kairakunoza @ ウィキ

姉妹

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匿名ユーザー

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 日当たりが悪いわけではないが、薄暗い部屋。
 外には月が出ている時間帯。
 寝ている住人に配慮して照明の光度を抑えたため、ぼんやりとした影が、一人分。
 机に向かって小刻みに動いている。
 そこへトイレに起きた妹の影が加わり、二人分。

「……お姉ちゃんまだ起きてたんだ。こんな時間まで、なにしてるの~」
 半分は夢の中に居るような声。
 通りすがったついでに訊いてみただけで、本心から何をしているのか知りたいとは思っていないようだ。
「うん、チョットね。今は内緒」
 こちらは眠気とは無縁。
 返答ははぐらかしたが、うきうきした気分は隠しきれていない。
「あんまり、無理しないでね」
「はいはい。一段落ついたら休むから、心配しなくても大丈夫よ」
 姉の言葉をちゃんと聴いているのだろうか。
 妹は一回コクっとうなずくと、ゆっくり頭を持ち上げる。
「……おやすみ~」
「おやすみなさい」
 部屋の中の影は、一人分に戻った。


 ……月は沈み、太陽が昇る。
 結局、姉は夜通し机に向かっていた。
 『一睡も』とまではいかないにしろ、あまり寝ていないのも事実だ。
 しかしそんなことは妹の前では表に出さない。
 家を出る時間になり、二人そろって出発。
「お姉ちゃん、いつもより調子よさそうだね。どうしたの」
「いつもと同じよ」
「昨日の夜、なにかあったの」
「ううん、なにもなかったわよ」
「…………」
 よくわからないという顔をして歩き続ける。
 両者しばし無言。
「じゃあ、私はここで」
「……じゃあまた後で、お姉ちゃん」


 ……日は傾き、放課後。
 帰路につく影は一人分。
 お姉ちゃんがご機嫌な理由はなんだろう。
 そればかり考えていたら、いつの間にか家の前に着いていた。
 慣れた手つきで鍵をあけ、ノブを回す。
 照明のスイッチを入れると――。
「おめでとう! ひかげちゃん」
 クラッカーの紙テープのように、ひなたが飛び出した。
「お、お姉ちゃん、どうして……。今日バイトはまだあるんじゃないの!?」
「今日がひかげちゃんの誕生日だって話したら、店長さんが早めにあがっていいよって」
「……あ、なんだかうきうきしてたのはコレのため?」
「隠しておこうと思ってたけど、やっぱり嬉しくって、顔に出ちゃったみたいね。はい、これプレゼント」
 昨日、夜鍋して作っていたものを手渡す。
「そういうことだったの……ありがとう、お姉ちゃん」
 今まで緊張していた顔がゆるむ。
「いつも食費を削っちゃっておいしいものを食べてないから、今日は豪華にいきましょう!
 なにがいい? ケーキは注文してあるから、あとは夕飯なんだけど。
 お肉? フライドチキン? うなぎ? このさいどーんとお寿司でも……」
「お姉ちゃん? もしもし?」
「そうだ、ケーキを取りに行くついでに、レストランでお食事を済ませましょう。それなら今日は前から気になってた新しくできたお店に――」

 了













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