淡い色をした空に、点々と雲が浮いている。程よく乾いた風が凪ぎ、昼下がりの日射しも柔らかい。
「そろそろ秋だねー」
「そうだねー」
こなたとつかさは二人、柊家の縁側に腰掛けながら、流れる雲を眺めている。
九月も半ばを過ぎ、まだまだ暑い日もあるが、ようやく季節は秋めいてきた。
今日はかがみは留守にしている。遊びに来ていたこなたは、少々残念に思いながらも、つかさと二人で過ごす休日を楽しんでいた。
こなたは傍らのお盆に盛られた蜜柑を一つ、手に取った。普通の蜜柑ではない。ほんのりと黄色く染まった青蜜柑。熟れた蜜柑より酸味は強いが、ほのかに甘く、涼しげな味がする。
こなたは皮を剥こうと蜜柑の裏側、お尻の部分に親指を立てた。
――と、そこで動きを止めて、つかさに尋ねる。
「蜜柑の皮を剥くときって、ヘタの方から剥く? それともお尻から剥く?」
「お尻の方かな。そっちの方が柔らかくて指が入りやすいし」
「ふーん……私と一緒だね」
頷きながらこなたは改めて蜜柑に親指を立て、器用な手付きで皮を剥いていく。
「スジは取る方?」
「別に取らなくても平気かな」
「そっか」
剥き終わった青蜜柑を半分に割り、片方をつかさに渡す。
二人一緒に、向き立ての青蜜柑を一欠片、口に運んだ。
「ん~……甘酸っぱくって美味しいね」
「そうだねー」
物によっては酸っぱ過ぎたりするのだが、これは当たりが多い。
「青蜜柑って、この緑と黄色が混ざってる模様が可愛いよね」
つかさがまだ剥いてない青蜜柑を一つ手に取る。顔に近付けると、柑橘独特の香りが心地良く鼻孔をくすぐった。
「これなんてだいぶ黄色が多くなってきたね」
こなたがまた一つ別の青蜜柑を手に取った。全体の色の割合が、だいぶ黄色に傾いている。
「こういうの見ても、秋だなー、って感じるねぇ」
「そうだねー」
のんびり語らいながら、こなたとつかさは青蜜柑を一つ一つ、口に運ぶ。
口中に広がる酸味と甘味は、過ぎゆく夏の余韻と、間近な秋の訪れを、ぼんやりと想わせた。
「そろそろ秋だねー」
「そうだねー」
こなたとつかさは二人、柊家の縁側に腰掛けながら、流れる雲を眺めている。
九月も半ばを過ぎ、まだまだ暑い日もあるが、ようやく季節は秋めいてきた。
今日はかがみは留守にしている。遊びに来ていたこなたは、少々残念に思いながらも、つかさと二人で過ごす休日を楽しんでいた。
こなたは傍らのお盆に盛られた蜜柑を一つ、手に取った。普通の蜜柑ではない。ほんのりと黄色く染まった青蜜柑。熟れた蜜柑より酸味は強いが、ほのかに甘く、涼しげな味がする。
こなたは皮を剥こうと蜜柑の裏側、お尻の部分に親指を立てた。
――と、そこで動きを止めて、つかさに尋ねる。
「蜜柑の皮を剥くときって、ヘタの方から剥く? それともお尻から剥く?」
「お尻の方かな。そっちの方が柔らかくて指が入りやすいし」
「ふーん……私と一緒だね」
頷きながらこなたは改めて蜜柑に親指を立て、器用な手付きで皮を剥いていく。
「スジは取る方?」
「別に取らなくても平気かな」
「そっか」
剥き終わった青蜜柑を半分に割り、片方をつかさに渡す。
二人一緒に、向き立ての青蜜柑を一欠片、口に運んだ。
「ん~……甘酸っぱくって美味しいね」
「そうだねー」
物によっては酸っぱ過ぎたりするのだが、これは当たりが多い。
「青蜜柑って、この緑と黄色が混ざってる模様が可愛いよね」
つかさがまだ剥いてない青蜜柑を一つ手に取る。顔に近付けると、柑橘独特の香りが心地良く鼻孔をくすぐった。
「これなんてだいぶ黄色が多くなってきたね」
こなたがまた一つ別の青蜜柑を手に取った。全体の色の割合が、だいぶ黄色に傾いている。
「こういうの見ても、秋だなー、って感じるねぇ」
「そうだねー」
のんびり語らいながら、こなたとつかさは青蜜柑を一つ一つ、口に運ぶ。
口中に広がる酸味と甘味は、過ぎゆく夏の余韻と、間近な秋の訪れを、ぼんやりと想わせた。
「そういえばそろそろお彼岸だよね」
「そうだねー」
「お彼岸といえば……」
こなたは視線を巡らし、庭の一角に目を留めた。
「さっきから気になってたんだけど、あそこに生えてるのって彼岸花じゃないの?」
「え? あ、ホントだ」
庭の隅に、ポツンと一つ、彼岸花があった。鮮烈なほど赤い色なのに、とてもさりげなく咲いている。種が飛んで増えるということは滅多にない花なので、自然に生えたとすれば珍しいことだった。
