ホイール・オブ・フォーチュン

回る、回る、車輪は回る。書き手たちの運命を乗せて。クルクル、狂々と。


岩手から関東を目指して南下していた喪失の物語と舞い踊る車輪は、その道中一人の書き手に出会った。
髪の長い筋骨隆々の青年……すなわち加藤鳴海の姿を持ったその男は、漫画ロワ書き手・【車輪】シナクを名乗った。
彼は少女と一般人の青年という二人の外見を見て、同行を申し出た。襲撃を受けたら、自分が守ってやると。
それを聞いて、舞い踊る車輪はシナクを典型的な熱血対主催と判断する。そして、手を組む価値がないと。
戦闘力の高い熱血対主催。それは舞い踊る車輪が欲するものと大きくかけ離れた存在だ。
そして喪失の物語にとっても、シナクはあまり魅力的な存在には見えなかった。
確かに戦力の高い味方が増えるのはありがたい。だが、彼にはすでに舞い踊る車輪という仲間がいる。
それに熱血対主催など、ロワではいくらでもいる存在だ。
かくして、二人の思惑は一致する。
シナクが先頭に立ち、移動を始めようとした瞬間。舞い踊る車輪の毒を塗った斧が、シナクを切り裂いた。

「あっけない。実にあっけなかったですね」
「ああ」

舞い踊る車輪の言葉に、喪失の物語は地面に伏せるシナクを見下ろしながら答える。
彼はまだ死んでいない。だが、いずれは毒の効果によって息絶えるだろう。

「熱血対主催など、所詮はどのロワでもこんな運命をたどるものです。それじゃあ、先を急ぎましょうか」
「わかった」

デイパックを取り上げると、舞い踊る車輪はもはやシナクに興味はないとばかりに歩き出した。
喪失の物語も、それに続いてその場をあとにしようとする。だが。

「待ちな」

二人の背後から、声が響く。それは紛れもなく、シナクの声だった。

「まさか……」

舞い踊る車輪が、わずかに動揺をにじませながら振り向く。そこには、ゆっくりと体を起こすシナクの姿があった。

「そんな、即効性の毒を使ったはずなのに……」
「俺の体は……元キャラの鳴海と同じくしろがねだ。しろがねってのは、常に自分の体を最適な状態に保つ力が働いていてな。
 つまり毒は効かない訳じゃないが……。すぐに治る」
「ああ、確かにそうでしたね。LSロワにも生命の水は出ていたというのに、すっかり失念していました。
 完全に私のミスです」

シナクの説明を受けた舞い踊る車輪は、オーバーリアクションで自らの失敗をアピールする。

「反省の色まるで無しか……。しょうがねえ、てめえらみたいな危険人物には、俺がお灸を据えてやる。
 子供をぶちのめすのは気が進まねえが、放っておくわけにもいかねえしな」

完全に立ち上がったシナクは、鳴海得意の中国拳法の構えを取った。

「さて、どうする、車輪」
「正面切ってのバトルは、私の好みではありません。その上、毒も効かないとなれば……」

喪失の物語の問いに答えながら、舞い踊る車輪はきびすを返す。

「逃げるしかないでしょう」

言うが早いが、彼女は全速力で走り出した。喪失の物語も、慌ててそれを追いかける。

「そう簡単に逃げられると思うんじゃねえぞ……! 【車輪】!」

いったん構えを解いたシナクは、自らに冠せられた称号の力を解放した。
すると彼の体から光が放出され、それはすぐさまあるアイテムの形を作る。
その名はグリモルディ。
「からくりサーカス」においてぶっ殺し組の尾崎というどうでもいいキャラの持ち物として登場しながら、後にメインキャラとなる阿紫花英良に奪われた事で大活躍した懸糸傀儡である。
シナクの【車輪】は、読んで字のごとく「漫画ロワに登場した、車輪の付いたアイテムを具現化する」能力なのだ。
え? グリモルディに付いているのは車輪じゃなくてキャタピラじゃないかって?
いいんだよ、細かいことは!

