音節構造はCVのような単純なものから、CCVVCCのような複雑なものまであります。典型的なものはCV,CVC、CVCV,CVCCで、語頭の子音連続はそう多くありません。
また、CVCCであっても、音声的にはCCの間に
シュワーを入れて発音することが多く、CVとCVCの2音節のように聞こえます。母音優勢な言語で、ソノリティ(音の聞こえの良さ)は比較的高めです。
子音は閉鎖音がもっとも頻度が高く、とりわけtが頻出します。英語のニュースと違って摩擦音が目立つような感じではなく、朴訥と聞こえます。母音はaが一番多いです。総じて後舌より前舌母音の頻度が高いです。
アクセントは拘束で、必ず第1音節にアクセントがきます。但し動詞は
不定詞+時相詞というものでできており、時相詞のアクセントが優先されます。したがって、動詞だけは後方にアクセントが来るように聞こえ、このアクセントが動詞マーカーになります。
尚、アクセントが強弱か高低かという旧来の区別は当てはめがたいですが、しいていうなら設定上は高低です。いずれにせよ、強い音節は自然と高くはっきり発音されます。
複合語の場合は形態素ごとに副次アクセント(第2アクセント)が置かれることもあります。中国語などと違って声調はありません。
以下は日本語を視座としたアルカの音声についての覚書です。音声学の概説程度の術語が要ります。喋るわけではない場合、読み飛ばして構いません。日本語と同じ部分は説明を省き、日本語話者が注意するべき点を重点的に述べています。
発音編
a:[a]:日本語の「あ」よりも、やや横に広く口をあける。
i:[i]:日本語の「い」よりも、もっと横に思いっきり開く。
o:[o]:日本語の「お」より若干唇を丸める。ただし丸めすぎない。
e:[e]:日本語の「え」よりも口を横に開く。そのため音が明るい。あまり口を開かないとシュワーになってしまう。
u:[u]:日本語の「う」より少しだけ唇を丸める。丸めないとシュワーになる。
丸めは、フランス語のu>アルカのu>日本語の「う」。
シュワー:子音間にあらわれ、子音の聞こえを高める。
hem-in omi
速く発音すると[heminomi]だが、単語の区切りをつけてゆっくり発音すると「ヘミンヌ オミ」になってシュワーが現われる。
atl
tの後にシュワーが入り、「アトゥル」のようになる。ただしatulに比べればシュワー音は弱く短い。
同じ母音でも環境によって異なることがある。たとえば有声子音の前に来る母音は、無声子音の前に来る母音よりも音が低く長い。つまり、
kat(始まり)と
kad(国)では後者のaの方が低く長い。ただ、いくら長いといってもaaより長いことはない。
日本語よりも数が多い。子音の連続が音節を作ることもある。例:
atl>a + tl。有声無声の対立がある。音韻上、有気無気の区別は無い(音声学上は有る)。無声音があれば対応する有声音がある(/s/があれば/z/もあるということ)。対応するものを持たない場合は有声音である(/m/,/n/,/l/のように、ペアとなる無声音がない)。ただしhは例外で、無声音しかない。どの子音もはっきり発音すること。
p/b
調音法は日本語と同じ。唇を閉じて、頬をふくらまし破裂させる。f/vと区別すること。
語頭では、有気無気の違いが明確にある。フランス語と違って語頭閉鎖音を無気にしないように。
par:pは有気。
bel:bは無気。
尚、語末では、どちらも無気音になる。有声音と無声音の違いもしばしば顕著でなくなる。したがって母音の長さと高さでpかbかを区別する。
ap aが高く短いので、子音は無声音のp。
ab aが低く長いので、子音は有声音のb。
papa 前のpは有気音。後のpは無気音。
paba 有声のbの直前の母音aはやや低く長くなる。
※bなどの有声音が語末にくる場合、その有声音を無声音化せずにシュワーを後続させることもある。たとえば
