志村新八は、商家の窓から街を見つめていた。
無論、ただ景色を眺めているのではなく、怪しい者が近づいて来ないか見張る重要な役目。
その最中にも拘らず、新八の意識は半ば以上、背後……部屋の中に向かっている。
原因は、少し前にやって来て彼等の仲間に加わった女性、神谷薫だ。
元攘夷志士だという緋村剣心なる男と共に、半ば行き倒れるような形で商家の付近にいるのを発見された女性。
剣心の方は未だに意識が戻らず隣の部屋に寝かされているが、薫は大きな怪我もなく、一休みしてかなり気力を回復した様子。
「成程、その傷の男のせいでさな子さん達とは別れたっちゅう訳か」
先程から、龍馬は薫のこの島での体験について聞いており、そこにはここの面子とも縁の深い名が幾つも出ていた。
「はい。それで、もしかしたら志々雄に……」
「何の、あん人は見かけはキュートなレディじゃが、内面はオーガの如きお人じゃ。まず滅多な事はないじゃろ」
気楽そうに言う龍馬だが、実際には不安がない訳ではあるまい。
確か、薫がさな子と共に志々雄なる人斬りの前に残して来たという、久慈や座波の名は死者として呼ばれていなかったか。
綸花も心配そうに見ているが、龍馬の方はそうした危惧を毛ほども表に出す事なく、話を継ぐ。
「そんで、沖田君はノースウェストに向かったんじゃったな」
「ええと、近藤勇土方歳三の決闘を見届けに呂仁村址に行くという話でした。」
「こんな時に決闘とは、まあ、あの連中らしいかのう」
新八にとっては、千葉さな子とかいう女性の話よりは、馴染みのあるこの名前の方が気になるところだ。
もっとも、さな子の話をしていた時とは一転して難しい顔になった龍馬とは逆に、決闘云々は心配していない。
あの近藤と土方が本気で斬り合う事などある筈もなく、決闘というのもつまらない理由で喧嘩でもしただけだろう。
ただ、内心ではそれなりに恃みにしていた真選組が、このシリアスな状況でも馬鹿な事をしているのか、という失望はある。
それに、気になる事はもう一つ。
「こりゃあ、後で斉藤君に仲裁してもらうしかないかのう」
「斉藤ですか。確か、お爺ちゃんになっちゃってるんですよね?」
「うむ。何でも、俺らが来たエイジよりもメニーイヤーアフターから来たらしくてな」
そう、この島に来ている剣客は別々の時代から来ているらしいという事だ。
宮本武蔵の父親が来ている時点で予想できた事ではあるが、同世代の者でも出身時間がずれている事があるらしい。
斉藤一を龍馬から紹介された時には、真選組幹部にしては見覚えがないと訝しみつつも、眼光に射竦められて何も聞けなかった。
だが、彼が新八より数十年も未来から来たのであれば、互いに見分けられなくても特に不思議はなくなる。
そして、この時代のずれは斉藤だけに限らず、他の新八の知り合いにも当てはまるかもしれないのだ。
例えば近藤達と再会出来たとしても、彼等が数年も過去から来ていれば、向こうは新八を知らず助けを得られないかもしれない。
となるとやはり……
(銀さん……)
坂田銀時。あの男とは御前試合開催の時に普通に話が通じている事からも、同じかごく近い時期から呼ばれたのは確か。
またそもそも、銀時ならば知り合いであろうとなかろうと、助けを必要とする者を見捨てる事はないだろう。
薫の話から、人斬りが跋扈する島の現状を聞き、やはり銀時に頼るしかないかという思いを強くする新八。
その時、鐘と太鼓の音が響き、日の出の時と同じ声が島に響き渡った。

