その時、誰もが天を仰いだ。
あるべきはずの青空を求めて、空を見上げた。
されどそこには如何なる蒼も広がっておらず、ただ、闇があるのみだった。
陽光の一切を遮る巨大な樹が落とす影のみだった。
――見上げた虚空に落ちていく
「なんだよ、あれは……?」
ガチホモ達を始末し、アーチャーの腕による侵食の苦しみに悶えていた死闘秘宝・血液言語版は天を仰いで絶句していた。
枝だ! 根だ! 巨大な幹だ!
そう言わんばかりの大木が突如上空へと現れたのだ。
驚くなというほうが無理だろう。
しかも刻一刻と視覚的に大樹は大きくなっていく。
更なる巨大化をしているのではない。
単に大阪の地に向かって落下してきている為、視覚を占める量が増えているのだ。
「なんなんだよっ、あれはっ!?」
頭では理解していても叫ばずにはいられなかった。
あれが何かといえば木に決まっている。
じゃあ、どうしてそんな物が空から降ってきてんだよ!?
あんな大質量のもんに押しつぶされたら死んでしまう。
いや、元よりこの身は優勝狙い。
大量に人が死ぬこと自体は大歓迎なんだが。
「頼む、ギャルゲロワのみんな。誰一人、大阪府にはいないでくれ……」
その願いが叶うことのないものだとも知らずに、己が身体を血の霧となし物理攻撃に備えながら、死闘秘宝は心の中で祈り続けた。
「ヒヒヒ、ヒャッハッハッハッハッ! 今頃眼下の奴らはめん球ひん剥いてビビッてるんだろなあ!!
いや、いるとしたら読み手どももか?
※マーラ様の人が抜けた(正常な意味で)こと熊岡県のスピードが落ちました。
わざわざこんな注意書きまであったっつうのに、まさかまさか、次に登場した時にゃあ愛知上空から大阪まで熊岡県が移動しているなんてよお!」
熊岡県の頭頂部でいけたかだかと声を上げるのは、言うまでも無く阿鼻叫喚・鮮血麻婆《スクリーム・ブラッディマーボー》。
だがテンションこそ常日頃同様ハイだが身体の方は絶好調とは到底言えない様だった。
砂塵と見紛おうまでに切り刻まれた左腕は不死者の回復力が通用していないのか一向に治る気配を見せず、
右手に持ったカリバーンも刃が欠け、史実のとおり真っ二つ。ついでにズボンのお尻の方にはなんか禁則事項な穴一つ。
マーボーだけではない。
ラブハンターも予想の出来ない展開の元もほぼ同様にボロボロだ。
満身創痍でないのはこの地で起きた混戦の勝者、マーラ様唯一人。
一時期はカオスロワ5期当時の全ロワの力を吸収したテラカオスを擁するマーラ様に真っ向から勝負して勝とうなど土台無理な話だったのだ。
チート万歳な書き手2書き手や戦闘種族な
漫画ロワ書き手なら話は違っただろうが。
加えて相性も悪かった。
マーボーもラブハンターも展開の元も、所属ロワや原作においてホモネタやらおにゃのこが襲われるネタやらがあったせいで、
自主規制な天の力による助けを得られなかったのだ。
かくして敢え無く男二人はアーッ!な目にあい、女である展開の元は尻を叩かれた。
しかも最悪なことに殺戮の神モードのマーラ様の攻撃は全て直死の魔眼判定付き。
要するに再生不能、不死でも死ぬよ☆なのだ。
勝敗は完全に決していた。
だからこそ今現在マーボーがやろうとしていることも最後の悪あがきにしか過ぎない。
もっとも、最悪なことこの上ない悪あがきだが。
「みんな助かりてえよなあ、旅の扉を通ってよお?
俺だってそうさ。死にたくなんざねえ。
だからこう思うんだ。旅の扉のある大阪府ごと自分が吹き飛んで死ぬわけがねえってよお!
そんなぬるま湯に浸った奴らの頭上からこいつを落とせば!
いいね良いねえ、想像するだけでも最高にハイだぜ、ヒャッハッハッハッハッハ!」
己の死を前にして常以上にタガが外れた男の声が響く中、みるみると地表へと近づいていく熊岡県。
勝ち誇っていることからも分かるよう、これはマーボーの仕業だ。
彼にはあるではないか、熊岡県の運行速度、落下速度を加速――KSKさせる手段が!
