恋、はじまる
金曜日の夕方。
授業が終わると同時に学校を飛び出した上条当麻は、歩きながら幾分思いつめたような表情で携帯を取りだした。
その表情を崩さないまま携帯を耳に当てると、上条は何かを探すようにきょろきょろと辺りを見ながら歩き続けた。
やがて上条は繋がらない携帯から耳を離して立ち止まった。
「アイツ、なんで出ないんだよ……」
上条は小さく舌打ちしながら、ツンツンに尖った髪の毛をわしわしと掻きむしった。
授業が終わると同時に学校を飛び出した上条当麻は、歩きながら幾分思いつめたような表情で携帯を取りだした。
その表情を崩さないまま携帯を耳に当てると、上条は何かを探すようにきょろきょろと辺りを見ながら歩き続けた。
やがて上条は繋がらない携帯から耳を離して立ち止まった。
「アイツ、なんで出ないんだよ……」
上条は小さく舌打ちしながら、ツンツンに尖った髪の毛をわしわしと掻きむしった。
「御坂……」
上条はこの五日間会えていない少女の名前を呟くと、大きくため息をついた。
上条はこの五日間会えていない少女の名前を呟くと、大きくため息をついた。
四日前の月曜日から、御坂美琴は上条との一切の接触を断っていた。
美琴は上条に朝会うことも、彼に弁当を作ってくれることもなく、放課後彼の勉強を見てくれることもなくなった。
それどころか上条のメールに対して返事も返さないし、彼の電話に出てくれることすらない。
電話の着信拒否だけはかろうじてしていないようだが、とにかくこの五日間、上条からの接触を美琴はことごとく拒絶していた。
もちろん上条としても、そんな美琴の行動に対して理解がないわけではない。
美琴にだって色々と上条に会えない事情があるのだろう、それくらいはわかっていた。
何より上条が美琴と最後に会った日曜日は、上条のクラスメートである吹寄制理絡みでちょっとした事件があったのだ。
美琴は上条に朝会うことも、彼に弁当を作ってくれることもなく、放課後彼の勉強を見てくれることもなくなった。
それどころか上条のメールに対して返事も返さないし、彼の電話に出てくれることすらない。
電話の着信拒否だけはかろうじてしていないようだが、とにかくこの五日間、上条からの接触を美琴はことごとく拒絶していた。
もちろん上条としても、そんな美琴の行動に対して理解がないわけではない。
美琴にだって色々と上条に会えない事情があるのだろう、それくらいはわかっていた。
何より上条が美琴と最後に会った日曜日は、上条のクラスメートである吹寄制理絡みでちょっとした事件があったのだ。
詳しい理由は当の上条本人にもいまいち理解できていない部分があるのだが、とにかくその事件の結果、美琴と吹寄、二人の女性を上条は泣かせてしまった。
その際、上条は彼自身の意思で二人のうち一人だけ、つまり美琴の涙だけを拭うことを選んだのだが、そのことに対して美琴はどうしようもない罪悪感を覚えたらしい。
上条が美琴の側にいることを彼女に告げたとき、美琴は上条の胸で泣きじゃくった。
上条がどんなに弁解しようとも、美琴はひたすら謝罪の言葉を口にしながら泣き続けたのだ。
具体的な時間までは覚えていないものの、美琴が泣き止み落ち着くまでにかなり時間を要したことだけは上条は記憶している。
そして寮まで付き添うという上条の申し出を拒否して彼と別れたときに美琴が口にした、本当にごめんなさい、という言葉は今も上条の耳に残っている。
その際、上条は彼自身の意思で二人のうち一人だけ、つまり美琴の涙だけを拭うことを選んだのだが、そのことに対して美琴はどうしようもない罪悪感を覚えたらしい。
上条が美琴の側にいることを彼女に告げたとき、美琴は上条の胸で泣きじゃくった。
上条がどんなに弁解しようとも、美琴はひたすら謝罪の言葉を口にしながら泣き続けたのだ。
