最近、周りの女子の目線が少し冷たくなった気がする。
とは言っても、よく漫画であるような上履きに画鋲を入れられたり、
ノートが糊でぴったりみたいな分かりやすいいじめじゃない。
ほんのちょっとしたこと。今まで普通に話していた子が挨拶を返してくれなかったり、
何人かが固まって私のことを見ながらひそひそ噂話をしていたり。
クラスの友達とは今まで良好な関係を築いてきたつもりだったのに、これはちょっとショックだ。
あの人、結構女の子に人気だったからな……
男の人が考えているほど、実際の女子の世界は華やかな世界じゃない。
どの子と仲良くしているか、どの子と付き合っているか、
そんな事が噂で語られあい、時にはそれがいじめにもなる。
現実にはそう簡単に百合の花は咲かないものなのだ。
それだから、小早川さんと岩崎さんの関係が羨ましく思えるのだけれども。
彼と付き合い始めてから周りから感じる、僻み、嫉妬の視線。
私があんまりパッとしない子だったのもあって、その視線はじりじりと私を焼く。
いまこのクラスで安心して会話ができるのは小早川さんたちだけ。
お昼だって、小早川さんたちの誘いを断って彼との食事を選んだのに、
小早川さんたちはニコニコとして送り出してくれた。
本当に私のことを考えてくれる私の大切な親友……
「はぁ、小早川さんたち、帰ってきてくれないかな?」
今まで彼の事しかなかった頭に、ぼんやりと二人の顔が浮かぶ。
とは言っても、よく漫画であるような上履きに画鋲を入れられたり、
ノートが糊でぴったりみたいな分かりやすいいじめじゃない。
ほんのちょっとしたこと。今まで普通に話していた子が挨拶を返してくれなかったり、
何人かが固まって私のことを見ながらひそひそ噂話をしていたり。
クラスの友達とは今まで良好な関係を築いてきたつもりだったのに、これはちょっとショックだ。
あの人、結構女の子に人気だったからな……
男の人が考えているほど、実際の女子の世界は華やかな世界じゃない。
どの子と仲良くしているか、どの子と付き合っているか、
そんな事が噂で語られあい、時にはそれがいじめにもなる。
現実にはそう簡単に百合の花は咲かないものなのだ。
それだから、小早川さんと岩崎さんの関係が羨ましく思えるのだけれども。
彼と付き合い始めてから周りから感じる、僻み、嫉妬の視線。
私があんまりパッとしない子だったのもあって、その視線はじりじりと私を焼く。
いまこのクラスで安心して会話ができるのは小早川さんたちだけ。
お昼だって、小早川さんたちの誘いを断って彼との食事を選んだのに、
小早川さんたちはニコニコとして送り出してくれた。
本当に私のことを考えてくれる私の大切な親友……
「はぁ、小早川さんたち、帰ってきてくれないかな?」
今まで彼の事しかなかった頭に、ぼんやりと二人の顔が浮かぶ。
息が切れる。
胸が熱い、心臓も今までにないぐらいドクドク高い音を立てている。
幼い頃から病弱で、全力で走った事なんて数えるぐらいしかなかった私にとって、
保健室から教室までの数十メートルですら体を苦しいほど締めつける。
すこしでも、すこしでも早く田村さんへ。
私の頭の中には、そのことしかない。
「田村さん!!」
教室の扉を開け放つ。
ショートホームルームが終わった後みたいで、みんなもそれぞれ帰り支度を始めた時間。
みんなの視線がこっちに集中するけれど、そんな事にかまっていられない。
「あ、小早川さん。体調は大丈夫なの?」
真っ先に私の体のこと心配してくれる田村さん。
いつも明るい田村さんだったけれど、でもその笑顔はいつもよりも輝いて見える。
それは、きっと恋をしているから。
でも、あの人は……
「田村さん。放課後用事あるの!!」
「あ、え、えっと……彼のところに行こうと思っていたんだけれど」
「ダメっ!!」
田村さんは何事かと驚いた表情。
でも、そんな事を気にしている余裕は私にはない。
「今日は、ううん、これからもあの人のところへ行っちゃダメなの。ねぇ、田村さん」
「え、でも、どうして……」
理由はいえない。
だって、自分の好きな人に裏切られるなんて、そんな事言える訳ないよ。
「理由は言えないけれど、あの人は悪い人なの!! 絶対行っちゃダメ!!」
ううっ、これじゃただのただっこと一緒だ。
何か言わなきゃいけないのに、頭がぐるぐる回ってうまく言えない。
「どうしてそんな事言うの? なんで、どうして私の好きな人のことをそんな風に言うの?」