「ksk」「wksk」「ksk」「ksk」「ksk」「kskr」
クロスミラージュKSK仕様が奥義、『ksk支援』。
呪令の力で効果対象を持ち主であるマーボーから強制的に変更され、魔力アンカーにて繋がれた熊岡県へと効果を発揮しているそれだ!
正直熊岡県が地面と衝突すればその衝撃は相当なものでKSK住民達も堪ったものではないのだが、そこは悲しき支給品の性。
呪令効果も相まってマーボーには逆らえずやけくそ気味に支援しているのである。
そんな嫌々感もなんのその、マーボーはますますヒートアップしていく。
自分以外の手で起こされた超展開に歯軋りする展開の元も、よりによってこのオチかよ、地団太を踏むラブハンターも、
賢者の時間がもたらす倦怠感に飲み込まれてか身じろぎしないマーラ様も。
無視、無視、無視、無視いいいいい!
「ハハッハハハハハハハハハハハハハハハ、ヒハッ……ハハハハ、ヒャハハハハハハハハハハ!
そういや向こうのほうにもまだまだ人がいたよなああ! 竜に乗ってきた奴とか、全裸のブスとかよお!
そいつらも慌ててやがるだろうなあ! なんせやってきたばっかの場所がいきなし落ちるんだからな!
まあ、この状況でもっとも慌てふためくはずの役どころの奴は既に死んじまってるんだがな。
いやいや残念だぜ、是非とも何が起こったかわかんねえっつう間抜け面を見せてほしかったもんなんだがねえ!」
くい、と顎である方角を指し嘲笑うマーボーにラブハンターは怒りを覚える。
緑の葉と茶色い幹に覆われた熊岡県の中で一際異彩を放つ戦場からはやや離れた場所。
真っ赤な色に染まり果てた計器に囲まれた座席。
紛いなりにもラブハンターが認めた男の倒れ臥した姿がそこにはあった。
「油断してたろ? コクピットは安全だって。仲間が危険人物を引きとめてくれてるし、もう一つの戦場からも蚊帳の外。
しばらくは俺が死ぬはずはねえってよお! そんなんだから俺に狙撃されて果てるんだあ、、ヒャハハハハ!
The Incarnation of Devil! どうだい、書き手ロワ名物、殺傷設定でのクロミラブレイズモードでのファントムブレイザーは!
アニメ本編じゃ不発だった技をまさかアニロワ書き手の俺が使うなんざ思ってもいなかったろ!
ざあんねん! アニロワ系列じゃあアニメ版以外からもネタを引っ張ってくるのはお約束なんだよおお!」
この男が死に体だと誰が分かるだろう。
活き活きと、実に活き活きと。
マーボーは声を荒げ続ける。
「どうよどうだよ今の気分はよ! テメエらがやろうとしていた熊岡県だを他人にやられる気分は!
俺は楽しい、楽しいぜ!? こんな楽しい事が他にあるかよ、ひゃぁはははははは!!
何でテメエは笑ってないんだよ、笑えよ無茶苦茶愉快なんだからよお!
おいおいおいおいまずいまずいぜ? 何か目覚めちまいそうだよ妙な力が湧き出てきそうだよおいおいおいおい!
この調子で何人かぶっ殺せばテンションのゲージマックス越えてどうなっちまうんだろうなあ俺!
さあさあさああ、落としてやろうぜ、この『空の上のおもちゃ』をよお!
そして、滅べ! 滅べ! 滅べ滅べ滅べ滅べっ! 何もかも無くなっちまえ! ハァッハハハハハハハハ……は?」
と、ようやく口をつぐみ、変わって疑問符を挙げるマーボー。
何か地上の方で光った気がしたのだ。
いや、気のせいではなかった。
いくつもの光弾が、竜巻が、炎が、ミサイルが!
熊岡県を撃ち落さんと下界から放たれているではないか!
この地にはいるのだ!
地獄になりうると理解していながらなお、光を目指し、自らも希望にならんとする者達が!
その名も、ダブル古泉獅子蛸○戦隊(仮)!