具体的な時間までは覚えていないものの、美琴が泣き止み落ち着くまでにかなり時間を要したことだけは上条は記憶している。
そして寮まで付き添うという上条の申し出を拒否して彼と別れたときに美琴が口にした、本当にごめんなさい、という言葉は今も上条の耳に残っている。
そんなことがあったのだ、美琴が上条に対して顔を会わせ辛いと感じるのも無理はないと思うし、そんな美琴と無理矢理会おうとするほど上条も人でなしではない。
上条当麻はジェントルマンである。女性の都合を無視してその心に土足で踏み込むようなマネはしない、あくまで美琴が自分から動き出すのをじっと待つ、そのはずであった。
だが実際上条が我慢できたのはたったの二日だった。
水曜日には矢も楯もたまらず美琴にメールを打ち、電話をかけていた。
そこには、月曜日以降二日間学校を休んでいた吹寄が登校してきたことによって彼の心配が減った、ということも理由として存在する。
けれどそんなことは些細なことである。
上条が我慢できなくなった一番の理由は至極単純で、美琴に会いたい、ただそれだけだった。
なぜそのような考えに至ったのか、その理由を未だ理解できていないところは大きな問題なのだが、とにかく、なんの理由もなく美琴に会えていないこの五日間が上条にとって耐え難い時間になっていることだけは、事実として存在していた。
上条当麻はジェントルマンである。女性の都合を無視してその心に土足で踏み込むようなマネはしない、あくまで美琴が自分から動き出すのをじっと待つ、そのはずであった。
だが実際上条が我慢できたのはたったの二日だった。
水曜日には矢も楯もたまらず美琴にメールを打ち、電話をかけていた。
そこには、月曜日以降二日間学校を休んでいた吹寄が登校してきたことによって彼の心配が減った、ということも理由として存在する。
けれどそんなことは些細なことである。
上条が我慢できなくなった一番の理由は至極単純で、美琴に会いたい、ただそれだけだった。
なぜそのような考えに至ったのか、その理由を未だ理解できていないところは大きな問題なのだが、とにかく、なんの理由もなく美琴に会えていないこの五日間が上条にとって耐え難い時間になっていることだけは、事実として存在していた。
日曜日の一件は、上条の心に新しい何かをもたらしていた。
いや、それはむしろ進化のきっかけと呼ぶに相応しいものなのかもしれない。
いや、それはむしろ進化のきっかけと呼ぶに相応しいものなのかもしれない。
そんな気持ちを抱えたまま、上条はなんとか美琴に会おうと一昨日から電話やメールで彼女に連絡を続けていた。
またそれだけでは飽きたらず、昨日や一昨日は夜まで、そして今日も放課後からずっと、思いつく限りの場所を美琴の姿を求めてしらみつぶしに訪ね歩いていた。
しかしその成果は未だに出ていない。
またそれだけでは飽きたらず、昨日や一昨日は夜まで、そして今日も放課後からずっと、思いつく限りの場所を美琴の姿を求めてしらみつぶしに訪ね歩いていた。
しかしその成果は未だに出ていない。
けれど上条は諦めない。
「……よし!」
両の頬をパンとはたくと、上条は再び美琴を捜すべく歩き始めた。
「……よし!」
両の頬をパンとはたくと、上条は再び美琴を捜すべく歩き始めた。
一方その頃、上条の捜し人である美琴は一人無言で町を彷徨っていた。
「…………」
美琴はただひたすら歩き続ける。
時折思いだしたかのように立ち止まって携帯を開きはするものの、そうしたところで彼女がする行動はため息をつくことのみ。
本当はあるボタン操作をしようとはしているのだが、そのたびに何かを思い出したかのようにはっと息を呑んで、結局は美琴は何もしない。
そのまますっと携帯をしまうと再び歩き出す。
こんな行動を月曜日から五日間、美琴は放課後になるたびに毎日行っていた。
「…………」
美琴はただひたすら歩き続ける。
