選択と決着 第三章 決着
「……ステイル?」
「ふぅ、いろいろと決着をつけにきたよ、宿敵」
おんぼろ自販機の前で、二人と一人は対峙する。
赤髪の神父が煙とともに言葉を吐く。
赤髪の神父が煙とともに言葉を吐く。
「しかし、往来のど真ん中でハグとは、しかも長い。僕が来てから十五分、その前からと考えると、……さすがに」
「うるさい!! だまれ!! それ以上言うな!!」
あれを見られた時点で彼女が漏電しそうだというのに。
「声をかけようとしていたこっちの身にもなってくれ。……さて、本題に入ろう」
ステイルの右手から炎剣が伸びた。
この緊張感にようやく美琴は正気に戻る。
威嚇し、帯電するが、上条がとどめた。
この緊張感にようやく美琴は正気に戻る。
威嚇し、帯電するが、上条がとどめた。
「いいんだ、美琴、オレだけで」
「で、でもっ!!」
「ちがうんだよ。これは、けじめなんだ」
上条は美琴から離れ、ステイルと対峙する。
「もう察したのか。本当に君は気に入らないね」
「ああ、でも加減しないぞ」
「当然だ、手を抜けば死ぬよ。じゃあ」
「いっちょやりますか!!」
上条は突っ込む。しかし、
「イノケンティウス!!!」
踏みとどまった。
「『君』がこれと対峙するのは、初めてだよね」
「ああ、オルソラを助けるときに初めて見たな」
(……あれは打ち消せない)
上条は何故か知っていた。
再び突っ込みながら尋ねる。
再び突っ込みながら尋ねる。
「もしかして、オレとお前戦ったことがあるのか?」
「(退かないのか?)……ああ、君があの子を救った時にね」
複雑な表情をしたステイルだったが、
容赦なくイノケンティウスは炎の十字架を振りおろす。
容赦なくイノケンティウスは炎の十字架を振りおろす。
上条はそれを横にはじいて更に進んだ。
(なにっ!!?)
予想以上に接近した上条に対し、ステイルは炎剣を爆発させることで対応する。
両者をその場から吹き飛ばすことで距離をとった。
両者をその場から吹き飛ばすことで距離をとった。
「当麻!!」
「大丈夫だ美琴!! しかし、ムチャクチャしやがる」
「はぁ、これはこっちもダメージを受ける。使用したくはなかったよ」
いつのまにかイノケンティウスはステイルに近づいていた。
再び二人は対峙する。
「ならば、イノケンティウス!! ダブル、トリプル!!!」
三体のイノケンティウスが上条を睨む。
彼はなにも十五分間ずっと上条たちを見ていたわけではない。一方、
彼はなにも十五分間ずっと上条たちを見ていたわけではない。一方、
(本当に気に入らない。だが、流石だ)
上条は微動だにしなかった。
「……あの時の記憶を失って、悪かった」
「……ふっ、関係ないね」
ステイルは煙草をふかす。
「君は僕に打ち勝ち、僕の自信を粉々にした」
美琴は固唾を飲んで見守っていた。
「僕の考え方を無理やり変えた」
浜面が急ハンドルをきっていた。
「僕とは違う方法を提示して……」
トールが八方からの攻撃をかわしていた。
「僕が救えなかったものを救ってみせた」
一方通行と神裂がビルの間を飛んでいた。
「それをしたのは『君』だよ。記憶のあるなしは関係ない。変わっていないからね。相変わらず、今も君はムカつく奴だよ」
再び両者は接近する。笑いながら。
上条が一つ目をギリギリで避ける。
同時にステイルが煙草を捨てて叫んだ。
同時にステイルが煙草を捨てて叫んだ。
「決着をつけるぞ!! 上条当麻!!!」
二つ目の攻撃をそらして三つ目を防いだ時、
上条も吠えた
上条も吠えた
「うぉぉおおおおおおおお!!!」
右手を振るい、炎剣を打ち消す。もちろん炎剣は消えた。
ただ、ステイルも打ち消される。
(しまっ……!!)
