地下プロレス死合会場…。
今日も今日とて、
人が死ぬトコロが観たい、
イカれた観客達が、
ニキョニキョしながら、
眺(なが)めている。
人が死ぬトコロが観たい、
イカれた観客達が、
ニキョニキョしながら、
眺(なが)めている。
観客席から見つめる
リング上のその場には…。
リング上のその場には…。
黒パンツにリングブーツ。
髪を白く染め、後頭部の髪を
×(バツ)の字の形に
剃(そ)り上げている。
髪を白く染め、後頭部の髪を
×(バツ)の字の形に
剃(そ)り上げている。
210cm145kg。
人型に巨岩を削ったが
ごとくの体躯(たいく)を
持っている。
ごとくの体躯(たいく)を
持っている。
そしてもう1人…。
対戦相手の
マスク・ド・サンキスト
“愛媛(えひめ)”である。
マスク・ド・サンキスト
“愛媛(えひめ)”である。
対百文字、サンキストの一族
の刺客(しかく)。
の刺客(しかく)。
181cm110kg。
オレンジを模(も)した
覆面(ふくめん)を被り、
白の道着…空手着をまとう。
覆面(ふくめん)を被り、
白の道着…空手着をまとう。
その道着の胸には赤色で
『芦崎(あしざき)空手』と
刺繍(ししゅう)され、
『芦崎(あしざき)空手』と
刺繍(ししゅう)され、
下半身はオレンジ色の
パンツと素足と言う、
異色の格好をしていた。
パンツと素足と言う、
異色の格好をしていた。
愛媛(えひめ)が語りかける。
「ジ・ハンドレッド。」
「おんしが強き王者である事は
理解しているけんねぇ。」
理解しているけんねぇ。」
と
は
言
え
ど
「わちが敬愛する、
初代サンキストを
殺したウラミ…。」
初代サンキストを
殺したウラミ…。」
「決して晴れる事は、
ねぇですけん。」
ねぇですけん。」
「ハンドレッド。
おんしは、
『ミクスドの愛媛』に
敗れるけんッ。」
おんしは、
『ミクスドの愛媛』に
敗れるけんッ。」
「覚悟するけんよッ!!」
啖呵(たんか)を
切る愛媛!
切る愛媛!
気合十分である!!
リング下では…。
愛媛の弟子の、
マスク・ド・サンキスト
“今治(いまばり)”
が見守る。
マスク・ド・サンキスト
“今治(いまばり)”
が見守る。
今治(いまばり)もまた、
オレンジを模(も)した
覆面(ふくめん)を被り、
空手着をまとい…。
オレンジを模(も)した
覆面(ふくめん)を被り、
空手着をまとい…。
その空手着の胸には赤色で
『芦崎(あしざき)空手』と
刺繍(ししゅう)され、
『芦崎(あしざき)空手』と
刺繍(ししゅう)され、
下半身はオレンジ色の
パンツと素足と言う格好と、
パンツと素足と言う格好と、
首に…。
今治タオルを巻いていた。
今治タオルを巻いていた。
今治タオルとは。
愛媛県今治市で作られる、
優れた吸水性と
愛媛県今治市で作られる、
優れた吸水性と
やわらかい肌触りが特徴の
日本を代表する
高品質タオルの事を指す。
日本を代表する
高品質タオルの事を指す。
師が愛媛の名を冠して
いる以上、愛媛県の看板を
背負って闘うが如くの
この死合。
いる以上、愛媛県の看板を
背負って闘うが如くの
この死合。
その意気込みが
郷土(きょうど)愛となり、
発露(はつろ)したので
あろう…!!
郷土(きょうど)愛となり、
発露(はつろ)したので
あろう…!!
今治が叫ぶ!
「師匠ォー!
いけます!!
いけます!!
いけますぞー!!」
その声が届いた、
愛媛は…!!
愛媛は…!!
「わちの弟子も
そう言うてますけん。」
そう言うてますけん。」
「ジ・ハンドレッド。」
「ここに死すですけん…!!」
ニヤリ…!
不敵に嗤(わら)う、
愛媛…。
愛媛…。
一連の振る舞いを、
見たハンドレッドは…。
見たハンドレッドは…。
こう言う。
「大いに結構である。」
「はねっ返りは
鮮度(せんど)の
ようなモノだ。」
鮮度(せんど)の
ようなモノだ。」
「それだけ、もぎたてな
オレンジのような
モノなのであろう。」
オレンジのような
モノなのであろう。」
し
か
し
「はいそうですかと
ワシが答えるとは
思うておらんのであろう?」
ワシが答えるとは
思うておらんのであろう?」
「貴様の末路を結果にて、
刻み込んでくれよう…ッ。」
刻み込んでくれよう…ッ。」
「貴様の死を持ってだッ!!」
そ
う
し
て
!
カ ァ ァ アアア ン ッ ! !
死合開始のゴングが打ち鳴らされたッ!!
サ…ッ!
サ…ッ!!
ハンドレッドは両腕を広げる。
210cm145kgの
巨人が両腕を広げる…!
