とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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アマガミコト




美琴はイライラしていた。

「とうまのバカ! いっつもいっつも!」
「痛いたいたいたい!!! 頭皮が! 頭皮がヤバイ事になってるから!」

先ほどからガジガジと上条の頭に噛み付いているのは、ご存知インデックスだ。
彼女は、上条と美琴が『ちょっといい感じ』になった時に、決まって邪魔に入る。
(その役どころは白井の時もあるが)
しかし、美琴もまた上条とインデックスが『何かいい感じ』になった時、
電撃をぶっ放して邪魔をするので「おあいこ」…と言えるのかも知れない。そう思っていたのだ。

だが、最近美琴は気がついたのだ。「これでは不公平ではないか」と。

美琴が邪魔をする場合、放たれた電撃は上条の右手によって打ち消されて終了だ。
しかしインデックスが邪魔をする場合、上条に抱擁した【とびついた】挙句、
粘膜接触【かみつき】までしているのだ。
こっちには何のご褒美も無いのに、あっちは勝っても負けてもイチャイチャ(?)できるのである。

美琴とインデックスの間に特に取り決めなどは無いが、これがいつしか暗黙の了解となっており、
二人とも今までは何とな~くそのルールに従っていた。
だがそれが「不平等条約」だと気がついた美琴は、今現在、
噛み付き噛み付かれる二人を見つめながら、ただただイライラしていた。
嫉妬と怒りと、今まで損してきたようながっかり感が美琴を襲う。

(何よこれ…何なのよこれ!)

ぷるぷると震えながら、いつもの様にバチバチと帯電させる。
どうする。このまま電撃を放つか。
いや、それでは結局何も変わらない。右手で打ち消されて、上条の顔が引きつるだけだ。
ならばどうする。インデックスに本当の意味で対抗する為には―――

っと、ここまで考えて美琴の顔は真っ赤に染まった。

(いやいやいやいや!!! それは無理!!! だだだだってそんな大胆な事…で、できないし……)

頭をブンブンと振りながら、頭の中で葛藤する。
ツンデレのツンの部分が邪魔をして、中々デレを出させてくれないのだ。
だが行動に移さなければ、おそらくずっとこのままだろう。
気づかなければ楽だった物に気づいてしまったのだ。
もうインデックスが噛み付き、自分が電撃を放つ関係には戻れない。
あの日の私たちには戻ることができないのである。

美琴は勇気を出し、拳をギュッと握り、グッと顔を上げた。
そしてそのまま、インデックスが背後から抱きついているのに対し、自分は上条の正面に立つ。
何事かと上条もインデックスも、その状態のまま手(歯)を止める。

次の瞬間、二人は更に「何事か」と思う事となる。

「カプリ」、と音がした後、上条の首筋にじんわりとこそばゆい感覚が広がる。
何故なら目の前で、美琴が赤面しながらあむあむと甘噛みをしているから。
あまりの出来事に、インデックスはポカーンとしている。



「あ、あのぉ…み、美琴さん…? 何をしていらっしゃりやがりますので…?」

上条も訳が分からず、謎の日本語で聞き返す。

「う、うるふぁいわえ! (う、うるさいわね!)
 ろうへアンラひはれんへきほかきからいんらはら、(どうせアンタには電撃とか効かないんだから、)
 こうふりゅひからいれひょ!? (こうするしかないでしょ!?)」

甘噛みしたまま喋るもんだから、何かもう、半分以上聞き取れない。
いや、それよりも問題なのが―――

「ちょっ! 噛んだままもごもごすんなよ!! く、くすぐったいからっ!!!」

上条は何とも言えないゾクゾク感を味わっていた。このままでは、イケナイ扉が開いてしまいそうだ。
上条は両手を伸ばして美琴を引き離す。これ以上もごもごされると、色々とマズイ。
首筋から離れる瞬間、美琴の唇が「ちゅぷ」っと音を立て、
一瞬「何かエロいな…」と思ってしまった上条さんである。

「え、え~っとだな……美琴、何で急にこんな事したんだ?」

改めて聞き返えされ、美琴はキッとインデックスを睨みながら答えた。

「だって!! その子ばっかズルイじゃない!! 私だってアンタに触れたいのに!!」
「とうまに触れっ!!?」

美琴に指摘され、今まで自分がしてきた事が、
客観的に見れば男女がイチャイチャしている様に見えていた事に気づくインデックス。
そしてそのままインデックスの顔も真っ赤に染まっていく。

ちなみに、勢いあまって美琴が「アンタに触れていたい」と告白めいた事を口走ってしまったが、
上条はこれを、

(つまり電撃が効かないから、直接攻撃がしたいって事か?)

