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桜吹雪

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桜が満開に咲き誇る、そう季節は春。
高校受験も無事終わり、待ちわびていた春が始まった。
合格圏の高校を受けた私が自分の合格より心配していた妹も、なんとか無事合格し、新たな学園生活に心踊らせ、二人仲良く新しい校門をくぐった。

「あちゃー、またクラスバラバラかー」
「はぅぅ、残念だね」
この会話ももう何回目だろう。
双子の私達がクラスが別になるのは当たり前って言えばそうなのだけれども、やはり慣れ親しんだ妹が同じクラスにいて欲しいと思ってしまう。
「大丈夫よ、つかさ。中学みたくちょくちょくそっちのクラスにお邪魔するし」
どうも我が妹はゆったりというかマイペースというか、少々どんくさい性格上、小中学校共にクラスに馴染めるまでに時間がかかるのだ。
その為私が休み時間ごとにつかさのクラスまで行き、クラスに慣れるまでの掛け橋役になっていた。
まぁ私自身も新しい環境の変化に多少の不安もあるからなんだけど…。



格式通りの入学式が終わり、新しいクラスへ腐れ縁である日下部や峰岸と向う。
「高校生つったって、あんま変わんねぇのな。」
「その台詞中学ん時も言ってなかったか?」
「みさちゃんは幼稚園の頃から変わってないもんねー」
峰岸、それフォローになってないと思うぞ。
「そういえば、今日は入学式だけですぐ帰れるんだよなー。せっかく高校生になったし、いっちょ遊びにでも行くか!!!」
びしっ!と効果音のするように親指を立てて提案する日下部。
「いいね、受験勉強でなかなか遊べなかったし。柊ちゃんも、ね?」
「あー悪い。今日はつかさと帰る約束してるのよ。」
高校生活初日でオロオロしてるだろう妹を想像し、苦笑しながら答える。
「えー、なんだよ柊ぃー。ノリ悪ぃなぁ。」
「まぁまぁ、みさちゃん。柊ちゃんも妹ちゃんが心配なのよ。」
口を3にして不平を言う日下部をなだめる峰岸、高校になっても相変わらずな二人をみて自然に笑みがこぼれる。
「しっかたねぇなぁ、じゃあまた今度遊ぼうな、絶対だぞ!!!」
「はいはい」
日下部はまだ不満そうだったが、私の同意を聞いて納得したのか、「よしっ!なら今度の日曜な」などと半ば強制的に予定を組み始めていた。


自己紹介や委員会決めなど簡単なHRが終わり、下校のチャイムとともにつかさの教室へと向う。
「つかさー、帰るよー」
「あ、お姉ちゃん。ちょっと待って!
こなちゃん、あたし帰るね。」
教室の扉からつかさを呼ぶと新しくできた友達だろうか、『こなちゃん』とやらに別れを告げ、帰る支度を始めた。
「おーまたね、つかさ~」
あっけらかんと答えるその子を見る。
床に届きそうな位長い青髪、頭には重力に逆らったあほ毛、ネコのような口の一見小学生にも見える体型の女の子であった。
小学生ってのは失礼すぎるな、私。
一人つっこみをしていると私の視線に気付いたのか、その子と目が合った。
「ふふ~ん♪」
と一層口をネコにして観察される。
「つり目にツインテール、まさしくツンデレ要素フル完備ですな」
先ほどの日下部と同じようにビシッとGJポーズをされる。
「…は、はぁ」
言ってる事の半分も理解出来なかったが、とりあえず返事をする私。

『変な奴』、それが私が最初に抱いたこなたへの印象だった。まぁ仲良くなってからも相変わらず『変な奴』ではあるけれど。


その後、つかさの帰る支度が終わり、私達の会話も終了した。
帰り道に「新しい友達が出来たのー。泉こなたちゃん、って言うんだよ」
とつかさが嬉しそうに説明してくれた。
「あぁ、あの青髪の子?」
「うん!!」
人見知りのつかさが入学初日で友達が出来るなんて私が知る限り今回が始めてだ。
『変な奴』と思ったが、意外にいい子なのかもしれない。
言ってることはよく分からなかったけれど。


帰り道も夕飯の時もつかさは新しい友達『こなちゃん』の話題で持ち切りだった。
「でね、緊張してたらこなちゃんが『もはやトゥーハーの?!』って聞いてきてね。」
「こなちゃん、ゲームとか漫画とかとっても詳しいんだってー」
つかさ、その話4回目よ。
なんて野暮なつっこみを入れられない位楽しそうに話す、つかさ
「お姉ちゃんも絶対すぐに友達になれるよー」
「そうね」
妹の友達だし、よろしく程度に友達になるのも悪くないか。
「じゃあ明日昼休みにでもそっちのクラス行ってみるわ」
そう言い残し、自分の部屋へと向った。



