小ネタ 良妻
上条当麻は、恐怖していた。
魔術師、魔神、天使などと戦った時よりも、大きな恐怖を感じていた。
数日前の事だ。
いつもと様子が異なる土御門に、その理由を力ずくで問いただした。
よくあること。
危険な魔術師が学園都市に侵入した。
しかし久しぶりの事。
あのころとは状況が全く異なる。
上条は自分の死に恐怖していた。
(オレなんてどうでもいい、でも!!)
美琴は二人目の命を授かっていた。
(オレが死んだら、美琴や美弦、お腹の子はどうなる!!!?)
大黒柱の消失。
さらに、彼女たちの心労はひどく、境遇も大きく変わるだろう。
また、上条勢力の後ろ盾はかなり大きいものだ。
上条死後、恐ろしい実験等に、巻き込まれない保証は無い。
(土御門は、来なくてもいいと、言っていた)
ここで自分が動かなくても、事件は解決するかもしれない。
しかし、ここで動かなくて『上条当麻』は構わないのか?
「くそっ!!」
リミットだけが迫る。
「なーにやってるのよ!!」
「……美琴?」
「さっさと行って、ぱっぱと片付けなさいよ!!」
「で、でも!!」
「あーあ、こんなお腹じゃなかったら付いて行ったのに!!」
「……」
「お土産話、期待しているから!!」
「……わかった、必ず戻る!!」
後ろは振り返らない。
涙を流しながらも見送ってくれた、愛しい妻に応えるためにも。
「……っていう夢を見てなぁ、長男の名前は『東賀』……なんで泣いてるんです??」
「きちんと、グスッ、かえってこないと、エグッ、しょうちしないん、ヒック、だから!!」
「感情移入しすぎd……よしよ~し、大丈夫だから、ちゃんと帰るから!!」
「ふぇ~~~~~~ん!!」