時折思いだしたかのように立ち止まって携帯を開きはするものの、そうしたところで彼女がする行動はため息をつくことのみ。
本当はあるボタン操作をしようとはしているのだが、そのたびに何かを思い出したかのようにはっと息を呑んで、結局は美琴は何もしない。
そのまますっと携帯をしまうと再び歩き出す。
こんな行動を月曜日から五日間、美琴は放課後になるたびに毎日行っていた。
もちろんそんな美琴を周りの人間、特にルームメイトである白井黒子や友人である初春飾利、佐天涙子が心配しないわけがない。
彼女達は、ずっと思いつめた表情をしている美琴に気晴らしをしようと何度も声をかけた。
しかし美琴はその度に力なく笑みを浮かべると、静かに首を横に振って白井達に別れを告げていたのだった。
穏やかだが明確な拒絶の意思を示す美琴。
そんな美琴に対して白井達にできることなど、何もあろうはずがなかった。
彼女達は、ずっと思いつめた表情をしている美琴に気晴らしをしようと何度も声をかけた。
しかし美琴はその度に力なく笑みを浮かべると、静かに首を横に振って白井達に別れを告げていたのだった。
穏やかだが明確な拒絶の意思を示す美琴。
そんな美琴に対して白井達にできることなど、何もあろうはずがなかった。
美琴はいったい、どのような理由からこのような行動を取っているのだろう。
美琴が町を彷徨う理由。
それは上条当麻に「会いたくない」からだった。
それは上条当麻に「会いたくない」からだった。
日曜日に吹寄制理との間で起こった、ちょっとした、けれど美琴達三人にとっては非常に重要な意味を持つ事件。
その事件の結果、美琴はすっかり自己嫌悪に陥っていた。
その事件の結果、美琴はすっかり自己嫌悪に陥っていた。
事件の際、美琴は上条や吹寄の心情をまるっきり無視し、ひたすら自分の欲求、希望のみを求めて行動した。
そのような美琴の行為は、客観的な視点から言えば決して誉められたものではない。
しかしだからといって、極端に責められるべきものでもないのだ。
恋する女性なら誰でも持つ独占欲や嫉妬。彼女はそれらに素直に従って行動しただけのこと。
それを罪と言うのなら、恋するということそのものが罪となってしまう。
その証拠に上条は美琴を決して責めなかった。
美琴の行為によって自らの信念、矜持を曲げるという選択を強いられた当の本人が、美琴のことを悪くないと断言したのだ。
もっとも上条の場合、上記のような美琴の行動に秘められた彼女の心そのものを察したわけではなく、自分と仲のよい少女に罪などあろうはずがないと、ただの直感でそう思っているだけなのだが。
とにかく美琴が被害を与えたと思っている上条本人が被害だと認識していない以上、美琴が自己嫌悪に陥る理由などどこにもないのである。
そのような美琴の行為は、客観的な視点から言えば決して誉められたものではない。
しかしだからといって、極端に責められるべきものでもないのだ。
恋する女性なら誰でも持つ独占欲や嫉妬。彼女はそれらに素直に従って行動しただけのこと。
それを罪と言うのなら、恋するということそのものが罪となってしまう。
その証拠に上条は美琴を決して責めなかった。
美琴の行為によって自らの信念、矜持を曲げるという選択を強いられた当の本人が、美琴のことを悪くないと断言したのだ。
もっとも上条の場合、上記のような美琴の行動に秘められた彼女の心そのものを察したわけではなく、自分と仲のよい少女に罪などあろうはずがないと、ただの直感でそう思っているだけなのだが。
とにかく美琴が被害を与えたと思っている上条本人が被害だと認識していない以上、美琴が自己嫌悪に陥る理由などどこにもないのである。
とはいえ、そう単純に割り切れないのが人の感情。
上条本人から何も悪くないとは言われたものの、美琴はやはり自分自身が許せなかった。
