とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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笑顔を求めて



今日は3月12日、すでに中学を卒業した御坂美琴は有名新学校に受験にきていた
美琴の恋人となった上条は高校2年生、4月からは無事3年になれそうだ。

この高校は超が何個もつくほどの難関高校だが美琴にとって受かることはたやすい。
だが自分の席につきテストの開始を待つ美琴はなんともいえない表情をしている。
原因は簡単なこと。
本当は上条と同じ高校に行きたかったのだ
しかし学校や親からはもちろん、上条にまで反対されてしまった。
それでしかたなくこの高校を受験することにしたのだ。
しかたなく受けるレベルの高校ではないのだが…

(なんでよ…当麻のばか…)

上条と同じ高校に入ってもたった1年しか一緒にはいられない
それでも、1年だけでもいいから上条と一緒に学校生活を送りたかった。
その理由を上条に告げてもかたくなに断られたのだから不機嫌になるのは当たり前だ。
だが美琴の機嫌が悪いのは受験のことだけではない。
それは最近上条の様子がおかしいのだ。
明らかに何かを隠している。
受験だから、という理由でなかなか会ってくれないし、上条の寮に行こうとしても断られることも多かった。
また2週間ほど前、上条の寮へ行った時に上条の携帯に電話がかかってきた。
なにやらとても嬉しそうに話していたので美琴は電話が終わったあとに誰からの電話か尋ねた。
上条は「学校の友達だ」と言っていたがそのときの嬉しそうな表情が何かひっかかった。

1時間目のテストが始まったあともいろいろ思い悩んでいたが問題は完璧に解いていく。
50分間のテストだったが20分も余った。
流石は名門常盤台生だ。

(もうあとは適当にやろうかな……)

1時間目が終わったあと美琴はそんなことを考えていた。
残りの教科でわざと低い点をとれば落ちることは確実だ。
落ちれば上条の通う高校に行けるかもしれない。
そんな考えが美琴の頭をよぎったときマナーモードにしてあった携帯が震えた。
そこに表示されていた名前は上条。

(当麻から!?)

超電磁砲もビックリのスピードで携帯を開けメールを見る。
メールを見た美琴の表情は先ほどと打って変わって穏やかになった。

『そろそろ1時間目が終わったところか?美琴なら絶対に受かる。ガンバれよ!!』

たったこれだけのメールだったが美琴には十分だった。
先ほどまでの不安やわざと落ちようなどという考えはすっかり消えていた。

(そうだよね…当麻は私のことを考えて反対してくれたんだもん…頑張らなきゃ!!)

こうして残りの教科はリラックスして受けることができた。
休み時間ごとに送られてくる上条からのメールはより一層美琴を元気づけたのだ。

「あ~疲れた!でも当麻のおかげで頑張れたわね…そうだ何かお礼しなきゃ!」

そう思いついたのは4時間目の休み時間。
美琴は早速上条に『受験終わったあと会えない?』、とメールする。
上条に話したいこともたくさんあるしとりあえず会おうと考えたわけである。

その後の5時間目のテストも難なく解答し、美琴は受験を終えた。
現在は16時を回っておりあたりも薄暗くなり始めている。

「よし完璧!これで受からないはずがないわ。さて、当麻からのメールは…あれ?」

なんて返信がきているだろうと思い携帯を見てみるがこの1時間の間に受信したメールは
黒子22通、美鈴1通だけで肝心の上条からのメールはなかった。
いつもならすぐに返事をくれるはずだが1時間以上も時間が経っているのになんの返事もないことに不思議に思いとりあえず電話をかける。
しかし電話にも全くでないので美琴は徐々に不安になってきた。
もしかしてまた何か事件に巻き込まれたのではないか。
そう考えた美琴は急いでバスに乗り込み上条の寮へむかった。
寮にいるとは限らないが何もしないわけにはいかないのでとりあえず行ってみようと考えたわけだ。

「当麻…無事でいてよね……」

上条の寮の最寄り駅で降り、そこから猛スピードで走ろうとしたとき美琴の携帯が鳴った。
この音は上条からのメール、急いで携帯を開けメールを見る。

『悪い気づかなかった!なんだか電話が通じないからメールで済ます。
 俺も会いたいから5時にいつもの公園に来てくれ。大事な話がある。』

それを読んだ美琴は事件ではなかったと安心し胸をなでおろした。

「あ~よかったなんともなくて。それにしても大事な話ってなんだろな…。」

公園に着くまでの間は“大事な話”について考えながら歩いていく。、
バス停から公園までは近かったのですぐに到着した。
まだ5時にはなっておらず見渡す限り上条の姿も確認できない。