私の言葉を聞いた田村さんの目がすっと細くなる。
今まで見たことのない、田村さんの怖い表情。
「小早川さんも、やっぱり私が男の人と付き合っているの、嫌なんだね」
いや、怒っているんじゃない。
彼女の目には、涙が一杯たまっていた。
田村さん、泣いているんだ……
「小早川さんなら、小早川さんなら私たちのこと、祝福してくれると思ったのに……」
「ち、ちが……」
否定しようとした私の胸を、田村さんの手が突き飛ばす。
ふらふらと私は床に倒れこむ。イスが大きな音を立てて転がる。
下から見上げた田村さんの顔。
眼鏡を取るといっそうつぶらに見える田村さんの瞳は、今にも涙が零れ落ちそう。
「大っ嫌い。もう二度と顔見せないで!!」
教室から出て行く田村さんに、私は何もできない。
そのまま呆然と田村さんを見送る。
大きな音とともに叩きつけられるように扉が閉められるまで、
田村さんを除いて誰一人動く事ができなかった。
「だ、大丈夫? 小早川さん」
田村さんが行ってしまってから数拍、周りの女の子たちが手を差し伸べてくれる。
その手に助け起こしてもらって、やっと私は立ち上がることができた。
「大丈夫、小早川さん。痛いところない?」
その言葉にこくんと頷く。
突き飛ばされたのは痛くなかった。それよりもずっと痛いのは心……
「それにしても何? 田村さん。ヒドくない? 調子に乗っているんじゃないの?」
「そうそう、彼氏ができたからって、ウザいよね。あーゆーの」
周りから聞こえてくる悪意の声、声、声。
違う、私が聞きたいのはこんな黒い感情じゃない。
私は、私は……
「ゆたかっ!!」
扉の方から聞こえてきた声。
みなみちゃんの方に振り返る。
「ゴメン、ゆたか。あの後ふゆき先生が来て事情を説明してたら遅くなって。大丈夫だった?」
みなみちゃんの優しい言葉に涙腺が緩む。
ぽろりぽろりとこぼれ落ちる涙。
私はみなみちゃんの胸に飛び込んだ。
「ゆ、ゆたか?」
みなみちゃんの胸に私は頭を預けて、私は涙をこぼす。
私は大事な親友を、傷つけてしまった。
胸が熱い、心臓も今までにないぐらいドクドク高い音を立てている。
幼い頃から病弱で、全力で走った事なんて数えるぐらいしかなかった私にとって、
保健室から教室までの数十メートルですら体を苦しいほど締めつける。
すこしでも、すこしでも早く田村さんへ。
私の頭の中には、そのことしかない。
「田村さん!!」
教室の扉を開け放つ。
ショートホームルームが終わった後みたいで、みんなもそれぞれ帰り支度を始めた時間。
みんなの視線がこっちに集中するけれど、そんな事にかまっていられない。
「あ、小早川さん。体調は大丈夫なの?」
真っ先に私の体のこと心配してくれる田村さん。
いつも明るい田村さんだったけれど、でもその笑顔はいつもよりも輝いて見える。
それは、きっと恋をしているから。
でも、あの人は……
「田村さん。放課後用事あるの!!」
「あ、え、えっと……彼のところに行こうと思っていたんだけれど」
「ダメっ!!」
田村さんは何事かと驚いた表情。
でも、そんな事を気にしている余裕は私にはない。
「今日は、ううん、これからもあの人のところへ行っちゃダメなの。ねぇ、田村さん」
「え、でも、どうして……」
理由はいえない。
だって、自分の好きな人に裏切られるなんて、そんな事言える訳ないよ。
「理由は言えないけれど、あの人は悪い人なの!! 絶対行っちゃダメ!!」
ううっ、これじゃただのただっこと一緒だ。
何か言わなきゃいけないのに、頭がぐるぐる回ってうまく言えない。
「どうしてそんな事言うの? なんで、どうして私の好きな人のことをそんな風に言うの?」
私の言葉を聞いた田村さんの目がすっと細くなる。
今まで見たことのない、田村さんの怖い表情。
「小早川さんも、やっぱり私が男の人と付き合っているの、嫌なんだね」
いや、怒っているんじゃない。
彼女の目には、涙が一杯たまっていた。
田村さん、泣いているんだ……
「小早川さんなら、小早川さんなら私たちのこと、祝福してくれると思ったのに……」
「ち、ちが……」
否定しようとした私の胸を、田村さんの手が突き飛ばす。
ふらふらと私は床に倒れこむ。イスが大きな音を立てて転がる。
下から見上げた田村さんの顔。
眼鏡を取るといっそうつぶらに見える田村さんの瞳は、今にも涙が零れ落ちそう。
「大っ嫌い。もう二度と顔見せないで!!」
教室から出て行く田村さんに、私は何もできない。