なにしろあれだけ強固な意志を持つ上条当麻という人間が、御坂美琴というたった一人の人間のわがままで自らの信念をねじ曲げてしまったのだ。
人がその人であるための信念、矜持。それがどれだけ大切な物かわからない美琴ではない。
美琴自身、彼女が今のレベル5という能力を持ち得ているのも強い信念あってのものなのだから。
そんな信念を曲げた時の上条の叫びを、美琴は今でもハッキリ思い出すことができる。
どれほど辛かったろうか。
そんな上条に会いたくない、いや、むしろそんな上条に会わせる顔がない。そう美琴が考えるのも至極当然かもしれない。
上条本人から何も悪くないとは言われたものの、美琴はやはり自分自身が許せなかった。
なにしろあれだけ強固な意志を持つ上条当麻という人間が、御坂美琴というたった一人の人間のわがままで自らの信念をねじ曲げてしまったのだ。
人がその人であるための信念、矜持。それがどれだけ大切な物かわからない美琴ではない。
美琴自身、彼女が今のレベル5という能力を持ち得ているのも強い信念あってのものなのだから。
そんな信念を曲げた時の上条の叫びを、美琴は今でもハッキリ思い出すことができる。
どれほど辛かったろうか。
そんな上条に会いたくない、いや、むしろそんな上条に会わせる顔がない。そう美琴が考えるのも至極当然かもしれない。
だからこそ美琴は上条と会わないために町を彷徨い続けていた。
逃げるように歩き続け、上条に会わないようにする。
そのためには一カ所に留まることになる友人達との遊びも断らなければならない。
それが今の美琴の行動理由だった。
逃げるように歩き続け、上条に会わないようにする。
そのためには一カ所に留まることになる友人達との遊びも断らなければならない。
それが今の美琴の行動理由だった。
だが実を言うと、この行動には大きな矛盾が含まれている。
なぜなら、いくら一カ所に留まらないといっても、外に出ればそれだけ上条に会う確率は絶対に高くなってしまうのだ。
もし美琴が本気で上条に会いたくないのであれば、寮の自室に閉じこもって面会謝絶状態になる方が確実で効率的に決まっている。
特定の男性に会いたくないからだと言えば、融通の利かない寮監もその行動を許してくれるだろうし、白井などはむしろ積極的に協力してくれるに違いない。
なぜなら、いくら一カ所に留まらないといっても、外に出ればそれだけ上条に会う確率は絶対に高くなってしまうのだ。
もし美琴が本気で上条に会いたくないのであれば、寮の自室に閉じこもって面会謝絶状態になる方が確実で効率的に決まっている。
特定の男性に会いたくないからだと言えば、融通の利かない寮監もその行動を許してくれるだろうし、白井などはむしろ積極的に協力してくれるに違いない。
けれど美琴はその方法を採ろうとはしなかった。
いや、正確に言えばまったく頭に浮かばなかったのだ。
いや、正確に言えばまったく頭に浮かばなかったのだ。
矛盾をはらんだ美琴の行動。
もしかすると、その矛盾とは美琴の願望が産みだしているのかもしれない。
どんなに自分が拒絶しようとも、どこに行方をくらませようとも、彼女のヒーローなら、上条当麻なら、きっと自分に会いに来てくれるに違いない、という。
もしかすると、その矛盾とは美琴の願望が産みだしているのかもしれない。
どんなに自分が拒絶しようとも、どこに行方をくらませようとも、彼女のヒーローなら、上条当麻なら、きっと自分に会いに来てくれるに違いない、という。
歩き疲れた美琴は休憩を取るために、五日ぶりに壊れた自動販売機前にやってきた。
先週までは上条との待ち合わせのために毎日訪れていた場所である。
平日の午後だからであろうかそこを訪れる者は誰もおらず、開けた場所なのにもかかわらず耳が痛くなるほどの静けさに包まれていた。
