とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part0

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プロローグ


「どうすんだ?インデックス?」
「う~~~~~~っ」
目の前には、小萌先生から貰ったパンフレット。
『初日の出を見て、豪華おせち料理をたべよう 1泊2日の旅!!』とある。
上条が行くなら勿論問題なかったが、今回は正月に両親が来るとのことで、流石に同行できない。

上条の両親をとるか、おせちをとるか?
「…ごめんとうま。あたしはシスター。初日の出という聖なる光を浴びることで、一年の始まりとするよ」
「さすがシスターさんですね」
平坦な声で答えた上条に対し、シスターの口がわずかに開いた。ギラリと歯が輝く。


そんなこんなで、大晦日は上条は一人で大掃除など、のんびり過ごしていた。
寮内はがらんとしており、土御門も居なかった。
母親の上条詩菜と電話で話した内容から察するに、上条当麻は例年帰って無いらしい。
上条の不幸体質が、親戚からも疎ましがられていたせいだろうと推測できるが、
どの道記憶喪失では、親戚の集まる場には危険すぎて戻れない。
(まあ、1日ぐらいは平和な日があってもいーんじゃないですかね)
上条はひとりごちて、ぬくぬくとコタツとミカンとネコとTVの組み合わせで、一日を過ごした。

久々にベッドに手足を伸ばした体勢で目覚め、元旦を迎える。
両親とはホテルで待ち合わせて、そこで美味しいものでも食べよう、ということになっている。

「う~ん」
9ヶ月前、入学式で使用した以来と思われる、スーツとネクタイを着けてみたが…着慣れてない感アリアリである。
そもそも記憶喪失でネクタイの結び方も調べないと分からない。
詩菜が強く、一年の始まりくらいビシッと!と珍しく主張したので、やむをえずといった所である。
「ま、こんなもんかね…さてと、いきますか」
両親は前日遅くにホテルに入ったはずである。まだちょっと両親に会うのに緊張する自分に苦笑いする上条であった。

ピロリン♪
メール着信音がなり、モノレールでうつらうつらしていた上条は内容を確認する。御坂美琴からだ。
『明けましておめでとう 今年もよろしくー』
やたらシンプルだが、まあ彼女らしいとも言える。ちゃちゃっと返信し、また目を瞑る。


ホテルは結構な人出であった。
今回の上条のように、両親が来る形の家はホテルで過ごすパターンが多いようだ。
あちこちで親子が話している光景を見かける。
(えーと、2階のサロンだったよな…)
階段はどこだ、とキョロキョロしていると。

つんつん。

遠慮がちに背中をつつかれる。
振り返ると、うつむいた振袖姿の女性である。
顔はよく見えないが、、、いや、まさか?
「み、御坂か、ひょっとして?」

「なんでこんなトコにいるの?」
御坂美琴がじっと見つめてきた。


「お父さん、久しぶりっ!」
「うんうん、さすが我が娘。美しく育っておるな!」
御坂旅掛は久々の娘との対面に目を細める。
「美琴ちゃん、パパの胸に飛び込んじゃえ♪」

大晦日、学園都市のホテルにて、親子三人水入らずの再会である。
ディナーを楽しみつつ、美琴や旅掛の話は尽きることがない。
「美琴ちゃん、彼氏の話はしないの~?」
「それは…聞き捨てならん話だな」
「な、何の話よ!いないわよそんなの!」
「じゃあ百歩譲って好きな男の子の話でも」
「ええい黙れ!アイツはそんなんじゃないって言ってるでしょ!」
「アイツ…?」
「そ、アイツっていう仲の男の子がいるのよね~美琴ちゃん」
「だからちがうッてば!」
ここぞとばかり美鈴の美琴いじりが混ざりつつ、楽しい時が過ぎてゆく。


美鈴が動き出した音で、美琴は目を覚ました。元旦の朝だ。
「あら起きちゃった?明けましておめでとう美琴ちゃん」
「うん…明けましておめでとー」
「まだ寝ぼけてるとこ悪いけど、すぐ振袖着る?」
「ううん、モーニング食べてからでいいわ…」
動きやすさを求めて短パンを履くような美琴には、長時間の振袖はややツライ.。

父親のシングルルームを訪問すると、もう身なりを整えて新聞を読んでいた所だった。
このあたり、旅慣れている旅掛は洗練されている。
「お父さん、明けましておめでと」
「おお、明けましておめでとう。そろそろ下に食べに行くか」
「うん、準備できてるよ」

