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二刀流

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kinoutun

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二刀流

L:二刀流 = {
 t:名称 = 二刀流(技術)
 t:要点 = 剣,笑顔,両手
 t:周辺環境 = 大量の死体
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *二刀流の技術カテゴリ = 個人技術として扱う。
  *二刀流の効果  = 所持することで二つまでの片手白兵装備を持てる。白兵評価を-2する。
 }
 t:→次のアイドレス = 張り付いた笑顔(強制イベント),圧倒的虐殺(絶技),変則剣(アイテム),暗黒の目覚め(イベント)


圧倒的な虐殺




 死体がある。

  骸が転がっている。

 躯が横たわっている。

  屍が朽ちている。

 尸が臥している。


 死体はバラバラに引き裂かれていて、

  遺体はぐちゃぐちゃに潰されていて、

 遺骸は頭が破裂していて、

  死骸は圧倒的なまでに虐げ殺されている。


 あの顔は悲しみで泣いていて。

  その顔は恐怖に凍り付いていて、

 この顔は苦痛に歪んでいて、

  どの顔も絶望していた。


――暗転

死体の山


 死体の山に立つ中年男。微動だにしない。
 襤褸い着物と腰まで伸びた白髪は、血煙を浴びて斑に赤黒い。

 闇。

 夜明けが遠く、静寂が周囲を包む。
 鳥の声さえなく、ただ砂を風が冷やしている。

 男はなにも呟かない。
 落ちくぼんだ眼窩、焦点の定まらぬ目。
 呼吸は浅く、吐く息には障気が混じっていた。

――殺しても殺したりぬ

 なにもかも、つまらない煩わしい。

――いっそ、この刀で頸動脈を破き死んでしまいたい。

 血をぶちまけて、殺意に熱る躯を冷やし、この死体の山に紛れて、朽ちていきたい。糞尿と汗と血の臭いに塗れて、一つになって眠りたい。

 星明けに僅かに閃いた斬撃を、中年は気だるげに受け止めた。

「お前も俺と死ぬか?」

 現れた青年は、答えない。
 黒く塗られた刀を納めて剣には遠い間合いを取った。

「居合い、そうか――」
男は、踏みつけていた死体から、刀を抜いて、
「お前が、か...イアイド」

 刀二本を八の字に広げて、男は薄く笑う。

張り付いた笑顔


 山のように積まれた死体を目に、怒りを露わにする青年。

「莫迦野郎」
 舌打ち。瞳は怒りで燃えていた。
「力に溺れて――それでなにが出来るってんだ」

「溺れてはいない。ただ――刀の聲を聞いたのだ」
 殺人鬼特有の、張り付いたような笑み。
「殺し方を教えてやろうと」

「ムラマサの声か。」だがそれは、

 ムラマサ、それは戦いの果てに聞こえる、
刀を騙り語りかけてくるもの――
 数多の闘争が生み出した、殺しの神。
 人が人を殺すという、力の夢想。

「ムラマサ。その正体は幻なり」
青年は、唱える。語る。
「人は、逃げる。自らの技の力から、
 此は我にあらず、ムラマサの業なり、
 我は刀の思うがままに振るうのみ、と――」
とどのつまりそれは。
「とどのつまりそれは、妄想だ。知ってるだろう」
 死体の山の頂を睨み、青年は吐き捨てた。
「剣士なら。自分の力を他人のせいにすな。自分の過ちを刀に押しつけんな。自分の弱さに負けるんじゃねえ!」

薄く笑う中年。
「強いな、尊敬すら覚える」
死体を蹴り飛ばす。

「だが、それだけだ」

――二刀を構える、その笑みは張り付いたように不気味だった。


二刀流のムラマサ


二刀流――
 両手にそれぞれ刀を持つ剣術、戦法であり、有名どころでは二天一流の宮本武蔵だろうか。
 二天一流であれば、右手に大刀を持ち、左手に小刀を持ちそれぞれを攻撃防御に使い分ける。
 左手の小刀で敵の攻撃をさばき、生じた隙を右手の大刀で斬り込むのだ。