書き手ロワ3における数少ない正統派対主催集団である。
「ええい、ちっくしょう! これだけ撃ってもびくともしねえ!」
「流石に距離が遠すぎるんです。なんとか近づけないかな」
黒き翼が愚痴り、
29NIKUマニアが考え込むように、熊岡県への対空砲火は距離により威力が減じることもあり一向に成果を現さなかった。
元々彼我のサイズ差もありすぎる。
紛いなりにも一つの県を名乗るだけの大きさのある熊岡県に対し、こちらはヒーローとはいえ等身大。
象に蟻が立ち向かうようなものだ。
それでも二人は一向に攻撃の手を緩めない。
退くわけには行かないのだ。
アニメと特撮の違いはあれど共に正義の味方。
超巨大建造物を落とされて、大阪へと集っているであろう多くの人命が奪われるなんて許せるはずが無い!
そもそも彼ら即席戦隊は旅の扉がある通天閣の前に座しているのだ。
自分の命が惜しいだけなら、単に旅の扉に飛び込めばいいまで。
そうせずにあろうことか危険極まりない地で踏ん張っているのは、どこまでも誰かの為に力を振るうことを選んだからだ。
「黒き翼ー、戦隊ものお得意の巨大ロボは?」
「
戦隊ロワに出ている巨大ロボは、現時点じゃ爆竜アンキロベイルスくらいだ。使えたとしてもこいつじゃ空は飛べん」
「そっか。僕のゆで理論でもアレ相手には少しきついかな」
「となると着弾スレスレの水際防衛戦か……」
「怖いの? 僕は……ちょっと怖いな」
「じゃあ逃げるか?」
「んなわけないでしょ。万太郎はねー、決めるときは決めるんだよ!」
がっしりと腕を組み、再び熊岡県を迎撃せんと技を撃つ二人。
例え偽りの体や技だとしても、今の自分達は憧れたヒーローのものなのだ。
なら、逃げるわけにはいかないではないか!
そして何も意地があるのはヒーローだけじゃない。
書き手なら誰でも持っているものなのだ!
見事な繋ぎ話を書きたい。俺の話で皆を泣かせてやる。勝ちたい、他の誰よりも面白い話を!
「振り返らないでー、いーこうよー♪」
「ネームレス、たこルカの調教が完了したぞ! これで!」
「ええ。仮にとはいえBRAVE PHOENIXの分の詠唱が済んだとし、次節へ接続。
……本来はガチバトルがメインの話ではないんですけどね。
繋ぎメインとはいえ僕も書き手ロワ書き手。
魅せてあげますよ、チートって奴を! 『Pray』!」
書き手2書き手が三柱が二、
古泉ネームレス。
超展開の一つや二つや十や百を捌いてきた身としてこれくらいのことに対処できずにどうします!
自らを激励し解き放つは三匹のシモベ。
炎を纏った龍――カグツチ。
奇怪な大蜘蛛――ジュリア。
黒い太陽――大怪球フォーグラー。
一つ一つが
スパロワでも通用するアニ2に由縁のありそれらが熊岡県を包囲し唸りを上げる。
カグツチの口内で紅蓮の炎が渦巻き、至極の劫火が撃ち出される。
合わせて超巨大ロボの開かれた一つ目から照射されるは重力の波。
どれだけ大きかろうと原材料が木である熊岡県にこの挟撃を防ぐ手立ては無い。
されど
「――あ?」
例え熊岡県自体にはなくとも。
ストナーサンシャイン級と喩えられた
アニロワ2ndでも特に超展開に力を注いだマーボーには、ある!