犬坂毛野殿、伊烏義阿殿……」
能書きの後に死者の名が読み上げられ始めると、見張りの新八を含め、どうしても注意が聴覚に行きがちとなる。
島に来る前に親しく付き合っていた者や、島で出会った仲間は果たしてまだ無事なのか……
「……志々雄真実殿。以上十七名の方……」
死者の読み上げが終わった時、新八はそっと息を付いた。
今回は、新八の知り合いや仲間が呼ばれる事はなく、一方で危険な人斬りと聞いた志々雄真実は死んだという。
ほっとして見張りに意識を戻そうとした新八の耳に、その声が飛び込む。
「いたぞ、あそこだ!」
「銀さん!?」
そう、それは確かに坂田銀時の声。
銀時の声が主催者の声に被さって聞こえたという事は、考えられる状況は一つ。
新八は見張りも忘れて、耳を澄ます。
もっとも、主催者の話は数瞬後には終わり、銀時についてはそれ以上はわからなかったのだが。
しかし、新八が元々怠りがちであった見張りを完全に失念したその数秒の内に、事態は動いていた。

商家一階の入り口を見張る伊東甲子太郎は、上で彼を補完している新八よりも遥かに集中して見張りを行っていた。
もとより、新八が時々手元を見詰めて余所事を考えているのを察知していたからこそ、甲子太郎は自分が新八と組んだのだ。
それだけに、甲子太郎は如才なく見張りをこなしていたのだが、それでもなかなか完璧とはいかない。
特に、主催者の話の最中に、別の何者かの声が被さってきた時には、さすがにそちらに意識の一部が向く。
正にその瞬間、甲子太郎を長大な木刀が襲った。
襲撃者が襲って来た方角は、ちょうど新八の位置から最も見え易い位置。
甲子太郎が新八をあまり当てにしていないとはいえ、どうしてもその担当範囲に対しては注意が薄くなる。
まして甲子太郎自身も主催者の言葉に注意を削がれていた状況であり、敵に先手を取られたのは止むを得まい。
それでも、嘗て一度は不意討ちで殺された経験が活きたか、甲子太郎の身体は咄嗟に動いて木刀をかわす。
驚愕が冷めやらぬまま、それでも稽古で幾度も経験したように、間を詰めて長木刀の届かぬ内側に入っての一撃を放つ。

渾身の一撃を紙一重でかわされ、反撃の切り上げを辛うじて回避して下がる甲子太郎。
「無二斎殿……いや、宮本武蔵殿か」
はじめの交錯の折、襲撃者の顔を見た甲子太郎は相手を無二斎かと思ったが、よくよく見ると無二斎とは少し違う。
新免無二斎によく似た顔、巨大な木刀、そして何よりあの技……
間違いない、甲子太郎が対峙しているこの男は、伝説的な剣豪、二天一流宮本武蔵。
「何ゆえ……」
甲子太郎は呻くように問うた。
この状況を早く二階の坂本達に伝えねばならぬのだが、他所に向けて大声を上げるような余裕は甲子太郎にはない。
全気力を正眼に構えた刃先に籠めて向けていなければ、上段に構えた武蔵の木刀が瞬時に甲子太郎の頭を砕くだろう。
通常ならば、このまま黙って睨み合っていれば、上段の武蔵が先に疲れる筈だが、今回は甲子太郎が先に力尽きる。
せめて低声で問答を挑み、その気配に坂本達が気付いてくれる事を願うのが精一杯だった。
「無二斎は立ち合いの機会を滅多に逃さぬ男……」
会話を避ければ却って甲子太郎が気力を盛り返すと見たか、武蔵は甲子太郎の問いに答える。
「奴が如何なる思惑でお前達と組んだのかは知らぬが、実態がどうあれ、仲間を討たれれば奴は必ずその仇を討たんとする。
 無二斎を斬るには、こちらが狙うよりも奴にこちらを狙わせる方が、俺にとってはやり易いからな」
元からこちらに理解させる気はないのだろう、甲子太郎には今一つ意味が掴めない答えを返す武蔵。
ただ、武蔵が自分とは相容れない考えの持ち主である事はわかった。
戦いが戦いを生み、仇討ちが仇を生む果て無き連鎖。
それを断ち切り平和な世を作る事が甲子太郎の志だが、武蔵は永遠に続く戦い、無限の連鎖をこそ糧とする剣士らしい。
争いを厭う甲子太郎が剣を一流の域まで磨いたのは、そうした修羅に抗する為と言っても過言ではないのだ。
故に、ここでも、たとえ相手が史上最強を謳われる剣豪であろうとも、何とか一矢報いるのが甲子太郎の剣道だろう。
だが、それは不可能であろう事を、水分を含んで重くなり始めている甲子太郎の袖と、そこから垂れる血の滴が示していた。

