とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ ポニーテール 1



「今日は何事もなく…終わりそうだなぁ」
 補習も終わり、夕暮れに染まりつつある帰り道を歩く。
少年は、空を見上げてぽつりと呟いた――…幸せだと。

 家に帰ったら、お腹空いたんだよっと噛付かれそうな気がするけれど。
このまま何事もなく家に着けば、噛み付かれるぐらいの問題なんてどうってことない。

 夕空に浮かぶ雲、その中でも大きな雲がこちらにむかって微笑みかける。

 その雲が何故だか、インデックスに見えてきて…
少年――上条当麻は、早く帰ってやるかと、公園を通り抜ける。
公園を迂回するより通り抜ける方が、何かと近道で便利だからだ。
ただ一つ誤算があるとするなら、それは――――

「ちょっと!」
 少女はいつものように、いつもと言ったら語弊があるが、日課の一つになりつつある
――待ち伏せだ――待ち伏せといったら聞こえが悪い、悪いけれど他に言いようがない。しかしだ。
その行為を待ち伏せと思ってもいない、上条からすればそうなるだけであって、本人は全く無自覚である。

「ま、待ちなさいよ!…って、無視すんなやコラー!」
 自販機前を通り過ぎる上条。
無視かよと、少女は慌てて声を掛け、青白い光をバチバチィと放った。

「――………み、御坂か?」
 条件反射。呼ばれて振り返り、飛んできた電撃を打ち消してみれば、
そこにいたのは、ちょっぴり眉を顰めてこちらを睨む少女――御坂美琴であった。

 ――…気付かなかった――

 普段なら、気付いてむしろ気付かぬフリして通り過ぎる場面だ。
それが一体どうして…上条は気付かなかっただけでなく、むしろ不覚にも、そう、『不覚』にもだ。

「そうよ、っつーかなんで疑問系?アンタ、私を妹か何かと勘違いしてないでしょうね?」

 ――ときめいてしまった――

「はぁっ?!いや…そうじゃなくてだな…」
 いつもと違って見えるのは、その髪型の所為だろうか。
こちらに向ってツカツカと歩み寄る美琴に、上条はドギマギしてしまって、思わず後ずさる始末。

「ちょっ、どうして逃げんのよ!」
 近づけば、距離をとる上条の不可解な行動に、美琴はパチリと火花を散らし始める。
「ま、待て待てっ!…上条さんは今、混乱しているのですよ!」
「何をよ?それって私が妹かどうかってこと?…ってか図星?…あ、やっぱり図星か、そうよね?」
 いよいよ放たれそうになる電撃を間近にして、上条は慌てて声を上げた。
「待て、違う…その!か、髪型だっ!」
「へ?…」
 上条の放った言葉は、電撃を止めるだけの効力があった。
「かみ、…がた?」
 勢いを殺がれた美琴は、言葉の意味を理解しようと口の中で転がす。さっぱり分からない。 
「どういうこと?」
 全然意味分かんないんですけど、と美琴は上条に尋ねた。
「その…お前…今日、髪型違うだろ…だから気付かなかったというか…すまん、」
 上条は、ばつが悪そうに告げる。
「ほぉ…普段からアンタって抜けてるっていうか…アンタって奴は、…アンタの目は節穴かー!」
 髪型が変わっただけで、分からなくなるもんなの?と美琴は拳を震わせ、二度目の電撃を放つ。
「お、おい!…人の話は最後まで聞けって!」
 それを難なく打ち消しながら、上条は抗議した。
「いいわよ、遺言ぐらい聞いても…」
「なんでそうなるー!…あのな、上条さんは…不覚にもときめいてしまったんですよ!」
 コンチクショーと、叫びながら上条は地面にひざをついて、がくりとうな垂れた。
「はっ?ときめくって、何にに?それ遺言…なの?」
「……その髪型、は、反則だろ…」
 驚かしやがって、どうしてくれると、少々頬を染めて上条は正直に話した。
「え?…え、えっと、つまりそれって…」
 ようやっと、上条の言わんとすることを理解した美琴。
少し伸びてきたし、暑いから結んでいただけなのに、そこまでインパクトがあるとは思わなかった。
「…に、似合う?この髪型…?」
 こういうのが好みなのかと、ここはしっかりと、
いや、ちゃっかりと情報収集。美琴は上条に笑顔を向ける。
「…っ!…あぁ、に、似合う…っつーか可愛いと思う、…ぞ」
 さっきから心臓に悪い事ばかりされてる気がする。
――やばい、中学生だぞ、髪型一つでこんな変わるもんなのか?!…――
上条は、今日は一体どうしてしまったんだと、高鳴る鼓動を抑えるのに必死だった。
「か、可愛い…、そ、そっか、あ、ありがと…」
「………、」

 えへへ、と頬を染めてはにかむ美琴に、それも反則だと上条が思ったのは言うまでも無い。

(終)


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