「なんだ…まだ来てないのか…」

残念そうにつぶやくと側にある電灯にもたれる。
そして“大事な話”について再び考え始める。
これだけ心配させておいて課題が終わらないので手伝ってくださいとか言いだしたら
無意識のうちに超電磁砲を打ってしまいそうだ。

(いったいなんの話なのかしらね……まさかプロポーズとか!?…ないない!…でももしそうだったら…)

などとありったけ幸福なことを妄想し顔を赤くする。
そんなことを考えドキドキしながら待っていると待ち人の姿が見えた。
向こうはまだ気づいてないらしくキョロキョロと辺りを見渡している。

「ま、この位置じゃ見えないか。さて、と!大事な話とやらを聞かせてもらお―――」

そこまで言って言葉が途切れ、上条がいる方向へ歩き出したはずの足も止まる。
なぜならば上条の隣には見知らぬ女性がいたからだ。
別にただいるだけなら何も問題はないのだがやけに親しそうだ。
それに何を話しているかはわからないが楽しそうに会話をしている。

(あ、あんなのただの知り合いに決まってるじゃない!早く当麻の見えるところへ行かないと…)

そう頭では考えられるが最近の上条の行動に対する不安感からか体は上条の方向へ動いてくれない。
しかたがないのでとりあえず物陰に隠れ、2人がこっちへ来るのを待つことにした。
上条は辺りを見回しながら美琴が隠れている場所のすぐ側までやってきた。

(とりあえず2人の会話を聞こう!それから出て行っても遅くはないし…。)

そういうわけで美琴は2人の会話を聞くことにした。
だが盗聴系の能力者でもなくそういった機械ももちろん美琴は持ち合わせていないわけで会話はところどころしか聞こえない。

(う~ん…うまく聞こえないな…私がいないみたいなことを話してるみたいなんだけど…)

それでも聞き続けると話題が変わりいくつかの単語が聞こえた。
その単語というのが、別れる、飽きた、めんどくさい、などといったものだった。

(うそ―――)

それを聞いた美琴は絶句する。

(うそ、うそ、うそ、よね、当麻…そんなわけ…)

「まあアイツも高校生になったし調度いいかと思いましてね。」

上条達は美琴の近くまできたためその言葉だけははっきりと聞こえた。
大事な話とは別れ話だった、それがわかった瞬間美琴の目の前は真っ暗になった。
この状況で自分の姿を見られるわけにはいかない。
そう考えると美琴は常盤台の寮へと走っていった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


寮に帰ってくると美琴はすぐにベッドに倒れこんだ。
ここまで全力で走ってきたのだから疲れているのは当たり前だ。
だがベッドに倒れこんだ原因はそれだけではない。
上条と別れる、その闇に支配された美琴はうつぶせのまま泣き始める。

「う…うう…なんで…当麻…なんでよ…ヒック…どうして……やだ、やだよ…うう…」

汗をかいていることや足がつりかけていることなどもはやどうでもいい。
なぜ別れなければならないのか、美琴の頭の中はその疑問で埋め尽くされた。
するとふいに携帯電話が鳴る。
この着信音は上条、それも電話のようだ。
今の美琴が電話にでられるはずもなく1分ほど鳴り続いたあとその音は消えた。
すると今度は別の着信音、これは上条のメールの音だ。
美琴は携帯を手に取りおそるおそるメールを見てみる。

『もう5時半だけどどうした?何かあったのか?連絡をくれ。』

このメールが別れ話ではないことに少しほっとする。
しかしもう今日会うわけにはいかない。
この状態で会ってもろくに話しなどできないだろう。
だが連絡しないわけにもいかないのでメールを送る。

『心配かけてごめんね。今日は入試のことを学校に報告しないといけないから行けそうにないわ。
 こっちから誘ったのに本当にごめんね。』

真っ赤な嘘だがこの際しかたない。
あの会話を聞いていて走って寮に戻ったなどと本当のことを話すわけにもいかない。
震える手でなんとか送信を完了する。
するとすぐに返信がきた。
美琴は先ほどと同じくおそるおそるメールを見る。

『そうか…残念だな。まあ何かあったのかと思ってたから無事でよかったよ。また明日にでも連絡する。受験お疲れ。』

このメールを見て美琴は少し冷静になった。
このメールを見る限り別れ話をしようという感じではなく、ただ純粋に心配してくれているだけだ。
美琴は体を起こしベッドに座り公園での出来事を思い出す。
先ほどは上条の言葉を聞き気が動転してしまい悪い方向にばかり思考が進んでいた。
しかし冷静になってからあの公園での出来事を考えるとまだ別れ話だと決まったわけではないと思うようになった。

