とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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記憶喪失



(今日コンビニ行こうかな)
と紅茶を飲みながら窓越しの空を眺めていた。
すると声をかけられた。
「おー御坂、今日コンビニ行く?」
土御門舞夏だ。今はどうやら休憩中らしい。
「えっなんでわかったの?」
「いつものことだぞー。暇ならドロドロしたマンガを買ってきてもらいたい」
舞夏は兄と妹がドロドロする話が好きらしい。
「はいはい、あったらね」

立ち上がろうとすると舞夏が少し顔をにやけている。
「そうそう御坂ー知ってるか?隣人の上条当麻がまた入院したそうだぞー」
舞夏の兄は上条の隣人でありこういう情報は的確だ。
実を言うと舞夏にだけ美琴は恋愛相談をしている。
舞夏を通して上条のあらゆる情報を手に入れることができるのだ。
「え!?それって本当?またあの馬鹿何かやらかしたのね…」
少々呆れ気味だが心配だ。
「お見舞いに行かなくていいのかー?ここで印象を上げておかないと厳しいぞー」
競争率高いからな―、と付け加える。
「そ、そうよね。お見舞いに行くくらいならいいわよね」
目が思いっきり泳いでいる。
こんな調子で大丈夫なのかと少々心配する舞夏であった。

コンビニには行かずデパ地下でお見舞い用のフルーツを買ってきた。
そして現在病院にいる。
「えっとアイツの病室っていつものところよね…」
内心すごく緊張している。周りから見れば落ち着きがないと思われるだろう。
しばらくすると廊下から足音が聞こえこちらに近づいてくる。
「あ、先生。こんにちは」
目の前にはカエルの顔に似た医者がいた。
「あぁこんにちは。所で君は上条君のお見舞いかい?」
フルーツバスケットをみて判断したのだろう。
何故か表情はいつもより険しかった。
「あ、はい。それでアイツは元気にしてますか?」
「これで、二度目だね…」
質問の回答はせず独り言のように呟く。
美琴はキョトンとした表情で医者を見ている。
「あぁごめんよ。元気―――といえば元気なのかもしれないね」
「どういうことですか?」
「まぁ本人に会えば一番早いんだけどね。本人の前でショックを受けないように先に言わせてもらうよ」
いつもは見せない真剣な顔つきで語る。
すごく嫌な予感がした。こんな感じをしたのは一方通行の時か。
思わずつばを飲み込む。

「彼は記憶喪失だ」
正確に言うと記憶破壊だねと付け加える。
『記憶喪失』その単語を聞いただけで全身から鳥肌が立つ。
体中の力が抜ける。
「なんで…?どうしてアイツが!なんでよ…」
こんなこと言ってもしょうがないのに気持ちが押さえつけれない。
するとカエル顔の医者が美琴の右肩に手を置き、耳元で語る。
「――――――、――――――――――」



美琴は今上条の病室の前に立っている。
あれから決心することができた。
今も不安という感情に押しつぶされそうだ。
(落ち着いて…まずは深呼吸…)
深呼吸をし、ドアをノックする。

「はい。どうぞ」
ゆっくりと病室に踏み入れる。
「な、なんだアンタ元気じゃない。よかった~心配したのよ」
フルーツを机の上に置き座る。
「あの…どちら様ですか?」
ひッ喉からなにかこみ上げてくる。
「何言ってるのよ…私は御坂美琴、超電磁砲の美琴サマよ…覚えてない?」
声の力が抜けてくる。
「超電磁砲…?あの学園都市3位の?」
少し驚いているようだ。レベル5が目の前にいるのだ。まぁ無理もない。
「アンタ、覚えてない?アンタは私の…一万人の妹の命を救ったのよ…?」
「い、一万人?俺そんなことしたの?」
「アンタ、覚えてる?アンタ、私の周りの世界を守るって約束したのよ?」
「…」
「私、アンタのことが…大好きだったのよ…やっぱり覚えてない?」

「――――ごめん」
申し訳ないような顔をしている。なにも罪はなのに。
もうこれ以上無理だ。これ以上はもう…
(駄目だ…耐えれない…これ以上…もう約束守れない…)

あの時カエル顔の医者に言われたことがある。
『無理なことかもしれないけどね。できる限り彼の前では泣かないで欲しいんだ』
本当に無茶な注文だと思う。
好きな人が自分との記憶を亡くして泣くなと言われても不可能だ。

気がつけば体が震えている。止まらない、震えが止まらない。
(なんで…なんで、コイツだけ不幸なのよ。なんでコイツだけこんなめに逢わなければいけないのよ…」
床に雫がこぼれ落ちる。
(泣いちゃいけないって分かってるのに…)
目の前のベッドシーツを力強く握る。
涙がシーツを濡らしていく。
頭に何かが触れる。―――右手だった。
(え?なんで?アイツ記憶ないんじゃ…)
美琴が泣いてるとき上条はよく右手で撫でてくれた。
本能が働いたのだろうか。
「あのさ…俺何も覚えてないんだけどお前が来た時何故か安心したんだよ。いやむしろ嬉しかったかな」
右手で頭を撫でながら語る。
「だから嫌なんだよ、お前がそんな顔するのが」
右手を離しベッドから起き上がり美琴を抱きしめる。
「え…」
つい声を漏らしてしまう。
「ごめん、どうにかしないとと思って一番最初に浮かんだのがこれだった。嫌なら――」
「嫌じゃないよ…もう少しこのままでいて…」
(なんだ…大切な所ちゃんと覚えてるじゃない、この馬鹿―――)
しばらく美琴は泣いていた。しかしその表情は嬉しそうにも見えた。

とりあえず落ち着き、今まで上条がやってきたこと、美琴との出会いをすべて話した。
「はぁ、なんというか…不幸だ」
深くため息をつく。
「アンタはもっと私を頼るべきなのよ、あと力になってあげるからちゃんと甘えなさいよ」
「えっとじゃぁ1つだけ、――――――――――」
一瞬で美琴の顔が真っ赤に染まる。
(なんで恥ずかしいこと言うのよ、この馬鹿…)


「じゃぁそろそろ帰るわね」
「あぁ、今日はありがとな御坂」
(ありがとうか…私何もしてないのに)
コイツには敵わないなと思った。
「あ、言い忘れたけど、前に約束したこと、ちゃんと守ってもらうわよ」
え、と間抜けな声を漏らす。
「あの御坂サン?わたくし上条当麻は記憶がなく、約束と言われましても困るのですよ?」
「あーなら死ぬ気で思い出せば?」
「えええ、それは無理だ、あー不幸だ―!」

(別に約束なんてしていないんだけどね)
ただコイツだけには自分をこんな風にした責任を取ってもらおうと思った。




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