pabにおいてbの後にシュワーを差し込む方法で、ソノリティを高める際に用いられる発音である。
t/d
調音点は日本語と同じ。手を前に置いたら息がかかるくらい強く発音する。
k/g
調音点は日本語と同じ。強く発音し、hと区別する。特に語頭の場合は強調して「でっっかい!」というときの「か」ぐらい強く。後舌が軟口蓋に吸着するのが分かるくらいしっかり発音する。
s/z
極端にいえば、口の中が涼しくなるくらい摩擦させる。zは[z]。「づ」[dz]にならないように。摩擦音は閉鎖音と違って持続可能なので、無声音から有声音に移行させることで発音練習ができる。たとえば[sss...zzz...sss]のように息を吐き続けながら練習する。区切って発音すると練習できない。 sからzに変わっていることを実感するため、指先を甲状軟骨(のどぼとけ)に当てて発音する。 zに変わった瞬間に指に震えが伝わる。母音の「う」と一緒に発音してしまうと台無しになるので注意。アルカの音声だけでなく、IPAなどに対応した言語音一般の発音練習法にもなるのでお勧め。
x/j
s/zと注意点は同じ。xは少し唇を丸めた、深くこもった声。日本語の「しゅ」ほど唇を広げず、また英語のSHほど丸めすぎない。 jは英語や日本語の語頭のように破擦音にしないように注意。フランス語の語頭と同じく摩擦音を保つ。
f/v
口がかゆくなるほど摩擦させる。p/bと区別をつける。よく英語は唇を噛んでこの音を出すといわれるが、実際は噛まない。強く噛みすぎると発音不可能な唇歯破裂音を無理に発音しているように聞こえる。あくまで歯を近づけ、そこの隙間で摩擦を作る。
h
語頭では[h]になる。後ろに何も続かない場合、hは調音点が前に動き、ソノリティを高めるために[x]などになる。ドイツ語のchの要領。語中ではしばしば[h]が弱まるが、消えはしない。ただし砕けた発話では殆ど消失に近い。
tashat>tasat。また、[x]などになる場合、語を跨いだ次の音が母音でも[h]に戻ったりはしないのがふつう。たとえば
xon-ah aplesのhは[h]ではない。但し
so-ahaの場合、
ahaは時相詞内でひとつの単位としてまとまっているので、hは[h]になる。
m/n
mはしっかり唇を閉じて、口の中で響かせる。語末でもしっかり閉じる。唇歯音[f][v]の前では唇歯鼻音になる。 nは日本語と同じシステムで同化する。たとえばpの前だとnはmになる。ただしシュワーを入れると同化しない。 mとnは正しく発音すると、慣れないうちは日本人には区別しづらい。日本語は最近mを[m]で発音しない傾向にあるからである。あえて両者が聞き分けづらくなることを経験したあとに、正確に両者の聞き分けができるようになる。
niは口を横に広げ、舌先を歯茎に着ける。日本語の「に」は[n]より後ろの調音点で発音しているので注意。「な」と言うつもりで直前に「に」に変更して発音すると言いやすい。
↓nの同化について
ant 語末、母音、歯茎閉鎖音[t][d]の前では[n]。
anp 両唇閉鎖音[p][b]の前では[m]。
ans anl anr anc anm歯茎摩擦音[s][z]、歯茎側面音[l]、歯茎接近音、歯茎弾き音[r]、鼻音[m]の前では[N](日本語の舌をつけない「ん」)。
ank 軟口蓋閉鎖音の前ではngの音になる。
anf 唇歯摩擦音[f][v]の前では唇歯鼻音になる。
※
amnの場合、mn間にシュワーが入る。アムンに聞こえる。
c
舌先を歯茎で震わせるようにして発音する。舌先を歯茎に付けたとき、舌が余ってしまうと発音しづらい。たとえば舌が前寄りになるciは発音しづらい。舌が後ろ寄りになるcuで練習すると良い。 ce,ciをきちんと発音するには、口をしっかりと横に開くそうすると後舌部が持ち上がり、その分だけ舌が相対的に短くなり、舌先から歯茎までの距離がちょうど良くなる。
l