先週までは上条との待ち合わせのために毎日訪れていた場所である。
平日の午後だからであろうかそこを訪れる者は誰もおらず、開けた場所なのにもかかわらず耳が痛くなるほどの静けさに包まれていた。
「いない、わよね……」
自動販売機の辺りの様子をそっと伺った美琴は、そこに上条の姿がないことを確認すると、ため息をついた。
「ま、いなくても不思議じゃないわよね。別にここにいたらアイツに確実に会えるってわけでもないんだし。今は会う約束だって、してないんだし……」
美琴はほんの少し唇を噛むと、自動販売機の前にすっくと立った。
「てなわけで。休、憩!」
気合と共に右の蹴りを自動販売機に叩き込んだ美琴は、取り出し口に出てきた椰子の実サイダーを手に取った。
「そういえば、これやるのも久しぶりね。やっぱりアイツの影響、なの、かな……」
そう言った美琴はぎゅっとサイダーの缶を握りしめると、近くのベンチまでずかずかと歩き出した。
自動販売機の辺りの様子をそっと伺った美琴は、そこに上条の姿がないことを確認すると、ため息をついた。
「ま、いなくても不思議じゃないわよね。別にここにいたらアイツに確実に会えるってわけでもないんだし。今は会う約束だって、してないんだし……」
美琴はほんの少し唇を噛むと、自動販売機の前にすっくと立った。
「てなわけで。休、憩!」
気合と共に右の蹴りを自動販売機に叩き込んだ美琴は、取り出し口に出てきた椰子の実サイダーを手に取った。
「そういえば、これやるのも久しぶりね。やっぱりアイツの影響、なの、かな……」
そう言った美琴はぎゅっとサイダーの缶を握りしめると、近くのベンチまでずかずかと歩き出した。
「ああもう、止め止め!」
ベンチにどっかと座り込んだ美琴は腹立たしげに頭を振ると、サイダーのプルタブを開け、中身を口の中に流し込む。
サイダーを一気に飲み干した美琴は、親父くさい仕草でぷはぁっと息を吐いた。
「まったく、私が今こうして苦労してるのはアイツのせいなのよ! なんでこんなこと気にしなきゃいけないのよ!」
完全に八つ当たりでしかない言葉を口にした美琴は、サイダーの缶をベンチに置いてすっと携帯電話を取りだした。
ベンチにどっかと座り込んだ美琴は腹立たしげに頭を振ると、サイダーのプルタブを開け、中身を口の中に流し込む。
サイダーを一気に飲み干した美琴は、親父くさい仕草でぷはぁっと息を吐いた。
「まったく、私が今こうして苦労してるのはアイツのせいなのよ! なんでこんなこと気にしなきゃいけないのよ!」
完全に八つ当たりでしかない言葉を口にした美琴は、サイダーの缶をベンチに置いてすっと携帯電話を取りだした。
携帯を操作し上条からの着信履歴を表示させた美琴は、辛そうに目を伏せた。
上条からの着信履歴は一昨日からの分だけで二十五件、いや、つい五分ほど前にもあったらしいそれを含めると二十六件に上っていた。
「何よ、あの馬鹿。私が会いたいときは全然会ってくれないくせに、自分ばっかり……」
再び携帯を操作した美琴は今度は受信メールを表示させた。
全て未読になっているが、そこにある上条からのメールもやはり相当な数になっていた。
「馬鹿……」
美琴はぎゅっと携帯電話を胸に抱いた。
上条からの着信履歴は一昨日からの分だけで二十五件、いや、つい五分ほど前にもあったらしいそれを含めると二十六件に上っていた。
「何よ、あの馬鹿。私が会いたいときは全然会ってくれないくせに、自分ばっかり……」
再び携帯を操作した美琴は今度は受信メールを表示させた。
全て未読になっているが、そこにある上条からのメールもやはり相当な数になっていた。
「馬鹿……」
美琴はぎゅっと携帯電話を胸に抱いた。
そのとき、
「…………!」
美琴の携帯電話が着信音を鳴らした。
その音を聞いた美琴は体を硬くする。
「…………!」
美琴の携帯電話が着信音を鳴らした。