だいたい別れるからといってあの上条が“飽きた”や“めんどくさい”などと他人に漏らすだろうか。
冷静に考えればそれはありえない。
それにはっきり聞こえた上条の言葉では『美琴』ではなく『アイツ』と言っていた。
ならば先ほどのことは自分の勘違いで本当は別の話ではないか、と美琴は考えた。

しかしすべての不安が消えたわけではない。
別れ話でなくても最近上条が自分に何かを隠していることは明らかだ。
今日上条の隣にいた女性やその前の電話など不審なところが多すぎる。
…まあ女性関連についてはそれ以前、ずっと前からいろいろと問題があるのだが。

気分は落ち着いたため美琴は上条に電話をかけようとする。
“大事な話”や最近のことについていろいろと聞くためだ。
だがあとボタン1つで電話がかかる、というところで美琴の指が止まる。
上条があのようなことを言うなどありえない、
だがもし上条に心境の変化があってそれがありえたとしたら?
電話で理由もわからないまま一方的に別れ話をされたら?
そしてそのまま上条と会えなくなったら?
美琴はまた悪い方向へと考えてしまった。
この指があと少し下に動くだけですべてがわかるのに、美琴には電話をかけることができなかった。
結局この後美琴は不安のため上条に電話もメールもしなかった。

(明日会えば…すべてわかる……)

こうして美琴は再度気持ちを落ち着かせる。
もうすぐ帰ってくる黒子に今の心境を悟られないためにも。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


翌朝目を覚ますとなくなりはしていないものの昨日ほどの不安はなかった。
この日は休日、まあ卒業した美琴にとって3月はすべて休みということになるのだが。
部屋に黒子の姿が見えないのは風紀委員の仕事へ行ったからのようだ。
顔を洗い着替えをしてから携帯を見ると上条からメールがきていた。
送られてきた時間は今から1時間前。
その内容は

『悪いけど急に1日中補習があることになって今日は会えない。また夜に電話かメールするよ。』

上条に会えないとわかると残念だと思った反面少し安心した。
安心したというのは別れ話をされるのではないかという不安がまだ完全には消えていないからだ。

美琴は上条と会う予定がなくなったので朝食を摂った後、引越しの準備をすることにした。
3月の終わりには新入生が寮に入ってくる。
それまでに卒業生は退寮し新しい下宿先を見つけなければならないが
下宿先については美琴は受かった高校の寮に入る予定なのでなんの問題もない。
だが本当は寮などではなく上条と一緒に住みたかった。
実際美琴は上条に高校生になったら一緒に住みたいと言ったことがある。
上条の寮は男子寮なのでもちろんそこに住むわけにはいかない。
だから他に部屋を借りて住みその費用は私が負担するから、などと説得を試みた。
しかし上条からはお前にお金を払わせるわけにはいかない、とあっさり断られていた。

数時間後、片付けを終えベッドへ倒れこむ。
片付けといってもあと数日はここにいるためすべて片付けてしまうわけではない。
今日行ったのは不要なものの処分と簡単な荷造りだ。

「あらかた片付いたわね……立ち読みでもしてこよっかな。」

片づけを終えた美琴は寮にいても暇なので立ち読みをするためコンビニに行くことにした。
だが今日は運が悪くいつものコンビニに読みたい雑誌がなかった。


「あーもう!なんでないのよ…」

愚痴を言いながら少し遠めのコンビニに到着し目当ての雑誌があったため早速立ち読みを開始。
こうしている間だけは不安から逃れることができた。

立ち読みを始めて20分、読みたいものはすべて読み終わった。
移動時間と合わせて1時間ほど時間が経っておりもう昼時であるため昼食を摂るため移動しようとする。

「さてと…次はファミレスにでも……え?」

美琴がコンビニの中から見たもの、それは補習があるといって学校に行っているはずの上条だった。
時刻は12時を少し回ったところ、補習ならまだやっているはずだ。
昼食を食べに来たとしても上条の学校からは離れすぎている。

(なんで…ここに?急に補習がなくなったとか?…いやそれなら連絡をくれるはず…)

不振に思った美琴は上条の後をつけることにした。
話しかけることも考えたが昨日のことと朝のメールのこともあり話しかけずらかった。
上条は全く美琴に気づいていない。

(何を隠してるのかは知らないけど絶対に暴いてやるんだから!)