巨人が両腕を広げる…!
それだけで。
そうするだけで、
得も言われぬ威圧感
と言うモノがあろうと
言うモノ。
そうするだけで、
得も言われぬ威圧感
と言うモノがあろうと
言うモノ。
対し、愛媛は…!!
左手を前。
手は袖(そで)に隠す。
手は袖(そで)に隠す。
手を袖に隠すのは
裏の技の仕込みか?
裏の技の仕込みか?
半身(はんみ)。
右手はヘソ辺りで、
にぎりしめ、
拳(こぶし)を
形作る。
右手はヘソ辺りで、
にぎりしめ、
拳(こぶし)を
形作る。
左手と違い、
右手は目視出来る。
右手は目視出来る。
ギシギシギシギシ!
フットワーク。
その場で膝で上下し、
重心を移動させる。
その場で膝で上下し、
重心を移動させる。
そ
し
て
ギシ!ギシ!ギシ!
ハンドレッドの
右手の方向。
右手の方向。
ハンドレッドの
間合いに入らないくらいの
距離(きょり)を
維持(いじ)しながら、
間合いに入らないくらいの
距離(きょり)を
維持(いじ)しながら、
ハンドレッドを
中心に円を描くように、
歩み始めた。
中心に円を描くように、
歩み始めた。
ハンドレッドは
愛媛と正対しながら、
話かける。
愛媛と正対しながら、
話かける。
「プロレスと言うモノは、
格下が格上の周りを、
回るモノである。」
格下が格上の周りを、
回るモノである。」
「だが…。
それだけの意味では
無いようだな?」
それだけの意味では
無いようだな?」
愛媛は答える。
「わちの意図が
読めんようけんねぇ。」
読めんようけんねぇ。」
「もっとも。
誘いである事は、
理解してるとは
思いますけんが…。」
誘いである事は、
理解してるとは
思いますけんが…。」
ハンドレッドは応ずる。
「如何(いか)にも…!!」
グン…ッ!
ハンドレッドは
右手で愛媛の、
左の袖(そで)に
掴みかかりに行く。
右手で愛媛の、
左の袖(そで)に
掴みかかりに行く。
掴むと言う行為に
対して、
衣服と言う存在は、
雄弁(ゆうべん)に
対して、
衣服と言う存在は、
雄弁(ゆうべん)に
掴んでくれ
と言っているような
モノである…!!
モノである…!!
ハンドレッドの師、
巴 二十八(にじゅうはち)
はプロレスラーに
なる前は柔道家であった。
巴 二十八(にじゅうはち)
はプロレスラーに
なる前は柔道家であった。
そんな巴から、
手ほどきを受けた、
ハンドレッドは、
柔道に明るいのは必然。
手ほどきを受けた、
ハンドレッドは、
柔道に明るいのは必然。
そう。ハンドレッドに
対し衣服を着て挑む事、
対し衣服を着て挑む事、
ナイフの用途が、
ペーパーナイフと、
十徳ナイフとの
ぐらいの差で、
応用のはばが
違うと言う事である…!
ペーパーナイフと、
十徳ナイフとの
ぐらいの差で、
応用のはばが
違うと言う事である…!
故に掴みかかるッ!!
そ
の
時
で
あ
っ
た
!
ガッ!
左前腕で
ハンドレッドの手を
はね上げるッ!!
ハンドレッドの手を
はね上げるッ!!
サバキ!!
芦崎空手特有の!!
芦崎空手特有の!!
力では、
ハンドレッドに分が
ある中…ッ!!
ハンドレッドに分が
ある中…ッ!!
愛媛は熟練(じゅくれん)
した、サバキの技術と!
した、サバキの技術と!
そして、左の袖(そで)中に
仕込んだトンファーで、
硬度と、はね上げる衝撃力で
もって、サバキの力を
アップさせた!!
仕込んだトンファーで、
硬度と、はね上げる衝撃力で
もって、サバキの力を
アップさせた!!
更には、そのトンファー!
それは『強化スチール』で
形成されていた!!
それは『強化スチール』で
形成されていた!!
○『 強化スチール 』
36年前の
地球科学(アース・サイエンス)で
生み出されていた
『鉄より硬い
“鉄(スチール)”』。
地球科学(アース・サイエンス)で
生み出されていた
『鉄より硬い
“鉄(スチール)”』。
その名もずばり
『強化スチール』である。
『強化スチール』である。
鉄と全く同じ重量でありながら、
鉄(スチール)を超える
“強度(ストレングス)”を
誇っている!!
“強度(ストレングス)”を
誇っている!!
ッ
ッ
これには…!
ハンドレッドの掴みかかりを
持ってしても、上に弾かれる!!
ハンドレッドの掴みかかりを
持ってしても、上に弾かれる!!
次
の
瞬
間
ッ
!
グイン!
愛媛は左足を支点に、
半回転しながら、
ハンドレッドの後ろへと
移動するッ!!
半回転しながら、
ハンドレッドの後ろへと
移動するッ!!
後ろ。すなわちは死角。
芦崎空手の真骨頂である!!