その音を聞いた美琴は体を硬くする。
「…………」
美琴はじっと携帯電話のディスプレイを見た。
そこに表示されている名前はもちろん上条当麻だ。
美琴はじっと携帯電話のディスプレイを見た。
そこに表示されている名前はもちろん上条当麻だ。
「何よ。なんなのよ、アンタは……!」
顔をしかめ目を閉じた美琴は携帯電話を閉じると、それを再びぎゅっと胸に抱いた。
「もう、早く止まってよ! 諦めてよ!」
半ば叫びに近いような悲痛な声を上げながら、美琴はますます強く携帯電話を胸に押しつけた。
「馬鹿、馬鹿、馬鹿……! 上条当麻の、馬鹿……! 私の気持ちなんて無視して、なんでこんなことするのよ!」
しかしどれだけ美琴が叫ぼうが携帯電話は鳴りやまない。
それならばいっそのこと、電源を切るなり着信拒否でもすればいいのだが、美琴はそういったことはせず、ひたすら携帯電話に向かって叫び続けていた。
顔をしかめ目を閉じた美琴は携帯電話を閉じると、それを再びぎゅっと胸に抱いた。
「もう、早く止まってよ! 諦めてよ!」
半ば叫びに近いような悲痛な声を上げながら、美琴はますます強く携帯電話を胸に押しつけた。
「馬鹿、馬鹿、馬鹿……! 上条当麻の、馬鹿……! 私の気持ちなんて無視して、なんでこんなことするのよ!」
しかしどれだけ美琴が叫ぼうが携帯電話は鳴りやまない。
それならばいっそのこと、電源を切るなり着信拒否でもすればいいのだが、美琴はそういったことはせず、ひたすら携帯電話に向かって叫び続けていた。
「止まってよ!」
美琴が自分でも何度目かわからないほど叫び続けた頃、ようやく携帯電話は鳴り止んだ。
美琴が自分でも何度目かわからないほど叫び続けた頃、ようやく携帯電話は鳴り止んだ。
「…………」
美琴は音のしなくなった携帯電話を胸から離し、じっと見つめた。
そして「ごめんね」と声を出さずに口だけを動かして呟くと、今度はそっと慈しむように携帯電話を頬に当て、目を閉じた。
いつの間にか美琴の瞳に浮かんでいた涙が、つーとその頬を伝った。
美琴は音のしなくなった携帯電話を胸から離し、じっと見つめた。
そして「ごめんね」と声を出さずに口だけを動かして呟くと、今度はそっと慈しむように携帯電話を頬に当て、目を閉じた。
いつの間にか美琴の瞳に浮かんでいた涙が、つーとその頬を伝った。
「もしもーし、こちらは学園都市一不幸な男子高校生、上条当麻でーす。そちらは学園都市一ビリビリな女子中学生、御坂美琴さんで間違いありませんかー?」
「…………!」
突然頭上から聞こえてきた声に、美琴はばっと顔を上げた。
「……き、きキ……キャ――――!!」
そのまま美琴は、目の前に立っていた人物の顔を認識するよりも早く、半ば無意識的に雷撃の槍を放っていた。
「っか……!!」
次の瞬間、バチバチィッという音が辺りにこだました。
「…………!」
突然頭上から聞こえてきた声に、美琴はばっと顔を上げた。
「……き、きキ……キャ――――!!」
そのまま美琴は、目の前に立っていた人物の顔を認識するよりも早く、半ば無意識的に雷撃の槍を放っていた。
「っか……!!」
次の瞬間、バチバチィッという音が辺りにこだました。
ややあって、ようやく音の余韻が辺りの静寂に呑み込まれた。
「あ、あああ、あん……」
辺りの空気が元の静けさを取り戻したことを感じた美琴は自らを落ち着かせるためにごくりとつばを呑み込むと、震える人差し指で目の前の人物、上条当麻を指差した。
「……あ、アンタ! なんでこんなところにいるのよ! 驚かせるんじゃないわよ!」
そう叫んでやや乱暴に立ち上がった美琴は、上条に食ってかかった。
「あ、あああ、あん……」
辺りの空気が元の静けさを取り戻したことを感じた美琴は自らを落ち着かせるためにごくりとつばを呑み込むと、震える人差し指で目の前の人物、上条当麻を指差した。