「オラオラ、いくぜ!」

十本の指で糸を操り、シナクはグリモルディを走らせる。仮面の道化師を模した人形は、逃げる二人との距離をみるみる詰めていく。

「ちょっと待て! 俺の知識が確かなら、加藤鳴海に人形を操る技術はなかったはずだ!」
「なに寝ぼけたこと言ってんだよ、兄ちゃん。俺の能力は鳴海をベースにしてはいるが鳴海そのものじゃねえ。
 からくりキャラを得意とする俺が、人形を使えて何がおかしい!」

喪失の物語の疑問を、シナクは一蹴。同時にグリモルディの首を伸ばし、喪失の物語に襲いかかる。

「くっ! 武装錬金!」

自分の身体能力では回避できないと判断した喪失の物語は、核鉄を発動させる。
たちまち奇妙なコートのような形状をした武装錬金・シルバースキンが彼の体を包み込む。
その直後、グリモルディの頭部が喪失の物語に叩きつけられた。
その衝撃で数歩後退する喪失の物語だが、シルバースキンの鉄壁の守りは彼の体に一切のダメージを残さない。

「ちっ、シルバースキンかよ。やっかいな支給品持ってやがるな」
「あなたも漫画ロワ書き手なら、この武装錬金の防御力はわかっているだろう?
 潔く諦めて、ここは見逃し……」
「だが断る。漫画ロワ書き手がそう簡単に諦めると思ったか! シルバースキンだって無敵じゃねえって事はわかってるんだよ!」

喪失の物語の言葉を途中で遮り、シナクが叫ぶ。同時に彼は、狂ったようにグリモルディの首を振り回し始めた。
激しいリズムで、道化人形の頭部が喪失の物語に叩きつけられる。そのたびに傀儡の頭は傷つき、砕けていく。
だが同時に、シルバースキンも徐々に削り取られていた。
シルバースキンが鉄壁たるゆえんは、単純な硬度のみにあらず。破損箇所が瞬時に再生される回復力にもある。
だがその再生よりも速く次の一撃を叩き込めば、当然破損箇所は広がっていく。
そしてシナクの猛攻の前にシルバースキンは薄くなっていき、ついに腹の部分に穴が空いた。

「もらったぜ!」

その隙間に、シナクは躊躇なくグリモルディの頭部を叩きつける。喪失の物語に、避ける余裕も防ぐ余裕もない。
次の瞬間、道化の顔が木っ端微塵になり、喪失の物語の体が宙を舞った。

「がはっ!」

空中に投げ出された喪失の物語の体は、数秒の間を置いて地面に叩きつけられる。
大地への激突によるダメージはまだ大部分が無傷のシルバースキンが防いでくれたが、グリモルディの一撃だけでダメージは十分だ。
身体能力は一般人の域を出ない彼にとって、それはしばらく行動不能に陥るほどの痛手だった。

「兄ちゃんへの制裁は、まあこんなもんだろう。さて、次はそっちのちびっ子だ。
 いたずらが過ぎる悪ガキには、お仕置きしてやらねえとな」

損傷の激しいグリモルディを消し去り、シナクは指を鳴らしながら歩いて舞い踊る車輪に近づく。
それに対し、舞い踊る車輪は微笑を浮かべていた。

「余裕だな。バトルには自信があるって事か」
「まあ、自信がないといったら嘘になりますね。でも、私はあなたと戦う気は微塵もありません」
「ほう、それじゃあ、この場面をどうやって切り抜ける」
「こうやってです」

舞い踊る車輪は流れるような動きで、後ろ手に隠し持っていた杖をかざす。
その杖からは、シナクに向かって光が放たれた。持ち前の反射神経で、それをかわそうとするシナク。
だが、ほんの少しだけ遅い。光が、シナクの腕をかすめる。するとシナクの体は、ものすごい勢いで上昇を始めた。

