小ネタ 借金のカタに美琴がやって来た
いつものように授業を受けて、
いつものように寮に帰る。
それだけ。帰り路に何もなければそれで1日が終わるのだと、そう上条は信じていた。
だが、騒動は何も外で起きるのではない。
新たな物語は、彼が部屋の扉を開けて始まった。
「ただいまー……え?」
朝は何もなかったこの部屋には、ベッドの横には、ファンシーな大きな人形がある。
壁には常盤台中学の制服が掛けられ、インデックスの物でも無かろう可愛い小物類がテーブルに置かれている。
そして何より、
「お、おかえりなさい」
「…………ただいま」
明らかに人一人が引っ越して来たような荷物の中にこじんまりとしてる御坂美琴。
とんでもない異変に思考が追いつかなかった上条は、つい、普通に返事をしてしまった。
ちなみにインデックスは美琴の後ろでホットケーキを食べている。餌付けされていると見ていいだろう。
オティヌスはと言えば、人形のようにいろいろな衣装の中にいる。まさかとは思いたいが、美琴が着せ替え人形みたいに遊んだのではないか。
「借金のカタに売られました」
「え、ごめん。もう一回言ってくれ」
「借金のカタに売られました」
2回言われても、やっぱり意味を理解出来ない。
決して上条が馬鹿だからではない。たとえ一方通行であろうとも同じ事を聞いて、まったく理解できないだろう。
上条は美琴に金を貸した覚えもなければ、美琴がお金に困る事すら想像できないのだ。
「いやだから、何でそうなったんだよ」
「……数か月、私の父親がアンタのお父さんに数万円借りたらしいのよ。で、そんときの約束が、一月で返すってことなのよ。で、でも私の父親、世界中回ってるから」
「俺の父さんも世界中回ってるし、それで何回も会うなんてとんでもない確率だろ」
「うん。で、結局会えずじまいでどうしようってなって。私が売られたのよ」
つまり、借金が返済されるまで美琴を預かる。ということだ。
はぁ。と上条はため息をついて、
「借金だとかいいからさ。お前は寮に帰れよ。俺から両親に言っとくからさ」
「残念だけど、それは無理よ。寮からは追い出されたし、カードも止められてる。荷物も全部こっちに送られた後だったからどうしようもないのよ」
これは完全に、美琴が住み込む事は決定の流れだ。
仕送りが増えるわけでも、美琴の生活費を送られるわけでもない。ただ居候が3人と一匹(ただし1人はちっこいので食費の心配はしなくていい)になっただけなのだ。
ただ他の居候と違う点は、洗濯物が綺麗に折り畳まれている所だろう。
仕事もしてくれているので無下にもできず、結局上条は折れてしまう。
メイドとご主人様のラブコメの始まりである。