普通、人家に植える花ではない。毒草な上、不吉だと言われることが多い。摘んで帰ると火事になる、という迷信もある。
「どうしよう? 抜いちゃった方がいいのかな?」
少々不安そうに尋ねる。つかさは信心深いというか、割と迷信深い。
「別にいいんじゃないの? 毒があるっていうけど食べたりしなきゃ問題ないし。綺麗な花だから私は好きだな」
「そっか……」
「つかさは彼岸花って嫌い?」
「嫌いってほどじゃないけど……彼岸花の赤って、綺麗なんだけど、ちょっとこう……強過ぎる気がするの。何か……」
「……血の色……を連想するとか?」
わざとおどろおどろしい口調でこなたがそう言うと、つかさは身震いして頷いた。
「あうぅ……そんな感じかも……」
「恐がりだねぇ、つかさは」
こなたは微笑みながら、プニプニとつかさのほっぺたを突っつく。
「……で、どうしたらいいんだろ?」
「放っといたら? 生やしてたって捕って食われるわけじゃなし」
「うーん……」
つかさは少し困った風に彼岸花を眺めていたが、さりとてすぐに引き抜いて捨てるというのも気が引ける。
「……やっぱり放っておこう」
素性不明の彼岸花、柊家の庭先にて放置プレイ決定。
「そうだねー」
「お彼岸といえば……」
こなたは視線を巡らし、庭の一角に目を留めた。
「さっきから気になってたんだけど、あそこに生えてるのって彼岸花じゃないの?」
「え? あ、ホントだ」
庭の隅に、ポツンと一つ、彼岸花があった。鮮烈なほど赤い色なのに、とてもさりげなく咲いている。種が飛んで増えるということは滅多にない花なので、自然に生えたとすれば珍しいことだった。
普通、人家に植える花ではない。毒草な上、不吉だと言われることが多い。摘んで帰ると火事になる、という迷信もある。
「どうしよう? 抜いちゃった方がいいのかな?」
少々不安そうに尋ねる。つかさは信心深いというか、割と迷信深い。
「別にいいんじゃないの? 毒があるっていうけど食べたりしなきゃ問題ないし。綺麗な花だから私は好きだな」
「そっか……」
「つかさは彼岸花って嫌い?」
「嫌いってほどじゃないけど……彼岸花の赤って、綺麗なんだけど、ちょっとこう……強過ぎる気がするの。何か……」
「……血の色……を連想するとか?」
わざとおどろおどろしい口調でこなたがそう言うと、つかさは身震いして頷いた。
「あうぅ……そんな感じかも……」
「恐がりだねぇ、つかさは」
こなたは微笑みながら、プニプニとつかさのほっぺたを突っつく。
「……で、どうしたらいいんだろ?」
「放っといたら? 生やしてたって捕って食われるわけじゃなし」
「うーん……」
つかさは少し困った風に彼岸花を眺めていたが、さりとてすぐに引き抜いて捨てるというのも気が引ける。
「……やっぱり放っておこう」
素性不明の彼岸花、柊家の庭先にて放置プレイ決定。
縁側でのんびり過ごすうちに、日が傾いてきた。
「日の出る時間も短くなってきたねー」
「そうだねー」
「秋っていいねー。涼しくて過ごしやすくて」
「そうだねー」
「秋休みってあればいいのになー」
「あー、いいねそれ」
「春休み、夏休み、冬休みとあって秋休みが無いのは不公平だよねー」
「だよねー」
「誰か真剣に検討してくれないもんかねー」
「ねー」
「……あんたら二人して、何を自堕落なこと言ってんだ」
「おう、かがみ。いつの間に」
「お帰りお姉ちゃん」
かがみはつかさの隣に腰掛け、青蜜柑を一つ手に取った。
「秋は何をするにも過ごしやすい時期なんだから、こういう時にこそ勉強やスポーツに打ち込むのが正しい学生の姿勢ってもんでしょ。特に私達は受験生なんだから」
「そうは言うがな大佐」
「誰が大佐だ」
「何をするにも過ごしやすい時期に、あえて何もせずのんびり過ごすのもまた粋ってもんじゃないかね」
「ただぐうたらするための言い訳でしょうが……」
ため息をつきながら、かがみは青蜜柑を一欠片、口に放り込む。
「あ、これ美味しいわね」
「でしょう? まだ青いのに、結構甘いよね」
「甘過ぎず、酸っぱ過ぎでもない。良い塩梅だよねぇ」
こなたもまた一つ青蜜柑を剥き始める。
「そういやかがみは蜜柑の皮、ヘタかお尻、どっちから剥く?」
「ヘタの方ね。そっちの方がスジが良く取れるし」
「ふーん……」
