなかったみたいで、ゆたかちゃんは緊張してるみたい。

「ん、いつもの面子やないんか?」
「今日都合ついたのは、かがみと私。それと寄生しているゆたかちゃんくらいなもので」
「お、お姉ちゃん?」

 こなたの言葉でゆたかちゃんの緊張は解けたみたいだけど、何だか泣きそうな顔になってる。
 ――そりゃ言い方がひどくないか。
 まだまだお姉ちゃん暦は浅いわね、なんて思ってフォローしておく。

「馬鹿、せめて居候くらいにしておきなさいよ、ゆたかちゃんショック受けてるじゃない」
「あー、ごめんごめん」

 頭をぽりぽり掻いて、こなたはゆたかちゃんのご機嫌を取っていた。
 せっかく私をダシにして上がった好感度がダウンしたみたい、いい気味だ。

「さよか。ところで泉、ちゃんと勉強しとるんか? 休み入ってから、ネットにもあんまし上がってこんようなりやったし」
「まぁ、なんとかかんとか」
「柊……は心配するまでもないわなあ、去年みたいに遊んでてエエ時期ちゃうんやから。そこの所だけは肝に命じておかなあかへんで?」
「はい」
「ウチはもうちょい回ってから帰るさかいな。ほな、新学期になー」
「「「先生、さようならー」」」

 教師らしい言葉を拝聴して、素直に返事をする私達になんだか先生は満足そうだった。
 別に申し合わせたわけでもないのに、きれいにハモった挨拶に送られて、来た時と同じよう唐突に帰っていった。

「そういえばさ、去年の海は楽しかったねぇ」
「まだ受験生じゃなかったからプレッシャーもなかったし、今じゃ楽しむのは無理でしょ」
「んー、どっか行ってみようか。高校三年の夏って二度と来ないって言うし」

 先生が帰った後、思い出したようにこなたが言ってきた。
 ――本気?
 今が大事な時期というのはこなただってわかっているはずなのに。

「アンタね、そのセリフは使い道が違う。ただ言ってみたかっただけでしょ」
「あは、ばれたか。でもどっか行こってのは本気だよ」
「はぁ」

 思わずため息が出た。いくらやる気があって勉強しているからって、いきなりレベルが上がるなんてありえない。
 まだこなたは受験の入り口に入ったばかりなはずで、しかも望外のところを狙ってるって言うのに。

「まあ。アンタが真面目に勉強してるんだったら、付き合ってあげるわよ」
「んー、何をもって真面目なのか微妙だけど、無茶な条件じゃなきゃいいよ」
「それじゃ、今日帰ってからテスト作るから。それで八十点以上なら、今までの努力を認めてあげなくもないわ」
「おうけぃ、それじゃ契約成立って事で」

 頭の中でどんな問題を出そうかと考えてみた。
 丁度持ってきた問題集があるから……もしこなたが本当に宿題をほとんど終わらせてたら、その範囲から出す事に決めた。
 当然、宿題やってなかった時点でアウトって言ってやるつもりだ。

「待たせたね、ちょっとトイレが混んでてな」
「下品ですわよお父様、ご不浄と言ってくださいな」
「アンタ、そこでネタに走りたがるのはどうにかした方がいいと思うわよ」

 すっかりさっきの熱が冷めたおじさんが戻ってくる。さっきの行為を反省したのか、その手にビール缶はなかった。
 ――和服の着流しで背もあるし、ブサイクなわけでもない。行動さえまともならかっこいいオジサンなのに。

「そろそろ終わりだろ、混む前に帰ろう」
「そうですね。少し前のニュースで将棋倒しなんて騒いでたこともあるし」

 河川敷を見渡すと、もうすでに何人かは帰り支度をしている。
 ここにいる全員が一気に帰るとなると、結構な人波ができそうだった。
 少し名残惜しくもあったのだけど、私達はおじさんの言葉に頷いてこなたの家に帰ることにした。