先程、武蔵が甲子太郎を襲った際、明らかに武蔵の側に利点があった。
第一は主催者の事に気を取られた甲子太郎の不意を襲った事、そしてもう一つは武蔵の顔だ。
好悪の念はともかく、己の面相に父無二斎と似た部分が多い事は、武蔵自身も認識している。
無二斎の仲間である甲子太郎が武蔵に襲われれば、無二斎が裏切ったのかと疑い、その疑念が一瞬の隙を作る筈。
仮に相手が無二斎の本質を既に見抜いて警戒していたとしても、その場合は無二斎を観察して当理流の一端を掴んでいる道理。
武蔵を無二斎と見違え、当理流用の技を大きく異なる思想に基づく二天一流に対して使えば、それは裏目に出る。
こうした事から、武蔵は初手の一撃にこそ最大の勝機があると考え、そこに勝負を賭け、勝ったのだ。
武蔵の木刀の一撃をかわした甲子太郎だが、木刀の長大さと勢いから、それを両手を使った攻撃と錯覚したのは無理ないだろう。
しかし、武蔵は片手で剣を振るう修練を深く積んでおり、その木刀は片手で振るう事をも考えて自作したもの。
武蔵のその一撃も片手打ちであり、それをかわして間を詰めても、そこには長柄刀の切っ先を握ったもう片腕が。
いわば、今回の武蔵の構えは、大木刀と小刀による変則二刀流。
驚愕によって僅かに鈍った剣を紙一重で見切った武蔵は、手の内に隠した切っ先で、甲子太郎の手首の動脈を裂いたのだ。
武蔵の気迫と隙のない構えによって手当ても許されなかった甲子太郎からは、既に相当の血が流れ出している。
その血の匂いに誘われたか、単に意見を求めようとしたのか、遂に二人の均衡を破る者が現れた。

「のう、甲子太郎……どうした!?」
階段の方から坂本の驚いた声が響いた瞬間、武蔵の木刀を握っていない方の手が動き、光る物が二階へ向かい飛ぶ。
甲子太郎の手首を裂いた切っ先を手裏剣打ちに投げたのだが、龍馬はそう易々と手裏剣を受ける男ではない。
だから、本来ならそれを無視して片手が遊ぶ形となった武蔵に斬り込むのが甲子太郎の最善手だったろう。
しかし、武蔵との対峙によって多くの血と気力を失った甲子太郎は、既に背後の気配を感じ取るのも困難になっていた。
万全な状態ならば龍馬は手裏剣の一つくらい防げるが、或いは油断して無手で様子を見に来たのかもしれない。
また新八や薫、気絶していた男女を伴って来た可能性をも、甲子太郎は考えない訳にはいかないのだ。
甲子太郎の剣は敵を殺す剣ではなく、あくまで守りの剣。
故に、剣を伸ばして武蔵の投げた切っ先を叩き落すのが、甲子太郎に可能な唯一の選択。
対して、武蔵にとっては、甲子太郎が剣を振るい見せざるを得なかった隙に付け込むのが当然の選択だ。
それでも、木刀の一撃はどうにか避ける甲子太郎だが、続いての体当たりで吹き飛ばされ、階段にぶち当たる。

