とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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(無題)




後悔は先に立たない。
覆水は盆に返らない。
溢れたミルクを嘆いても無駄である。

それでも私は、いや、人間は、性懲りも無く後悔をする。



「私、超能力が使えるようになったかも」
私がそう告げると、
「天下の『超電磁砲』が何を今更、それとも俺へのイヤミか?」
当麻は夕飯の用意をしながら、にべもなく返答した。
どうやら当麻にとっては、私の戯言よりも生姜焼きの焼け具合の方が気になるらしい。

『真面目に聞いてよ!』と思う反面、『まあしょうがないか』とも思う。
もし当麻が同じ事を口走ったとしたら、私はまつげ美容液でも塗りながら、シカトをぶちかますだろう。
いくらなんでも突拍子が無さすぎるし、第一、能力は一人一つだけと決まっている。
当麻が生姜焼きに熱中するのも無理はない。
しかし、この『ふしぎなちから』については是非とも知ってもらいたいのだ。

「その『超能力』じゃなくて、これは正真正銘の天然物なんだから!」
「ほう?まさか『旅行鞄に入れるようになりました!』とかじゃないだろうな?」
「エスパー伊○と一緒にしないでよ!まあ黙って見てなさい!」

こほん、と、勿体ぶった咳払いをし、目を閉じて意識を頭頂部に集中する。
ぞわぞわぞわ……と、何かが私の脳内を這いずり回る。
やがて、猫じゃらしで脳内をくすぐられる様なむず痒い感覚と同時に、何か朧げなイメージが降りてくる。
そして、ゆっくりと、おもむろに、じわじわと目を開ける。
目が開ききった瞬間、朧げだったイメージは、はっきりとしたものに変わった。

・ ベッド
・ 肌色
・ 土下座

浮かんだイメージから連想される結論は。



「当麻、ベットの下見てもいい?」

『ドキーッ!』

もしこのお話が漫画ならば、こんな擬音が当麻の頭上に踊り狂っているだろう。
視線はキョロキョロ、手はモジモジ、身体はソワソワせわしなく。
誰がどこをどう見ても動揺しているのが分かる。
ここまで分かりやすく動揺する人は、そうそうお目にかかれるものではない。
紛うかたなき完全無欠の動揺っぷりだった。

「なななななななんででせうか?」
「何となくよ。やましいものが無いんだったら見せられるわよね?」
「ももももも勿論ですでございまする!しかししばしすこし待たれよ!」

当麻はそう言うや否や、目にもとまらぬ素早さでベットの下へと潜り込んだ。
その姿たるや、命からがら塹壕に逃げ込む第一次世界大戦でのイタリア軍兵士の如き様相であった。

(……やっぱりね)

私の予想は確信に変わった。
ベッドの下には確実に『何か』がある。
その『何か』とは、恐らく『ページの大半が肌色で埋め尽くされた本』だろう。

私としては『ページの大半が肌色で埋め尽くされた本』ぐらいで目くじらを立てる必要は無いと思う。
健全な男子ならば持っていて当然だし、というかむしろ持っていない方が心配なくらいだ。
隠し場所がベットの下というのも、ダチ○ウ倶楽部の熱々おでん並みに予定調和である。

しかし、私は一応当麻の彼女なわけで。
やっぱり『そういうもの』は持ってて欲しくないわけで。
ここで怒る(ふりをする)のも予定調和のひとつなわけで。
というわけで。

「はーい、ちょっと美琴オネエサンとお話しよっかー」
そう言いながら、ベットに突っ込んだ当麻を引きずり出し、
両手に抱えた『ページの大半が肌色で埋め尽くされた本』を奪い取る。
そして、あらん限りの力でページを左右に引き裂いた。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
「なによ!アンタに文句言える権利あんの?」
「イエ、コノワタクシメガ、ミコトサマニタイシテ、モウシヒラクヨチナド、カイモクゴザイマセヌ」

そう言って『ベッド』の上で、ページの大半が『肌色』で埋め尽くされた本を目の前にして『土下座』をする当麻。

(『読み』通りね……)

「分かれば宜しい。じゃあこの子達は処分しとくわね」
「嗚呼、青春の日々よ……」



さめざめとむせび泣く当麻を尻目に、私は『参考文献』の解析に着手していた。
『参考文献』では『肌色達』が組んず解れつの『プロレスごっこ』を繰り広げていた。
その中には、
『お前はH・G・ウェルズの宇宙戦争に出てくる火星人か!』
と、言いたくなる程、ぐにゃぐにゃにトランスフォームしている肌色もあった。
「それにしても……え、ちょっとこれは引く……」
「あのー美琴さん……その反応が一番傷つくんですけど……」
「うわー当麻はこんな趣味してるんだ……」
「あのー美琴さん……そろそろこの羞恥プレイに終止符を……」
当麻は顔面を蒼白にしながら、雨に打たれた子猫のような哀願する目つきで訴えかけて来た。
しかし、今や私の意識の大半は『参考文献』に注がれていた。
破廉恥極まりない格好で、破廉恥極まりない体勢で、破廉恥極まりない行為をする『肌色達』
えも言われぬ恍惚とした表情を見て、劣情もさることながら、ある種羨望と言うべき感情が、私の心の中に芽生え始めていた。
(私もこんな風に……)
私は『参考文献』を傍に置き、泣きそうな目をした当麻を見つめながら言った。
「ねぇ、当麻は『こんなこと』に興味あるの?」
「そりゃ勿論、漢のロマンですから!って、え?」
「『こんなこと』してみたいの?」
「それって……でも、さっきまで怒ってたんじゃ……」
「私は興味あるのかって聞いてるのよ!」
きっと今の私の顔は、セリヌンティウスとの再会の場で全裸を指摘されたメロスよりも真っ赤だろう。
まさか自ら羞恥の渦を巻き起こし、自らその渦に飛び込んでいくとは。
セルフ羞恥プレイもいいところだ。
先程の当麻と立ち代わる様にして、今度は私が俯いてモジモジしていた。
「きゃっ!」
私の肩に突然力が加わり、視界が揺らいだかと思った瞬間、目の前いっぱいに当麻の顔が映った。
その表情には、雨に打たれた子猫の様に弱々しさはなかった。
今では目の前に獲物をぶら下げたライオンのようだった。
そして、さながら補食するかの如く私の首筋に噛み付き、そっと私の耳元に囁いた。

「俺は興味津々なんだけど、美琴はどうなんだ?」
「……聞かないでよ、ばか」

当麻の指先が、情熱的に私の肩を掴む。
当麻の吐息が、扇情的に私の顔を這う。
当麻の口腔が、官能的に私の舌を吸う。
ふとももに当たっているのは当麻の。


そして私と当麻は






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