「まずい、ネームレス! すぐにフォーグラーの障壁を起動させるんだ!」
フォーグラーのスクリーンが一つの色に埋め尽くされる。
赤、紅、朱、アカ、あか、AKA。
その意味に気付き、ネームレスは乗り込んだばかりのコクピットから即座に転げ落ちるように脱出。
高度300mからのダイブだったが、本来なら熊岡県の破壊に伴う破片の落下から皆を守るためにジュリアに張らせた蜘蛛の巣に絡め取られることで事なきを得る。
直後、頭上で何かが爆ぜる音。
見上げる先ではフォーグラーが覚えのある炎に焼かれ地に落ち、カグツチがビームに貫かれ霧散していた。
その光景の中にネームレスは、一つの事実を確信し、忌々しげな表情を浮かべる。
『空の上のおもちゃ』。
アニロワ2ndにおいて大型陸上戦艦を出落ちに使った上でのギルガメッシュの考察話。
最たる見ものは英雄王がうっかり必殺技をマップ端まで届かせてしまい、ループした自分の飛び道具で危うく死に掛けたところだろう。
今起きた現象は、まさにその話の筋書きそのものだった。
「となるとこの木を落とそうとしているのはアニロワ2nd書き手ということになりますね」
口調こそは冷静なれど、ネームレスは焦っていた。
互いの攻撃を転移させられ沈んだシモベ二体は再起不能。
残るジュリアでは火力が足りない。
せめてここにいたのが
ヨッミーとはいかないまでも空気王なら。
自分のチート不足を痛感するも、ネームレスに打ちひしがれている時間は無い。
それにまだ手はある。
ネームレスのとっておきが。
彼の出せる最大にして――最後の火力が。
「ロニーさん。征服王の姿になれば王の軍勢は使えますか?」
「ここは書き手ロワだからな。制限もなく使いたい放題だが……。ただ、あれは対空宝具とは言いがたいぞ?」
「かまいません。あくまでも皆さんを巻き込まないようにするための保険ですから」
「待て、巻き込むって何をする気だ!?」
「トリプルブレイカーを……撃ちます」
「トリプルブレイカーだって!?」
話が不穏なほうへと行きだしたことが気になって、
攻撃の手を休めないままネームレスとロニーの間に割って入った黒き翼の問いへの答えに、NIKUが驚きの声を上げる。
KSK書き手であるNIKUがトリプルブレイカーと聞いて思い浮かべたのは、
KSKロワにも参加している魔法少女リリカルなのはシリーズの第二作目の最終決戦で行われた魔法少女三人による合体砲撃。
なるほど、結界破壊の効果がデフォであるあれなら、確率変動による転移結界をも貫通できる。
そのことを聞き、戦隊もの定番の合体攻撃の出番かと喜びかける黒き翼をネームレスは遮った。
「いえ、残念ながら撃つのは僕一人です。『イマ賭ける、コノ命』。螺旋力を覚醒させてのこの一撃なら、転移結界も抜けられます。
なんせ書き手2本編でも固有結界を破壊していますから」
いかにもという技名と寂しげに笑うネームレスの表情から3人は理解した。
死ぬ気だと。ネームレスはここで何処かの誰かを守って死ぬつもりだと!
「おい、俺との約束はどうした! 一緒に戦隊を組むんだろうが! まだ基本の5人すらそろってねえんだぞ!」
「そんな約束した覚えはないんですが。……ほら、僕が抜けたらちょうど3人です。これはこれで立派な戦隊じゃないですか」
「やれやれ。俺が見届けたくなったのはお前も含めた3人なんだがね」
「すみません。でも、僕、どのロワの書き手さん達も大好きですから」
それに書き手2は既に完結してますしね。
心の中で呟いてネームレスは集まっている面子を見渡す。
対主催涙目の戦隊ロワ、ノリと勢いのKSKロワ、逆境をも乗り越えれる○ロワ。
誰も彼もが素晴らしい存続中ロワの書き手だ。
死んだら、いったいどれほどの数の読み手が涙するだろうか?
そんなのは絶対にNOだ! 読み手として多くのロワを読んできたこそ一際強く作品を、書き手を愛する青年の決意は固い。
「ああ、そうだ。僕の形見ってことで、受け取ってくれませんか、螺旋力。
お二人ならきっと正しい方向で使いこなしてくれると信じてますから」
マダ王こと螺旋王がいたのなら口をあんぐりと開けかねないことを平然と言い放ちネームレスは呪を唱える。
「祈りは空に、願いは天に、輝く光はこの瞳に、不屈の心はこの胸に!」
「これは……」
「僕の体から緑の光が!?」
先程の二人のリングでの戦いを書き手2終盤において書いたある参加者の修行による螺旋力覚醒話に重ねたのだ。