「二刀か――」

 男も、右に大刀、左に小刀。典型的な二刀流のそれだった。

 二刀剣技は、キノウツンでは珍しい。
 攻防一体のちまちました剣術が、性に合わないのだろう。
 概念は理解していても、目に見えて流行ると言うことはなかった。

「珍しい、けどさ」
 疾風とともに、左の刀を突き出すムラマサ。
「対策は――知っている」

 青年は鞘を引き刀を垂直に抜き上げ、上段から二本の刀を押さえ込む。
 一瞬の、早業だった。
 居合い膝と身体の折り畳み効果で抜き放たれた剣は、先に振り上げていた相手の斬撃よりも速い。
 見るものが見れば、小野派一刀流の立合抜刀「竜巻」に似ていると言うだろうか。

 二刀流の弱点は、本来両手で扱う刀の保持の難しさにある。
 ならば、二刀のコンビネーションに翻弄される前に、先制で相手の腕を傷つけて二刀持ちを困難にするのが最善である。

 刀の切っ先が、左手首を捉え――仮に、この攻撃が二刀で受け止められたとしても、突きで喉を刺す――斬りつける。

 両手に刀を持つ状態では対応できない、二段構えの技だったが、

「対策とはその程度か――」

 あがったのは、失望の声だった。
 中年は左手の刀をあっさりと放り出していた。
 地面に小刀が落ちたが、手首狙いの斬撃はそれで素通りしてしまった。
 残る右手の刀が横一文字に斬りつけてくる。
 意表を突かれ、バックステップで躱すと、中年は微笑みを崩さずに更に斬撃を繰り出す。
 青年はそれをなんとか受け止めた。
 しかし、その次の二本目の斬撃を躱すことができなかった。
 あの一瞬で、落ちた刀を蹴り上げ回収していたのだ。

 血が男の黒い袴に吸われて新しい染みを作る。

 息もつかさぬ二刀の連撃、躱しきれない。
 斬撃のたびに、青年の体は浅く切り裂かれ、血しぶきをまき散らす。
 一か八かで青年は転がって距離を取った。
 首筋一ミリを切っ先が通り抜けたが、なんとか間合いを取ることに成功する。

 ムラマサは笑みを張り付けたまま、その様子をぼんやりみている。

「――致命傷は避けたか。貴様、奇妙な動きをするな」

「お互い様 なんだ、今の二撃目。
全然見えねえ――
 二撃目だけじゃねえ。ときどき、ところどころ、いつの間にか俺の目の前に刀が現れてきやがる。どんなトリック使ってやがる」

 懐から手ぬぐいを引っ張り出して、止血する。

「見えてないのだ。達人でさえ、落ちる木の葉を躱すのは難しい」

「――なんだそりゃ」 師匠みたいだな、と呟く。

「"もののふの、八十に夜をかわせども、頬刺す紅葉の、止むることなし"」

「エロい詩だな、それヒント?」
 青年は、膝を落として再び剣を納めた。
「ま、いいけど」

 右手を柄の上でぶらぶらさせ、青年は真剣な顔つきになる。
 中年男の細い瞳が、更に細くなる。

 二刀のムラマサは、両手に持つ刀を頭上で交差させる。
 それが必殺の構えであろうことは、青年にも理解できた。

 よどんだ空気がよりいっそう濃密になっていく。
 二人の間で、殺気が混じりあって、固形化しそうなほどに張り詰める。

「なあ、なんで...殺人鬼なんかに。其の技と動作、俺にはあんたの心がムラマサに墜ちきってるようには見えねえ。何があった――」

「...さてな、もはや、覚えておらぬ。」
 嘯く男。
「覚えていたとしても、貴様に話すつもりはないが」

「...なら訊かねえよ」
 青年の目は、未だ怒っている。

「貴様は先ほど、こう言ったな。ムラマサの声は妄想だと。
――確かにそうだろう。幾千の戦闘経験が導く無意識の聲。
声とはつまり、侍の本能だ」
 本能だと呟くその言葉は、笑みに隠せないほどに重く沈んでいた。
「強くありたいのであれば、逆らう理由などあろうはずもない」

「違う。そんなもので強くなったなんて言わせねえ」
 ぼやく、青年。
「青臭いのは知ってるさ。けどな、だが、」

 二刀流のムラマサの背後を見つめて、頭を振る。
 叫ぶ。

「それでも、ムラマサなんて妄想だ。妄想なんだよ。
 妄想だと振り切って、受け止めちまえよ。
 そしたら、声なんて消えて無くなる。声なんて無くても、いつでも最高の剣技が出来る。
 そのときこそ、俺らはムラマサを超えて、真の強さをもぎ取るんだ!
そうだろ! 知ってるだろう!!」