「くっ!」
立ち上がろうとする甲子太郎だが、武蔵の拳を鳩尾に受けた為に身体が痺れてすぐには動けない。
もしも今の一撃を頭に受けていたら、頭蓋を砕かれた可能性も低くないだろう。
武蔵が敢えてそうしなかった理由ははっきりしている。
「甲子太郎!!」
(いけない!)
川添珠姫の話では、新撰組は甲子太郎の屍を囮として服部達を誘い出して討ったという。
それでも弟の鈴木三樹三郎をはじめ幾人かが逃げ延びられたのは、その時の甲子太郎が既に死んでいたからこそ。
生きて動けずにいる者は見捨てる機を判断しにくく、囮としては死体よりも有効だ。
特に龍馬は、生きている限り決して甲子太郎を見捨てない性格。
そして、人間一人を担いで階段を上がるような大きな隙を武蔵の前で見せれば、結果は火を見るより明らか。
だが、屍となってしまえばどうしようもないが、生きてさえいれば、仲間の枷とならぬよう行動する事ができるのだ。
「―――――――!!」
甲子太郎は身体の痺れを意思の力で無理矢理に捻じ伏せると、刀を階上に投げ渡しつつ武蔵へと突進する。
その甲子太郎の決死の行いを見た武蔵は……つまらなそうに彼を打ち殺した。
甲子太郎が命を捨てた事で彼を囮として仲間を誘い出す策は破れたが、それでも武蔵の勝利への確信は揺らがない。
次の戦術を練りながら武蔵は龍馬と、戦いの気配を漸く感じて出て来た男女と対峙するのであった。

【伊東甲子太郎@史実 死亡】
【残り三十九名】

綸花が二階から七つ胴落としを放ち、階下の武蔵がそれを回避する。
さすがに、奥義とはいえ離れた位置からの飛び道具が武蔵ほどの剣客にそうそう通じる筈もない。
それでも、武蔵も正体不明の綸花の技を警戒し、自分から階段を上がろうとはせず一階に留まっていた。
膠着状態に見えるが、実際には明らかに綸花が不利。
奥義を放つ事による気力体力の消費もあるが、何より生身の人間と殺し合う事による精神の消耗が大きい。
このままではいずれ綸花が力尽きる……そうとわかっていながら、龍馬達は手を出せずにいる。
龍馬が階下に下りて武蔵に白兵戦を挑み、そこを遠距離から綸花が補助する体勢さえ作れれば……
そう思いつつも、この状況で一階に下りるのは容易な事ではないのだ。
階段を駆け下りれば、武蔵は下りて来る者の身体を綸花に対する盾としつつ迎え撃つだろう。
そうでなくとも、階段での戦いは下側にいる者が圧倒的に有利と言われているし。
かと言って飛び降りても、着地の瞬間に大きな隙が出来、武蔵はそれを見逃すまい。
いっそ階段を壊してしまえば綸花が一方的に攻撃できるのだが、それで火でも点けられたら厄介だ。
龍馬はちらりと背後に……通りへ面した窓へと目を遣る。
窓から外へ逃げる、というのも手の一つだが、今の龍馬達の面子ではそれも難しい。
この窓はそう大きなものではなく、女性や、男でも華奢な剣心はともかく、巨漢の龍馬が通るのはどう見ても不可能。
加えて、剣心と少女は未だに意識が戻らず、窓から落とすのは危険だし、外に出しても連れて逃げるのは至難。
綸花が武蔵を牽制していなければ、窓から出てもすぐ回り込まれてしまうし、薫と新八だけ降ろしても武蔵相手に何が出来るか。
……いや、それでもやってみる価値はある。

「新八、薫さん!十兵衛殿や斉藤君達の所へ行け、援軍を呼んで来い!」
龍馬の声に、薫はすぐさま反応する。
ここから、斉藤達が向かったという道祖神までは距離があるし、そこから主催者の本拠までどれだけあるかもわからない。
また、彼等に追いついたとしても、こちらに援軍を出す余裕があるかどうか。
下手をすると、援軍は間に合わず、徒に主催者に向けるべき戦力を削ぎ各個撃破の危機を生む恐れもあろう。
それでも、ここにいても薫に出来る事はないのだ。
綸花の戦いを手助けも出来ずに見ているよりは、斉藤達の所へ向かう方が剣心を助けられる可能性は間違いなく高くなる。
「剣心……」
今、この島は武蔵のような剣鬼の跋扈する修羅場であり、剣の腕に欠ける薫が斉藤達の許へ無事に辿り着けるかもわからない。
それでも、覚悟を固めた気絶したままの剣心にそっと口付けすると、窓から飛び降り、駆け出した。