こなたは青蜜柑に親指を立てて剥いていく。
「あんたはお尻からなのね」
「ま、ね。ほいつかさ」
剥き終えた青蜜柑を半分に割り、片方をつかさに渡す。
「ありがと」
二人一緒に甘酸っぱい味と香りを楽しむ。かがみは何となく蚊帳の外に置かれたような気分だ。
「私には剥いてくれないんだ」
努めて何でもないことのような調子で、こなたにそう言った。
「ん~? かがみ、剥いて欲しいの?」
「べ、別に誰もそんなこと言ってないでしょ」
「あっそう」
あっさり話を切り上げたこなたは、また一つ青蜜柑を剥き始める。剥き終えたそれを、
「つかさ。あーん」
と言って差し出した。つかさの方も屈託無く、
「あーん」
と口を開けて応じた。底意も何もなく、素直にこなたの好意を受けているだけである。
これ見よがしに仲睦まじいその様子を、横から見ているかがみ。あえて突っ込むまいとひたすら口を噤んでいた。突っ込んだ途端、こなたにおちょくられるのは目に見えている。
こなたもそんなかがみにあえて触れようとはせず、のんびり青蜜柑を食べている。つかさは言わずもがな。
庭の隅に咲く彼岸花が、風に吹かれて揺れていた。
「日の出る時間も短くなってきたねー」
「そうだねー」
「秋っていいねー。涼しくて過ごしやすくて」
「そうだねー」
「秋休みってあればいいのになー」
「あー、いいねそれ」
「春休み、夏休み、冬休みとあって秋休みが無いのは不公平だよねー」
「だよねー」
「誰か真剣に検討してくれないもんかねー」
「ねー」
「……あんたら二人して、何を自堕落なこと言ってんだ」
「おう、かがみ。いつの間に」
「お帰りお姉ちゃん」
かがみはつかさの隣に腰掛け、青蜜柑を一つ手に取った。
「秋は何をするにも過ごしやすい時期なんだから、こういう時にこそ勉強やスポーツに打ち込むのが正しい学生の姿勢ってもんでしょ。特に私達は受験生なんだから」
「そうは言うがな大佐」
「誰が大佐だ」
「何をするにも過ごしやすい時期に、あえて何もせずのんびり過ごすのもまた粋ってもんじゃないかね」
「ただぐうたらするための言い訳でしょうが……」
ため息をつきながら、かがみは青蜜柑を一欠片、口に放り込む。
「あ、これ美味しいわね」
「でしょう? まだ青いのに、結構甘いよね」
「甘過ぎず、酸っぱ過ぎでもない。良い塩梅だよねぇ」
こなたもまた一つ青蜜柑を剥き始める。
「そういやかがみは蜜柑の皮、ヘタかお尻、どっちから剥く?」
「ヘタの方ね。そっちの方がスジが良く取れるし」
「ふーん……」
こなたは青蜜柑に親指を立てて剥いていく。
「あんたはお尻からなのね」
「ま、ね。ほいつかさ」
剥き終えた青蜜柑を半分に割り、片方をつかさに渡す。
「ありがと」
二人一緒に甘酸っぱい味と香りを楽しむ。かがみは何となく蚊帳の外に置かれたような気分だ。
「私には剥いてくれないんだ」
努めて何でもないことのような調子で、こなたにそう言った。
「ん~? かがみ、剥いて欲しいの?」
「べ、別に誰もそんなこと言ってないでしょ」
「あっそう」
あっさり話を切り上げたこなたは、また一つ青蜜柑を剥き始める。剥き終えたそれを、
「つかさ。あーん」
と言って差し出した。つかさの方も屈託無く、
「あーん」
と口を開けて応じた。底意も何もなく、素直にこなたの好意を受けているだけである。
これ見よがしに仲睦まじいその様子を、横から見ているかがみ。あえて突っ込むまいとひたすら口を噤んでいた。突っ込んだ途端、こなたにおちょくられるのは目に見えている。
こなたもそんなかがみにあえて触れようとはせず、のんびり青蜜柑を食べている。つかさは言わずもがな。
庭の隅に咲く彼岸花が、風に吹かれて揺れていた。
おわり
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- なんだこの空気…癒やされる!byひより -- 名無しさん (2009-01-28 19:22:31)
- 秋休み言うても1日だけ -- 名無しさん (2009-01-28 05:51:48)
- 学校によっては二学期制とかで秋休みがある高校とかあるらしいですよ。 -- 名無しさん (2008-08-06 17:23:11)
- テラほのぼのwww癒されるー -- 名無しさん (2008-02-07 17:18:33)