翌朝。
私は一人で学校へと登校していた。
理由は至極簡潔、双子の片割れ、つまりつかさの寝坊だ。
「お母さん!なんで起こしてくれなかったのー」
「起こしたわよ、返事だってしたじゃない」
「ふぇぇ、知らないよー」
高校生の台詞じゃないな、なんて先程のやりとりを思い出す。
中学時代の私なら一緒に走って学校へ行くところだが、妹への戒めの為に一足先に家を出たのだ。
「あの子はいつまでたっても甘えん坊だからねー」
なんて独り言をこぼす。
バスを降りてふと周囲を見回すと、桜並木が広がっていた。
「やっぱ春はいいわね」
あったかいし、気分もはれるし。
「特にこんな桜吹雪の中じゃ…って、えぇ?!!」
いくらなんでもこんな大量に桜が舞う事はないだろっていうくらい桜が舞っていた。
というか人為的に舞わされてる?!
「やっふぃ~い♪」
声のする方を仰ぎ見ると、桜を纏いながらこっちへダイブしてくる女の子。
…ってこっちに来る?!
「ちょ、ま…」
「…どぅあっ!!!」
静止の声と同時にその子と私はぶつかった。
いや一方的にぶつかってきたのだけど。



「いててて、失敗失敗、やはり人は鳥にはなれんか」
むむ、と顎に手をあててその子は言った。逆行でよく顔が見えない。
第一声にそれか、などと心の中でつっこみを入れ、上半身を上げる。
「…っ、大丈夫?!」
この場合私が聞かれる方なんじゃないか、と思いつつもこのダイブ女の子に問う。
「うん、着地点にツンデレ要素盛り沢山な子がいたからねw」
昨日も同じ様な事を聞いた覚えが…と、その女の子を見ると、昨日つかさが散々語っていた『泉こなた』だった。
「ちょ、あんた、つかさのクラスの…」
「うん、泉こなた。よろしくね、つかさ姉」
目を細め、例の如く猫口で手を差しのべられる。
「え…あ、うん」
よく分からないが手を握ると、ひょいっと引っ張られた。
そんなちっさい体のどこにそんな力があるのだろう。
「ふんふん、今日はつかさと一緒じゃないの?」
「そ、そうよ」
急に話かけられ何故か焦る私。
というか肝心な事を聞けていない。
「てゆーか、えっと…泉さん、は何で飛んできたの?」
まさかつかさみたく『こなちゃん』と呼べる訳もなく無難な呼び方で、先程の行動の動機を尋ねてみた。
「いやさー、漫画とかギャルゲみたく桜吹雪の中出会うシチュを体験してみたくて」
昨日に引き続き意味が分からない。
「えっと、ギャルゲ?」
「うん、ギャルゲ。」
いやそんな胸張られても…何で飛んできたかの答えになっていない。
はぁ、と溜め息をつくとそれに気付いたのか泉さんが話を続けた。
「でも今日全然風吹いてなくてさー桜吹雪いてないじゃん?!で、桜の木に登って揺さぶってたら、つかさ姉が見えたから飛び込んでみたのだよ」
「かがみでいいわよ、つかさ姉じゃ不便でしょ。」
飛びこんできた理由は未だ意味不明だが、楽しそうに話すこの子に感化され笑みがこぼれる。

「うん。ねぇ、かがみ。」
「……なによ」
始めて名前を呼ばれる気恥ずかしさで顔をちょっと背ける私。
「私達桜吹雪の中、出会っちゃったね」
「確かにね、まぁでも出会ったと言えば昨日出会ってたけどね」
「かがみには夢ってのがないのかねー」
口を三角にして不満げな顔をする、泉…えっと…名前で良いわよね、こなたちゃん。
「こなたでいいよ」
「え」

いつの間にか猫口に戻ってるこなたがニヤニヤしながらこっちを見て言った。
なんで思ってる事分かったんだろう。こなたは驚きを隠しきれない私に近付き、私の左手をとり、握った。
「かがみ、遅刻するよ」
そう言うと、もの凄いスピードで走り出す。
最初は足がもつれて転びそうだった私もなんとかこなたに付いて行く。
風を切って走る私達の後ろには先程の人為的な桜吹雪よりは小さいけれど、小さな桜吹雪が出来ていた。

初めて繋いだ手と手の感触は心地よくて、高まる鼓動は走っているからっていうのとはちょっと違うみたい。
この鼓動の原因は後々に分かることなのだけれど、それはまだ遠くて近い未来のお話。





~おまけ~
「…未来のお話。完。っと…
んー、やっと全部書き終えたー」
「…何を書き終えたって?」
「何って、こなたと私が出会った日の日記……ってえぇぇ」
「へー、かがみって意外に乙女じゃんw見せて、見せて」
「ちょ、こな、なん…」
驚きで上手く言葉が発せられない私。
それもそのはず、時計はもう夜の2時を指していて、今日はお泊り会でもなんでもない。
なのに何故、恋人であるこなたが私の後ろにいるのだろう。というかどこから私の部屋に入ったんだ。
「ん?どこからって、窓から」
「ちょ、おま、ここ2階だぞ!!」
「いやー空飛ぶ扇子に乗せて貰ったから、余裕だったよ」
「またコアな漫画のネタなのか、ていうか何しに来たのよ」
「何しにって、こんな夜中に愛しの恋人の部屋に忍び込む目的は一つしかないっしょ」
フフフと不敵な笑みを浮かべるこなた、後退りする私。
「夜這いだよ、かがみんや」
ドサッとベッドに押し倒されると同時に耳元で呟かれた。
「やっぱりそれかー!!!」


夜はまだまだ長い。













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  • (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-08-25 10:02:49)

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