とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 8月31日(かみことのひ)




一年前、鉄骨の崩落事故が起きた工事現場にも、既に立派なビルが建っていた。
非道な実験が行われているわけでも、魔術結社が潜んでいるわけでもない、ただのコンクリート製のビルだ。
日差しが照りつけるそんなビルの前に佇む男女が1組。

「アンタ、何でこんなとこにいるのよ」
「それはこっちの台詞だ」

上条当麻と御坂美琴。夏休み最後の日に、ふとこの場に立ち寄った2人があったのは偶然だ。
だけどその偶然が、2人には意味が有るのかもしれない。

「……御坂。この日の、この場所だからこそ言うぞ」
「ど、どうしたのよ?そんなに改まって」

この場所は、上条当麻にとっても特別な場所である。

「お前は言ったよな。70億人の命だの御坂美琴の未来だの、俺だけが背負わなくちゃならない事なんかないって」

この場所での誓いは、大なり小なり、彼の人生に影響を与えた事は間違いない。

「確かに俺一人の力で70億人の人を守る事なんで出来ない。お前の未来を守りきれる確証なんてない――」

それでも、と上条は続ける。

「――それでも、たった1人。御坂美琴の人生を共に歩みたいって、今俺は、そう思ってる」
「…………はぁ」

照れるわけでも、ビリビリするわけでもなく、彼女が深くため息を付いた。
そしてぐいっ、と顔を上条へと近づける。
その距離は10㎝ほど。彼女の息を、肌で感じられる距離である。

「アンタから言ってくれたことはとても嬉しい。今すぐいでも飛び跳ねたい。でもね、これだけは忘れないで」

彼女の体は、上条に密接し、体温を直接肌で感じる。
その温かさは彼を安心させると同時に、ドギマギと羞恥心も生んだ。

「私もアンタの人生を一緒に歩む。アンタがどんなに苦しい時だって、アンタが何と言おうと、アンタに一番だと思う事をする。たとえそれでアンタが敵になろうとも」
「御さ……美琴」

どうすればいいかわからず宙ぶらりんになっていた上条の腕は、やがて美琴を包み込むように……。






だが、2人は忘れていた。
人口230万人の8割が学生で、夏休み最後の日で日曜日であろうとも。
ここが入り組んだ路地の先であろうとも。

「お前ら、人目の付かない場所だからっていちゃツンてんじゃないじゃんよー」

ここは野外で、周囲に、何時までも、誰一人いないわけなどないのだ!!

「「黄泉川、先……せい……」」
「なんだ。小萌先生とこの悪ガキと超電磁砲じゃん」
「あ、えと……違うんですよ黄泉川先生。この上条当麻決して不純異性交遊など不埒な事は……」
「そういう年頃なのはわかるじゃん。今回は見逃してやるから、いちゃつくなら『ちゃんとしたとこ』でやるじゃんよー」

完全に誤解されている。
弁解しようとしても余計な誤解を生むに決まっている。

「はは、ははは」

ついに上条は、自分の意志とは関係なしに笑っていた。

「はははは、うわーーーん!!!」

そしてとうとう、美琴の腕を掴み、真夏の学園都市を舞台に、現実からの逃避行が始まった。









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