「これで今の僕にできることは大方やりつくしました」
「ネームレス……」
いい笑顔を最後に浮かべて、身を翻したネームレスの前に黒き翼が回りこむ。
予想通りネームレスの笑みにはどこか寂しさが混ざっていた。
死にたくないのだ。
たとえ終わったロワとはいえ話題に出ることはある。
ここで死ぬということは、それを見てによによする機会を永遠に失うということなのだ。
「説得なんて無駄ですよ。僕は書き手2で書いたエピローグみたいに皆さんのお墓を作るなんてごめんこうむります」
「ああ、分かってる……。だから何も言わないさ」
それでもネームレスは選んだ。
未来のある書き手達を守ることを。
純粋な読み手に近い立ち居地である書き手ロワ書き手だからこそ選ばないわけにはいかなかった。
それはこの場にいる未だ存続中のロワを背負う他の3人には為し得ぬ決意。
言葉では論破できないだろう。
故に
「ただ、力ずくで止めるまでだ」
黒き翼は拳をネームレスの腹にめり込ませる。
言葉ではなく拳を――作品をもって押し通す。
「ガハッ!? 何、を……」
「悪いな。こういうのはブラックの役目だ。決して『トカゲの尻尾きり』なんかじゃないぞ」
大技
を出す寸前で無防備だったネームレスが耐えられるはずもなく唖然としたまま崩れ落ちていく。
その身体をそっと抱きかかえ頼むとロニーさんに自分の支給品と一緒に任せる黒き翼。
「でもどうする気だ、黒き翼。あの結界は……そうか、螺旋力でなら」
「そういうことだ。そのことに気付かずに俺に力を渡すとはな。全くとんだ馬鹿者だ」
「黒き翼!」
「止めるなよ? 俺にそいつみたいに不意打ちは通じん。何故なら……!」
小軽鋭化により自身の重さを極限までに軽くして飛びたとうとする自身の横に並ぶNIKUに誇らしげに名乗りを上げる。
黒き翼が最高にかっこよく書き上げた一人の最強の如く。
「猛きこと理央の如く。強きこと、また理央の如く。災厄を払う者、黒き翼◆8ttRQi9eksなのだからな!」
「止めないよ。ただ、僕も一緒に行くだけさ。こんなことをしでかした、アニ2書き手を懲らしめる為にね!」
拳で語り合った仲だからこそ、NIKUは黒き翼を止めようとはしなかった。止められなかった。
せめて最後を見届けようとリングのロープに見立てたジュリアのネットに猛スピードで突っ込むNIKU。
螺旋力とゆで理論を併用すれば天空なんざすぐそこだ。
「僕は君の拳を忘れない。やるならおもいっきしぶん殴ってこよう」
「ああ!」
すれ違いざまに黒き翼とNIKUは勝利を約束し腕を組む。
互いの腕から熱く燃える闘志が伝わってきて、更に二人の胸の中の炎が煌きを増す。
心の中だけではない。
NIKUの額の肉の文字が、黒き翼が突いた胸の経路が。
熱く、熱く、燃えている!
緑と、青と、黒。3色が交じり合い極光となす。
「うおおおおおおお、リンギ・超無限烈破――」
「マッスル・ミレニアムッ!!」
――暗雲を裂く熱き魂の光は天上からでも一際輝いて見えた
「あれは……流星? いや、流れているのではない。こちらに向かって昇ってくる!
強く、どこまでも強い意志をもって!!」
足場としていた熊岡県が落ちようとも、空を飛べるものばかりの
甲賀騎兵ひぐらし達側には影響はなかった。
むしろマーボーが落としにかからないでも遅かれ早かれ熊岡県は墜落しにかかっていたであろうという程にKIを使う二人がいる戦場は白熱していた。
「「あの凄まじいまでのKIは!」」
その二人、熊岡県が落下軌道に入ろうが我関せずと闘い続けた凶兆の猫鍋とジャイアンの母書き手すら手を止めて、迫り来る極大のKIの塊に見入った。
「朝が、来たわ。新しい朝が……」
芸人的戦闘の伝道者が愛した彼らのように飛翔するその二人の参加者達は輝いていた。
その光を目の当たりにして戦闘者はボトムズパワーと忍者補正のおかげでサバイバリティにたけ、
ここまでとんでもチート合戦から自分を守ってくれた相方に撤退を促す。
「伝道者?」
「あの二人、
ニコロワとカオスロワの書き手って言ってたわ。なら相当把握範囲は広いはずよ。
布教をするのならもっとラノロワとかロリショタロワとか、ボトムズ等が縁も所縁もなさそうな相手にやった方が効率的だ。
……それにわた俺も焦ってた。大事なことを忘れてた。そりゃ三重を守るのも大事だけど、この日本が旅の扉と一緒に最後には崩れ去るというのなら、
犯人探しよりも先に墓参りを済ませておくことの方が大事。