「なんだこりゃああああああああああ!!」

叫び声を残して、シナクは明るくなりかけた空に消えていった。

「自分の支給品ぐらいは、きっちりと把握しておくべきでしたねえ」

シナクが見えなくなるのを確認すると、舞い踊る車輪は手にしていたバシルーラの杖をデイパックに戻す。
そして、倒れたままの喪失の物語に話しかけた。

「時間稼ぎご苦労様でした。おかげで、シナクさんの支給品を調べて活用することができました」
「いやあ、面目ない。もう少しがんばれるかと思ったんだけどね。漫画ロワ書き手の爆発力を舐めていたよ」
「動けますか」
「まあ、無理すれば」
「じゃあ、無理してください。予想外に時間食っちゃいましたから」
「まったく、手厳しいなあ」

愚痴をこぼしながら、喪失の物語はゆっくりと体を起こす。

「それじゃあ、行こうか」
「ええ」

こうして、二人は再び歩き出す。運命の車輪を、クルクルと回しながら。

【一日目・早朝/宮城県】

【喪失の物語@ラノロワ】
【状態】ダメージ(中)
【装備】S&W M38(残弾沢山)@現実、核鉄「シルバースキン」@漫画ロワ
【道具】支給品一式、遅れてきた後方支援の不明支給品0~2(確認済)
【思考】基本:ロワを盛り上げる、手段は問わない(ただし自身の命は最優先)
1:放送元(東京)か、埼玉に向かう。
【備考】
※外見は折原臨也です
※特にこれといった能力はありませんが、頭は回ります
※ロワを愛するが故に、様々なロワの情報を知っています


【舞い踊る車輪@LSロワ】
【状態】健康
【装備】ディアボリックファング@テラカオスロワ、刃に塗る毒全ロワセット
【道具】支給品一式×2、バシルーラの杖(3)@カオスロワ、不明支給品0~3
【思考】基本:バトルでは積極的に殺さないマーダー(本人談)
1:喪失の物語を連れて放送元(東京)か、埼玉に向かう。
【備考】
※外見はプレセア・コンバティールのようです
※ディアボリックファングにはダメージを受ける毒と麻痺毒が塗られています。
 出展は不明。多分RPG系。


同時刻・青森県恐山。
そこには上部が微妙にへこんだ箱と、そのすぐ横で頭にたんこぶを作って気絶しているシナクの姿があった。

(なんか人が降ってきた……。まあようやく他の参加者に会えたのはいいんだけど……。
 気絶してちゃどうにもならないよ! 早く起きないかなあ……)

金属製の箱の中で、情景の描き手はただ溜め息を漏らすことしかできなかった。


【1日目 早朝/青森県・恐山】

【情景の書き手@芸人ロワ
【状態】健康
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~4
【思考】
 基本:生存優先。
 1:やっと人に会えたのに……。
【備考】
 ※外見はバカリズム(升野 英知)です。
 ※120cm×120cm×120cm大の金属製の箱の中にいます。物の受け渡しはできますが、自力での移動、脱出はできません。
 ※箱内部のノートパソコンによって現在位置の把握と箱の外のモニタリング、箱外部のコピーベルトへの文字入力が可能です。 


【【車輪】シナク@漫画ロワ】
【状態】頭にたんこぶ、気絶
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本:熱血対主催!

※外見は加藤鳴海@からくりサーカスです。
※【車輪】は「漫画ロワに登場した、車輪の付いたアイテムを具現化する」能力です。

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死の運命は理不尽に 喪失の物語 みにまむ☆りべりおん
死の運命は理不尽に 舞い踊る車輪 みにまむ☆りべりおん
はこのなかにいる 情景の書き手 恐山ル・ヴォワール
【車輪】シナク 恐山ル・ヴォワール

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最終更新:2009年06月01日 21:37
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