とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part09

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選択と決着 第三章 決着


「……ステイル?」

「ふぅ、いろいろと決着をつけにきたよ、宿敵」

おんぼろ自販機の前で、二人と一人は対峙する。
赤髪の神父が煙とともに言葉を吐く。

「しかし、往来のど真ん中でハグとは、しかも長い。僕が来てから十五分、その前からと考えると、……さすがに」

「うるさい!! だまれ!! それ以上言うな!!」

あれを見られた時点で彼女が漏電しそうだというのに。

「声をかけようとしていたこっちの身にもなってくれ。……さて、本題に入ろう」

ステイルの右手から炎剣が伸びた。
この緊張感にようやく美琴は正気に戻る。
威嚇し、帯電するが、上条がとどめた。

「いいんだ、美琴、オレだけで」

「で、でもっ!!」

「ちがうんだよ。これは、けじめなんだ」

上条は美琴から離れ、ステイルと対峙する。

「もう察したのか。本当に君は気に入らないね」

「ああ、でも加減しないぞ」

「当然だ、手を抜けば死ぬよ。じゃあ」

「いっちょやりますか!!」

上条は突っ込む。しかし、

「イノケンティウス!!!」

踏みとどまった。

「『君』がこれと対峙するのは、初めてだよね」

「ああ、オルソラを助けるときに初めて見たな」

(……あれは打ち消せない)

上条は何故か知っていた。
再び突っ込みながら尋ねる。

「もしかして、オレとお前戦ったことがあるのか?」

「(退かないのか?)……ああ、君があの子を救った時にね」

複雑な表情をしたステイルだったが、
容赦なくイノケンティウスは炎の十字架を振りおろす。

上条はそれを横にはじいて更に進んだ。

(なにっ!!?)

予想以上に接近した上条に対し、ステイルは炎剣を爆発させることで対応する。
両者をその場から吹き飛ばすことで距離をとった。

「当麻!!」

「大丈夫だ美琴!! しかし、ムチャクチャしやがる」

「はぁ、これはこっちもダメージを受ける。使用したくはなかったよ」

いつのまにかイノケンティウスはステイルに近づいていた。

再び二人は対峙する。

「ならば、イノケンティウス!! ダブル、トリプル!!!」

三体のイノケンティウスが上条を睨む。
彼はなにも十五分間ずっと上条たちを見ていたわけではない。一方、

(本当に気に入らない。だが、流石だ)

上条は微動だにしなかった。

「……あの時の記憶を失って、悪かった」

「……ふっ、関係ないね」

ステイルは煙草をふかす。

「君は僕に打ち勝ち、僕の自信を粉々にした」

美琴は固唾を飲んで見守っていた。

「僕の考え方を無理やり変えた」

浜面が急ハンドルをきっていた。

「僕とは違う方法を提示して……」

トールが八方からの攻撃をかわしていた。

「僕が救えなかったものを救ってみせた」

一方通行と神裂がビルの間を飛んでいた。

「それをしたのは『君』だよ。記憶のあるなしは関係ない。変わっていないからね。相変わらず、今も君はムカつく奴だよ」

再び両者は接近する。笑いながら。



上条が一つ目をギリギリで避ける。
同時にステイルが煙草を捨てて叫んだ。

「決着をつけるぞ!! 上条当麻!!!」

二つ目の攻撃をそらして三つ目を防いだ時、
上条も吠えた

「うぉぉおおおおおおおお!!!」

右手を振るい、炎剣を打ち消す。もちろん炎剣は消えた。

ただ、ステイルも打ち消される。

(しまっ……!!)

気付いた時には脳を揺さぶられ、地面に倒れていた。
首に炎剣が突き付けられる。

「炎剣、イノケンティウス三体、蜃気楼に右手、結局全てのカードを使ってしまったよ。まあ、たまには右手も便利でいいね、目の前の気に入らない奴を思いっきり殴れるんだから」

ちょっと卑怯だったかな? と笑うステイルに、レールガンの銃口が向けられる。
美琴は怒りに震えていた。

「それ以上、当麻に手を出すなら、許さない!!」

「……安心してくれ、これ以上は僕があの子に叱られる」

炎剣が消え、上条がたちあがった。
美琴が走り寄る。

「当麻!!」

「大丈夫だ。……みっともないとこ見られちゃったな」

ステイルはそれを眺めながら新しい煙草をくわえ、話を進めた。

「その子を、選んだんだね、その決断に後悔するなよ」

「当然だ。こいつと一緒に生きると、俺が決めたんだ」

自然と二人の手はつながれていた。

「じゃあ、あの子とその彼女の二人が危険な時、君はそっちの子を助けるんだ、いいね」

「……いや、美琴はもちろん、インデックスも助けてみせる!!」

「……気に入らないな、ホントに……」

こいつならやりかねないと思った自分が。

「でも、今日限りで、メインからは外れてもらう」

「……分かった」

「では」

美琴も何かを感じ取った。

「学園都市所属、上条当麻との戦闘終了。その結果、シスターインデックス、並びに魔道図書館『禁書目録』の保護を担うほどの力量に達していない、と認識できた。元担当者としてその点を危険だと判断。独断だが、この瞬間より、上条当麻を、その任から外すこととする!!!」

それは、一つの結末。



しばらく三人は無言だった。
最初に沈黙を破ったのは、意外にもステイルだった。

「二日前……」

静かに、ゆっくりと言葉は紡がれる。

「二日前に、彼女に、僕の気持ちを伝えた。まだ、返事はもらっていない」

「……そうか」

なにかが終っていく。

「返事は、いつでもいいと、伝えている」

「そうか、……あいつは、よく食うぞ」

「ああ、知っている」

「怒りっぽいし、常識知らずだ」

「ああ」

「……あいつを、頼む、……いくらでも、『助力』はする」

「……ああ、わかった」



ステイルが去って行ったのを確認した瞬間、美琴は上条に抱きついた。

「ぬわっ、どうした美こt……泣いてるのか?」

「……ちょっと待って!! もう少ししたらいつもの私に戻るから、だから!!」

もう少し。

上条はそっと美琴を抱き寄せ、囁きかける。

「大丈夫だ……」

美琴もなぜ泣いているのかわからなかった。
上条を失うことが怖かったのか、
なにもさせてもらえなかった怒りなのか

「大丈夫だから……」

インデックスに対してなのか
上条の涙に対してなのか

しばらく、二人は抱き合いながら涙を流していた。

その周囲に隠れている数人も、涙していることを知らずに。




「はい、こちらステイル。あいつに電話しなくていいのかい?」

『どうせ、とうまの携帯は使えないんだよ。けがしてない??』

「ああ、顔面を殴ったが、いつもに比べたらなんてことないだろ?」

『!!!……電話している、ステイルの事を聞いているんだよ』

「(全くこの子は)……ああ、たいしたことないよ。明日には帰る」

『あのね、ステイル』

「?」

『返事はまだできないけど、お礼を言うんだよ』

「なんの事かな?」

『教会で、煙草を吸うのをやめたよね、私は自分しか見えてなかったのに、そっちはずっと私の事を考えてくれてたんだよね、だから、返事はまだできないけど、……ありがとう』

「……お土産を、持って帰るよ」

こちらの決着はまだ先だ。









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