【ほノ肆 城下町/一日目/午後】

【神谷薫@るろうに剣心】
【状態】打撲(軽症) 
【装備】打刀
【道具】なし
【思考】基本:死合を止める。主催者に対する怒り。
     一:斉藤達の所へ行き、助けを呼ぶ。
     二:人は殺さない。
【備考】
   ※京都編終了後、人誅編以前からの参戦です。
   ※人別帖は確認しました。

「新八!」
「あ、すいません、何か、僕の身体じゃ通らないみたいです。仕方ないので、僕はここに残りますね」
薫に続くよう促す龍馬に軽い調子で答えて窓から離れる新八。
確かに、薫に比べれば逞しい新八が窓を通らなくともおかしくはないが、今の新八は真剣に窓を抜けようとしたとは見えない。
一瞬、龍馬は新八を怒鳴りかけたが、その眼鏡の下の強い光を見て言うのをやめる。
新八が一人の士としてここに残るという決断をしたのなら、無理強いしても無意味。
思考を切り替えると、龍馬はこの状況を打破する戦術を考え始めた。

(僕のせいだ……)
新八は、武蔵の侵入を知った時から、その事を考えていた。
この商家は、死んだ甲子太郎が構造と周囲の地形を確認した上で守るに易いとして撰んだ塞。
一階と二階の窓から連携して見張っていれば、奇襲を受ける事はまずないと。
しかし、二階からの見張りを担当していた自分が上の空だった為に、武蔵の不意討ちを許し、甲子太郎は死んだ。
その責が自分にあると認識していたからこそ、新八はここに残る事に固執した。
責任を感じるならば薫と共に行き、力を合わせて十兵衛達に追い付くよう努めるべきという考えもあろう。
主催者の所へ辿り着きさえすれば、そこ居るには十兵衛達だけでなく、銀時と再会できるかもしれないのだし。
なのに新八が薫と同行する事を肯んじ得なかったのは、龍馬が助けを呼ぶ事を口実に自分達を逃がそうとしていると感じたから。
今のところ、綸花は武蔵と渡り合えているように見えるが、長くは保つまい。
薫達が来る前、龍馬と綸花が見張りを担当し、綸花が一階に行っている間に甲子太郎が言っていた。
綸花の技は非常に強力だが、彼女は人斬りの経験に乏しくそれを好みもしない為に、その強力さが重圧となっていると。
だから襲われた場合は自分と龍馬が前面に出ると言っていた甲子太郎は死に、綸花の技に頼っているのが今の現実。
慣れない真剣勝負のストレスがどんなに辛いものかは、新八も身をもって知っている。
敵の刃に斬られるかもしれない恐怖もそうだが、人を殺せる武器が自分の手の中にある事への懼れも強かった。
まして、新八とは比較にならない攻撃力を持つ綸花が、そう長くこの場を支えていられる訳がない。
このまま外へ出れば、十兵衛達の所へ辿り着く前にここにいる者は皆死に、自分が逃げただけになってしまう。
或いは、龍馬は最後には綸花達をも逃して一人で武蔵に立ち向かう覚悟かもしれないが、その場合でも龍馬の死は不可避。
無論、技量の劣る新八が残ったところで、そう大した事が出来る訳ではないかもしれない。
それでも、新八とて剣士の端くれ。
命を捨ててかかれば出来る事もあるだろうし、誰かが命を捨てる必要がある場面では、龍馬より己が行くべきだ。
罪悪感と無力感に苛まれる中、新八は密かに悲壮な決意を固めていた。