「……あ、アンタ! なんでこんなところにいるのよ! 驚かせるんじゃないわよ!」
そう叫んでやや乱暴に立ち上がった美琴は、上条に食ってかかった。
しかし一方の上条も負けていない。
美琴の電撃をかろうじて防いだ右手を何度か振ると、憮然とした表情で美琴をにらみつけた。
「何言ってんだ! 驚いたのはこっちだっての! 声かけたからっていきなり電撃ぶちかます奴がどこの世界にいるってんだ!」
「……け」
上条の姿を見、その声を聞いた美琴の中で、今まで必死で堪えていた何かが音を立てて崩れ去った。それと同時に沸き上がった感情のまま、美琴はさらに勢いを増して上条を怒鳴りつけていた。
「こ、ここにいるじゃない、アンタの目の前に!」
「肯定すんな、んなこと!」
「アンタが聞いたんでしょうが!」
「そりゃそうだけど、肯定するもんじゃねーだろ! 少しは否定しろ!」
「嫌よ!」
「なんで!」
「嫌なもんは嫌なのよ! わかりなさいよ、それくらい!」
「絶対わかんねーよ、そんなもん!」
美琴の電撃をかろうじて防いだ右手を何度か振ると、憮然とした表情で美琴をにらみつけた。
「何言ってんだ! 驚いたのはこっちだっての! 声かけたからっていきなり電撃ぶちかます奴がどこの世界にいるってんだ!」
「……け」
上条の姿を見、その声を聞いた美琴の中で、今まで必死で堪えていた何かが音を立てて崩れ去った。それと同時に沸き上がった感情のまま、美琴はさらに勢いを増して上条を怒鳴りつけていた。
「こ、ここにいるじゃない、アンタの目の前に!」
「肯定すんな、んなこと!」
「アンタが聞いたんでしょうが!」
「そりゃそうだけど、肯定するもんじゃねーだろ! 少しは否定しろ!」
「嫌よ!」
「なんで!」
「嫌なもんは嫌なのよ! わかりなさいよ、それくらい!」
「絶対わかんねーよ、そんなもん!」
ひとしきり怒鳴りあったところで、二人は互いの吐息を感じられるほどの距離でにらみ合った。
「だあもう、止め止め!」
やがてすっと美琴から目を逸らした上条は、美琴の隣に座り込んだ。
そんな上条に対して美琴は険しい表情を崩そうとしない。
「ちょっとアンタ、何勝手に座ってんのよ」
「お前のベンチじゃないだろう。お前の許可を得る必要なんて無い、俺が座りたいから座った。だいたい」
上条はここでいったん言葉を句切って美琴同様、険しい表情になった。
「別に忙しいわけでも、用事があるわけでもないのに人の電話を無視するような奴に、そんなこと言われたくねーな」
「…………!」
上条の発言に美琴は思わず声を詰まらせた。
「だあもう、止め止め!」
やがてすっと美琴から目を逸らした上条は、美琴の隣に座り込んだ。
そんな上条に対して美琴は険しい表情を崩そうとしない。
「ちょっとアンタ、何勝手に座ってんのよ」
「お前のベンチじゃないだろう。お前の許可を得る必要なんて無い、俺が座りたいから座った。だいたい」
上条はここでいったん言葉を句切って美琴同様、険しい表情になった。
「別に忙しいわけでも、用事があるわけでもないのに人の電話を無視するような奴に、そんなこと言われたくねーな」
「…………!」
上条の発言に美琴は思わず声を詰まらせた。
「……そ、それは!」
「それは?」
「…………」
なんとか言葉を繋げようとした美琴だが、上条の追求に再び声を詰まらせた。
「なんか言い訳、あんのかよ」
「…………」
何も答えようとしない美琴は、やがて力なくぺたんとベンチに腰掛けた。
その様子を見た上条はふうと軽くため息をついた。
「それは?」
「…………」
なんとか言葉を繋げようとした美琴だが、上条の追求に再び声を詰まらせた。
「なんか言い訳、あんのかよ」
「…………」
何も答えようとしない美琴は、やがて力なくぺたんとベンチに腰掛けた。
その様子を見た上条はふうと軽くため息をついた。