「あんまり食べてお腹こわさないようにね。振袖だと色々大変よ」
「うん…でも今日はおせちバイキングよ?これ食べちゃダメって拷問だわ」
普段から来てるわけではないので比較できないが、元旦のモーニングは特別仕様らしい。
「係の人に言えば、少しなら持ち帰りできるんじゃないか?」
「そうそう。ちょっとは我慢なさい。」
「はぁい。なによその普段からガツガツ食べてるような言い方…」


部屋に戻り、しばらく雑談した後、振袖の着付けを始めた。ほとんど美鈴任せである。
帯を締めて貰っている間にぼんやりと考える。
(アイツいま何してんだろ)
そうだ!と新年の挨拶のメールを打つ。色々考えたが、初っ端から後悔しないよう、シンプルにした。
すぐ返事来るかなあ、と思ってると、携帯に即反応が!
『明けましておめでとう! 電気は大切にね!』
(あんにゃろう)
と思いつつ、浮かんでくるニヤニヤ笑いを止められない美琴であった。
「なにニヤニヤ…さては!信じられないわ、親使ってる間にラブラブメールだなんて…」
「そんなワケないでしょ!さっさと締めてよ!」
「やれやれ、新年からアテられてやんなっちゃうわ。」
そっぽを向いて赤くなっている美琴は気づかなかった。美鈴に黒い笑みが浮かんでいたことを。

着付けが終わり、メイクもバッチリ決めて貰った。今度は美鈴が支度するということで、
「ちょっとブラブラしてくるね~」
と、ロビーまで降りて、内心(みんな見て見て~)といった期待感で、周りをみわたす。

え?
後ろ姿だが、見間違え様の無い、あのツンツン頭。
か、上条当麻が居る…美琴は一気に沸点に達した。
(なんで?なんで?)
しかも正装というか、初のスーツ姿っぽい。
(と、とりあえず挨拶だけでも)
自分のカッコ、おかしくないよね?と念入りにチェックして、いざ。

背中をつついてみる。とても顔を見られない。
「み、御坂か、ひょっとして?」
「なんでこんなトコにいるの?」
美琴は、(声が震えてないかな…)と思いつつ、問いかけた。


上条当麻は息を飲んだ。
(これが御坂…か?)
普段は校則上もあるだろうがナチュラルメークであり、ボーイッシュな可愛らしさと認識していたが。
今回はメークで瑞々しさをパワーアップさせており、振袖と相まって色気まで感じさせる。
(ちょっと正視できねーな。女の子って変わりすぎだろ)

美琴は、何も答えないばかりか挙動不審になった上条を、不審そうに見つめていたが、
「え、えっと改めて。明けましておめでとう」
「あー…、明けましておめでとう」
「で、なんでココにいて、なんでそんなカッコなの?」
「いやー、親とここで会うだけだけどな。お前こそなんだよ、そのカッコ」
「わ、私は毎年、親と年末年始をここで過ごしてて…」
その時。

「あらあら~、先に会っちゃったのね~~」
上条詩菜が手を頬に当てながら現れた。

「か、母さん!」
「うふふ、明けましておめでとう、当麻さん、美琴さん」
「あ、明けましておめでとうございます」
「あけましておめでとう…じゃねーーーっ!『先に会った』てどういうことだよ!」

「あ、まっずー。もう会ってんじゃん。」
時を同じくして、ロビーに駆け下りてきた美鈴に美琴は食って掛かる。
「ア、アンタまさか…」
「偶然だと思った?美琴ちゃん」
「じゃあ…」
「そう、詩菜さんと示し合わせてね。このホテルで会ったのは偶然ではなく必然でいす。」
「な、なにやってんのよ!」
美鈴はそれには答えず、上条に手を振る。
「あっけましておめでとおー、上条くん…いや、当麻くんって呼ぶわね♪」
「あ、…明けましておめでとうございます。一体何たくらんでんすか美鈴さん」

詩菜と美鈴が合流する。
「じゃあ詩菜さん、取り敢えず、予約した部屋にいきましょうか。予定狂っちゃったけど」
「そうですね~、ウチの人呼んでこないと」
「待て待てマテーーー!無視しないで答えろーー!」
上条は母親たちに叫ぶ。
美鈴はくるっと振り向いた。

「ただのお見合いよ」

「………は?」
上条と美琴はハモった。


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