気付いた時には脳を揺さぶられ、地面に倒れていた。
首に炎剣が突き付けられる。
首に炎剣が突き付けられる。
「炎剣、イノケンティウス三体、蜃気楼に右手、結局全てのカードを使ってしまったよ。まあ、たまには右手も便利でいいね、目の前の気に入らない奴を思いっきり殴れるんだから」
ちょっと卑怯だったかな? と笑うステイルに、レールガンの銃口が向けられる。
美琴は怒りに震えていた。
美琴は怒りに震えていた。
「それ以上、当麻に手を出すなら、許さない!!」
「……安心してくれ、これ以上は僕があの子に叱られる」
炎剣が消え、上条がたちあがった。
美琴が走り寄る。
美琴が走り寄る。
「当麻!!」
「大丈夫だ。……みっともないとこ見られちゃったな」
ステイルはそれを眺めながら新しい煙草をくわえ、話を進めた。
「その子を、選んだんだね、その決断に後悔するなよ」
「当然だ。こいつと一緒に生きると、俺が決めたんだ」
自然と二人の手はつながれていた。
「じゃあ、あの子とその彼女の二人が危険な時、君はそっちの子を助けるんだ、いいね」
「……いや、美琴はもちろん、インデックスも助けてみせる!!」
「……気に入らないな、ホントに……」
こいつならやりかねないと思った自分が。
「でも、今日限りで、メインからは外れてもらう」
「……分かった」
「では」
美琴も何かを感じ取った。
「学園都市所属、上条当麻との戦闘終了。その結果、シスターインデックス、並びに魔道図書館『禁書目録』の保護を担うほどの力量に達していない、と認識できた。元担当者としてその点を危険だと判断。独断だが、この瞬間より、上条当麻を、その任から外すこととする!!!」
それは、一つの結末。
しばらく三人は無言だった。
最初に沈黙を破ったのは、意外にもステイルだった。
最初に沈黙を破ったのは、意外にもステイルだった。
「二日前……」
静かに、ゆっくりと言葉は紡がれる。
「二日前に、彼女に、僕の気持ちを伝えた。まだ、返事はもらっていない」
「……そうか」
なにかが終っていく。
「返事は、いつでもいいと、伝えている」
「そうか、……あいつは、よく食うぞ」
「ああ、知っている」
「怒りっぽいし、常識知らずだ」
「ああ」
「……あいつを、頼む、……いくらでも、『助力』はする」
「……ああ、わかった」
ステイルが去って行ったのを確認した瞬間、美琴は上条に抱きついた。
「ぬわっ、どうした美こt……泣いてるのか?」
「……ちょっと待って!! もう少ししたらいつもの私に戻るから、だから!!」
もう少し。
上条はそっと美琴を抱き寄せ、囁きかける。
「大丈夫だ……」
美琴もなぜ泣いているのかわからなかった。
上条を失うことが怖かったのか、
なにもさせてもらえなかった怒りなのか
上条を失うことが怖かったのか、
なにもさせてもらえなかった怒りなのか
「大丈夫だから……」
インデックスに対してなのか
上条の涙に対してなのか
上条の涙に対してなのか
しばらく、二人は抱き合いながら涙を流していた。
その周囲に隠れている数人も、涙していることを知らずに。
「はい、こちらステイル。あいつに電話しなくていいのかい?」
『どうせ、とうまの携帯は使えないんだよ。けがしてない??』
「ああ、顔面を殴ったが、いつもに比べたらなんてことないだろ?」
『!!!……電話している、ステイルの事を聞いているんだよ』
「(全くこの子は)……ああ、たいしたことないよ。明日には帰る」
『あのね、ステイル』
「?」
『返事はまだできないけど、お礼を言うんだよ』
「なんの事かな?」
『教会で、煙草を吸うのをやめたよね、私は自分しか見えてなかったのに、そっちはずっと私の事を考えてくれてたんだよね、だから、返事はまだできないけど、……ありがとう』
「……お土産を、持って帰るよ」
こちらの決着はまだ先だ。