芦崎空手の真骨頂である!!
愛媛がハンドレッドの
死角に入り込みながら!
死角に入り込みながら!
芦崎空手とカポエイラの
ミクスドを見せる!!
ミクスドを見せる!!
「マルテーロ!!」
〇マルテーロ
カポエイラを始めるにあたって学ぶ、
基本キックの一つ。いわゆる回し蹴り。
足の甲を使ってわき腹や頭を狙って蹴る、
非常に実戦的かつ攻撃的なキック。
マルテーロの意味は=martelo、
直訳すると「金づち=ハンマー」である。
ッ
ッ
狙いはッ!
ハンドレッドの
後頭部であるッ!!
ド ゴ ッッ !!
鈍い音がした…ッ!
2年前のチャイナとの死合では
聞かれなかった音。
衝撃を逃がした音じゃない!
しっかりとダメージの入った
鈍(にぶ)い音であるッ!!
ッ
ッ
しかし、
ハンドレッドは…!
「やりおるな、愛媛!!」
ダメージを負いつつも、
己の体躯(からだ)の
頑強さで耐えきる!!
これぞ、耐撃の二つ名
と言うモノ!!
そ
う
し
て
!
「ちぇリぁあアアッ!!!」
ハンドレッドは
体を右反転させ、
無造作に己の左腕を
当てに行く!!
だ
が
!
愛媛はまだ
手を緩(ゆる)めない!
「エスコルピオンッ!!」
〇エスコルピオン
地面すれすれの低い姿勢で
相手に背を向けながら蹴りを入れる、
トリッキーな攻撃。
アクロバットな魅せ技にもなる。
ポルトガル語で「サソリ」を意味し、
サソリのように体を反らした姿が特徴。
肩越しに振り向くように相手を見据える。
上半身を地面すれすれに留めた
低い姿勢を取る為、相手の攻撃を
避けながら蹴る事ができる。
ッ
ッ
そう!低い姿勢が故に、
ハンドレッドの攻撃は
当たらない!!
狙
い
は
!
ハンドレッドの
回転している脚部である!!
今
!
ガッ ギィー!!
愛媛は
驚嘆(きょうたん)する!
「グムゥ…ッ!?」
何
故
な
ら
ば
!
愛媛の蹴りは弾かれた!!
愛媛の蹴技よりも、
右反転する
ハンドレッドの脚の方が
力が強いのだ!!
ッ
!
ゴロゴロゴロ…!!
弾かれ転がる、
マスク・ド・サンキスト“愛媛”!
ド
ン
!
ハンドレッドは
足をおろす。
続けざま…ッ!
「ムンン…!!」
寝技を仕掛けに
愛媛に接近する…!
が
ッ
!
愛媛は握りしめていた
右手に仕込んだ物を
投げ散らすッ!!
「鬼七味ですけん!!」
〇鬼七味
愛媛県は鬼北(きほく)名産の
ユズを、手作りで
陳皮(みかんの皮を干したもの)
にしてブレンドした数量限定の
七味唐辛子。
うどんやそばなどの麺類に合う。
ッ
ッ
さしもの、これには
ハンドレッドも…!!
「グム…ッ!!」
眼球に鬼七味が入り、
マブタを固く閉じるッ。
ス…ッ!
愛媛は立ち上がり!
バッ!!
身にまとった、
空手着を開く!!
そ
こ
に
は
!
愛媛はつぶやく。
「クナイですけん。」
「芦崎空手の
『裏の殺人技』。」
『裏の殺人技』。」
「『手裏剣術』
けんよぉ…ッ!!」
〇苦無(クナイ)
サイズは大苦無(13-15cmほど)と
小苦無(8-10cmほど)がある。
小苦無(8-10cmほど)がある。
忍術書『万川集海』には「苦無」、
服部半蔵が書いた『忍秘伝』には
「宮内」とある。
服部半蔵が書いた『忍秘伝』には
「宮内」とある。
平らな鉄製の爪状になっていて、
武器としての使用のほか、
門扉などの備えが厳重で
潜入困難な場合に壁や地面に
穴を掘ったりする際に
使用するなど、
武器としての使用のほか、
門扉などの備えが厳重で
潜入困難な場合に壁や地面に
穴を掘ったりする際に
使用するなど、
現代でいうサバイバルナイフに
近い道具であった。
近い道具であった。
小型のものは手裏剣のように
使われることもあり、
「飛苦無」(とびくない)
と呼ばれた。
使われることもあり、
「飛苦無」(とびくない)
と呼ばれた。
・
・
・
・
ッ
愛媛が持っているのは小苦無。
それを多量に空手着に収容している。
愛媛はクナイを取り、
投(とう)てきの
準備をしながら!
「どこに投げよか、
このクナイ…!!」
「マブタを固く閉じた、
暗闇、真っ暗の中では、
知りようもないで
しょうけんねぇ…!!」
い
ざ
!
「 ト ビ ク ナ イ
で す け ん ! ! 」
愛媛の手から、
トビクナイが
放たれた…ッ!!
ーーーーーー
・・・続く。