こうして尾行を始めて30分、すでに美琴のイライラはMAXに近くなっていた。
それもそのはず、この30分の間に上条はフラグを立てまくっていたからだ。
まさに歩くフラグメイカーである。

そこからさらに30分が経過。
フラグを立てまくる以外には特に何も変わったことはなかった。
強いていうならば上条の不幸さが改めてわかったくらいだ。
尾行を始めて1時間近く経ったのにただ第7学区を歩き回るだけの上条。
何件か店に入っていったがそれは食料品の安さを調べているだけで事意外本当に何も起こらない。

(はぁ…何もなさそうだし帰ろうかな…それともここで声をかけようかな……)

あまりの何もなさにいい加減飽きてきた美琴は悩み始めた。
帰るか、声をかけるか、美琴が迷っているときについに上条が動いた。
上条はポケットから取り出した携帯を見てそれに従い歩いていく。
美琴は先ほどまで帰るか、話しかけるかなどと考えていたがもはやそんなことはどうでもよくなっていた。
上条に気づかれないように今まで以上に慎重につけていく。
美琴は自分の鼓動が少し早くなるのを感じた。
するとたどり着いたのはそこそこ大きなマンション。
上条はそのマンションに入っていった。

(まずい!エレベーターを使われたら見失う!)

そう思った美琴は何か策を練ろうとしたが必要なかった。
なぜかエレベーターがこない。
故障中でもないのにだ。
上条はただ一言「不幸だ…」と言うと階段を上っていった。
美琴はそれを見てどう反応していいか困った。

(初めて当麻が不幸でよかったと思っちゃったわ…ごめんね当麻…)

などと心の中で一応謝る。
そんなこんなで目的の階らしい5階に到着。
上条がインターホンを押して誰かが出てくるのを待っているのを美琴は隠れて見ていた。
鼓動は先ほどより早くなっており冷や汗がにじむ。
嫌な予感がする。
美琴はその予感が当たってほしくないと願った。
しかしその願いは叶ってはくれなかった。
出てきたのは昨日の若い女性。
美琴は目の前の現実を信じたくはなかったがその光景は変わらない。
さらに聞こえてきた会話が追い討ちをかける。

『あら、遅かったわね。』
『すいません、まだこの辺の道よくわからなくて……』
『ところで本当に彼女さんに内緒でこんなことしていいの?』
『本当は昨日言う予定だったんですけどね、ここまできたら内緒にしとこうと思いまして。』
『そうなんだ。まあ私が口出しすることじゃないわね。さ、早く上がって。』

そうして上条はその部屋に入っていった。
昨日と違いこの会話ははっきりと聞こえた。
そして美琴は静かにその場を去った。
昨日のように走るのではなく、泣くこともなく、ゆっくりとマンションをあとにした。

美琴は気がつけば常盤台の寮に戻ってきていた。
どうやって帰ってきたかなど覚えていない。
無意識のうちに帰ってきたようだ。

今日の出来事はあまりにもショックが強すぎた。
昨日をはるかに上回る絶望感。
顔は真っ青で全身の震えが止まらない。
昨日はまだ自分の勘違い、ということも十分ありえた。
しかし今日は違う。
上条は自分を捨てた、もう別の女のところへいってしまった。
それがはっきりとわかった、わかってしまった。

ここで今朝の上条のメールを思い出した。
夜には電話かメールをすると書いてあったはずがそのときに別れ話をされるかもしれない。
上条はあの女との会話で内緒にしておくと言っていたが本当に内緒にするとは限らない。
まだ別れたくない、その一心から美琴はポケットから携帯を取り出し電源を切った。


こうして美琴は上条との連絡を絶った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


それから3日後の16日合格発表の日の朝、なんともいえない疲労感と喪失感に見舞われながら美琴は目を覚ました。
上条に捨てられたショックで寝込みこの4日間は1度も部屋から出ていない。
黒子や寮監は何があったのかと心配してくれたが体調が悪いと言ってごまかしていた。
本当に体調は悪かったがその原因を言うわけにもいかないし、もし言えば黒子は上条に危害を加えるからだ。
たとえ上条が自分を捨てたとしても上条が傷つくのは絶対に嫌だった。

あれから数日間いろいろなことを考えた。
あのときの電話相手はマンションの女性だったのか。
最近付き合いが悪かったのはあの女性と会うためだったのか。
受験を頑張れとメールしてくれたのは同じ学校に入らせず自分を遠ざけるためだったのだろうか。
悪い方向に思考が進むことが多かった。