と勝手に解釈【かんちがい】していた。死ねばいいのに。

「いやでも…できれば噛むのはやめていただきたいのですが……」
「何でよ!! あの子ならいいのに…私じゃ……私じゃ駄目って言うの!?」
「いや、そもそもインデックスにもやめてほしいんだけど、それ以前に美琴の場合噛み方がな……」

インデックスの場合、思いっきりかじる為「痛い」で済むが、
美琴の場合、羞恥心がブレーキするのか甘噛みとなり、何か変な感じになってしまう。
毎回これを食らったら、ものすご~くモヤモヤする事だろう。

「な、何よ! 言いたい事があるならハッキリしなさいよ!」

が、それを言葉にするのは難しく、うまく説明できない。
なので、

「じゃあちょっと実践すっから、首出して?」
「……へ?」

上条も同じ事をした。
「カプリ」、と音がした後、美琴の首筋にじんわりとこそばゆい感覚が広がる。
何故なら目の前で、上条があむあむと甘噛みをしているから。

「なっ!!? なな、なああああ!!!?」
「ほあら? (ほらな?)   ふんげぇくふぐっはいらろ? (すんげぇくすぐったいだろ?)
 まいふぁいこえやられうほは、(毎回これやられるとさ、)
 はふぐぁりひょっほはじゅかひいっへいうか……(さすがにちょっと恥ずかしいって言うか……)」

甘噛みしたまま喋るもんだから、何かもう、半分以上聞き取れない。
いや、それよりも問題なのが―――

「ちょちょちょちょちょっと!!! 噛んだままもごもごしないでよ!!!
 あ、だめ…そこ、は…弱いんだ、から……はっ!? ひゃう………んんんっ!!!?」

美琴は『そういう意味での』ゾクゾク感を味わっていた。このままでは、イケナイ事になってしまう。
美琴は両手を伸ばして上条を引き離す。これ以上もごもごされると非常にマズイ。
首筋から離れる瞬間、上条の唇が「ちゅぷ」っと音を立て、
「ビクン!」とする美琴ちゃんである。完全にプレイじゃん、もう。



美琴はハァハァと荒い息を吐きながら、その場で「くたぁ」っとへたり込みそうになる。
上条は慌てて彼女を抱きかかえて支えるが、
その行動が今まで黙って見つめていたインデックスの神経を逆撫でする事となる。

「とうま! ちょっと短髪にサービスしすぎなんじゃないのかな!?」
「サービスって何だよ」

本気で分かっていない鈍感男に再びカチンときたインデックスは、
もう一度噛み付くために大口を開けて飛び掛ろうとする。
が、飛んだ瞬間に先ほどの美琴の言葉が頭をよぎる。
今まで自覚が無かっただけに、一度意識してしまうと恥ずかしさが一気にこみ上げてくるのだ。

インデックスは顔を赤くしながら失速していく。
上条も「またか!」と思い身構えていたのだが、
いつもの…というかさっきのように頭目掛けて飛びついてこず、ポスンと背中を押された。
インデックスとしては、ジャンプしたはいいがそのまま抱きつくのを躊躇い、
行く先を失った両手が辿り着いたのが上条の背中だった訳だが、
そんな事が上条に理解【そうぞう】できるはずもなく、
「よく分からないけど、何か急に後ろから押された」状態である。
それは不意の出来事であり、「噛み付き」に対しては身構えていても、
「押し倒し」に対しては何の準備もしておらず、上条はそのまま、あっけなく体勢を崩し転倒する。

美琴を抱きかかえたままで。

ご期待通り、上条は美琴を押し倒しながら床に転がる。
その時、どうなればそうなるのか、本当はわざとやったんじゃないか、
とツッコミたくなるような状態で二人は絡み合っていた。
具体的には、美琴の右手は上条の腰へ、美琴の左手は上条の頭へ。
上条の右手は美琴の左肩へ、上条の左手は美琴の背中へ。
そして極めつけがこれだ。上条の口が、

「ひゃうんっ!!?」

美琴の左耳を「はむ」っとくわえていた。
口内に違和感を感じた上条は、舌を動かしてみたのだが、

「はひゃっ!!!」

という美琴の断末魔【あえぎごえ】で、何をくわえていたのか何となく理解し、慌てて起き上がる。

「え、えっとスマン!!! あ、いや、一緒に転んじまった事もそうだし、
 その…なんだ……と、とにかく色々悪かった!!!」

白井や五和が見たら、確実に卒倒するであろう。

この場において、今の状況に納得しない人物が一人いる。
インデックスはイライラしていた。
もう恥ずかしいとかどうでもいいとさえ思えてきた。
もういい。噛みたいから噛むのだ。

一方、この場において、今の状況に限界を迎えている人物が一人いる。
美琴はいつもの様にバチバチと帯電させる。
我慢できない物は我慢できないのだから仕方が無い。
もういい。ぶっ放してしまえ。

「とうまーーー!!!」
「ふにゃー」

結局最後はいつも通り、インデックスからの噛み付きと、
美琴からの電撃【ろうでん】を食らう事となったのである。

「落ち着けお前らああああ!!! つか何で毎回こんな事になるんだよ!!!
 だぁ~もう!!! 不幸だああああぁぁぁぁぁ!!!!!」









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