 §


「お疲れ様、楽しかったね」
「アレでおとーさんの暴走がなければねー」

 こなたの家に帰り着いて、ゆたかちゃんは早々にお風呂に行った。
 気がつくもので、家に出る前にこなたはお風呂を沸かして保温設定にしておいたらしい。
 自信満々に家事を預かる者として当然なんて言ってくる辺り、私へのあてつけのつもり? といいたくなる。

 そんな事を考えながら浴衣を脱いでいたら、隣からなんだか視線を感じる。
 なんだろうと思って見ようとしたら、ゴクッと小さくだけど、何かを飲み込む音がする。
 音の発生元は……こっちをジッと見ているこなた。
 なんだか反応するのもおかしい気がして、そのままこなたを見つめてみる。

「……汗で張り付いた襦袢って何かエロいよね。ブラないからダイレクトだし」
「な、何言ってんのよ。エロゲのやりすぎじゃない?」

 ――おいおい、あんたそれはちょっと生々しくない?
 ちょっと危険な物を感じた私はつい胸と股間を手で隠したんだけど……隠してもしょうがないことに気づいてやめた。

 ――わたしもみゆきの胸とかに目を奪われることが無いわけじゃないし。
 言われてふと胸元を見たら、暑くて汗かきすぎてたせいか、胸にペタリと張り付いて透けてる。
 自分で見てもああ、やらしいのかもなんて思ってしまったので……さっさと着替えてしまうことにする。

「いやーいい物見させて貰いました。和服萌えのレベルがアップしたね、うん。かがみの浴衣も着れたしね」
「そういう割にアンタのは色気ないわね」
「ひどっ」

 下着をつけて、ラフな短パンとTシャツ姿になってから、冷房を効かせた部屋で伸びていたら、ゆたかちゃんが帰ってきた。
 お湯上がりのちんまりした体が桜色になってるのは、確かにこなたの言うとおり保護欲が沸く気がする。

「あのー、お風呂開きましたー」
「さっさとお風呂入って勉強しましょ、今日は寝かせないからね」
「うぅ、私最近四時半おきなのに……」

 こなたが先にお風呂に入って、その時間で私が問題を作る。というよりは、むしろ解く問題を選ぶ。
 私がお風呂に入っている間に解くという事で、今回の勝負のルールは決定。
 ちなみに、『宿題やってないから無効試合! スーパーひ○し君ボッシュート作戦』は、残念ながら失敗した。
 こなたが宿題をほとんど埋めて……パラパラ見た感じ正答だった上に、わからないところ少しあるから教えて、なんて言われたのであえなく没。

「んじゃお先に」
「ちゃんと湯船つかりなさいよ」
「わかってるよー」

 聞き流したような間延びした声と一緒に扉が閉まった。
 よし、と自分に掛け声をかけてから机の上に問題集とルーズリーフを広げる。


 ――いざ、尋常に勝負!


【Finale / えぴそーど4 夏の夜のメモリーズ】




(補足または蛇足)

1 「誉め言葉じゃないよね」

 胸が大きいと、帯に胸が乗るように崩れてしまうことを指しています。一応。
 端的に言うと……。
 ――それは寸胴と言いたいのデスカ? By Konata Izumi

2 「襦袢」

 教えてみWikiさん!
 和服でいう下着です。本来、和服だと横文字系下着はつけないものだそうです。
 かがみさんがブラをつけていなのは、巫女さんでもあり、古式の則った家だからということもありますが、実際のところ、
 この作品の作者さんが、とあるサイトのかがみさんの絵でこんなシーンを見つけられて、インスパイアされたというのが真相のようです。
 泉さんもかがみさんのお古襦袢を着ていたのですが、本編では大人の事情で詳しく書けなかったそうです。

 注:このみwikiさんは新手のナマモノです。用法、容量を守っても正しくご利用いただけるとは限りません。


















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