そのまま呆然と田村さんを見送る。
大きな音とともに叩きつけられるように扉が閉められるまで、
田村さんを除いて誰一人動く事ができなかった。
「だ、大丈夫? 小早川さん」
田村さんが行ってしまってから数拍、周りの女の子たちが手を差し伸べてくれる。
その手に助け起こしてもらって、やっと私は立ち上がることができた。
「大丈夫、小早川さん。痛いところない?」
その言葉にこくんと頷く。
突き飛ばされたのは痛くなかった。それよりもずっと痛いのは心……
「それにしても何? 田村さん。ヒドくない? 調子に乗っているんじゃないの?」
「そうそう、彼氏ができたからって、ウザいよね。あーゆーの」
周りから聞こえてくる悪意の声、声、声。
違う、私が聞きたいのはこんな黒い感情じゃない。
私は、私は……
「ゆたかっ!!」
扉の方から聞こえてきた声。
みなみちゃんの方に振り返る。
「ゴメン、ゆたか。あの後ふゆき先生が来て事情を説明してたら遅くなって。大丈夫だった?」
みなみちゃんの優しい言葉に涙腺が緩む。
ぽろりぽろりとこぼれ落ちる涙。
私はみなみちゃんの胸に飛び込んだ。
「ゆ、ゆたか?」
みなみちゃんの胸に私は頭を預けて、私は涙をこぼす。
私は大事な親友を、傷つけてしまった。
裏切られた。
その感情だけが頭の中をぐるぐる回る。
誰も来ない校舎の裏で、私は涙を拭う。
小早川さんだけは私の味方だと思っていたのに、私を裏切らないと思っていたのに。
どうして、何でみんなそんなに酷い事するの……
私は一人ぼっち。慰めてくれる人もいない。
こうやって一人で校舎の裏で涙をこぼすだけ。
私の泣き言を聞いてくれる人も、もう誰もいない。
もう、彼以外誰も信用できない……
こぼれ落ちる涙も次第に弱くなる。
ハンカチで涙に濡れる顔を拭う。
あーあ、目が真っ赤。彼になんて言い訳しよう。
コンタクトのせいって、誤魔化せばいいかな。
ほっぺたを叩いて気合を入れる。
こんな情けない顔を彼に見せるわけにはいかない。
彼は、私の笑っている顔が好きなんだから。
大丈夫。私は立ち直れる。
私には、彼さえいれば他には何もいらない。
その感情だけが頭の中をぐるぐる回る。
誰も来ない校舎の裏で、私は涙を拭う。
小早川さんだけは私の味方だと思っていたのに、私を裏切らないと思っていたのに。
どうして、何でみんなそんなに酷い事するの……
私は一人ぼっち。慰めてくれる人もいない。
こうやって一人で校舎の裏で涙をこぼすだけ。
私の泣き言を聞いてくれる人も、もう誰もいない。
もう、彼以外誰も信用できない……
こぼれ落ちる涙も次第に弱くなる。
ハンカチで涙に濡れる顔を拭う。
あーあ、目が真っ赤。彼になんて言い訳しよう。
コンタクトのせいって、誤魔化せばいいかな。
ほっぺたを叩いて気合を入れる。
こんな情けない顔を彼に見せるわけにはいかない。
彼は、私の笑っている顔が好きなんだから。
大丈夫。私は立ち直れる。
私には、彼さえいれば他には何もいらない。
「お、遅くなりました」
恐る恐る屋上への扉を開ける。
屋上で待っててくれた彼の微笑み。
それだけで私の心は満たされる。
「あれ、ひよりさん。眼鏡……もしかして僕のために?」
彼の言葉にこくんと頷く。
やっぱり、彼は気づいてくれた。
彼の腕が私の体を包む。
「ありがとう、ひよりさん」
彼の唇が私のおでこに触れる。
粘膜を通じた、あたたかい、彼の体の奥底のぬくもりが私の体を幸福で満たす。
彼の胸板が私の目の前に。彼の胸から伝わってくる鼓動が、私の心を落ち着かせる。
「次は唇に……」
彼の言葉に、私は顔を上げて目を閉じる。
直後、貪る様に私の唇を包み込むキス。
緊張と安堵が入り混じる、奇妙な感触。
私の体は完全に彼に支配される。
体のすべてを彼に預けてしまいたくなるような恍惚感。
私の唇を撫でていた彼の舌が、私の唇を割って中に入ってくる。
「!?!?」
彼の舌が私の歯茎を撫でる感触にびくっと震える。
ディープキス……本の中でしか知らない知識が頭によぎる。
歯を撫でる舌の感触がくすぐったく、気持ちいい。
彼の舌をもっと奥深く受け止めたら、どんな味がするのだろう。
恐る恐る口を開こうとして……
「……」
小早川さんの泣きそうな顔が頭に浮かんできた。
屋上へ行こうとする私を必死で止めようとした小早川さんの表情。
どうして、何で今になって……
彼女は彼のことを酷く言ったのに、私のことを裏切ったのに、
なんで今更彼女の顔が頭に浮かんでくるの?
