とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part01

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だれでも歓迎! 編集


「――――……っ」

ピッピッと私を吹聴するかのようにケータイの音が鳴る。
アイツの電話番号を入れるだけでこんなに緊張するなんて…ったく。
押し終えて、番号の誤りがないのを確認、何度も確認する。
…本当はこの次を迎えたくないだけなんだけど…って分かってて動けない私ってどうなのよ…。

「ああもう、レベル5のこの私がこんなのに困惑させられるとは…」

思い切ってケータイをベッドに放り投げ、ベッドに仰向けに倒れる。
倒れた拍子に背後にある雑誌を潰してしまい、くしゃっと音がした。
………やっぱり投げたケータイを拾って、番号表示のままなのを見る。

「…あの超鈍感が分かってくれれば……早いのに…」

…とはいいつつ、その超鈍感に惹かれてるのも、分かってる。
自分で動かないと無理なのも承知だ、だから電話したい、明日、24日を、共に。
今、部屋には黒子もいないから電話するに絶好の機会なのに…うう。
視界の端できらりと光るものが見えた。普段からレールガンを放つ為のコインだ。
よっ、と言いつつ起き上がり、コインを摘んでひらひらと表裏両方を自分に見せる。

「…表が出たら、電話。裏が出れば……」

自分でも後味悪く発言して、コインを弾き、それは空中で回転しながら私の手の甲に落ち、もう片方の手で覆う。
裏ならどうしよう。電話…しない、のかな。
すぅ、はぁ、と大きく深呼吸をして、被せた手を退ける。
――――表でピエロが笑っていた。


「…ええいもうっ!当たって砕けろ!」

目を瞑って、パワーボタンを押しかける指を2つ左に移動させて…押した。
耳に当てることなく、画面を睨みつけ、『発信中』という点滅する文字をただただ見ていた。

そして。

〔―――ああ、はいもしもし。上条ですけど〕

出た。
素早く耳に受信口を当てる。
けど、声が出ない。

「…んだ? あーっと…なんだ、ビリビリじゃねぇか」

どうやら向こうは知らずに出たらしい。

「だ、誰がビリビリよっ!御坂美琴だって言ってんでしょ!」

思わず出た台詞が突っ込みだった。…なんか情けない。

〔喋るトコで大声出すな。分かったよ御坂。んで、何の用だ?〕
「えっ……あー…その、ね……」

どうしよ、やっぱり声が出ない。何で、出てよ、声。
"明日、デー…じゃなくて、一緒に街を歩かない?"だ。
『デート』は恥ずかしい。これじゃアイツには届かないのも分かってるけど…私にもこれが限界。

「あ、の…あ、あし……あした…」

お願い、お願いだから、出て、出てっ!

〔明日? そうだ、御坂。お前何が欲しい?〕

―――は?


「え、今何て?」
〔いやだからさ。いちおー日頃お世話になってるし、クリスマスイヴだろ?
  慣習は則ってなんぼだし、女の子が何欲しいか分かんないし…
  土御門が語るにそういうのは聞くモンじゃないとか言ってんだけど、やっぱり失礼なモン送りたくないしさ〕
「…で、今聞いてるって?」
〔そうそう。…あ、なんなら明日暇か? ってお前は相手とかいるのか、いたらスマン〕
「い、いいいいないわよっ!明日?明日ねっ、え、ええっと…ひ、暇だけど!」

ろ、ろれつが回らんっ!誰か通訳と水!あと冷静さ分けてっ!

〔お、そうか。んじゃー…明日何時にするかな。明日の朝も補習なんだよなー…ったく〕
「あ、え、ええっとっ!あのさっ!」
〔ん?どうした?〕

ちょ、きゅ、急に口割り込ませるな私っ!ばかっ!逃げられないじゃない!