しかし1番多く考えたことは上条との楽しかった日々だった。
学校が終わると毎日のようにデートし、土日はいろいろなところへ遊びに行った。
遊園地や映画館、ゲームセンター、水族館にプール、劇場や旅行にも行った。
もうあの楽しかった日々は戻ってこない。
最終的にはそう考えてしまい毛布に包まって泣く、そんな繰り返しだった。

この日もずっと寮にいたかったが合格発表に行かないわけにはいかない。
風邪は治っておりいるが重い足取りで受験した高校に向かう。
結果は

「合格……か。」

周りでは受かって騒いでいる子や落ちて落ち込んでいる子がいる。
だが美琴はそのどちらでもなかった。
受かって落ち込んでいるのだ。
理由はもちろん上条の存在。

「受けてる時は楽しみだったんだけどな…4月からの生活…」

頼もしい存在であった上条はもう自分のもとにはいてくれない。
だが受かったことで逆に踏ん切りがついた。

上条に会おう。
会ってすべてを終わらせてこよう。
そうして4月からの新しい生活をむかえよう。
そう決意した。
そして美琴は受付でいくつかの書類をもらうとその学校を後にした。
いや正確には後にしようとした。

「よ、久しぶりだな。その書類を見る限り受かったみたいだな。」

その声の主は上条、いくら会おうと決意したといえどこれは早すぎる。
ついつい書類を落っことしそうになる。
美琴は会っていろいろな話がしたかったが何もでてこなかった。
でてきたのは単純な質問だけだった。

「な…んで…ここに…?」

「なんでって彼女の合格発表の日だぞ?しばらく連絡つかなくて心配だったしここに来るのも当たり前だろ?。」

上条が来たことがありえない、という表情をしている美琴を見て上条はため息をつく。

「はぁ…なんて表情してんだよ…そんなに俺が来たことが嫌だったか?」

「い、嫌なんかじゃない!でも…」

思わず美琴は叫んだ。
周りの視線が2人に集まる。

「でも…なんだよ。まあいいや、俺も話したいことあるしちょっと移動しようぜ。」

話したいこと、その言葉を聞いて美琴は上条から離れたくなった。
しかしこれ以上上条に迷惑をかけるわけにもいかない。
歩き出した上条にとりあえずついていくことにした。


◇ ◇ ◇


歩くこと数分、やってきたのはあのマンションだった。
この時点で美琴は泣きそうになった。
ひょっとしたらもう涙目になっているかもしれない。
だが前を歩く上条はそんなことに気づかない。

(今までなら絶対隣を歩いてくれたのに…)

明らかに今日の上条は歩くペースが速かった。
だから何回追いついても美琴は上条から数歩遅れてしまう。
また手をつなごうにも上条は両手に荷物を持っていてつなぐことができなかった。
上条はマンションのエレベーターの手前まで来てようやく歩くのが速かったことに気づいたようだ。

「悪い!少しでも早くここに来たくてさ。」

「別に…それだけ大事なことだもんね…」

上条の言葉に美琴は自分の中にどす黒い感情が生まれたのがわかった。
自分から上条を奪い取ったあの女が憎い。
そしてその感情は1分でも、1秒でも時間が経てばどんどん膨れ上がっていくこともわかった。

(あの女に会ったら速攻で電撃をくらわせてやる)

部屋に着くまで上条が何か話しているようだったが美琴はそれを一切聞いていなかった。
電撃をくらわせるなどと物騒なことを考えているうちにあの部屋の前にたどり着いた。
インターホンを鳴らすのかと思いきや上条は鍵を取り出すとそれを使いドアを開ける。
この時点で美琴はかなり帯電していた。
しかし上条が右手で美琴の腕をつかんだため帯電していた電気は消える。

「さ、入ろうぜ。」

「え?ちょ、ちょっと!!」

上条はドアを開けると美琴の腕をつかみ強引に引っ張って中へと入る。
美琴はそれを振り払おうとしたが玄関を上がったところで上条のほうから離した。
再び帯電しかけたがそこで美琴はあることに気づく。

(あの女は…いない…?)

