日当たりが悪いわけではないが、薄暗い部屋。
外には月が出ている時間帯。
寝ている住人に配慮して照明の光度を抑えたため、ぼんやりとした影が、一人分。
机に向かって小刻みに動いている。
そこへトイレに起きた妹の影が加わり、二人分。
外には月が出ている時間帯。
寝ている住人に配慮して照明の光度を抑えたため、ぼんやりとした影が、一人分。
机に向かって小刻みに動いている。
そこへトイレに起きた妹の影が加わり、二人分。
「……お姉ちゃんまだ起きてたんだ。こんな時間まで、なにしてるの~」
半分は夢の中に居るような声。
通りすがったついでに訊いてみただけで、本心から何をしているのか知りたいとは思っていないようだ。
「うん、チョットね。今は内緒」
こちらは眠気とは無縁。
返答ははぐらかしたが、うきうきした気分は隠しきれていない。
「あんまり、無理しないでね」
「はいはい。一段落ついたら休むから、心配しなくても大丈夫よ」
姉の言葉をちゃんと聴いているのだろうか。
妹は一回コクっとうなずくと、ゆっくり頭を持ち上げる。
「……おやすみ~」
「おやすみなさい」
部屋の中の影は、一人分に戻った。
半分は夢の中に居るような声。
通りすがったついでに訊いてみただけで、本心から何をしているのか知りたいとは思っていないようだ。
「うん、チョットね。今は内緒」
こちらは眠気とは無縁。
返答ははぐらかしたが、うきうきした気分は隠しきれていない。
「あんまり、無理しないでね」
「はいはい。一段落ついたら休むから、心配しなくても大丈夫よ」
姉の言葉をちゃんと聴いているのだろうか。
妹は一回コクっとうなずくと、ゆっくり頭を持ち上げる。
「……おやすみ~」
「おやすみなさい」
部屋の中の影は、一人分に戻った。
……月は沈み、太陽が昇る。
結局、姉は夜通し机に向かっていた。
『一睡も』とまではいかないにしろ、あまり寝ていないのも事実だ。
しかしそんなことは妹の前では表に出さない。
家を出る時間になり、二人そろって出発。
「お姉ちゃん、いつもより調子よさそうだね。どうしたの」
「いつもと同じよ」
「昨日の夜、なにかあったの」
「ううん、なにもなかったわよ」
「…………」
よくわからないという顔をして歩き続ける。
両者しばし無言。
「じゃあ、私はここで」
「……じゃあまた後で、お姉ちゃん」
結局、姉は夜通し机に向かっていた。
『一睡も』とまではいかないにしろ、あまり寝ていないのも事実だ。
しかしそんなことは妹の前では表に出さない。
家を出る時間になり、二人そろって出発。
「お姉ちゃん、いつもより調子よさそうだね。どうしたの」
「いつもと同じよ」
「昨日の夜、なにかあったの」
「ううん、なにもなかったわよ」
「…………」
よくわからないという顔をして歩き続ける。
両者しばし無言。
「じゃあ、私はここで」
「……じゃあまた後で、お姉ちゃん」
……日は傾き、放課後。
帰路につく影は一人分。
お姉ちゃんがご機嫌な理由はなんだろう。
そればかり考えていたら、いつの間にか家の前に着いていた。
慣れた手つきで鍵をあけ、ノブを回す。
照明のスイッチを入れると――。
「おめでとう! ひかげちゃん」
クラッカーの紙テープのように、ひなたが飛び出した。
「お、お姉ちゃん、どうして……。今日バイトはまだあるんじゃないの!?」
「今日がひかげちゃんの誕生日だって話したら、店長さんが早めにあがっていいよって」
「……あ、なんだかうきうきしてたのはコレのため?」
「隠しておこうと思ってたけど、やっぱり嬉しくって、顔に出ちゃったみたいね。はい、これプレゼント」
昨日、夜鍋して作っていたものを手渡す。
「そういうことだったの……ありがとう、お姉ちゃん」
今まで緊張していた顔がゆるむ。
「いつも食費を削っちゃっておいしいものを食べてないから、今日は豪華にいきましょう!
なにがいい? ケーキは注文してあるから、あとは夕飯なんだけど。
お肉? フライドチキン? うなぎ? このさいどーんとお寿司でも……」
「お姉ちゃん? もしもし?」
「そうだ、ケーキを取りに行くついでに、レストランでお食事を済ませましょう。それなら今日は前から気になってた新しくできたお店に――」
帰路につく影は一人分。
お姉ちゃんがご機嫌な理由はなんだろう。
そればかり考えていたら、いつの間にか家の前に着いていた。
慣れた手つきで鍵をあけ、ノブを回す。
照明のスイッチを入れると――。
「おめでとう! ひかげちゃん」
クラッカーの紙テープのように、ひなたが飛び出した。
「お、お姉ちゃん、どうして……。今日バイトはまだあるんじゃないの!?」
「今日がひかげちゃんの誕生日だって話したら、店長さんが早めにあがっていいよって」
「……あ、なんだかうきうきしてたのはコレのため?」
「隠しておこうと思ってたけど、やっぱり嬉しくって、顔に出ちゃったみたいね。はい、これプレゼント」
昨日、夜鍋して作っていたものを手渡す。
「そういうことだったの……ありがとう、お姉ちゃん」
今まで緊張していた顔がゆるむ。
「いつも食費を削っちゃっておいしいものを食べてないから、今日は豪華にいきましょう!
なにがいい? ケーキは注文してあるから、あとは夕飯なんだけど。
お肉? フライドチキン? うなぎ? このさいどーんとお寿司でも……」
「お姉ちゃん? もしもし?」
「そうだ、ケーキを取りに行くついでに、レストランでお食事を済ませましょう。それなら今日は前から気になってた新しくできたお店に――」
了