 淀んだ空気が、動いた。

 先に動いたのは、ムラマサだった。
 裂帛の気合いを持って放たれた、神速の大刀。
 青年はそれを刀を抜かないまま、半身に逸れて避けた。

 そして、垂直に抜刀した刀の柄で、見えない二撃目、
――目には感じられぬほど"ゆっくりと近づいてくる小刀"を弾き上げた。



「まさか――」

「落ち葉よりも遅い剣か――」
 苦笑する。
「確かにこれは見えないな...」

 交錯。
 闇の静寂の中で、チンという納刀の音が、気味の悪いぐらいに響いた。

「――左腕を切った。これで、もう、あんたは次の一撃を受けられない」

「なんて奴だ。我が秘奥を、見抜く...か」

「...悪いが、別世界の雑学だがね。
人は、速い動きと遅い動きを同時に見ることは出来ない。
ってのは、"知ってる"。
 動体視力ってのは順応してない動きを認識できない。
って、前に、フジの雑学番組でやってたからな」
 と、理解できないことを言う。
「だから、八十に夜をかわせども、頬刺す紅葉ってあんたのヒントは、
――無数の矢を躱せても、その途中に舞い降りた落ち葉を払うことが出来ないって意味なんだろうと、そう言う生理現象に着目した"速い剣と遅い剣"を駆使する剣術なのだろうと、まあ、理解できた。
 そんでもって、そこまでわかれば、あとはどうとでも対応できる」

「わかって、即座に対応できたのは貴様だけだ。どうやった」

「最初の一撃を目を閉じる。ってのは、マンガじゃよくあるよな」
隠す必要もないのか、青年はいとも簡単に答えた。

「なんて...奴だ」

「あとは、目を開いてあくびの出るほど遅い刀を弾くだけ...それだけだ」
 全部答えて青年は右手をぶらぶらさせた。
「さて、次は俺の番だ」

 どっと、風が流れ込んだ。
 周囲から、血の臭いを流していく。

 風に流されて――どこからともなく、花びらが青年の背中へと舞い落ちる。

 それは、幻である。
 だが、確かに、この国に散った魂たちが、彼の背中を後押ししているかのように見えた。

 その光景に、中年男に張り付いていた、笑みが消えた。

「藩国の...守護者――」

「んな綺麗なもんじゃねえよ」
 苦笑を張り付けたまま、青年は刀を抜き放つ。


花明かり灯る暗闇の中で


「右城サコン。あんたを逮捕する――刑が執行されるまでは、自殺も許さない。
そのつもりでいろ」

「逮捕――だと?」

「あまり喋るな、それこそ死ぬぞ」
 全ての死に、祈りをささげながら注意する青年。

「――どうせ死刑になるのなら、今殺せば良いだろう」

 全身を袈裟斬りに切られて、立つことすらままならぬ中年男。
 刀は二本とも斜めに折れていた。
 逮捕と言ったが、場合によっては絶命する可能性は高かった。

「てやんでえ。さばくのは裁判官と魚屋の仕事で、剣士の仕事じゃねえよ」
 嘆息して、青年は黒い刀を鞘に収める。
「綺麗事じゃ、ダメなのは知っているさ。
だが、それでも俺が斬るものは俺が選ぶ。少なくとも、それが出来るときは」

「...なら、貴様はなにを斬るというのだ」

「この国の――」
 言いかけて、死にかけの男と、横たわる無数の死体を見て、やめた。
「いや、なんでもねえよ」

 風に舞う桜の花びらが、星明かりに淡く、光っていた。

















塔にて(その2)



「し、死ぬ...」

 いや、5回は死んだ。
 死なされて活かされて、また死んだ。

 戦いで死ぬ前に、ムラマサに殺される前に、剣術の修得で本当に死にそうだ。
 剣術師範――学生服を着たどう見ても学生の少年が、"刀に腰掛けて"嘆息した。

「全体的に、へっぽこではあるが。まあ"今日は"よしとしよう」

 怖い言葉が聞こえた。

「最後の二刀流は苦し紛れにしてはよかったな」

「ああ、あれっすか...」
 ダメ元でやってみたのだが、
「何度も、練習しましたからね、あれから」

「珍妙な奴だ。結果的に糧になっているようだが、居合いとは相性悪かったろうに」

「そうでしょうね。けど、無駄にしたくはないから――」

 ムラマサに関わるあらゆる背負って、その先を示す。
 そのためには、全部を受け止めなければならない。

 技も、そして罪も。

 この国の悲しみを斬るために。


全部(はる)
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