闘いの続く中、眠り続けている緋村剣心。
だが、薫の口付けの後、その頬には薄らと赤みがさし、心拍数も上がり、徐々に覚醒へと近付いて行くのがわかる。
異性の口付けを受けて目覚めるとは、西洋の御伽噺に見られるような浪漫に満ちた体験。
だが、実際には、剣心の眠りを醒ましつつある最大の要因は、薫の唇ではなかろう。
その証拠に、もう一人気絶している富士原なえかもまた、剣心と同様に目覚めようとしているのだから。
辺りを覆う宮本武蔵の強い殺気と剣気が、眠れる剣士達の本能を刺激し、血の饗宴への参加を促しているのだ。
宮本武蔵という刺激によって掻き立てられる、闘いから半ば脱落していた剣士達の闘志と活力。
それは武蔵をも呑み込むのか、或いは、逆に呑み込まれて糧となるのだろうか。

【ほノ肆 商家/一日目/午後】

【宮本武蔵@史実】
【状態】健康
【装備】自作の木刀
【所持品】なし
【思考】最強を示す
一:無二斎に勝つ
二:一の太刀を己の物とし、老人(塚原卜伝)を倒す
【備考】※人別帖を見ていません。

坂本龍馬@史実】
【状態】健康
【装備】日本刀(銘柄不明、切先が欠けている) @史実
【所持品】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いで得る天下一に興味は無い
一:宮本武蔵から仲間を守る。
【備考】※登場時期は暗殺される数日前。

外薗綸花@Gift-ギフト-】
【状態】左側部頭部打撲・痣 
【装備】打刀、木刀
【所持品】支給品一式(食糧一食分消費)
【思考】基本:人は斬らない。でももし襲われたら……
一:宮本武蔵の襲撃を防ぐ。
二:過去の人物たちの生死の価値観にわずかな恐怖と迷い。
【備考】※登場時期は綸花ルートでナラカを倒した後。
※人物帖を確認し、基本的に本物と認識ました。

【志村新八@銀魂】
【状態】健康
【装備】木刀(少なくとも銀時のものではない)
【所持品】支給品一式
【思考】基本:銀時や土方、沖田達と合流し、ここから脱出する
一:命を捨ててでも失態の償いをする
【備考】※人別帖はすべては目を通していません
※主催の黒幕に天人が絡んでいるのではないか、と推測しています

【富士原なえか@仮面のメイドガイ】
【状態】足に打撲、両の掌に軽傷、睡眠中、罪悪感
【装備】なし
【所持品】支給品一式、「信」の霊珠
【思考】基本:戦う目的か大義が欲しい。

【緋村剣心@るろうに剣心】
【状態】全身に打撲裂傷、肩に重傷、気絶
【装備】なし
【所持品】なし
【思考】基本:この殺し合いを止め、東京へ帰る。
【備考】※京都編終了後からの参加です。

同じ頃、柳生十兵衛は、仲間達が重大な危機に曝されているとは知る由もなかった。
無論、島の状況を考えれば、安全な場所などある筈もなく、心の隅に危惧はある。
しかし、今の十兵衛には、彼等の事を意識する余裕などない。
その原因は、仲間と共に道祖神の下に潜り主催者の許へ向かう途中で立ち塞がった人物。
父の存在や御前試合という言葉から、今回の件に高位の者が加担している事は予測の内。
しかし、十兵衛の前に現れた相手については、全く予想の外。
確かに高位の人物ではあるが、それ以上に高徳の人であり、この御前試合のような狂気の沙汰に関わるとは思えない。
「何故……貴方がこのような所に居られる、大僧正!」
そう、十兵衛達の前に主催者の藩屏として現れたのは、黒衣の宰相・大僧正天海であった。

【???/道祖神からの抜け道/一日目/午後】

【柳生十兵衛@史実】
【状態】健康
【装備】太刀銘則重@史実
【所持品】支給品一式
【思考】基本:柳生宗矩を斬る
一:天海に事情を問い質す
二:父は自分の手で倒したい
【備考】※オボロを天竺人だと思っています。

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最終更新:2014年04月03日 22:26