中に人の気配はなかった。
美琴の能力でも誰もいないということがわかる。
そして通路の先の部屋に入ってみても女の人が生活しているような様子はなかった。
それ以前に置いてある物がやけに少ない。
まるで引越ししたてのようだ。
そこでふと上条のほうを見ると顔を少し赤くし何か言いたそうだった。

「まあ言いたいことはいろいろあるけどまずは美琴、合格おめでとう!お前なら絶対受かると思ってたよ。」

「あ、ありがと……で、この部屋なんなの?」

「ああ今から説明する。と、その前にこれ受け取ってくれ。ちょっと遅くなったけどバレンタインのお返しだ。」

そういって手渡されたのは小さな四角い箱。
きれいに包装されておりどう見てもどこかの店で買ってきたものだ。

「(今年は手作りじゃないんだ…)わざわざ悪いわね。」

お返しをもらえたことはもちろん嬉しい。
だが去年は手作りだったことを考えるとやはり自分はこの程度の存在なのかと思ってしまう。
まあずっと手に持っているわけにもいかないのでその箱を持っていたカバンにしまおうとすると

「あ、あのさ…それ今開けてみてくれないか?」

美琴はなぜ今?と思ったが別に断る理由などないので開けることにした。
結構頑丈な包装ほどくと出てきたのは何やら立派な箱。

(お菓子にしてはえらい豪華な箱ね―――え!?これは…)

美琴の予想に反しその中身は――――――――――――指輪
美琴が驚きのあまり固まっていると指輪を上条が手に取る。
そして無言のままその指輪を美琴の薬指にはめる。
上条は美琴の指のサイズなど知っているはずがないのだがなぜかぴったりだった。
さらによく見てみるとその指輪には

『KAMIJOU TOUMA & KAMIJOU MIKOTO 』

と刻印があった。
さすがは学園都市製、小さな指輪だが文字ははっきりと見えるよう刻印されている。

「それでだな、美琴も4月から高校生になって常盤台の寮を出ることになるしさ」

そこでいったん言葉を区切り上条は美琴に優しく微笑みかける。

「ここで俺と一緒に暮らさないか?」

美琴はまだ目の前の状況が理解できなかった。
ここはあの女の部屋ではなかったのか、上条は私を捨てたのではなかったのか。
その他にも膨大な疑問が浮かんできたが、今はそんなことはどうでもよかった。
嬉しさとともに涙がこぼれた。
1粒、2粒とこぼれるともう止まらない。
目の前で焦っている様子の上条の姿が歪んでいく。

「え!?なんで!?ひょっとして嫌だったのか!!?指輪か!?一緒に暮らすってことか!?」

それを言葉で否定しようとしたが泣いているためうまくしゃべれない。
首を小さく横に振ると美琴は上条に抱きついた。
上条はそんな美琴に驚いたようだったがすぐに腕をまわし優しく抱きしめる。
久しぶりの彼の体温、久しぶりの彼の匂い、久しぶりの彼の抱擁。
すべてが懐かしく、そして恋しかった。

それから何分経ったのだろうか。
美琴としてはもっとこうしていたかったが気分は落ち着いたし言わなければならないことがある。
美琴は名残惜しそうに上条からそっと離れる。
数分間立ちっぱなしだったため2人はとりあえずその場に座ることにした。
それから少しの沈黙の後美琴が口を開く。

「ありがとう、当麻…指輪も、一緒に住もうって言ってくれたこともすごく嬉しい…覚えててくれたんだ。」

公園のことやあの女のことなど多くの疑問があったが美琴はとにかくお礼を言いたかった。

「そんな大事なこと忘れるわけないだろ?前は美琴がお金を払うって言ったから断っただけだったしな。」

美琴は手に目をやり薬指に指輪がはめられているのを確認する。
しっかりと感触がある、夢ではない。
と、ここで美琴は重大な問題に気がついた。

「……あ…でも一緒に住むって言ったらうちの親がなんて言うかな…」

それは両親が許可してくれるかどうか、ということだ。
美琴としては一緒に暮らすのはもちろんOKだ。
しかし美鈴はともかく旅掛はこういうことに厳しい。
なんて説得しようかと美琴が迷っていると

「それなら問題ないぞ。もう許可もらってるからな。」

またしても上条に驚かされた。

「受験の少し前だったかな、ほら美琴がうちに来てた時に電話かかってきたことあっただろ?
 あの電話の相手は美鈴さんで許可がおりたとこだったんだよ。
 まあ一緒に住ませてくれって最初に頼んだのはもっと前だったけどな。」

「そんなに前から……じゃ、じゃあ受験の前あんまり会ってくれなかったのは私の親を説得するため…?」

「あー…いや、それはまた別のことでだな……」

上条が言葉を濁す。
と、ここで美琴は上条の変化に気づいた。
今日はまだ上条の顔をしっかり見たことがなかったので気がつかなかったが前よりも痩せた気がする、
というか明らかに痩せた。
目元に隈もできており疲れがみえる。
そこから導き出された答えは1つ。