「あれ、ひよりさん……」
気がつくと私は彼の肩を押さえ、彼を引き離していた。
怪訝な表情で私を見つめる彼。
「ご、ゴメンなさい。急に用事ができちゃって、今日はそれを伝えようと……」
とっさに口をついて滑り出す嘘。
彼は「そっか」と残念そうに私の体から手を離す。
最近の私はずっと嘘をついてばかり。
私はどれほどの嘘を、どれほどの咎を重ねていくのだろう。
「あ、あの、また明日……」
「うん? やっぱり今日は物足りなかった?
自分から求めてくれるなんてひよりさんも積極的になってくれたね」
えっ、わ、私そんなつもりじゃ……
驚き、唇を押さえる。
そんな私を苦笑して見つめる彼。
「冗談だよ。ひよりさんはただ僕に会えるのが嬉しいんだよね?」
こくこくと私は頷く。
「なら、今の僕にはそれで充分だから。また明日、ひよりさん」
「ご、ゴメンなさい。また明日」
転がるように下へつながる階段へ駆け込み、扉を閉める。
重い音を立てて閉まった扉に背中を預け、荒く息をつく。
口の中の彼の余韻。近くで感じた彼の鼓動と息遣い、彼の匂い。
ぐるぐる頭の中を回る彼の顔。
でも、ずっと頭の片隅から小早川さんの泣きそうな顔が離れなかった。
恐る恐る屋上への扉を開ける。
屋上で待っててくれた彼の微笑み。
それだけで私の心は満たされる。
「あれ、ひよりさん。眼鏡……もしかして僕のために?」
彼の言葉にこくんと頷く。
やっぱり、彼は気づいてくれた。
彼の腕が私の体を包む。
「ありがとう、ひよりさん」
彼の唇が私のおでこに触れる。
粘膜を通じた、あたたかい、彼の体の奥底のぬくもりが私の体を幸福で満たす。
彼の胸板が私の目の前に。彼の胸から伝わってくる鼓動が、私の心を落ち着かせる。
「次は唇に……」
彼の言葉に、私は顔を上げて目を閉じる。
直後、貪る様に私の唇を包み込むキス。
緊張と安堵が入り混じる、奇妙な感触。
私の体は完全に彼に支配される。
体のすべてを彼に預けてしまいたくなるような恍惚感。
私の唇を撫でていた彼の舌が、私の唇を割って中に入ってくる。
「!?!?」
彼の舌が私の歯茎を撫でる感触にびくっと震える。
ディープキス……本の中でしか知らない知識が頭によぎる。
歯を撫でる舌の感触がくすぐったく、気持ちいい。
彼の舌をもっと奥深く受け止めたら、どんな味がするのだろう。
恐る恐る口を開こうとして……
「……」
小早川さんの泣きそうな顔が頭に浮かんできた。
屋上へ行こうとする私を必死で止めようとした小早川さんの表情。
どうして、何で今になって……
彼女は彼のことを酷く言ったのに、私のことを裏切ったのに、
なんで今更彼女の顔が頭に浮かんでくるの?
「あれ、ひよりさん……」
気がつくと私は彼の肩を押さえ、彼を引き離していた。
怪訝な表情で私を見つめる彼。
「ご、ゴメンなさい。急に用事ができちゃって、今日はそれを伝えようと……」
とっさに口をついて滑り出す嘘。
彼は「そっか」と残念そうに私の体から手を離す。
最近の私はずっと嘘をついてばかり。
私はどれほどの嘘を、どれほどの咎を重ねていくのだろう。
「あ、あの、また明日……」
「うん? やっぱり今日は物足りなかった?
自分から求めてくれるなんてひよりさんも積極的になってくれたね」
えっ、わ、私そんなつもりじゃ……
驚き、唇を押さえる。
そんな私を苦笑して見つめる彼。
「冗談だよ。ひよりさんはただ僕に会えるのが嬉しいんだよね?」
こくこくと私は頷く。
「なら、今の僕にはそれで充分だから。また明日、ひよりさん」
「ご、ゴメンなさい。また明日」
転がるように下へつながる階段へ駆け込み、扉を閉める。
重い音を立てて閉まった扉に背中を預け、荒く息をつく。
口の中の彼の余韻。近くで感じた彼の鼓動と息遣い、彼の匂い。
ぐるぐる頭の中を回る彼の顔。
でも、ずっと頭の片隅から小早川さんの泣きそうな顔が離れなかった。
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- これは一波乱来そうな展開…wktkで待ってます。 -- 名無しさん (2007-09-20 22:41:50)