舌先を歯茎に付けて側面から息を出す。舌先で弾くと日本語のラ行である弾音になってしまう。日本語の「ら」にならないように。tと同じ調音点。弾くと「だ」に聞こえる。rに比べて持続時間が長い。
li:口を横に開かないと言えない。
u-
li-
u-
liという発音を交互に繰り返して口を動かす練習が効果的。
r
舌は口蓋に当たらない。舌先を巻き上げるのではなく、後舌を持ち上げる。このとき、舌が口腔内のどこにも接しないようにする。日本では舌先を巻くのが英語のr音と教えられているが、たとえば米音ではアルカと同じようなやり方で発音する方が日常的である。(余談:f音で唇を噛まない。r音で舌をカールさせない。これだけでも英語らしさは少しアップする)。母音の後ではrは持続時間が短く、母音と一体化したように発音される。
arは
aaより短く、
aより長い。また、
arは
alより短い。
al:aは低く長い。
ar:aは高く短い。
- 半母音(半子音):w,yのこと。音節頭にしかこない。必ず母音が後ろにくる。
w
すぼめた状態から一気に口を広げる。
y
iの口から発音。
子音+母音
子音と母音が連続するときは、アンシェヌマンのように繋げて発音することがある。
例:
hem-in omi→[heminomi]
子音+子音
子音が連続するとき、区切って発音する場合は間にシュワーを入れる。一方、繋げて発音するときは同化する。
例:
mivpab>mippab
同化すると音の区別が減るので、音声学上その場限りの同音意義語が増える。
c,r,l
この3音は3兄弟。互いに並んだときは、c > r > l の順で同化する。
sorlepl(ハイヒール)→[sorrepl]
seclei(写真本)→[seccei]
音の頻度が c > r > l の順なので、ceiという音を聞いてもすぐにそんな単語はないと耳が判断できる。したがってceiと聞いても
reiかleiであろうと予想が付く。元の形を予想しやすくするために、c > r > l の順で同化する。
3兄弟の頻度を利用した階層である。もしこの同化順序が逆だと大変である。 secceiがselleiになってしまったら、selという語は既に存在する可能性が高いため、その語と勘違いしてしまう。だがleiがceiになった場合、cの付く語は少ないので、別の何かと誤解することは少ない。
t+l
促音化する。
ti et leit 速く言うと「ティエッレイト」。3兄弟と違って、llにはならない。小さい「っ」が入るような感じ。一瞬声門閉鎖が起こる。
ただし
itlのような場合はtl間にシュワーがいることが多い。単語が短すぎるからである。ある程度長ければシュワーよりも促音化することが多い。たとえば
satlan(役人)がそうである。つまり、lの後に音が続くとき、促音化する。促音の代わりに子音間にシュワーを入れても良い。
s+x
後の音に同化する。
axsai→assai
有声+無声
シュワーを入れる遅い発話以外、容易に同化する。
at bil bに引き摺られてtがdに同化し、[adbil]になる。
ak gil [aggil]
ap bil [abbil]
語頭ないし時相詞の音節頭でアクセントが強くなる。原則的に第1音節が常に高く強くなるが、内容語は機能語に比べて強く高く発音されるし、どんな語でも強調されるときは強く高い。
1:アクセント
axte:aにアクセント。
axt-e:時相詞のeにアクセント。
sasa ひとつめのsaは強く発音する。ふたつめのsaは低く半長になる。
2:内容語とプロミネンス
プロミネンス(強調)が置かれるところは強く長く発音する。流れと強さを意識すること。
☆発声
喉を開いて声を出す。息を喉の奥から出して口蓋にあて、よく響かせる。これは上述の注意事項を実践できていれば自動的にそうなる。リズミカルな発音になるほど腹式呼吸に変化していく。日本語と比べると声はやや低め。その代わり声量は大きい。
最終更新:2007年12月18日 12:17