「ねえ……マンションと指輪のお金って…どうしたの?」

「え!?……こ、これくらい上条さんにとって支払うのはたやすいことですよ?」

明らかに嘘だった。
片方でもかなりお金がかかりそうなのに貧乏学生である上条が簡単に両方支払えるわけがない。
バイトをしていたに決まっている。
それもかなりの時間を。

「……バイトしてたんでしょ?」

その言葉に上条はビクッっとする。
図星のようで美琴を見てはいるが目は合わせていない。

「し、してたけどほんの少しだぞ?1週間…いや4日くらいだったかな~……。」

「ねぇ……本当のことを話して……。」

美琴は上条をじっと見つめる。
それに対し上条はしばらく考えたあと口を開く。

「……わかったよ。話すからそんな悲しそうな顔するなって。」

どうやら隠しても無駄と思ったようだ。

「俺はここ2ヶ月くらいバイトしてた。お前も受験勉強で忙しくて会えないだろうから調度いいと思ってさ。
 そんでそのバイトのお金で指輪買ったんだ。ま、そんな疲れるバイトじゃなかったから心配すんなよ。
 欲をいえば受験の日にマンションのことを話してホワイトデーに指輪を渡したかったんだけどな、まあ風邪ひいてたならしょうがないよな。」

「え?」

美琴は上条の言葉に耳を疑った。
今上条はなんと言った?
受験の日にマンションのことを話してホワイトデーに指輪を渡したかった?

「あ、のさ……まさか…受験の日の“大事な話”って…この部屋のことだったの…?」

「ん?ああ。俺としては12日に一緒に住もうって言って13日に引越しの準備、
 んで14日に引っ越して指輪を渡すって予定だったからな。」

上条はまあ今日同時にプレゼントできたから結果オーライだけど、と言っていたが美琴の耳にははいっていかない。
上条を尾行したときのような冷や汗が流れる。

「それと……なんで風邪のこと知ってるの?」

風邪をひいたということを上条が知っているのはおかしい。
風邪だと言って部屋にこもり始めたのは13日からでそれから今日まで上条とは1度会っていない。
町で黒子に会い聞いたのだろうか、と思ったがその答えは予想外のものだった。

「なんでって…13日の夜に常盤台の寮まで行って寮監から聞いたからじゃないか。
 ていうか最近は毎日行ってたんだけど寮監から俺のこと聞いてないのか?」

「え……あ―――――」

上条の言葉を聞いて美琴は思い出した。
確かに13日の夜に寮監は美琴の部屋に来て何か話そうとしていた。
しかし美琴は体調が悪いことを理由にそれを聞かなかった。
そしてそれ以降も同じように寮監が来ても話を聞こうとはしなかった。
上条が来てくれていたということに驚いている美琴を見て上条は不思議そうな表情を浮かべる。

「まさか知らなかったのか?おかしいな…寮監に伝えてくれって頼んだのに。」

対する美琴は今上条が言っていることが信じられないというような表情だった。
だがそれは紛れもない事実、すべては美琴の勘違いだったのだから。

「そ、そんな…バイトも大変だったはずなのに…わざわざ来てくれてたの…?」

とんでもない勘違いをしてしまった、という思いから顔が青ざめていく美琴。
だが上条は自分がバイトのことを話したことが原因だと思い慌てて弁解する。

「い、いやだから別に大変ってことはないぞ!?さっきも言ったけど疲れるバイトじゃなかったし
 美琴の笑顔が見れることを考えれば楽しいくらいだったしな!」

「ッ―――――」

大変でないはずがない。疲れないわけがない。
上条の姿を見ればわかることだ。
毎日のようにきついバイトをして食事なども削っていたに違いない。
それなのに心配をかけないようバイトをしていたことを隠そうとしていた。
それだけ苦労してホワイトデーことを計画してくれていたのに自分の勘違いで台無しにしてしまった。

(最低だな……私……)

美琴は謝らずにはいられなくなった。

「……ごめんね…」

「へ?何がだ?」

「実はね…私こないだ当麻を尾行してたの…」

それを聞いた上条は驚いたようだったが何も聞き返さず黙って話の続きを聞いていた。
美琴は受験の日からのことをずべて上条に話す。

「その前の日に公園で女の人といるのを見て…不安になって…それで次の日たまたま外で当麻を見かけてここまでつけてたのよ…」

美琴の声が涙声になる。
目からは先ほどと別の涙があふれそうになる。
美琴は自分を責めた。
なぜ上条を信じることができなかったのか。
そんな自分が心底嫌になった。

「その時この部屋から女の人がでてきたからてっきり浮気してるのかと思って…それで…連絡もしなくて…」

「美琴…」

「部屋にこもってて…当麻がきてくれてたのに……気づかずに自分の都合で追い返して…」

上条はそこまで聞くと美琴を抱き寄せた。

「まさか不安にさせてたなんてな……でも安心してくれ。あの人はここの管理人さんなんだ。
 受験の日はたまたま会っただけだったしその次の日はちょっとした用事でここに来てたんだ。
 本当ごめんな美琴……。」

