とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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花見




「春だなぁ」

桜が舞う。
余りにもいい天気だ。

「春ねぇ」

鉄橋近くの桜の下、
二人は並んで座っていた。

「大学卒業、おめでとう」

そう言って笑う女性は御坂美琴。
筋ジストロフィー治療の第一人者である。

「美琴さまの指導のたまものです」

大げさに言う男性は上条当麻。
就職先は、お義父さんの後継ぎだったりする。

「そうよー、感謝しなさい」

美琴は頭を上条の肩にポスンと乗せる。

「いつも、ありがとな」

珍しく素直に言えた彼は、
そっと、腕を美琴の肩にまわした。

「……うん」

風が通り過ぎる。
桜のせいで、一瞬皆が見えなくなった。

その花弁は
元常盤台の三人とそこの元女王とメイドの会話を遮り、
おばあちゃん思考とライオン頭の漫才を聞き、
同じ顔の少女達を眺め、
子供を守る大人達の談笑を受け流し、
シスターたちのバカ騒ぎを突破し、
元スキルアウトトップと元風紀委員の視線を受け、
高校時代のクラスメイトが暴れている場所を避け、
アステカの魔術師達に服装を指摘される女性を笑い、
目つきの悪い女性にいじめられるサイボーグを無視し、
人形のような少女と彼女に抱きつく少女の間を抜け、
カブトムシとよばれる男とホステスのような女性の沈黙を破り、
妻に土下座する男二人を見下し、
「アイテム」全員の笑顔を写し、
元教皇代理を吹っ飛ばす女性二人に舞い上げられ、
少女のタックルをもろに受けた白い男に押され、
友のやり取りをやさしく見つめるツインテールを撫で、
不良神父の頭に噛み付く女性とその親友の上を舞い、
空へと登る。


それを眺めた二人は自然と笑みを浮かべていた。

「なぁ、美琴」

「なに?」



見つめ合った二人は、しばらく無言だったが、

そっとその唇を重ねた。


二人と同じ空を別々の場所で
イギリス王室の皆が、
破壊が生む爽快感をもとめる女性が、
傭兵崩れのゴロツキが、
くの一の発言を無視する男が、
魔神になり損ねた男と聖人と片目の魔神が、
運び屋が、
奇跡の歌手として有名な黒髪の女性が
魔術結社の四人の女性が、
根性を叫ぶ男が、
変態の上司から逃走する女が、
ハワイでは少女と元大統領が、
カエル顔の医者が、
元ローマ法王と天罰を得意とする魔術師が、
プライドの高い二人の姉妹が、
独立国の立役者が、
雷神が、
統括理事長である高齢の女性が、
魔術結社のボスとその妹、そして忠臣が、
片腕で紅の若き神父が、
現役を退いたイギリスの魔女が、
性別、年齢不詳の「人間」が、
見上げた。


バカップルはようやく離れる。

「……長い」

「わりぃ」

「みんなこっち見てるけど? ニヤニヤされてるけど?」

「あー、まぁいいじゃん」

「恥ずかしくないの?」

「恥ずかしいけど、いまからもっと恥ずかしいことするし……」

「なんのつもり? アホなことならぶっ飛ばす」

「キスした後でも物騒ですな」

「いいから、それで?」

「………………よし!!!! 美琴……」

















「結婚しよう」




春である。








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