くっついてるんですの
上条は場違いだと思っていた。
「……ゴーーーーーーーージャス!!!!!!」
「……気でも狂った?」
「部屋が豪華なんですが!!!」
「そう? 5万ってこんくらいじゃない?」
「感覚がおかしい!!」
「アンタのそれは今に始まったことじゃないでしょ?」
「この流れでオレがおかしい方向に行く!!?」
「いいから着替えるわよ」
「……へいへい」
風紀委員の捜索から逃げ切るため変装しようとした二人は、
ようやく気付いた。
(*1)
お前ら手をつないだままどうやって着替えるつもりだったんだよ?
そしてさらに「着替える」という単語でようやく御坂は気付いた。
(ここホテルじゃん!!!!!!!)
バーカ
どうしても顔が赤くなっていく。
恐る恐る隣の男を見ると……
恐る恐る隣の男を見ると……
「しまったー、手をつないでたら着替えらんねぇー!!」
一歩思考が遅いのか、はたまた鈍感なのかホテルの方には気づいていない。
少しほっとした。
少しほっとした。
ん? なんか急に止まった。
「着替える?」なんて呟いてやがる。
あれー少しずつ赤くなってきたぞ。
あ、気付きやがったこのバカ!!!
ぎゃーこっち向くな!!!!!!
「着替える?」なんて呟いてやがる。
あれー少しずつ赤くなってきたぞ。
あ、気付きやがったこのバカ!!!
ぎゃーこっち向くな!!!!!!
どうやら思考が一歩遅かっただけらしい。
二人は顔を真っ赤にしたまま見つめ合った。
しかし、こんなことをしている時間は無い。
相手のために、さっさと離れる方法を見つけなくてはならない。
風紀委員から逃げるために時間を使っては意味がない。
相手のために、さっさと離れる方法を見つけなくてはならない。
風紀委員から逃げるために時間を使っては意味がない。
「あ、あのな、御坂」
「にゃ、にゃに」
「いいか、誤解されないようにまず言うが」
「うん」
「そんな展開は無い」
「と、とょうぜんよ!!」
「で、どう着替えるかだが」
「うん」
「まず、手を離す」
「でも、それじゃあ……」
「ああ、またくっつくだろう」
「ダメじゃない!!」
「……背中なら?」
「へ?」
「背中同士でくっついたら、お互いに見ないようにもできる」
「へ? アンタと背中でくっついたまま、下着姿になるの!!?」
「すまん、これしか方法が思いつかない」
「そ、そんな」
「絶対に後ろは向かない!!」
「……」
「信じてくれ!!!」
そう言われたらどうしようもない。
上条を信じないわけがない。
上条を信じないわけがない。
そっと手を離す。
胸に飛び込んできた美琴を、
上条はそっと支えた。
上条はそっと支えた。
鼓動がうるさい。
背中合わせでベッドに座る二人の共通認識である。
「じゃ、じゃあ、オレから着替えるぞ」
「……うん」
服を背中から動かす際にだけ右手を握る。
それで 着替えること はできる。
しかし……
それで 着替えること はできる。
しかし……
とはいえ他に方法は無い。
この状況は相手にとっておおきな負担なはずだ。
はやく解決しなくてはならない。
この状況は相手にとっておおきな負担なはずだ。
はやく解決しなくてはならない。
自分の感情など、後回しでいい。
上条は着替えはじめ、美琴も覚悟を決めた。
(コイツの背中……)
しかし、美琴は一瞬で冷静になってしまった。
後ろにあるのは上条の背中のはず。
だというのに感想は、「ざらざらしている」の一言に尽きた。
これは
後ろにあるのは上条の背中のはず。
だというのに感想は、「ざらざらしている」の一言に尽きた。
これは
(……傷跡……)
泣いている人がいれば手を差し出さずにはいられない男。
コイツは、その人の代わりに傷ついていく。
それなのにこのバカはこれでいいと笑うのだ。
コイツは、その人の代わりに傷ついていく。
それなのにこのバカはこれでいいと笑うのだ。
そして、
『おまえの味方でよかったと思ったからさ』
この広い背中にある
『だから 泣くなよ』
無数の傷の中には……
『待っててくれ』
コイツの、支えに、なりたい。
「終わったぞ」
「うん、じゃあ私も着替えるね」
「おう」
久しぶりのベッドであるのだが、
上条はまったくそんなこと考えられていない。
上条はまったくそんなこと考えられていない。
彼もまた
(コイツの背中、意外に小さいんだよな)
そんな当たり前の事を再確認していた。
(こんなに小さい体で、あんな絶望を背負ってたんだよな)
彼女がただの少女であることを、自分が一番よくわかっている。
ただの少女には荷が重い物を背負っていることも知っている。
ただの少女には荷が重い物を背負っていることも知っている。
なのに、
『ただし、今度は一人じゃない』
コイツは
『……それなら、その重荷は私も背負う』
こんなことを言ってくれるお人好しで
『アンタと私は、同じ道を進んでいる。その事を忘れんじゃないわよ』
コイツの、力に、なりたい。
「くっ、逃げられた!!」
空室。
衛星からの映像でこのホテルに入って行くのを確認(初春を酷使)した白井は、
テレポートでホテルに向かい、風紀委員の権限を使い(乱用ともいう)部屋を聞き出し突入した。
衛星からの映像でこのホテルに入って行くのを確認(初春を酷使)した白井は、
テレポートでホテルに向かい、風紀委員の権限を使い(乱用ともいう)部屋を聞き出し突入した。
しかし、そこには人影は無い。
そのころホテルのロビーをとある二人組が通過した。
一人は金髪に眼鏡、赤いシャツにジーパンといった姿の男性。
もう一人は黒いロングヘアーの女性で水色の服を着ている。
二人は仲のいいカップルらしく、
女性は男性の腕にしがみつくように腕を組んでいる。
もう一人は黒いロングヘアーの女性で水色の服を着ている。
二人は仲のいいカップルらしく、
女性は男性の腕にしがみつくように腕を組んでいる。
いや、実際しがみついていた。
(もうダメ!! 恥ずかしさで気絶しそう
立ってるのも限界!!
こうしていないと倒れちゃう!!)
立ってるのも限界!!
こうしていないと倒れちゃう!!)
着替えの最中は冷静だったが、
ふと考えたらとんでもないことをしたのだった。
変装した美琴は今、必死である。
一方上条も必死だった。
ふと考えたらとんでもないことをしたのだった。
変装した美琴は今、必死である。
一方上条も必死だった。
(美琴さん!! 腕にあたってるって!! あれの後のこれはヤバイって!!)
「み、美琴さん」
「な、なによ……」
「そろそろ、腕から離れられません?」
「……ごめん、まだ無理、もう少し待って」
「さいですか」
「これからどうする?」
「どうも俺達じゃこれは解決できそうにない」
「それで?」
「だから、ちょっと大人に頼ろうと思うんだ」