「と、当麻が謝る必要なんてないわよ!私の勘違いが全部悪いんだから!」

上条に謝られたため美琴は慌てて反論する。

「当麻は…私のこと考えてくれてたのに…私は…私は勝手に勘違いして落ち込んで…勝手にいらついて……それに―――」

そこまで言って美琴の言葉が途切れる。
上条がキスをしたためだ。

「ん…それ以上は言わなくてもいい。そんなことより笑ってくれよ。」

「え?」

「俺は美琴の笑顔が見たくて指輪とこの部屋を用意したんだ。美琴が笑ってくれないと意味ないだろ?」

「あ……」

上条の言葉通りこの日美琴は1度も笑っていなかった。
それどころか上条を尾行した日からずっと笑ったことがなかった。
今朝まではもうこれから先は笑うことができないかもしれないとさえも美琴は思っていた。
だが上条はこれからも自分の側にいてくれる。
また笑うことができるのだ。
上条から離れた美琴は泣きかけていたため目をふき顔を上げる。

「ありがとう当麻」

2度目のお礼の言葉とともに最高の笑顔を上条にみせる。
それは作られたものではなく嬉しいという気持ちが心の底から現れたものだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


そしてあれから1カ月後、新学期が始まり、とあるマンションで暮らす2人の姿があった。

「ほら当麻起きて!朝ごはんできてるわよ。」

「んー……」

美琴に起こされると上条は寝むたそうに洗面所へと向う。
上条が顔を洗っている間に美琴は朝ごはんをテーブルへと運ぶ。

「おー……今日は普通だな。」

「え?いつもと変わらないじゃない。」

美琴が用意した朝食はパンとちょっとしたおかず、いつものメニューだ。

「いや…美琴の格好がさ。」

その言葉に美琴の顔は真っ赤になる。
今の美琴の服装はパジャマにエプロンをしている。
が、昨日はパジャマを着ていなかった。
つまり…裸エプロンである。
それを見た上条は暴走、ことが終わるころにはとっくに学校は始まっており2人とも休むはめになった。

「……ま、まあ…あれは休みの日だけにしておくわ。毎日してたら学校に行けそうにないし……」

休みの日はするのか、と上条は思った。

「それにしても…毎日メシ作ってもらって悪いな…他の家事もまかせっきりだし…」

上条の言葉通りこの部屋で暮らすようになってから家事はすべて美琴が行っていた。
上条も手伝うと言ってくれたが美琴は断っていた。
上条には指輪とマンションのお礼、という理由にしていたが本当は上条を疑ってしまった償いでもあった。
また家事以外にも上条のためにできることはなんでもしようとしていた。
ちなみに裸エプロンも償いの1つである。
それからもう1つの美琴が家事をする理由、それは

「何言ってるのよ!私は当麻のお、お嫁さんなんだから当たり前でしょ。」

家の中では美琴は完全に『上条美琴』モードであるからでもあった。
そして2人で朝食を食べ学校へ行く準備をする。

「美琴ーもう行くぞー。」

「ちょっと待ってー…ってお弁当忘れてるわよ!」

「何ぃ!?美琴の愛妻弁当を忘れるとはなんたる不覚!!」

「愛妻って…まあその通りだけど…///」

「悪い悪い、じゃ行くか!」

そして2人は途中までだが一緒に登校していく。
初めてマンションに来たときと違い上条は美琴の隣を歩き手をつないでいる。
その指には指輪があり今の美琴に不安は一切ない。

「それにしても……美琴といると幸せだな。」

「い、いきなり何よ。」

突然の上条の言葉に美琴の顔は少し赤くなる。
そんな美琴を見て上条は笑いながら答える。

「いや~好きな子と一緒に住んで毎日その笑顔が見れるんだからな、この上ない幸せ者だよ俺は。」

それを聞いた美琴は立ち止まり上条もつられて止まる。
そして美琴は笑顔で上条に問いかける。

「ねぇ当麻……これからも一生私の側にいて私の笑顔を見続けてくれる?」

上条はすぐに美琴の問いかけに答えた。
その答えは言わずともわかるだろう―――――


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