キノウツン藩国 @ ウィキ

ロールクラン来訪

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匿名ユーザー

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猫の朝は早い。
嘘。ごめんなさい。昼まで寝てます。

/猫の一日/

高原家の庭は広い。というか、ここまでくると最早庭ではない気がする。
荒野のど真ん中にオアシスが出来てて、そこら一体全部自分の土地とか、
モンゴル人か何かかと思わなくもない。
モンゴルの広大な平原。所有者なんてない。
どこでもそこでも彼らの土地だ。移動して暮らす彼ら。
あ、高原定住してるじゃん。駄目だ。
高原がいない間に国の役人が「土地の所有権が」とかで来ていたようだが、
アララが殺して庭に埋めていた。恐ろしい。
あの時穴を掘っていた大型のI=D用シャベルは、今もその上に突き立っている。南無。
来世では、夫を尻に敷いている妻には逆らわないようにするといい。

しかし今の環境は、自身にとってはそれなりに良い。
自分のような飼い猫としては、広い方が気も楽だし、ゆっくり出来る。
何より五月蝿くないのが良い。それが一番大きな利点だ。
キノウツン中にいるメイドと来たら、猫を見かけると、飲食店なら追い払うし、
それ以外なら抱きついてくる。
時には撫でさせてやっても良いのだが、やはりゆっくり出来るのは良いことだ。
ふわわ、と欠伸をし、身を震わせると、周囲の木々がざわめいた。
それほどまでに、ここは静かだ。
「あー」
いや、静かだった。

数週間前から、高原の家から大きな声が聞こえてくるようになった。
丁度赤ん坊が生まれた辺りだ。
赤ん坊は良く泣く。五月蝿いくらいに泣く。何事かと思うくらいに泣く。
朝から晩まで泣くので、自分呼称で将軍と呼ぶことにした。
キノウツンには将軍はいないが、どうやら将軍という生き物は、
ぎゃーぎゃー騒ぐのがお好きらしい。
だから将軍。同属に、校長とか摂政とか宰相とか吏族とかいるらしいが、将軍。
自分でも結構気に入っているネーミングである。

赤ん坊が生まれてからの高原の顔は緩みっぱなしである。
家長の威厳とかどこに行ったのだろう。
まぁ、確かに赤ん坊が可愛いのはわかる。
高原にとってとても大事なものなのは分かるのだが。
……一応自分も飼い猫なのだから、もう少しくらい気にかけて欲しい。
具体的に言うとそろそろ体中汚れてきてるのである。
風呂は嫌いだが、綺麗になるのは嫌いではない。

そんなこんなで今日も普通に過ぎそうだ。
まったく、平和なものだ。
あー、鳥が飛んでいる。捕まえに行くべきか。猫だし。
よし、そこを動くなよ……あ、飛んでいった。
最近は獲物を取るのも失敗することが多い。
やはり年だから、動くときに何か物音を立てているのだろう。
年は取りたくないものだ。

ふと、遠くから何かがやって来る感覚を覚えた。耳をピンと立てて、音を聞こうとする。
……どうやら自分の耳はボケてしまったらしい。全身の毛を逆立てて、集中。
相手は既に、高原の家の、玄関の前にいた。
体中に、力を込める。全身を脈動する血流。
心臓のピストンで押し出された可燃物が駆け巡り、各所で爆燃しているような感覚。
飛び掛ろうかと考えた直後、高原が出てきた。
破顔。
あれー?と首をかしげる。どうやら、敵とかではなかったらしい。
……溜息一つ。
そのままその相手は、家の中へと入っていった。

何者か分からない相手にドアを開けるなんて、高原もまだまだ甘い。
もしも開けた途端に刺されていれば、下手をすれば死んでいる。
アララ程度の目を潜り抜ける敵は、普通にいるのだ。
どうやらまだまだ、自分が飼われていないと駄目らしい。
やれやれ。世話の焼けるやつである。

『目の前のスコップをちらりと見ると、オールドシルバーは再び眠りについた。』