開戦当初に確認したところによると、ここにいる人は犯人じゃないみたいだし。まあ、犯人が分かれば起こりはするけどね」
「……そうか、そうだな。なら、一気にこの空域を離脱するぞ! (ベルレフォーン)!」
流星がまた一つ。
膨大な魔力に包まれた赤き龍を駆り、伝道者とひぐらしが猫鍋と母書き手を他所に一足先に離脱する。
直後
「リンギ ・ 大 ッ 魁 ッ 咆 ッ ! !」
流星なんて比にならない自らを臨気の爆弾と化した黒き翼による超新星爆発が夜明けの空を真昼のように照らした。
【黒き翼@戦隊ロワ 死亡】
【一日目・早朝/熊岡県→三重県】
【甲賀騎兵ひぐらし@オールロワ】
【状態】ダメージ(中)
【装備】王者の剣@ニコロワ、バタフライナイフ@オールロワ、DMカード(真紅眼の黒竜)(召喚中)@ニコロワ、騎英の手綱
【道具】支給品一式×2、不明支給品0~1
【思考】基本:自分が好きな作品の布教を行う
1:『なぎさ』が気になるので念のため三重を探索しつつ、芸人的戦闘の伝道者に引き続き布教する
2:話を聞いてくれそうな参加者を捜す
3:邪魔する参加者には容赦しない
※外見は金髪のキリコ=キュービィ@装甲騎兵ボトムズです
【芸人的戦闘の伝道者@
芸人ロワ】
【状態】健康、リアルはっぱ隊
【装備】丸太@
動物ロワ、世界樹の葉@ニコロワ、村正@お笑いバトルロワイアル(2002年版芸人ロワ)
【持物】支給品一式
【思考】基本:三重県で墓参り
1:三重を探索し、墓が無事なら墓参りをしたい
2:三重と和歌山を吹っ飛ばした奴が分かったなら赦さない
※外見は全裸+股間に葉っぱ一枚のネプチューンの原田泰造です
※甲賀騎兵ひぐらしの布教により、バジリスクに関して多少の知識を得ました
「……なんだよ。こりゃあ、一体なんの冗談なんだよ?」
信じられなかった。
自分が張った結界を突破した生身の参加者に今か今かと楽しみにしていた時をすんでのところで奪われたことが。
「オイオイオイ……マジかよ。マジなのかよ……」
先刻までと変わらないはずの落ちていく世界。
先刻までとは違い土台を失った世界。
砕け散り瓦礫の雨と成り果てた熊岡県には男の足場となる力は無く、立つこと叶わずマーボーは身体を宙に躍らせる。
「一世一代だったんだぜ? 死にゆく身で上げた一世一代の大花火だったんだ。
なのに、なのによお。冗談じゃねぇ!
ありえねぇ……、ありえねぇよ……。おいおい、どーすんだよ、コレは。
まだまだ全然殺したりねえだろがああああああああああああ!!!」
「人を殺すことに足りるも足りないも無いよ。僕たちが終わらせていいのは自分の命一つだけです」
響いた声にはっとなる。
熊岡県へと突っ込んだのは黒と緑の光を纏った男だった。
じゃあ、もう片方は?
青と緑の光を纏っていた男は!?
答えは、目の前にあった。
「――ガッ!」
背骨が折れんばかりの衝撃に襲われるとともに、両手がロックされる。
この体性では振り向けないが、そこに見失っていたもう片方の邪魔者がいるのは間違いなかった。
「離せ、離しやがれえええええええええええええええ!」
振りほどこうと暴れるも、異様に発達した筋肉を持つ相手の腕は振りほどけない。
頼みの綱のクロスミラージュも熊岡県とアンカーで繋いでいた事が災いして、大魁咆の爆風で何処へと吹き飛んだ。
もはや、マーボーに、打つ手は、ない。
「見ていてください、黒き翼。これが僕とあなたの正悪合一」
「――っクソがあああああああああああああああああああああああああああああ!」
捕らえられたまま落下するマーボーが火事場のクソ力の発動により加えられた強力なGに耐えかねて、ヨットの帆のように反り返る。
待ってましたとばかりにNIKUは両腕も脚で挟み込み、更には特攻間際の黒き翼による全臨伝授で託された蔵備頓でマーボーにかかる重力を倍化させる。
「黒翼マッスルグラビティ!」
天守閣を貫き大阪城地下の特設リングに尻餅をつくように着地。
その余りの衝撃にマーボーの股が裂け、首があらぬ方向に折れ、腰の骨が粉砕し、両腕と肋骨が砕け散り、内臓がミンチと化す。
不死者とはいえ元より死にかけだった身が復活できるわけもなく。
ここに、勝負は決した。
【阿鼻叫喚・鮮血麻婆《スクリーム・ブラッディマーボー》@アニロワ2 死亡】
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最終更新:2009年05月24日 17:21