とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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美琴 4




(……正解ね)

第七学区の製薬会社のビル。美琴がいるのはその中だ。
だが、来た目的は研究の手伝いでも会社見学でもない。
そもそもだ。
昼間なのに社員らしい人物は見当たらず、窓ガラスは飛び散り、壁や床、研究機材は黒く焼け焦げ周囲には赤い液体が目に映る。
だが、焼けた金属の臭いも、茶色に変色しかけた液体から発せられる異臭も、今の彼女には些細な問題だ。
それは、このビルの中で起きたもう一つの足音に気付いたからだ。
美琴は、バジッ!という音を立てながら階段から降りてくる『少女』に目を向ける。

「ホント、手を焼かすわね。ま、ここも潰すつもりだったけどさ。この様子だと、また『やった』わね」

『少女』の服は黒いシャツとベージュのホットパンツだ。
美琴はその服に見覚えがある。
いいや、良く知っているのだ。
なぜならば、






一週間近く前に、美琴が自分が着る為に買った物なのだから。






それだけでない。

美琴とまったく同じ栗色の髪。
美琴とまったく同じ体格。
美琴とまったく同じ顔。
まるで鏡合わせにしたように。
違いと言えば、『少女』の頬は煤で黒く汚れ、まるで見えるもの全てが敵に見えているかのように、怒りや悲しみ。そんな負の感情が集まったかのような目。

「昨日も言ったわよね。『私』は『アンタ』を止める。たとえ『私』が死ぬ事になっても」

『少女』は美琴の言葉に意を介さず、たった一言、呟いた。


「―――――――じゃま」

それが切っ掛けになったかのように、美琴は『少女』に駆けよる。
だが、ただ一直線に突っ込むわけではない。
床に散らばった金属片を能力で彼女の全面に集め、銃弾の様に『少女』へと打ち出す。
『少女』は動かなかった。しかし、『少女』へと飛んだ金属片は、『少女』を避けるように後ろへ流される。

(ま、あの程度で効くわけないわよね)

金属片はあくまでデコイ。『少女』の気を反らす為だ。
能力で磁力を発生させて自身を砲弾のように打ち出す。そして、自身を手で『少女』を掴んだ。
倒れこんだ『少女』の上に乗り、ポケットから折り畳み式のナイフを取り出した。刃を出して、逆手持ちにする。
『少女』は能力でナイフを飛ばそうとしているようだが、対抗するように美琴が磁力を発生させる事でナイフの手の中に留めている。

(これで、全てが終わる!!)

後はこの腕を振り下ろして、ナイフを『少女』の首元に突き刺すだけ。
だが、

(…ッ!ぐ、この!)

力が拮抗してお互い動かない。体力が尽きた方が負け。
そう思っていた。
しかし、

「――!?ッ、かはっ…コほッ!!」

力が緩んだわけではない。
能力が、弱まったわけでもない。
だが、たしかにナイフは飛ばされ、美琴は蹴り飛ばされた。

(まさか、体のリミッタ―が外れたんの!?)

一瞬でも気は抜けない状況で、そんな事を考えてしまった。
先ほどの美琴と同じように磁力を使ったのだろう。『少女』はその手で美琴に掴みかかり、

(ぐァ、ア?!)

美琴に電撃を流し込む。
最大出力10億Vの電圧で相殺するけども、体が痺れる。焼けるような痛みが美琴を襲った。

(まさか、能、りょ…ま……)

プッツン、と。
美琴の意識はそこで途切れた。










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