「そ、その、ね?いい?」
〔いや、別に構わないけど、何がだよ〕
「あ、ああああの…シスターの、子は…一緒、なの…?」
〔ん、インデックスか?いや、アイツは寒くてあんまり外でたくないらしいから
   一人のつもりなんだが、呼んだ方がいいか?〕
「い、いや、呼ばなくていいっ!!」

…思わず強く叫んでしまった…、私サイテーかも…。

〔お、おう…そうか。分かった、んで、お前は何時頃が都合良い?〕

黒子はクリスマスイヴは特に変な輩がいるから、イヴだけは仕事するって言ってるし、正直時間は空いてる。

「………夜、はダメ?」
〔夜、っていうと7時くらいか?そこら辺しか空いてないのか?〕
「え、えっと…まぁ、うん。空いてないの」

嘘。嘘だけど。精一杯の努力、にしたい。


〔んー…お前がそれしか空いてないってなら仕方ないな。分かった。
  それじゃ、6時半にいつもの公園の前で。そこならお互い大した距離じゃないだろ?〕
「うっ、うん…ろ、6時半にいつもの公園ね。分かったわっ」
〔悪いな、御坂。っと、そういえば最初お前が何か言おうとしてたんだっけ、何だった?〕

ちょっ、折角アンタから誘った形なのに!流すか忘れなさいよ!

「え、あ、い、いや何でもないわよ!クリスマスの予定でも聞いてやろうと思っただけで!」
〔って、お前俺をバカにするつもりだったのかよ。生憎たった今イヴは埋めたけど、クリスマスは何もないですよっと〕

!! く、クリスマスもフリー!?
また深呼吸する。どうしよ、脈拍が凄い。手を顔に当てると、凄く手が冷たく感じる。
後ろの雑誌を持って来て、凝視する。…『イルミネーションの奇跡』と書かれた紙面。

「あ、あのさっ!い、一緒にご飯食べない…かな?」

…今更だけど焦りが落ち着いてきてたのに気付いた。……戻れないからかな。

〔ん、ご飯って夜か?俺はいっこーに構わないけど、そんなに金ないぜ?〕
「そ、そんなの私が奢って、あげるからさっ」
〔……いや、流石にお前に奢らせるのはまずいだろ。…安いトコでいいか?〕
「え、えと…う、うんっ!」
〔ああ、流石にファストフードとかじゃないからな。とは言っても定食屋だけど…〕
「わ、私はいいわよ!」
〔そっか。悪いな、んじゃ明日頼むわ〕


ま、待って!まだこっちが……。

〔こっち?〕
「え?」
〔いや、今『待って、まだこっちが』とか…〕

ちょっ、こ、声出してたっ!?

「いや、なんでも……… なくはない、わ…」
〔えと、んじゃ何だ?〕
「その、ね…ご、ご飯食べてから……イルミ、ネーション…とか、どうかな…」

い、言ったーっ!
私は無意識に拳を握り締めた。

〔イルミネーション?そういや近くでやってるんだっけか。
   ま、こっちも付き合って貰ってんだから、俺で良ければそっちにつき合わせて貰いますよ〕
「ほ、ホント!?」
〔ああ、でも俺と二人きりなんかでいいのか?〕

いいに決まってんでしょっ!
心で思いながら、口がニヤけてしまう。

「あ、アンタだから誘ったのよ!」
〔そ、そうなのか?それはとても光栄といいますか…〕
「だから…その、こ、混んでるかも知れないからっ!遅くなるかも知れないわよ!?」
〔あー別に、そこら辺はお前のトコの門限とか気にしないなら別にいいんだが…
   おっと、バスが来た。そんじゃ、明日6時半な〕
「あ、うんっ!あ、明日ね!」

向こうの返事を待たずに、思い切ってパワーボタンを強く押す。
思ったより長い時間喋ってない事が画面に移され、どんだけ緊張してたのか思い知らされた。

「…はぁ……」

向こうはデートとは思ってないだろうけど…それでも、私は、一緒にいられる。
ケータイを枕元に放り投げ、雑誌も閉じて、さっきまでのやり取りを思い返して私は布団にうずくまった。


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